● 保護者の転勤に伴う高等学校における転入学者等の受入れの推進について 平成3年7月31日 文初高259



平三、七、三一 文初高二五九 
各都道府県・指定都市教育委員会教育長、各都道府県知事、附属学校を置く各国立大学長あて 
文部省初等中等教育局長通知

    保護者の転勤に伴う高等学校における転入学者等の受入れの推進について

 保護者の転勤に伴う高等学校における転入学者等の受入れの推進については、「保護者の転勤に伴う高等学校生徒の転入学の許可等の取り扱いについて」(昭和五十九年三月一日付け国初第八号初等中等教育局長通知)に基づき、既に各都道府県においてお取り組みいただき、これまで一定の改善が図られてきたところであります。
 しかしながら、近年、我が国の経済活動の広域化や国際化等の一層の進展に伴い、全国的規模で転勤する者や海外から帰国する者が増加する中、保護者の転勤や帰国に伴う高等学校における生徒の転入学及び編入学については、制度や運用面の問題、受入れ側の制約等により、必ずしも円滑に実施されていないとの指摘がしばしばなされています。そして、転入学等が円滑に行われない場合は生徒や保護者に著しい負担をかけるとともに、単身赴任を余儀なくさせるなど社会的にも大きな問題となっています。
 このため、文部省では、平成二年七月、転勤に伴う転入学等の円滑な実施を図るため、「保護者の転勤に伴う高等学校における転入学者等の受入れの推進に関する調査研究協力者会議」を発足させ、鋭意検討を行ってきましたが、このたび別添(略)のとおり、同会議において「保護者の転勤に伴う高等学校における転入学者等の受入れの推進について(報告)」(以下「報告」という。)がとりまとめられました。
 報告においては、高等学校への転入学者等の受入れを推進するための基本的な考え方を示すとともに、その具体的方策について提言しています。
 ついては、報告の趣旨を十分御理解の上、保護者の転勤に伴う転入学者等の受入れの一層の推進について積極的にお取り組みいただくとともに、併せて、この報告の趣旨を管下の高等学校を設置する市町村の教育委員会及び各学校等に周知徹底し、各学校において積極的な転入学者等の受入れに努めるよう御指導願います。その際、特に下記の点について十分な配慮をお願いします。
 なお、文部省においては、今後、コンピュータ・システムによる転入学等に関する全国的な情報収集・提供体制の整備を進めることとしております。このネットワーク・システムは、全国全ての高等学校の設置学科、教育活動の特色、卒業生の進路等の学校情報や転入学者等の受入れに関する情報を提供しようとするものであり、転学希望者等は、各都道府県教育委員会等を通してこのシステムを活用することによって、全国の転入学情報が容易に入手できるようになるものです。

         記

一 転入学等の受入れの機会の拡大について
(一)転入学試験等の実施回数・実施時期
 各学校においては、少くとも原則として各学期ごとに転入学試験等を実施するよう努めるとともに、できる限り随時の受入れについても配慮することが望ましいこと。また、四月当初の受入れについては、今後とも特段の配慮が望まれること。
(二)転入学等受入れ校
 転勤者にとっては、転入学者等を受け入れる学校はできる限り多い方が望ましく、その選択の幅を広げるためにも受入れ校の拡大を図る必要があること。このため、実質的に実験校が制限されることのないよう、学校ごとの出願期間や試験日をずらして、受験機会の複数化を図ったり、学区等について弾力的な定めや運用を行うことなどについて配慮すること。

二 転入学等に係る受験手続き等の簡素化、弾力化について
(一)提出書類、出願期間
 転入学等は極めて限られた時間と切迫した状況において行われるものであることから、転入学等に係る手続きを可能な限り簡素化、弾力化すること。このため、提出書類については願書以外の書類は最小限にとどめるとともに、場合によっては、試験実施後における提出を認めたりするなどの措置も検討すること。
 転入学試験等の出願期間については、受験の機会を失わせることのないよう、できる限り長い期間を設定するとともに、試験実施日の直前まで受け付けるなどの配慮が望まれること。
(二)試験科目等
 転入学試験等については、例えば、試験教科を軽減したり転居前の学校の成績証明書等と面接のみにより、改めて学科試験を行わないなどの工夫も考えられること。
(三)教育課程上の問題
 転入学者等の受入れに当たっては、学校間の教育課程の違いが問題となる場合があるが、単位の読み替え等を活用し、可能な限り弾力的に転入学者等の受入れを認めていくこと。

三 転入学者等のための特別定員枠の設定について
 転入学者等の受入れ枠の設定については、各学校において可能な限り積極的に対応していくことが望まれるが、更に、各都道府県が基準を示すこと等によりその促進を図っていくことも必要であること。
 また、転入学者等の受入れの機会を確保するためには、あらかじめ各学校において特別定員枠を設けることが適切であり、このことについて、各都道府県において地域や学校の状況、過去の受入れ実績等を勘案し、適切な指導に努めること。

四 各都道府県における情報収集・提供体制の整備及び相談窓口の設定について
 転入学等に関する具体的照会に対応するため、各都道府県の実情等に応じ、適切な相談窓口を設置するなど、各都道府県における転入学等に関する情報の収集・提供体制の整備を進めること。
 更に、各学校においても、転入学等に関する担当者を定め、外部からの相談に適切に対応できるような体制を整えること。

別添(略)



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