● 小学校及び中学校の教諭の普通免許状授与に係る教育職員免許法の特例等に関する法律等の施行について(いわゆる介護等体験特例法) 平成9年11月26日 文教教第230号



文教教第二三〇号 平成九年一一月二六日
各都道府県知事、各都道府県・指定都市教育委員会、各国公私立大学長、各国立短期大学部学長、各指定教員養成機関の長、国立久里浜養護学校長、国立特殊教育総合研究所長あて
文部事務次官通達


    小学校及び中学校の教諭の普通免許状授与に係る教育職員免許法の特例等に
    関する法律等の施行について


 去る六月一八日、別添の通り、「小学校及び中学校の教諭の普通免許状授与に係る教育職員免許法の特例等に関する法律」(平成九年法律第九〇号。以下「法」という。)が公布され、平成一〇年四月一日から施行されることとなりました。
 また、これに伴い、一一月二六日には、「小学校及び中学校の教諭の普通免許状授与に係る教育職員免許法の特例等に関する法律施行規則」(平成九年文部省令第四〇号。以下「省令」という。)が公布(平成一〇年四月一日施行)されるとともに、省令第二条第一〇号に該当する施設に係る文部大臣の指定が告示されました(平成九年文部省告示第一八七号。以下「告示」という。)。
 法、省令及び告示の制定趣旨、内容等は下記の通りですので、各位におかれては、事務処理上遺憾のないように願います。
 なお、各都道府県知事及び各都道府県・指定都市教育委員会にあっては、貴管下の関係機関等に対して、左記の内容を周知されるように願います。

          記

一 制定趣旨等

 今回の法の制定趣旨は、義務教育に従事する教員が個人の尊厳及び社会連帯の理念に関する認識を深めることの重要性にかんがみ、教員としての資質の向上を図り、義務教育の一層の充実を期する観点から、小学校又は中学校の教諭の普通免許状の授与を受けようとする者に、障害者、高齢者等に対する介護、介助、これらの者との交流等の体験(以下「介護等の体験」という。)を行わせる措置を講ずるため、小学校及び中学校の教諭の普通免許状の授与について教育職員免許法(昭和二四年法律第一四七号)の特例等を定めるものであること。(法第一条関係)
 また、省令は、法第二条第一項等の規定に基づき介護等の体験につき必要な内容等を定めるものであり、告示は、省令第二条第一〇号の規定により文部大臣が認めることとされた施設の指定を行うものであること。

二 内容

(一) 教育職員免許法の特例としての介護等の体験の義務付け

 小学校及び中学校の教諭の普通免許状を授与するための要件として、教育職員免許法第五条第一項に規定する要件に加え、当分の間、介護等の体験を要件とすること。(法第二条第一項関係)

(二) 介護等の体験の内容

 介護等の体験とは、一八歳に達した後、七日間を下らない範囲内において文部省令で定める期間、盲学校、聾学校若しくは養護学校又は社会福祉施設その他の施設で文部大臣が厚生大臣と協議して定めるもの(以下「受入施設」という。)において行われる介護等の体験を指すものであること。(法第二条第一項関係)

@ 介護等の体験の期間

 教員免許状の取得要件としての介護等の体験の期間は、七日間とすること。(省令第一条関係)

A 介護等の体験の実施施設

ア 法第二条において社会福祉施設その他の施設で文部大臣が厚生大臣と協議して定めることとされている受入施設は、次に掲げるものとすること。(省令第二条関係)

一 児童福祉法(昭和二二年法律第一六四号)に規定する乳児院、母子生活支援施設、児童養護施設、精神薄弱児施設、精神薄弱児通園施設、盲ろうあ児施設、肢体不自由児施設、重症心身障害児施設、情緒障害児短期治療施設及び児童自立支援施設
二 身体障害者福祉法(昭和二四年法律第二八三号)に規定する身体障害者更生施設、身体障害者療護施設及び身体障害者授産施設
三 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二五年法律第一二三号)に規定する精神障害者生活訓練施設、精神障害者授産施設及び精神障害者福祉工場
四 生活保護法(昭和二五年法律第一四四号)に規定する救護施設、更生施設及び授産施設
五 社会福祉事業法(昭和二六年法律第四五号)に規定する授産施設
六 精神薄弱者福祉法(昭和三五年法律第三七号)に規定する精神薄弱者更生施設及び精神薄弱者授産施設
七 老人福祉法(昭和三八年法律第一三三号)に規定する老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、養護老人ホーム及び特別養護老人ホーム
八 心身障害者福祉協会法(昭和四五年法律第四四号)第一七条第一項第一号に規定する福祉施設
九 老人保健法(昭和五七年法律第八〇号)に規定する老人保健施設
十 前九号に掲げる施設に準ずる施設として文部大臣が認める施設

イ 省令第二条第一〇号の「文部大臣が認める施設」は、次に掲げるものとすること。(文部大臣告示関係)

一 児童福祉法第六条の二第三項に規定する児童デイサービス事業であって、市町村が実施し、又は委託するものを行う施設
二 身体障害者福祉法第四条の二第三項に規定する身体障害者デイサービス事業であって、市町村が実施し、又は委託するものを行う施設
三 精神薄弱者を施設に通わせ、入浴、食事の提供、機能訓練その他の便宜を提供し、かつ精神薄弱者を現に介護する者に対し介護方法の指導その他の便宜を提供する事業であって、市町村が実施し、又は委託するものを行う施設
四 高齢者又は身体障害者に対し老人福祉法第一〇条の四第一項第二号又は身体障害者福祉法第一八号第一項第二号に規定する便宜を供与し、併せて高齢者、身体障害者等に対する食事の提供その他の福祉サービスで地域住民が行うものを提供する事業であって、市町村又は社会福祉法人が実施するものを行う施設
五 老人福祉法第二九条第一項に規定する有料老人ホームのうち、当該有料老人ホーム内において介護サービスの提供を行うことを入居契約において定めているもの(軽度の介護サービスの提供のみを行うものを除く。)
六 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成六年法律第一一七号)第三九条に規定する事業を行う施設(いわゆる被爆者(一般)養護ホーム及び原爆被爆者特別養護ホーム)
七 児童福祉法第二七条第二項に規定する指定国立療養所等

(三) 介護等の体験に関し必要な事項

 法第二条第二項は「介護等の体験に関し必要な事項」は文部省令で定めることとしており、省令において、教員免許状の授与申請に当たっては介護等の体験に関する証明書を提出すること等が定められていること。(省令第四条関係)

(四) 介護等の体験を要しない者

 介護等に関する専門的知識及び技術を有すると認められる者又は身体上の障害により介護等の体験を行うことが困難な者として文部省令で定めるものは、介護等の体験を要しないこと。(法第二条第三項関係)

@ 介護等に関する専門的知識及び技術を有するとして文部省令で定める者は、次に掲げるものであること。(省令第三条第一項関係)

一 保健婦助産婦看護婦法(昭和二三年法律第二〇三号)第七条の規定により保健婦の免許を受けている者又は同法第五九条の二において準用する同法第七条の規定により保健士の免許を受けている者
二 保健婦助産婦看護婦法第七条の規定により助産婦の免許を受けている者
三 保健婦助産婦看護婦法第七条の規定により看護婦の免許を受けている者又は同法第六〇条第一項において準用する同法第七条の規定により看護士の免許を受けている者
四 保健婦助産婦看護婦法第八条の規定により准看護婦の免許を受けている者又は同法第六〇条第一項において準用する同法第八条の規定により准看護士の免許を受けている者
五 教育職員免許法(昭和二四年法律第一四七号)第五条第一項の規定により盲学校、聾学校又は養護学校の教員の免許を受けている者
六 理学療法士及び作業療法士法(昭和四〇年法律第一三七号)第三条の規定により理学療法士の免許を受けている者
七 理学療法士及び作業療法士法第三条の規定により作業療法士の免許を受けている者
八 社会福祉士及び介護福祉士法(昭和六二年法律第三〇号)第四条の規定により社会福祉士の資格を有する者
九 社会福祉士及び介護福祉士法第三九条の規定により介護福祉士の資格を有する者
十 義肢装具士法(昭和六二年法律第六一号)第三条の規定により義肢装具士の免許を受けている者

A 身体上の障害により介護等の体験を行うことが困難な者として文部省令で定める者は、身体障害者福祉法第四条に規定する身体障害者のうち、同法第一五条第四項の規定により交付を受けた身体障害者手帳に、障害の程度が一級から六級である者として記載されているものとすること。(省令第三条第二項関係)

(五) 関係者の責務

@ 国、地方公共団体及びその他の関係機関は、介護等の体験が適切に行われるようにするために必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。(法第三条第一項関係)
A 盲学校、聾学校及び養護学校並びに社会福祉施設その他の施設で文部大臣が厚生大臣と協議して定めるものの設置者は、介護等の体験に関し必要な協力を行うよう努めるものとすること。(法第三条第二項関係)
B 大学及び文部大臣の指定する教員養成機関は、その学生又は生徒が介護等の体験を円滑に行うことができるよう適切な配慮をするものとすること。(法第三条第三項関係)

(六) 教員の採用時における介護等の体験の勘案

 小学校又は中学校の教員を採用しようとする者は、その選考にあたっては、この法の趣旨にのっとり、教員になろうとする者が行った介護等の体験を勘案するよう努めるものとすること。(法第四条関係)

(七) 施行期日等

@ 法及び省令は平成一〇年四月一日から施行すること。(法附則第一項、省令附則関係)
A この法律の施行の日(平成一〇年四月一日)前に大学又は文部大臣の指定する指定教員養成機関に在学した者で、これらを卒業するまでに教育職員免許法別表第一に規定する小学校又は中学校の教諭の普通免許状に係る所要資格を得たものについては、法第二条第一項の規定は適用しないこと。(法附則第二項関係)

三 留意事項

(一) 介護等の体験の内容等について

@ 法第二条第一項にいう「障害者、高齢者等に対する介護、介助、これらの者との交流等の体験(介護等の体験)」とは、介護、介助のほか、障害者等の話相手、散歩の付添いなどの交流等の体験、あるいは掃除や洗濯といった、障害者等と直接接するわけではないが、受入施設の職員に必要とされる業務の補助など、介護等の体験を行う者の知識・技能の程度、受入施設の種類、業務の内容、業務の状況等に応じ、幅広い体験が想定されること。
 また、特殊教育諸学校において行われた教育実習や、受入施設において行われた他の資格取得に際しての介護実習等は、介護等の体験として、介護等の体験の期間に算入し得ること。

A 一日当たりの介護等の体験の時間としては、受入施設の職員の通常の業務量、介護等の体験の内容等を総合的に勘案しつつ、適切な時間を確保するものとすること。

B 介護等の体験の期間については、七日間を超えて介護等の体験を行っても差し支えないこと。また、七日間の内訳については、社会福祉施設等五日間、特殊教育諸学校二日間とすることが望ましいこと。

期間の計算については、受入施設においてそれぞれ連続して介護等の体験を行う場合のほか、免許状取得までの数年間を通じ、長期休業期間中や土曜日・日曜日などに数度に渡って、異なる二以上の受入施設において一日単位で介護等の体験を行うことなども想定されること。

C 告示第一号から第四号に規定する各施設は、主に左表別添通知の欄に掲げる通知に記された施設であることから、当該通知を参考にされたいこと。

[告示一号]
児童福祉法(昭和二二年法律第一六四号)第六条の二第三項に規定する児童デイサービス事業であって、市町村が実施し、又は委託するものを行う施設
[別添通知]
昭和四七年八月二三日児発第五四五号厚生省児童家庭局通知「心身障害児通園事業について」別紙(心身障害児通園事業実施要綱)に基づく心身障害児通園事業を行う施設

[告示二号]
身体障害者福祉法(昭和二四年法律第二八三号)第四条の二第三項に規定する身体障害者デイサービス事業であって、市町村が実施し、又は委託するものを行う施設
[別添通知]
平成二年一二月二八日社更第二五五号厚生省社会局長通知「身体障害者居宅生活支援事業の実施等について」別添二(身体障害者デイサービス事業実施要綱)に基づく身体障害者デイサービス事業を行う施設

[告示三号]
精神薄弱者を施設に通わせ、入浴、食事の提供、機能訓練その他の便宜を提供し、かつ精神薄弱者を現に介護する者に対し介護方法の指導その他の便宜を提供する事業であって、市町村が実施し、又は委託するものを行う施設
[別添通知]
平成三年九月三〇日児発第八三二号厚生省児童家庭局長通知「在宅精神薄弱者デイサービス事業の実施について」別紙(在宅精神薄弱者デイサービス事業実施要綱)に基づく「在宅精神薄弱者デイサービス事業」を行う在宅精神薄弱者デイサービスセンター

[告示四号]
高齢者又は身体障害者に対し老人福祉法(昭和三八年法律第一三三号)第一〇条の四第一項第二号又は身体障害者福祉法第一八号第一項第二号に規定する便宜を供与し、併せて高齢者、身体障害者等に対する食事の提供その他の福祉サービスで地域住民が行うものを提供する事業であって、市町村又は社会福祉法人が実施するものを行う施設
[別添通知]
平成六年六月二三日社援地第七四号厚生省社会・援護局長通知「地域福祉センターの設置運営について」別紙(地域福祉センター設置運営要綱)に基づく地域福祉センター


D 法第二条第三項の規定により介護等の体験を要しないこととされた者についても、介護等の体験を行いたい旨の希望があれば、本人の身体の状況、受入施設の状況等を総合的に勘案しつつ、可能な限りその意思を尊重することが望ましいこと。

(二) 受入の調整等について

@ 介護等の体験を行う学生の円滑な受入の確保については、とりわけ社会福祉協議会、社会福祉施設、都道府県教育委員会・社会福祉施設担当部局、指定都市教育委員会、特殊教育諸学校等の関係者に格段の協力を願いたいこと。
 なお、そのための連絡協議の体制整備を文部省において検討中であるが、当面、必要に応じ、関係者の情報交換の機会の設定等を都道府県教育委員会にお願いしたいこと。

A 学生の受入のための調整窓口に関しては、各都道府県ごとに、社会福祉施設等については各都道府県社会福祉協議会、都道府県立・指定都市立特殊教育諸学校については各都道府県・指定都市教育委員会に協力を願いたいこと。

B 大学等においては、受入施設における介護等の体験を希望する学生の円滑な受入を促進するため、介護等の体験を希望する者の名簿の取りまとめ、大学等の所在地の社会福祉協議会や都道府県教育委員会等への一括受入依頼等について格段の協力を願いたいこと。その際、学生の介護等体験の時期について、最終学年等特定の時期に偏らないようにするなどの可能な調整を願いたいこと。

C 首都圏、近畿圏等に所在する大学等については、近隣の受入施設に不足が生じることが予想されることから、とりわけ介護等の体験を希望する学生のうちこれらの地域以外に帰省先を有する者等については、可能な限り、長期休業期間を活用するなどして帰省先等での介護等の体験を実施促進に協力願いたいこと。この場合における、受入に関する相談は、当該帰省先等の都道府県社会福祉協議会及び都道府県教育委員会等に協力願いたいこと。

D 大学等においては、介護等の体験に必要な事前指導の実施に格段の協力を願いたいこと。なお、文部省において、事前指導のための参考資料の作成等を予定していること。

E 介護等体験希望者の受入に伴い、社会福祉施設における介護等の体験については、必要な経費の徴収等が行われることが予定されていること。なお、その他の施設等においても必要な経費の徴収等が行われる場合があること。
 これらのことについて、大学等は、混乱の生じること等がないよう、介護等の体験を希望する学生に周知されたいこと。

(三) 施行期日その他について

@ この制度は、主として平成一〇年四月の大学等の新入学生から適用されるものであるが、平成一〇年三月三一日以前に大学等に在学した者であっても、卒業までの間に小学校又は中学校教諭の専修、一種若しくは二種のいずれかの免許状取得のための所要資格を得なかった者については、平成一〇年四月以降新たにこれら免許状を取得しようとする場合、介護等の体験を行うことが必要となること。
 このため、例えば、平成一〇年三月に大学を卒業したが卒業までに上記いずれの免許状取得のための所要資格をも得ておらず、平成一〇年四月以降大学に聴講生等として在学し免許状取得のための単位修得をするような場合については、介護等の体験を行うことが必要となること。

A 介護等の体験に伴い想定される事故等に対応した保険について、文部省において関係機関と調整中であること。その詳細については別途周知する予定であること。


別添〔略〕




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