● 教員の採用及び研修について 昭和57年5月31日 文初地第237号



文初地第二三七号 昭和五七年五月三一日
各都道府県・指定都市教育委員会教育長あて
文部省初等中等教育局長通知


    教員の採用及び研修について


 各教育委員会におかれては、教員の採用及び研修について、かねてから、その改善充実に努めておられるところですが、近年、教員に対する豊かな人間性、深い教育的愛情、教育者としての使命感、優れた指導力などの要請が一層高まっています。
 このことにかんがみ、各教育委員会におかれては、教員としてふさわしい人材を確保し、その資質及び能力の向上を図るため、左記の事項に配意の上、教員の採用及び研修の一層の改善充実に努めるようお願いします。
 また、このことについて、貴管下の市町村教育委員会に対し趣旨の徹底を図られるようお願いします。

          記

一 教員の採用について

(一) 選考の方法について

 教員としてふさわしい資質及び能力を備えた優れた人材を確保するため、教員採用の選考方法については、従来から行われている筆記試験や面接に加えて、実技試験、体力テスト、適性検査等の多様な方法を採り入れるとともに、教育者としての使命感、実践的指導力等をみるため、面接、実技試験等を一層重視し、また、クラブ活動、社会的奉仕活動等の経験や教育実習の履習状況について積極的に評価を行うよう配慮すること。

(二) 試験の内容について

 筆記試験、面接等それぞれの試験において、教員としてふさわしい資質及び能力を多面的に評価することができるよう、試験内容について工夫し、改善を図ること。

ア 筆記試験については、出題内容の改善を図るとともに、出題分野について教材に関する専門家目に偏ることなく、一般教養及び教職に関する専門科目の比重を高めること。また、作文・小論文を課すなどにより知識や学力のみを重視することのないよう配慮すること。

イ 面接については、例えば一次試験から行うなど、できる限り多くの受験者に対して実施できるよう工夫すること。また、集団面接の導入や十分な面接時間の確保を図るとともに、面接に関する評価の方法の改善に努めること。

ウ 実技試験については実施する教科の拡大を図るとともに、体力テスト、適性検査等についても、可能な限り実施するよう努めること。

エ 試験の実施にあたつては、身体に障害を有する受験者に対して適切に配慮すること。

(三) 採用の内定時期について

 教員としてふさわしい資質及び能力を持つ者を確実に採用し、採用予定者に教職に就くための心構えや自覚を持たせるため、採用の内定時期を可能な限り早めること。

ア 採用の内定時期は、早期に内定が行われている民間企業等の実情を考慮して、できる限りこれらと同一時期とするよう努めること。
 なお、現在、大学等の卒業予定者のための就職事務開始時期等について、大学及び高等専門学校関係団体において申し合わせが行われているのでこのことに留意すること。

イ 採用の内定を合格発表と同時に行うことや段階的に内定通知を行うことなど採用の内定方法について工夫し、早期に内定する者の比率を高めるよう努めること。

ウ 採用の内定時期を早めるため、採用計画の策定方法、採用の内定手続等の改善を図ること。

二 教員の研修について

(一) 研修の体系的な整備充実について

 教育委員会が実施する研修については、体系的に整備充実を図り、各教員が教職の全期間を通じて必要な研修に参加することができる機会を確保するとともに、国、都道府県及び市町村等の各段階における研修が相互に関連をもつて行われるよう配慮すること。また、できる限り長期研修の機会を確保することが望ましいこと。

ア 教員が意欲をもつて研修に参加できるよう、教職経験、学校種別、教科、領域及び職務等に応じ、適切に研修の機会を確保すること。
 なお、その際実技・実習等の実践的内容、方法を一層重視するとともに、各学校における教育活動の実施上の要請に応えた内容とするよう配慮すること。

イ 教員が計画的に研修に参加することができるよう、各段階で行われる研修の実施時期、内容等について都道府県教育委員会において調整を図り、関係機関及び教育研究団体等に協力体制を確立するとともに、研修計画について予め教員に対して十分周知するよう配慮すること。

ウ 教育委員会が実施する研修については、できる限り授業に影響の及ぶことのないよう配慮するとともに、各学校において教員が研修に参加するに当たつては、他の教員の授業と振り替えること、他の教員が代つて授業を行うこと等の工夫により授業に支障が及ぶことのないよう配慮すること。また、教育公務員特例法第二〇条第二項の規定に基づく研修の取り扱いについては、その趣旨に照らして適切に行うこと。

(二) 校内研修の改善充実について

 各学校においては、教員が意欲をもつて研修に努めるとともに、研修活動が日常の教員活動と結びついて行われるよう校内研修を重視し、その改善充実に努めること。

ア 学校においては、研修体制の整備を図り、定例的に研修の機会を設定する等計画的、継続的に校内研修を行うとともに、指導案の作成、授業など日常の教育活動の中で、校長、教頭、主任等が積極的に指導、助言を行い、各教員が相互に啓発することが大切であること。

イ 校内研修については、教員が意欲をもつて研修を行えるよう研究主題の設定、実施方法等を工夫するとともに、学校内外で行われる各種研修との関連を図ること。

(三) 新任教員の研修について

 新任教員については、教員として必要な資質及び能力を培う基礎となる時期であることにかんがみ、新任教員研修の一層の改善充実に努めるとともに、学校における日常の教育活動その他の職務の中で適切な指導が行われるよう配慮すること。

ア 新任教員の研修については、教育者としての自覚や使命感を培うとともに基礎的な指導力を身につけさせるため、授業研究や学級経営、生徒指導等の実践的な内容を重視すること。

イ 新任教員が職務を遂行していく上で必要な基礎的な知識や心構え等を身につけさせるため、できる限り赴任前に研修を実施するとともに夏季休業期間中等に長期宿泊研修を行うなど実施方法の改善充実を図ること。

ウ 新任教員の配置については、研修の機会が確保され学校内外で適切な指導が受けられるよう配慮して、計画的に行うこと。

(四) 中堅教員の研修について

 中堅教員の研修については、各教科、道徳、生徒指導等の理論や実践的指導力を高めることができるようその機会を拡大し、内容の充実を図るとともに学校運営上の役割に応じて必要な資質の涵養を図ること。

(五) 管理職の研修について

 校長・教頭等の管理職の研修については、学校運営に当たつて必要な知識・指導力・統率力など学校の管理者としてふさわしい資質の涵養を図るとともに生徒指導や教員の資質向上等の学校運営上の重要な課題について適切に研修が行われるよう配慮すること。

(六) 研修指導者の確保について

 各教育委員会においては、校内研修の指導等の要請に積極的に応じられるよう、教育研究センターの機能を充実し、大学その他の教育研究機関との連携を図るとともに、指導主事の効率的な配置、経験豊かな教員や退職者の活用などにより指導体制の充実を図ること。




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