● 懲戒に係る権限の濫用禁止について 平成10年2月18日 障障第16号・児企第9号


平成10年2月18日 障障第16号・児企第9号
各都道府県・各指定都市・各中核市民生主管部(局)長宛
厚生省大臣官房障害保健福祉部障害福祉課長・厚生省児童家庭局企画課長連名通知


        懲戒に係る権限の濫用禁止について


 児童福祉施設最低基準等の一部を改正する省令(平成10年厚生省令第15号)は、平成10年2月18日をもって公布され、その留意事項等については、児童福祉法施行令等の一部を改正する政令並びに児童福祉施設最低基準等の一部を改正する省令及び児童福祉法施行規則等の一部を改正する省令の施行について(平成10年2月18日障第76号、児発第84号厚生省大臣官房障害保健福祉部長、厚生省児童家庭局長通知)により通知されたところである。
 同省令による改正後の児童福祉施設最低基準(昭和23年厚生省令第63号。以下「最低基準」という。)においては、新たに児童福祉施設の長に対し懲戒に係る権限の濫用を禁止する規定が設けられたところであるが、当該規定の施行に関して留意すべき事項は下記のとおりであるので、御了知の上、管下の市町村、関係機関、関係団体等に対してその周知徹底を図るとともに、通切な指導を行い、その運用に遺漏のをいようにされたい。

                   記



第1 規定創設の趣旨

 最低基準に、新たに第9条の2(懲戒に係る権限の濫用禁止)を設け、児童福祉施設の長は、入所中の児童に対し懲戒を行うとき又は懲戒に開しその児童の福祉のために必要な措置を採るときは、身体的苦痛や人格を辱める等その権限を濫用してはならないとされたところであるが、この規定は、施設における児童の権利を擁護するために創設されたものであること。

第2 懲戒に係る権限の盤用に当たる行為について

 児童福祉施設の長に対しては、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第47条により懲戒に係る権限が与えられているが、これは、児童を心身ともに健やかに育成することを目的として設けられているものであるから、懲戒に係る行為の方法及び程度が、この目的を達成するために必要な範囲を超える場合には懲戒に係る権限の濫用に当たるものであること。懲戒に係る権限の濫用に当たる具体的な例としては、例えば、殴る、蹴る等直接児童の身体に侵害を与える行為のほか、合理的な範囲を超えて長時間一定の姿勢をとるよう求めること、食事を与えないこと、児童の年齢及び健康状態からみて必要と考えられる睡眠時間を与えないこと、適切な休息時間を与えずに長時間作業を継続させること、施設を退所させる旨脅かすこと、性的を嫌がらせをすること、当該児童を無視すること等の行為があげられること。
 なお、個別具体の行為が懲戒に係る権限の濫用に当たるかどうかについては、児童の年齢、健康及び心身の発達の状況、当該児童と職貞との関係、当該行為の行われた場所及び時間的環境等の諸条件を勘案して判断すべきものであること。
 また、強度の自傷行為や他の児童、職員等への加害行為を制止するなど、急迫した危険に対し児童又は他の者の身体又は精神を保護するために当該児童に対し強制力を加える行為は、懲戒に係る権限の濫用に当たらないものであること。

第3 関係者に対する周知徹底等について

 懲戒に係る権限の濫用の禁止について、児童福祉施設職員を始めとする関係者に対し、改めて周知徹底を図られたいこと。その際の具体的な方法の例としては、児童福祉施設職員等に対する研修の機会を利用することや、最低基準第13条に基づき定めることとされている児童福祉施設の規程に、懲成に係る権限の濫用の禁止に係る規定を設けることなどが考えられるものであること。
 また、「児童相談所運営指針について」(平成2年3月5日児発第133号厚生省児童家庭局長通知)により児童相談所が行うこととされている施設への訪問等の機会を利用すること等により、施設入所後の児童の状況を十分に把握するとともに、既に一部都道府県で行われているいわゆる「児童の権利ノート」の配布等の施策を通じて懲戒に係る権限の濫用の防止が図られるよう努められたいこと。







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