◆ S55.06.20 福岡地裁判決 昭和55年(行ウ)第5号 福岡県自由ケ丘小学校君が代斉唱計画反対訴訟(君が代斉唱計画処分取消請求事件) 判示事項: 公立学校で挙行される入学式、卒業式等でなされる君が代斉唱計画が「行政庁の公権力の行使に当たる行為」とはいえないとして訴えが却下された事例     主   文  本件訴えを却下する。  訴訟費用は原告の負担とする。     事   実 (略)     理   由 一 まず、本件訴えの適否について考える。  本件訴えの趣旨とするところは、要するに、宗像町立自由ケ丘小学校校長である被告が、昭和五五年三月一九日に挙行された同校の卒業式及び爾後同校で行われる各式典において君が代斉唱を実施させようと計画しているのは、なんら法的拘束力のない「国旗、国歌についての資料」と題する文書に基づくもので、憲法一九条、二〇条、二一条に違反する違法な処分であるから、右計画の取消しを求める、というものであり、これからみるかぎり、本件訴えは、抗告訴訟の一態様である処分の取消しの訴え(行訴法二条、三条一項、二項)として提起されたものと解される。  しかしながら、行訴法三条二項によれば、処分の取消しの訴えとは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為の取消しを求める訴訟をいうのであるが、ここに「行政庁の公権力の行使に当たる行為」とは、それがなされることにより、当該行為の相手方ないし第三者の権利義務又は法律上の地位に対して何らかの法的効果を及ぼすものでなければならないと解されるところ、本件訴えの対象となっている君が代斉唱計画なるものは、原告の主張を前提としてみても、小、中、高等学校のいずれを問わず、そこで挙行される入学式、卒業式等の式典における式次第の一部にすぎないものであって、それ自体はもとより、これに基づいて計画どおり斉唱がなされても、そのことによって、原告を始め、当該式典に参列する児童生徒、父兄、教職員、その他の関係者らのいずれの権利義務に何らの変動を生ずるものでないことは、明白なところである。  そうすると、原告の本件訴えは、処分の取消しの訴えの対象となし得るところの、「行政庁の公権力の行使に当たる行為」以外の事項につき訴えを提起していることになるから、行訴法三条二項の要件を充足しているとは、とうてい認め難い。 二 以上によれば、本件訴えにおける昭和五五年三月一九日の卒業式当日の君が代斉唱計画が処分後の事由に該当し、これについての訴えの利益が存するかどうかを論ずるまでもなく、原告の訴えは不適法と言うべきであり、却下を免れないところである。  よって、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。 (篠原曜彦 児嶋雅昭 石村太郎)