● 教育改革プログラム〜『教育立国』を目指して〜 平成11年9月 文部省

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教 育 改 革 プ ロ グ ラ ム
〜『教育立国』を目指して〜

    平成11年9月 日
    文   部   省



教育改革プログラム(目次)


-基本的考え方-

1. 豊かな人間性の育成と教育制度の革新

(1) 豊かな人間性の育成―「心の教育」の充実
(2) 教育制度の改革
(3) 教育制度の弾力化と規制緩和の推進
(4) 学校の教育内容の再構築
(5) 環境教育の充実度―地球環境問題への対応
(6) 教員の採用・研修の見直しと養成の連携
(7) 大学入試・高校入試の改善
(8) 高等学校教育の改革の推進
(9) 21世紀の大学像と今後の改革方策
(10)高等教育機関の活性化
(11)私立学校の振興
(12)人権教育の充実


2. 社会の要請の変化への機敏な対応

(1) 少子高齢社会への対応
(2) 男女共同参画社会の形成に向けた取組の促進
(3) 将来の科学技術の発展を託す人材の養成や社会の要請に応える学術研究の振興
(4) 情報化の進展への対応
(5) 教育の基礎となる文化の振興
(6) 学校の内外を通じたスポーツの振興


3. 学校外の社会との積極的な連携

(1) 学校、家庭、地域社会の連携強化
(2) 家庭教育の充実
(3) 学校外の体験活動の推進
(4) ボランティア活動の促進
(5) 社会人や地域人材の学校への活用
(6) 青少年の非行、いじめ問題、薬物乱用問題、有害環境問題などへの適切な対応


4. 留学生交流等国際化の推進

(1) 留学生交流の推進
(2) 英語をはじめとする外国語教育の改善
(3) 教員等の国際体験・国際貢献の充実
(4) 学術国際交流の推進
(5) 教育の改善充実に向けた国際交流・協力の推進
(6) 外国人子女教育の推進及び外国人のための日本語教育の推進


5. 教育改革の輪を広げるための経済界等との協議の場などの設定


「教育改革プログラム」の改訂について








─ 基本的考え方 ──

 目前に迫った21世紀において、世界的な大競争時代の中で、我が国が活力ある国家として発展し、国際社会に貢献できる科学技術創造立国、文化立国を目指していくためには、あらゆる社会システムの基盤となる教育の役割が極めて重要である。
 明治以降、我が国の発展の歴史を振り返れば、その根本には国民の教育に対する熱意はもとより、教育制度の普及と充実、教育に携わる人々のたゆみない努力があったことは言うまでもない。このような教育の成果は我々の世代の責任として確かに受け継ぎ、新しい時代に向けた改革に不断の取組を進め、次代に引き継いでいかなければならない。

 しかしながら、子どもたちを取り巻く現在の状況をみると、暮らしが豊かになり、教育の量的拡大が実現される中で、家庭や地域社会の教育力が低下し、進学率の上昇とともに過度の受験競争が生まれ、いじめや不登校、さらには青少年の非行問題が極めて深刻な状況となっている。
 これまでの我が国の教育は、知識を一方的に教え込む教育に陥りがちで、自ら学び、自ら考える力や豊かな人間性をはぐくむ教育がおろそかになってきたこと、また、教育における平等性を重視するあまり、一人一人の多様な個性や能力の伸長という点に必ずしも十分意を用いてこなかったことは否定できない。

 今次教育改革においては、このような教育の意義と現状にかんがみ、次のような視点から改革を進めていく必要があると考える。
 第一は、心の教育の充実である。
 これからの教育は、家庭、地域社会、学校を通じて、知育偏重の風潮や知識詰め込み型の教育を改め、子どもたちに「ゆとり」の中で「生きる力」をはぐくむことが重要であり、そのため、社会生活のルールなどを幼少時から確かに身に付けさせ、正義感や倫理観、思いやりの心などの豊かな人間性をはぐくむ心の教育を充実していくことが必要である。
 また、経済のグローバル化や急速な少子化が進行している今日、我が国が活力を維持し、世界的な大競争時代の中で、確固たる地位を築いていくためには、我が国の歴史と伝統、文化を大切にし、豊かな国際感覚と独創性に富み、チャレンジ精神と大胆な行動力を持ったたくましい日本人を育成することが不可欠であり、そのためにも、心の教育を重視していくことが必要である。

 第二は、個性を伸ばし多様な選択ができる学校制度の実現である。
 これまでの行き過ぎた平等主義を是正し、子どもたち一人一人の個性、能力を尊重した教育へと転換を図る必要がある。こうした観点から、教育内容における選択幅の拡大と併せ、中高一貫教育の導入など学校制度の複線化や、大学への入学年齢、編入学制度の弾力化など、子どもたちがその個性に応じて多様な選択ができ、やり直しのきく学校制度を実現することが必要である。

 第三は、現場の自主性を尊重した学校づくりの促進である。
 学校教育の行き過ぎた平等主義や画一性の問題は、現在の教育行政の制度や運用の在り方に起因するところも大きいことから、学校における教育を支える行政制度について、より多様で柔軟な教育を実現するため、教育の地方分権を進めるとともに、主体性のある学校運営など、現場の自主性を存分に生かせるシステムへと改革を行うことが必要である。

 第四は、大学改革と研究振興の推進である。
 資源に恵まれない我が国が、国際社会の中で競争力を維持し、活力あふれる社会を実現していくためには、科学技術創造立国を目指して、基礎研究や先端技術等の水準を一層向上させることが不可欠であり、そのため、大学改革と研究振興の一層の推進を図ることが必要である。





1.豊かな人間性の育成と教育制度の革新

 一人一人の子どもの個性を生かし、豊かな人間性や創造性をはぐくむ教育を進めていくため、義務教育、後期中等教育、高等教育の接続等を見直しながら、完全学校週5日制の実施や、中高一貫教育制度の導入など教育制度の改革、大学入学年齢の特例など教育制度の弾力化、教育内容の再構築、教員の資質向上、地方教育行政制度及びその運用の改善、高等教育機関の活性化などの教育制度の革新に積極的に取り組むとともに、豊かな人間性の育成を図るための教育内容の充実等に取り組んでいる。



(1) 豊かな人間性の育成−「心の教育」の充実

○ 「幼児期からの心の教育」の充実
 今日、子どもたちをとりまく状況が著しく変容する中、子どもたちに、生命を尊重する心、他者への思いやりや社会性、倫理観や正義感、美しいものや自然に感動する心といった「生きる力」の核となる豊かな人間性をはぐくむ「心の教育」の充実を図ることが重要な課題となっており、家庭、学校、地域社会が一体となって力を結集しつつ、取り組むことが求められている。
 このため、平成10年6月の中央教育審議会の答申等を踏まえ、さらに学校における道徳教育の充実を図るとともに、家庭や地域社会において子どもの心を育てていくための施策を推進している。


○ 「全国子どもプラン」の推進
 夢を持ったたくましい子どもをはぐくむため、平成14年度の完全学校週5日制の実施に向けて、地域で子どもを育てる環境を整備し、親と子どもたちの活動を振興する体制を整備することを目指し、策定した「全国子どもプラン(緊急3ヶ年戦略)」に基づき、「子ども放送局」の運営、「子どもセンター」の全国展開、関係省庁とも連携した子どもの多彩な体験活動機会の充実、家庭教育への支援等をはじめとする施策を、緊急かつ計画的に推進している。
 これらの推進方策や民間教育事業の役割を含めた子どもたちの「生きる力」をはぐくむ地域社会の環境の充実のための平成11年6月の生涯学習審議会の答申を踏まえ、所要の取組を進めている。


○ 道徳教育の改善充実
 新学習指導要領の趣旨を生かすため、ボランティア活動や自然体験活動などの体験的・実践的な活動を積極的に取り入れるとともに、人としてしてはいけないことや善悪の判断、基本的なしつけなどは、幼児期や小学校低学年の時期に、家庭との連携を図りつつ繰り返し指導し、その徹底を図っている。
 また、道徳の授業時間数の確保等についての必要な指導を徹底するとともに、道徳の時間の指導において、校長や教頭の参加など指導体制の充実を図り、家庭や地域社会との連携を進めるなど道徳教育の改善充実を図っている。


○ カウンセリングの充実
 スクールカウンセラーのより効果的な活用方法に関する調査研究を進め、その上で、スクールカウンセラーの今後の在り方について検討を行う。
 また、スクールカウンセラーの質・量の確保を図るため、大学の自主的判断を前提としつつ、臨床心理士等の高等教育機関における養成の充実を図る。
 なお、高度な専門性を備えた臨床心理士の国家資格制度の創設を含め厚生省等関係省庁と連携して検討を進める。
 子どもの心の居場所をつくるため、余裕教室などを活用して「心の教室」とも言うべきカウンセリングルームの設置を促進するとともに、外部から先進的な医学知識、健康問題の状況などをタイムリーに収集し、子どもや保護者からの相談に応じる体制を強化するため、「心の教室」へのコンピュータの設置を促進している。
 また、悩み等について気軽に相談し、ストレスを和らげることができるよう、養護教諭、学校栄養職員、学校医などのほか、「心の教室相談員」として教職経験者や青少年団体指導者、ボランティアなどの協力を得て、カウンセリングの充実を図っている。


○ 子どもたちの読書活動の充実
 学校図書館を「心のオアシス」として活用し、読書の楽しさとの出会いをつくるため、ゆったりとした読書・学習スペースを設けるための施設整備を進めるとともに、学校独自の読書週間を設けたり、読書会を行ったりする活動の充実を各教育委員会等に呼びかけるなどにより、心の教育の充実を図っている。
 なお、西暦2000年を「子ども読書年」とする国会決議がなされている。



(2) 教育制度の改革

○ 完全学校週5日制の実施
 平成14年度から、幼稚園、小学校、中学校、中等教育学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校において一斉に完全学校週5日制を実施する。


○ 中高一貫教育の推進
 中央教育審議会の答申を踏まえ、中等教育の一層の多様化を推進し、生徒一人一人の個性をより重視した教育を実現するため、平成10年6月に学校教育法等を改正し、平成11年度から中高一貫教育を選択的に導入することが可能となった。今後、生徒や保護者にとって実質的に選択が可能となるよう、中高一貫教育校が通学範囲の身近なところに数多く設置されることが必要であり、当面は、高等学校の通学範囲(全国で500程度)に少なくとも1校整備されることを目標に整備を推進する。
 このため、「中高一貫教育推進会議」において中高一貫教育校の整備の在り方等について検討するとともに、「中高一貫教育推進フォーラム」の開催や、平成10年度より実施している「中高一貫教育実践研究事業」などを通じて、各都道府県等における取組を支援し、中高一貫教育の積極的な推進を図っている。
 なお、平成11年度においては、宮崎県(中等教育学校)、岡山市(併設型)、三重県(連携型)に中高一貫教育校が設置されたところである。

○ 初等中等教育と高等教育との接続の改善について
 初等中等教育と高等教育の改革が進展する中で、今後、高等学校及び大学の一層の多様化・個性化が進むと同時に、大学にこれまで以上に多様な能力・適性、履修歴等を持った学生が進学するようになることから、高等学校と大学それぞれの役割分担を明確にし、その上で初等中等教育と高等教育を見通した教育の在り方を考えることが重要となる。
 このため、平成10年11月、文部大臣から中央教育審議会に対して「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」諮問を行った。現在、同審議会において、高等学校及び大学の役割分担の明確化と両者の連携方策や高等学校と大学との接続を重視した大学入学者選抜の改善等について審議が行われているところである。今後、平成11年中に答申を得ることを目指す。


○ 主体的・積極的な地方教育行政の展開
 地方公共団体や学校が自らの責任で地域や学校の特色を生かし、主体的かつ積極的に教育を展開することができるように、教育改革に取り組むことが必要である。このため、地方分権を一層推進する観点から、国、都道府県、市町村の役割分担の在り方を見直すとともに、学校の自主性・自律性を確立し、新たな国、地方公共団体、学校、地域社会の連携協力体制を構築する。また、生涯学習社会における自由で闊達な社会教育行政を推進する観点から、地域の特性に応じ、住民参加の下での社会教育行政を展開する。
 具体的内容は以下のとおり。

ア  国、都道府県、市町村の関係の見直し
 〈地方分権推進計画等に関連する法律改正〉
  ・教育長の任命承認制度の廃止と適材確保方策の導入
  ・都道府県及び指定都市の教育委員の数の弾力化
  ・都道府県と市町村の広域連合への教育委員会の設置
  ・都道府県教育委員会による市町村立学校に関する基準の設定を廃止
  ・市町村立高等学校の通学区域を、都道府県教育委員会ではなく市町村教育委員会が設定
  ・県費負担教職員の研修権限を中核市へ委譲 など
   (平成11年通常国会で関係法律が成立、平成12年度から施行)
 〈指導行政の改善〉
  ・指導通知の廃止・統合等
  ・指導等の意識変革のための職員研修
  ・補助金等の統合・メニュー化
  ・補助金等の事務手続の簡素・合理化
  ・教育課程の基準の一層の大綱化・弾力化
  ・指導資料、研究指定校、研修の見直し
  ・調査統計の精選

イ  地域住民の意向の把握・反映
  ・教育行政への地域住民の意向の把握・反映、参画・協力の促進
  ・教育委員の選任の在り方の工夫 など

ウ  地域の教育力の向上、地域コミュニティの育成及び地域振興
  ・地域の教育機能向上のための教育機関の活用
  ・学校教育活動への地域の活力の導入
  ・ボランティア受入れ体制の整備

エ  自由で闊達な社会教育行政の展開
  〈地方分権推進計画等に関する事項〉
  ・公民館運営審議会の必置規制の廃止
  ・公民館長任命の際の公民館運営審議会からの意見聴取義務の廃止
  ・社会教育委員、公民館運営審議会委員及び図書館協議会委員への住民参加の促進のための委員規定の簡素化
  ・国庫補助を受ける場合の図書館長の司書資格要件に関する規定の廃止
  ・国庫補助を受ける場合の図書館の最低基準に関する規定の廃止
  ・青年学級振興法の廃止
   (平成11年通常国会で関係法律が成立、平成12年度から施行)


○ 学校の自主性・自律性の確立
  ・校長・教頭の任用資格の見直し
  ・主任制、職員会議の在り方の見直し
   (学校教育法施行規則の改正など)
  ・学校予算・人事への校長の裁量権限の拡大
  ・校長・教頭の選考や人事の在り方の見直し
  ・異なる学校種間での教職員の兼務の推進
  ・学校管理規則の見直し
  ・学校評議員制度の導入
  ・各学校の教育活動に関する自己評価の実施
  ・学校の教育計画等の地域住民への説明など開かれた学校運営
  ・学校への指示・命令と指導・助言との峻別
  ・学校の負担軽減や事務・事業の共同実施
  ・適格性を欠く教員等への対応
  ・高齢者再任用制度による退職教職員の活用
   (平成11年通常国会で関係法律が成立、平成13年度から施行)


○ 学級編制の弾力化と教職員配置の在り方
 平成10年9月の中央教育審議会答申において、地方における教育政策の実施主体である都道府県及び市町村が、その負担と責任を踏まえつつ地域に根ざした主体的かつ積極的な教育行政を展開することができるようにするとの観点から、学校週5日制時代における新しい教育課程の実施も視野に入れ、平成10年10月から「教職員配置の在り方等に関する調査研究協力者会議」において、学級編制の弾力化及び教職員配置の在り方等について検討を行っている。



(3) 教育制度の弾力化と規制緩和の推進

○ 公立小・中学校の通学区域の弾力化
 公立小・中学校の通学区域の弾力化に向けて、平成9年1月通知後の市町村教育委員会における就学校指定に関する創意工夫、就学すべき学校の変更や区域外就学の弾力的な取扱状況等について、情報収集を行う。さらに、保護者への周知の観点から、事例集を定期的に作成するとともに、国立教育会館の情報ネットワークを活用することにより、学校選択の弾力化の趣旨を周知するなど、その一層の促進を図っている。


○ 盲・聾・養護学校における訪問教育の充実
 障害の重い子どもに、広く教育の機会を確保するため、盲・聾・養護学校の高等部における訪問教育を全都道府県に拡大して試行的に実施してきたが、新学習指導要領に訪問教育に係る規定を整備し、平成12年度から施行することとし、その一層の推進を図ったところである。


○ 教科書検定の透明化と採択の改善
 教科書の検定結果の公開について、公表資料の充実や公開会場の常設化、検定意見の文書化に向けた制度改正など検定の一層の透明化を図ったところであり、今後とも、教科書の採択地区の小規模化や採択方法の工夫改善について、各都道府県における取組を促す。


○ 大学・大学院入学資格の弾力化
 数学・物理学の分野で稀有な才能を有する者を対象に、大学入学年齢制限を緩和することについて、中央教育審議会の答申を踏まえ、平成9年7月に関係省令等を改正し、平成10年度から大学に受け入れることを可能にしたところであり、この緩和措置を受けた各大学における実施状況の点検、評価等を踏まえ、今後、対象分野等について検討する。
 なお、この緩和措置を受け、平成10年度及び11年度それぞれにおいて、千葉大学が3名の学生を受け入れたところである。
 また、国際化の進展などの社会の変化に適切に対応するとともに、個人の学習の成果が適切に評価される生涯学習体系への移行を図る観点から、平成12年度から大学入学資格検定の受検資格を拡大し、外国人学校の卒業生等であっても、満16歳以上の者であれば、大学入学資格検定の受検を認め、大学進学の機会を制度的に開くこととしたところである。
 さらに、大学院については、大学院が科学技術の進展や社会経済の変化に対応し、研究者及び高度専門職業人の養成に果たす役割に鑑み、大学を卒業していない者であっても、個別の入学資格審査を行い、大学を卒業した者と同等以上の学力があると認められた者で満22歳に達した者については、大学院の入学資格を認めることとしたところであり、平成11年9月以降の大学院入学者選抜から適用したところである。


○ 3年以上4年未満の在学で学部を卒業できる措置
 教育研究システムの柔構造化を図る観点から、3年以上4年未満の在学で学部を卒業できる例外措置の導入のために、平成11年5月に法改正を行ったところであり、平成12年度から導入する。


○ 学位授与機構による単位累積加算制度
 学位授与機構による単位累積加算制度について、学位授与機構において、その実施に向けて学位授与にふさわしい履修の体系性の確保等に関する調査研究を平成11年度中に取りまとめ、それを踏まえ、平成12年度に大学審議会で検討する。


○ 大学教員の選択的任期制
 大学教員の流動性向上による教育研究の活性化と多様な経験を通じた若手教員の育成のための「大学の教員等の任期に関する法律」が制定されたことを受け、大学における任期制の導入が進みつつあるが、引き続きその導入状況を把握し、大学及び社会一般に対して積極的に情報提供を行う。


○ 高等学校における学校外の体験的活動の単位認定
 高校生の学校外における体験的な活動や、自らの在り方・生き方を考えて努力した結果をこれまで以上に積極的に評価していくことが重要であり、ボランティア活動、就業体験等の学校外における学修の単位認定について、各高等学校における一層の活用を促進する。


○ 学校外の学習成果を評価する仕組みの拡充
 平成11年6月の生涯学習審議会の答申を踏まえ、様々な学習の成果を評価する多様な仕組みを整備拡充するため、様々な学習成果のうち、一定水準以上のものを評価し、それを学校の単位に認定したり、各学校教育段階の水準に相当すると認定したりする仕組みの拡充方策や大学以外の教育施設等における学習の評価・認定を放送大学をはじめとする大学において積極的に行うよう、所要の取組を進める。



(4) 学校の教育内容の再構築

○ 学校のカリキュラム改革等
 平成10年7月の教育課程審議会の答申を踏まえ、知識を一方的に教え込むことになりがちであった教育から、自ら学び自ら考える教育へと転換を図り、教育内容を厳選するとともに、各学校がゆとりある教育活動を展開し、一人一人の子どもたちに「生きる力」を育成することをねらいとした学習指導要領等の改訂を行い、幼稚園は平成12年度から、小学校及び中学校は平成14年度からそれぞれ全面実施し、高等学校は平成15年度から学年進行で実施する。盲学校、聾学校及び養護学校は各学校段階に準じて実施する。
 新学習指導要領への円滑な実施を図るため、総合的な学習の時間などを実施できるようにすることを内容とする移行措置を平成12年度から実施する。
 新学習指導要領においては、幼稚園から高等学校を通じ、正義感や思いやりなど豊かな人間性の育成が道徳教育をはじめとするあらゆる教育活動を通じて積極的に展開されるようにするとともに、創造性の育成、国や郷土を愛する心の育成と国際協調の精神の涵養、我が国の歴史・文化と伝統の尊重、国際化、情報化、環境問題など社会の変化への適切な対応を重視する。また、体験的な学習や問題解決的な学習の充実を図る。
 さらに、「国旗及び国歌に関する法律」の公布・施行を受けて、学校教育における、国旗及び国歌に対する正しい理解をさらに進めるため、引き続き、学習指導要領に基づく、学校における国旗及び国歌の指導の充実に努める。
 さらに、教育課程審議会においては、平成11年秋以降、学習指導要領の改訂に伴う学習の評価の在り方などについて検討を行い、おおよそ1年程度かけて結論を得る。
 教育課程の基準の改善に対応するため、学校施設の計画・設計上の留意点を示した学校施設整備指針を順次改訂する。


○ 教員、保護者等の理解の徹底
 新学習指導要領の円滑な実施と趣旨の実現を図るため、平成11年度において、学校の教員等を対象に、新教育課程説明会を開催するとともに新学習指導要領の解説書を刊行し、また、保護者や地域住民への理解を得るため、「新教育課程理解推進事業」を実施し、教育関係者、教員養成系大学の教員、保護者などが集うフォーラムの開催やパンフレットの作成配布を行う。


○ 新しい教育課程の実施に対応した教科書の改善
 平成10年11月になされた教科用図書検定調査審議会建議「新しい教育課程の実施に対応した教科書の改善について」を踏まえ、教科用図書検定規則や教科用図書検定基準について所要の改正を行ったところであり、引き続き、教育課程の基準の改善の趣旨を踏まえた教科書づくりに取り組む。


○ 授業時間数の削減等によるゆとりある教育の実現
 完全学校週5日制の下で、子どもたちがゆとりある学校生活を送ることができるよう、週当たりに換算して2単位時間の授業時間数を削減するとともに、授業時間数の削減以上に教育内容を厳選する。また、総合的な学習の時間等において、子どもの興味・関心に応じた主体的な学習を推進する。


○ 道徳教育の改善充実[再掲]
 新学習指導要領の趣旨を生かすため、ボランティア活動や自然体験活動などの体験的・実践的な活動を積極的に取り入れるとともに、人としてしてはいけないことや善悪の判断、基本的なしつけなどは、幼児期や小学校低学年の時期に、家庭との連携を図りつつ繰り返し指導し、その徹底を図っている。
 また、道徳の授業時間数の確保等についての必要な指導を徹底するとともに、道徳の時間の指導において、校長や教頭の参加など指導体制の充実を図り、家庭や地域社会との連携を進めるなど道徳教育の改善充実を図っている。


○ 科学的素養の育成
 初等中等教育段階での科学的素養の育成や技術に関する理解を深めさせるため、新学習指導要領においては、理科教育等について、観察・実験、探究活動などの問題解決的な学習や、発見・創作の喜びを重視した体験的な学習の充実を図るなどの改善を行ったところであり、その円滑な実施に向けて、各種事業や理科教育設備の整備等の施策を通じて、理科教育等の充実を図っている。


○ 情報教育の充実
 新学習指導要領においては、小、中、高等学校の各学校段階を通じて各教科等の学習においてコンピュータ等の積極的な活用を図ることとするとともに、中学校では技術・家庭科において「情報とコンピュータ」を必修とし、高等学校では新たな教科として普通教科「情報」、専門教科「情報」を設け、普通教科「情報」を必修とするなど情報教育を一層充実することとしている。
 学校における教育用コンピュータについて、平成11年度までに公立学校においては小学校で22台(児童2人に1台で指導)、中学校・普通科高等学校で42台(生徒1人に1台で指導)、盲・聾・養護学校で8台(児童生徒1人に1台で指導)の水準で整備を進めるとともに、教育用ソフトウェアの整備を着実に進める。
 さらに、平成12年度以降の教育用コンピュータ及びソフトウェア等の整備について、具体的な検討を進める。
 学校における情報通信ネットワークについては、新学習指導要領実施の前年度に当たる平成13年度までに、すべての学校がインターネットに接続できるよう計画的な整備を推進する。また、平成11年度において、教育センター等において、衛星通信を利用した教育関係職員の研修等を実施するための教育情報通信ネットワ−ク整備事業を推進するとともに、高度情報通信ネットワークの効果的な活用の在り方やこれに伴う様々な課題に関する実践研究を進めることにより、学校の情報化を推進するほか、民間団体等が行うインターネット等の利用環境の整備を支援する事業(こねっと・プラン等)との連携・協力を図る。
 また、初等中等教育における情報化の進展に対応した教員の指導力向上を図るため、教員養成カリキュラムにおいて、「情報機器の操作」を必修とする(平成12年度の大学等入学生から全面適用。一部は平成11年度から適用。)ほか、現職教員について、全教員がコンピュータを操作でき、半数はコンピュータを用いて指導できるようにすることを目指し、校内研修の活性化等を図っている。
 また、既存機関を活用して、教育、文化等に関する総合的な情報提供のナショナル・センター機能の整備を推進している。


○ 関係省庁との連携による教育の情報化の推進
 平成10年12月に発足したバーチャル・エージェンシーの「教育の情報化プロジェクト」において、文部省・通産省・郵政省・自治省が連携し、今後の初等中等教育の情報化を総合的に推進する施策の検討結果をとりまとめ、平成11年7月に総理へ報告した。
 報告書では、教育の情報化によって「子どもたち」・「授業」・「学校」が変わる姿を目標として設定した上で、ハード面の施策として、すべての教室へのコンピュータ整備、校内LANの整備など、ソフト面の施策として、教員の情報リテラシーの向上、専修学校や企業の協力も得た教員研修の実現、地域や民間企業の協力による学校の情報化支援、教育用コンテンツの充実などについて、総合的に目指すべき方向を示しており、この報告を踏まえ、今後、関係省庁をはじめ産官学の連携を通じた具体的な実施計画を検討する。


○ 職業教育の改善
 理科教育及び産業教育審議会の答申等を踏まえ、高等学校の学習指導要領の改訂により創設された新教科「情報」「福祉」の平成15年度からの円滑な実施に向けて、現職教員を対象とした講習会を計画的に実施するなど新教科を担当する教員の養成・確保を図るとともに、新教科に関する産業教育施設・設備の基準の策定等に向け検討を進める。
 また、専門高校と地域や産業界とのパートナーシップを確立するために、インターンシップの推進を図るとともに、産業人をはじめ広く地域の社会人を学校教育に迎え入れたり、地域の住民や小・中学生に対して専門高校の教育力を活用して多様な学習機会の提供を進めるほか、産業教育に関する成果等の総合的な発表を通じ、社会や産業界の専門高校に対する理解・協力等を促すため、「全国産業教育フェア」の一層の充実を図っている。


○ 中学校・高等学校における進路指導の改善・充実
 中・高校生の主体的な進路選択が可能となるよう、各学校における進路相談やガイダンス機能を充実するとともに、しっかりとした職業観・勤労観を身に付けさせるため、中学校においては職場体験等の進路に関する啓発的な体験活動を、高等学校においてはインターンシップを推進している。
 また、高校生を取り巻く就職環境は極めて厳しい状況にあることから、高校生や高卒就職者の職業や転職に関する意識、企業等の高卒就職者に対する評価等について実態調査を実施し、その調査結果を踏まえ、高等学校における進路指導の改善・充実を進めている。


○ 英語をはじめとする外国語教育と国際理解教育の充実
 新学習指導要領において、中・高等学校における外国語教育について、「外国語」を必修教科として位置付けて、言語の現実的な使用を念頭に置いた実践的コミュニケーション能力の一層の育成を推進する。また、小学校においては、地域や学校の実態等に応じ、新設される「総合的な学習の時間」などで、国際理解教育の一環として、児童が外国語に触れたり、外国の生活や文化などに慣れ親しんだりするなど小学校段階にふさわしい体験的な学習活動が行われるよう、小学校の英会話指導の手引きや英会話指導事例集を作成・配布することなどを検討する。
 また、外国語教育の充実や多様な文化・多元的な価値観を尊重する国際理解教育を進めるため、ネイティブ・スピーカーの活用を図る「語学指導等を行う外国青年招致事業」(JETプログラム)を推進している。
 さらに、地域に在住する外国人(ネイティブ・スピーカー)や海外勤務経験者等を特別非常勤講師等あるいは学校支援ボランティアとして活用することを推進している。
 また、英語のコミュニケーション能力の育成に関し、実践的指導力を有する教員を養成するため、衛星通信(CS)を活用した英語教員の研修の実施を検討するなど、英語担当教員の各種研修(海外・国内)の推進を図っている。



(5) 環境教育の充実等−地球環境問題への対応

○ 環境教育の充実
 地球環境問題に対応するためには、今後、我が国社会が大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会から省資源・省エネルギー・リサイクル型社会へと転換していくことが必要であり、学校においても、地球環境への負荷の低減を図るため、省エネルギー点検等を実施し、一層の省エネルギーの推進を図っている。また、教育においても、そうした視点が重要となることから、新学習指導要領においては、環境やエネルギーへの理解を深め、環境保全やよりよい環境の創造のために主体的に行動する実践的な態度や資質、能力を育成するため、各教科等における環境に関わる内容の一層の充実を図り、身近な環境を調べる学習など、問題解決的な学習や作業的な学習、体験的な学習が促進されるよう、学校における環境教育の改善・充実を図ったところであり、各学校の取組が適切に進められるよう、担当教員講習会の開催などにより、環境教育についての教員の指導力の向上を図っている。
 また、環境に関する体験的な活動を一層推進するため、社会教育施設をはじめとする関係機関や関係団体などと学校との連携を図る。
 さらに、情報ネットワークを活用し、環境のための地球規模の学習及び観測を行う国際的な取組(GLOBE計画)や自然環境のみならず社会的な環境問題についても児童生徒が観測・調査等を行う学習などを実施し、環境教育の推進を図る。
 また、環境教育の推進の観点から、平成11年度使用の教科書について再生紙の全面的な使用が図られたところであり、引き続き教科書への再生紙の使用に向けた取組を促進する。


○ 環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備推進
 太陽光発電・太陽熱利用、緑化推進、省エネルギー・省資源等環境を考慮した学校施設(エコスクール)の具体的な推進と実証的な検討を行うため、平成9年度より通商産業省と協力して実施しているパイロット・モデル事業を引き続き推進している。
 また、これらの施設を、生きた環境教育の教材として活用していく。


○ 地域社会における環境学習への参加促進
 青少年団体、社会教育団体、ボランティア団体、地域の環境保全団体や青年の家・少年自然の家及び博物館等による、青少年に対して自然の中での体験活動や環境に関する興味・関心を培う教育活動を支援している。また、地域の環境保全や環境理解等を深めるボランティア活動や、公民館等における学習機会の提供など地域における活動、学習機会の充実を図っている。地域における青少年の環境保全活動等の推進に当たっては、環境庁と連携を図りつつ、自主的に地域で環境学習や環境保全活動等を行っている既存の青少年グループ・サークル(こどもエコクラブ等)との協力・連携を促進している。


○ 地球環境科学の推進
 地球環境問題の解決に向けて、地球規模の環境変化を生じさせるメカニズムの解明、将来予測及び対応策についての科学的知見をより一層蓄積していくため、人文・社会科学から自然科学までの幅広い学問分野を総合化した、新たな地球環境科学を構築することが必要である。このため、国内外の大学等とネットワークを結び、総合的なプロジェクト研究を推進する地球環境科学研究所(仮称)の準備調査を行うなど、地球環境科学の推進を図る。


○ 環境教育・研究の国際協力
 アジア太平洋地域諸国における環境教育の普及・充実に協力するため、環境教育セミナーの開催、ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)における環境教育教材の開発、ソーラーエネルギー分野の人材育成に関する国際協力等ユネスコを通じた環境教育・研究への協力等の推進を図る。
 また、環境のための地球規模の学習及び観測を行う国際的な取組(GLOBE計画)への参加支援等を行う。
 さらに、国際機関の提唱等による環境に関する国際共同研究や南極地域観測等の極域研究を関係省庁との連携を図りつつ推進する。


○ 生物多様性の保全や人間と自然との共生のための「天然記念物」及び「名勝」の保護
 我が国の貴重な自然環境や生物多様性の理解を深める上で欠くことのできない天然記念物及び名勝について、その保護の万全を期すとともに、観察施設・学習施設の整備や学習プログラムの研究開発など、その活用のための条件整備を進めている。さらに、ユネスコ世界遺産委員会を通じて、世界遺産の保護への貢献及びその趣旨の普及を図るなどにより、人類共通の財産である貴重な世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する国民の関心と理解を深める。



(6) 教員の採用・研修の見直しと養成との連携

○ 教員養成カリキュラムの改善
 教育職員養成審議会の答申を踏まえ、使命感、得意分野、個性を持ち、現場の課題に適切に対応できる力量ある教員を養成するとともに、養護教諭の資質向上を図る観点から、平成10年6月に教育職員免許法等を改正し、教職に関する科目の充実、選択履修方式の導入等、教員養成カリキュラムを大幅に改善したところであり、平成12年度大学入学者からの全面適用に向け、この新しいカリキュラムの定着に努める。


○ 教員免許制度の一層の改善
 専修免許状の質の確保を図る観点から一種免許状を有する現職教員が専修免許状を取得するために必要な修得単位数等条件の見直しを行うことや、社会人に授与される特別免許状を基礎に普通免許状を取得できる制度を創設すること等を内容とする教育職員免許法の改正について、国会に提出すべく準備を進める。


○ 研修休業制度の創設等
 平成10年9月の中央教育審議会の答申及び同年10月の教育職員養成審議会の答申で提言された新たな「研修休業制度」の創設を図り、大学院修士レベルの教育を受け、専修免許状の取得ができるようにするなど、教員が自発的にその資質向上を図るための条件整備に努める。


○ 衛星通信を活用した教員研修の充実
 「情報教育」・「カウンセリング」といった喫緊の今日的教育課題への対応として、国立教育会館を拠点とする教育情報衛星通信ネットワーク(エル・ネット)を活用した研修プログラムを平成11年7月から提供している。


○ 広い視野を持つ教員を育てるための施策の推進
 大学における各種体験的実習等の充実、ボランティア等の活動歴の重視や試験官への民間人の登用など人物重視の方向での教員採用選抜方法等の改善、現職研修における長期社会体験研修の推進等を図るとともに、特別非常勤講師等による社会人の学校教育への活用を積極的に推進するなど、幅広い視野を持つ教員を養成・確保し、地域や社会に開かれた学校づくりを進めている。


○ 教員の養成と採用・研修の連携の円滑化
 教職重視、得意分野づくりの方向で大幅に改善された新しい教員養成カリキュラムを踏まえた教員採用・初任者研修の在り方、修士課程を活用した現職教員の再教育の推進を踏まえた現職研修体系の在り方等について、教育職員養成審議会で引き続き検討し、平成11年度内に答申を得ることを目指す。



(7) 大学入試・高校入試の改善

○ 大学入試・高校入試の改善
 中央教育審議会の答申を踏まえ、過度の受験競争を緩和するため、学力試験を偏重する入試から、一人一人の個性や能力に即した多様な選抜方法等による入試を目指す。このため、大学や各都道府県教育委員会等に対し、趣旨の徹底を図り、各高校の特色を生かした高校入試の実施や大学入試センター試験の多様な利活用等、選抜方法・尺度の多様化を推進するとともに、アドミッションセンターの新設やアドミッションズ・オフィス入試についての具体的な検討など、大学・高等学校や都道府県教育委員会等における具体的な改善の取組を促進する。
 また、外国語のコミュニケーション能力の育成を図る観点から、リスニング試験等の推進を図る。
 なお、平成10年11月、文部大臣から中央教育審議会に対して「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」諮問を行い、高等学校と大学の接続を重視した検討を進めており、平成11年中に答申を得ることを目指す。


○ 大学における秋季入学の導入の促進
 大学における秋季入学の導入を促進するために、平成11年3月に学校教育法施行規則における学年の途中における入学に関する規定を改正したところであり、今後、各大学の取組を促す。



(8) 高等学校教育の改革の推進

○ 総合学科や単位制高等学校の整備
 高等学校教育の個性化・多様化を進めるため、総合学科や単位制高等学校の設置促進を図る。特に、総合学科については、当面、総合学科を設置する公立高等学校が高等学校の通学範囲(全国で500程度)に少なくとも1校整備されることを目標とする。このため、総合学科の実態調査を行うとともに、その結果をも踏まえ、総合学科の将来構想及び設置促進のための方策等について調査研究を行い、平成11年秋を目途に結論を得る。
 なお、平成11年度においては、46都道府県、124校に総合学科が設置されているところである。


○ 高等学校の教育課程の基準の改善
 平成11年3月、「特色ある教育」を展開し、生徒に自ら学び自ら考える[生きる力]を育成することを目指して、高等学校学習指導要領を改訂し、平成15年度から学年進行で実施する。
 これにより、必修教科・科目の最低単位数を縮減し、他方、学校や生徒の選択の幅を広げ、選択科目や学校設定科目の履修を通して、生徒の興味・関心、進路希望等に応じ、より深く高度に学ぶ仕組みを整え、それぞれの能力を十分伸ばすことを目指した高等学校教育を展開する。


○ 高等学校における転・編入学者の受入れの推進
 保護者の転勤や帰国等に伴う高等学校における転入学や編入学の受入れの機会を確保するため、平成9年12月の通知に基づき、収容定員の内数又は外数としての特別定員枠の設定等について、高等学校や都道府県教育委員会等における積極的な取組を促進する。



(9) 21世紀の大学像と今後の改革方策

○ 「個性が輝く大学」づくりを目指した大学改革の推進
 21世紀初頭において、我が国の大学が世界的水準の教育研究を展開し、その期待される役割を十分に果たし、「個性が輝く大学」として一層発展していけるよう、平成10年10月の大学審議会答申に基づき、@課題探求能力の育成を目指した教育研究の質の向上、A教育研究システムの柔構造化による大学の自律性の確保、B責任ある意思決定と実行を目指した組織運営体制の整備、C多元的な評価システムの確立による大学の個性化と教育研究の不断の改善、の4つの基本理念に沿って抜本的な大学改革を推進する。


○ 学部段階の教育機能の充実強化
 各大学がそれぞれの個性・特色を発揮しつつ、多様な能力、適性を持った学生に対し、それぞれに応じた適切な教育を通じた卒業生の質の確保を図るため、平成10年10月の大学審議会の答申を踏まえ、教育内容の在り方として、課題探求能力の育成のための教養教育の重視と専門教育の基礎・基本の重視など、また、教育方法の改善として、成績評価基準の明示と厳格な成績評価の実施などについて各大学に取組を促す。
 このほか、平成11年9月に大学設置基準を改正し、@責任ある授業運営が行われるよう、各大学等が授業内容や方法の改善を図るための組織的な研修や研究の実施に努めることとし、A学生の履修科目の過剰登録を防ぐことを通じて、単位制度の実質化を図る観点から、1年間あるいは1学期間に履修科目登録できる単位数の上限を定めるよう努めることとしたところである。


○ 大学院の教育研究の高度化・多様化
 将来にわたって我が国の学術研究水準の向上や社会・経済・文化の発展を図る上で極めて重要な使命を負っている大学院の教育研究の高度化・多様化を図るため、平成10年10月の大学審議会の答申を踏まえ、大学院研究科の制度上の位置付けを明確化するとともに、柔軟な組織編制を可能とするなど、平成11年5月に法改正を行ったところであり、平成12年度から導入する。
 また、高度専門職業人養成に特化した実践的教育を行う大学院修士課程(専門大学院)の設置促進や、社会人の大学院への積極的な受入れに資する修士課程1年制コース及び長期在学コースの設置のため、平成11年9月に大学院設置基準等を改正したところである。


○ 国立大学の組織運営体制の改革
 大学が一体的、機能的に運営され、責任ある意思決定が行われ、社会に対して開かれたものとなるよう、外部の有識者から意見を聞くための運営諮問会議を全ての国立大学に設置し、教育研究等の状況の公表を義務付けるとともに、学部教授会と評議会の審議事項の分担や学部長の役割を明確化するなど国立大学の組織運営体制の改革を図る。このように、国立大学の組織運営体制の改革等を行うため、平成10年10月の大学審議会の答申を踏まえ、平成11年5月に法改正を行ったところであり、平成12年度から導入する。
 なお、国立大学の独立行政法人化についても、平成11年4月の閣議決定により、「大学の自主性を尊重しつつ、大学改革の一環として検討し、平成15年までに結論を得る」こととされたことを踏まえ、文部大臣のいわゆる私的懇談会として、「今後の国立大学等の在り方に関する懇談会」を開催するなど、できる限り速やかに検討を進める。


○ 大学の主体的・機動的な運営を可能とするための措置
 大学が、学術研究や社会の変化に積極的に対応し機動的な教育研究を実施するため、国立大学の講座・学科目編制の柔軟化などにより教育研究組織の柔軟な設計を可能とするとともに、国立大学の人事、会計・財務の柔軟性の向上を推進する。これらの事項について、関係省庁との調整も行いつつ、所要の制度改正を行うとともに、法律事項に及ぶ場合は所要の法律案を国会に提出すべく準備を行う。
 なお、公立大学についても、今後同様の観点から検討を進める。


○ 多元的な評価システムの確立
 多元的な評価システムを確立するため、自己点検・評価の実施と結果公表の義務化、自己点検・評価の学外者による検証の努力義務化について、平成11年9月に所要の省令改正を行ったところであり、また透明性の高い第三者評価を実施するための第三者機関の創設準備を進める。


○ 育英奨学事業の充実
 教育費負担の軽減を図り、学生が自立して学べるようにするため、日本育英会の奨学金について、有利子奨学金の貸与人員の大幅な増員、貸与月額の選択制の導入、貸与基準の緩和など、無利子・有利子あわせて日本育英会の奨学金の改善・充実を図っている。


○ 短期大学・高等専門学校の充実
 短期大学が、今後一層、社会において重要な役割を果たしていくためには、その特色を生かしつつ個性化を図り、多様な要請等に応えて教育機能の一層の充実を図ることが求められている。
 また、高等専門学校については、近年の科学技術の高度化や産業構造の変化等、社会のニーズに対応しつつ、多様化・個性化を図る。
 さらに、短期大学及び高等専門学校については、社会や時代の変化等を踏まえ、制度上の位置づけ、名称、教育の在り方等について、大学審議会で検討を進める。



(10) 高等教育機関の活性化

○ 高等教育におけるマルチメディアの活用
 マルチメディア技術の進展に対応した高等教育の充実を図るため、大学設置基準等を平成10年3月に改正して、高等教育機関におけるマルチメディアを活用した遠隔授業の単位認定を可能とする制度整備を行ったところであり、大学間の衛星通信を活用したネットワーク化の推進、メディア教育開発センターにおけるマルチメディアを利用して行う教育の内容、方法等の研究開発やその成果の各高等教育機関への提供などにより、高等教育におけるマルチメディアの一層の活用を図っている。
                

○ 産業・就業構造の変化に対応した社会人再教育の推進
 技術革新の進展、産業構造の変化に伴い、社会人が大学・大学院など高等教育機関において継続的又は短期的な教育を受け、生涯にわたり最新かつ高度の知識・技術を修得することが重要となってくる。また、社会人の再教育は、大学等の社会的責務であるとともに、教育研究の多様化・活性化を図り、高等教育改革を推進していく上でも重要な課題となっている。
 大学への社会人の受入れの拡大のため、社会人特別選抜制度、科目等履修生制度の充実や昼夜開講制、夜間大学院、サテライト教室(社会人を対象とする本校以外の教育の場)、公開講座等の充実を推進するとともに、国立大学における社会人の再教育に対応した講座の整備充実を図っている。


○ 教育研究基盤の改善・充実
 高等教育の新たな展開に対応するとともに、国際社会において知的貢献を果たすため、平成10年3月に「今後の国立大学等施設の整備充実に関する調査研究協力者会議」報告書を取りまとめたところであり、社会の変化、大学改革に対応する施設環境の整備や世界的水準の教育研究を支える基盤の整備を図るなどの提言に沿った施策の具体化に取り組み、高度な機能を備えた多様性のある教育研究基盤の改善・充実を図っている。


○ 専修学校の充実
 科学技術の高度化や産業構造の転換等の変化に対応する人材を育成するため、産業界や関係省庁と連携を図り、専修学校及び産業界関係者並びに有識者による協議会を開催し、産学連携を推進するためのモデル事業を実施するなど産学連携教育の効果的な推進方策について調査研究を行っている。
 また、社会人・職業人の受入れを推進するため、社会人等の学習ニーズに対応した学習プログラムを開発するなど、専修学校における社会人等の再教育を推進している。
 さらに、入学前の大学等における学修やボランティア・インターンシップなど、専修学校以外の教育施設における学習成果等を専修学校の授業科目の履修として認めることや遠隔授業の位置づけについて、平成11年6月の生涯学習審議会の答申を踏まえ、専修学校設置基準の改正など、所要の取組を進める。
 このほか、公的職業資格の取得の道を閉ざさないようにするという観点から、専門学校卒業者が短期大学卒業者に相当する取扱いを受けるよう、格差の是正を関係省庁に要請する。


○ 放送大学の充実
 放送メディアを通じ、広く高等教育の機会を提供する放送大学については、平成10年1月に通信衛星を利用した全国放送を開始したことを踏まえ、その普及・広報を充実させ、学生数の確保に努める。
 また、平成10年10月より全国で卒業を目的とする全科履修生の受入れを開始したことに伴い、学習センターの整備など学習支援体制の整備を図っている。
 さらに、教育研究の充実等を図る観点から、大学院の設置について調査等を行っている。


○ 大学入学資格検定の受検科目免除をする範囲の拡大
 大学入学資格検定をより受検しやすくするため、その受検科目を技能審査の合格により免除する制度に関し、従来の実用英語技能検定や簿記実務検定試験などに加え、平成11年4月より、実用数学技能検定やワープロ実務検定試験などを新たにその対象としたところであり、引き続き検定の免除対象となる技能審査の拡大について検討を行う。
 また、高等学校や高等専門学校の科目修得(履修)により、受検科目を免除する範囲を拡大するよう、平成11年4月に関係省令を改正した。



(11) 私立学校の振興

○ 私立学校教育の振興
 私立学校は、在学者数で見ると、大学と幼稚園で約8割、高校で約3割と大きな比率を占めており、小学校・中学校においても比率こそ小さいものの建学の精神に基づく特色ある教育を展開している。私立学校が、我が国の学校教育の多様で柔軟な発展に大きく貢献してきていることを踏まえ、私立学校の自主性を尊重しつつ、一人一人の個性に応じた選択ができるよう、各学校段階を通してその振興を図っている。
 私立学校における教育研究条件の維持向上のための自主的な取組を促すとともに、私学助成においては、社会的要請の強い特色ある教育研究プロジェクトに対する重点的配分を図っている。


○ 私立大学等の学術研究基盤等の充実
 私立大学における研究基盤及び研究機能の強化を図るため、最先端の研究開発プロジェクトや中核的な研究拠点に対する支援を行うなど、私立大学の研究基盤の整備に対する支援を推進している。
 また、私立大学等における学内LANの整備等を通じて情報基盤の整備を推進するとともに、衛星通信ネットワークやマルチメディア機器を活用した教育研究を推進している。
 さらに、平成10年3月に私立大学と企業との共同研究等に係る規約や発明者の権利を保障するための規程等を整備するための参考例を公表したところであり、引き続き私立大学の規約や学内規程の整備・充実に必要な情報提供等を行い、研究資金や寄附金など多様な民間資金の導入を促進するための条件整備を図っている。


○ 私立学校に係る設置認可の簡素化・明確化等
 私立学校が、自主的に社会の変化に対応し、その教育の改善を図っていくため、私立大学の学部の学科の設置認可については、審査内規の見直し、審査期間の短縮や申請書類の軽減等を行っているが、さらに、一層の改善を図る。また、私立小学校・中学校等の設置認可等については、その円滑化を図る観点から審査基準の設定や公表等を促進する。
 さらに、文部大臣所轄の学校法人が行うことのできる収益事業の種類につき定めた告示を見直し、学校法人の自主的な私立学校教育の財政基盤確保のための条件整備を行う。また、日本私立学校振興・共済事業団において、私立学校に対する教育条件及び経営に関する相談や情報支援の推進を図る。



(12) 人権教育の充実

○ 人権教育の充実
 「『人権教育のための国連10年』に関する国内行動計画」及び人権擁護推進審議会「人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進について」答申を踏まえ、学校教育及び社会教育の場において、幼児・児童・生徒をはじめすべての人が人権を尊重する意識を高めるための教育を推進している。





2.社会の要請の変化への機敏な対応

 我が国の社会経済の著しい変化に対応し、教育改革を進めるため、幅広い観点からの取組が必要である。このため、少子高齢社会への対応、男女共同参画社会の形成に向けた教育・学習の推進、将来の科学技術の発展を託す人材の養成や社会の要請に応える学術研究、情報化への対応、教育の基礎となる文化、学校の内外を通じたスポーツに関する施策について適切な取組を推進している。



(1) 少子高齢社会への対応
○ 少子化に対応する教育の充実
 安心して子育てができ、子どもを産み育てることに夢を持てる社会を築くため、教育内容・方法の改善・充実などによるゆとりある学校教育の推進、夢を持ったたくましい子どもを地域で育てることを目指した「全国子どもプラン」の計画的な実施、「家庭教育手帳」等の作成・配布や家庭教育24時間電話相談の実施など家庭教育支援施策の充実、小学校の余裕教室等を活用した子育て相談・交流会等の実施、幼稚園を核とした子育て支援の充実、日本育英会奨学金の充実等の少子化に対応した適切な教育施策を推進している。

 また、新学習指導要領においては、中・高校生が幼稚園や保育所等で乳幼児と触れ合う学習機会の拡充を図るとともに、高等学校の家庭科で、男女が協力して家族の一員としての役割を果たし、家庭を築くことの重要性や子どもを産み育てることの意義について考えさせる学習を充実することとしており、今後、これらの学習の適切な実施を促す。 なお、中央教育審議会においても、委員の発意により、少子化と教育について検討が行われている。


○ 高齢社会に対応する教育の充実
 中央教育審議会の答申を踏まえ、高齢者を大切にするとともに、高齢者から学ぶ気持ちを培うとの視点に立って、幼稚園、小学校段階での高齢者との触れ合いや中学校、高等学校段階での介護体験活動への積極的取組、学校と高齢者施設との連携などを推進するとともに、豊かな人間性をはぐくむ家庭教育の充実や地域社会における高齢者と触れ合う機会の充実、介護や福祉などのボランティア活動の促進を図ることにより、高齢社会に対応する教育を推進している。

 また、学校と高齢者施設との連携を推進する一環として、学校と高齢者施設の複合化等に関する事例集を平成9年10月に作成したことに引き続き、平成11年6月には、高齢者との連携に対応する学校施設の整備について調査研究の成果を都道府県教育委員会等に提示した。


○ 高齢者の学習と社会参加の促進
 高齢者の生きがいづくりを支援するとともに、高齢者の持つ豊かな知識と経験を地域における活動に積極的に活用する観点から、地域における高齢者の生きがいづくりのための学習活動や社会参加等を、厚生省をはじめとする関係省庁との連携の下に推進する。


○ 幼児教育の改善
 幼稚園教育要領の改訂を踏まえ、幼児期にふさわしい道徳性を培う活動や自然体験・社会体験活動などの推進を図っている。
 また、少子化の進行、共働き家庭の増加などに対応し、幼稚園における子育て支援活動や預かり保育の推進、満3歳児等の就園に関する条件整備、これらに伴う幼稚園運営の一層の弾力化など、社会変化を見通した施策の体系的な展開を図っている。

 さらに、幼稚園と保育所の弾力的な運営を目指し、地域の実情に応じ、各地方公共団体等において施設の共用化等、教員と保育士の合同研修、幼稚園と保育所の子育て支援に係る事業の連携実施などを引き続き進めるとともに、今後とも、幼稚園と保育所による子育て支援、教育・保育内容、教員・保育士の養成・研修の在り方などについて厚生省と検討を行う。


○ 医療・福祉関係の人材育成
 少子高齢化や国際化の進展、国民の医療ニーズの多様化等に対応し、国民の医療、保健、福祉に対するニーズを踏まえたサービスを提供できる人材を育成、確保するため、中長期的な視点も含め、計画的な教育体制の整備等の少子高齢社会に対応する医療・福祉・介護関係人材の育成方策について、関係省庁との緊密な連携の下で引き続き検討を行い、その結果に基づき所要の措置を講じる。医師・歯科医師の育成方針については、平成11年2月に「21世紀医学・医療懇談会」から報告が出されたところであり、今後、この趣旨に沿って、関係省庁とも緊密に連携して、改善・充実を進める。


○ 国家資格のための養成施設の指定制度の見直し
 各大学が、社会のニーズに適切に対応した多様なカリキュラムを編成し、資質の高い人材を育成できるよう、改定された規制緩和推進3か年計画を踏まえ、大学等における医療技術者等の養成に関し、カリキュラムを規制している国家試験受験資格付与のための養成施設の指定制度の見直しについて、厚生省と共同で検討し、関係省令等の改正を行う。臨床検査技師については平成12年度、診療放射線技師については平成13年度を目途にそれぞれ実施する。また、その他の医療関係職種についても検討を行う。


○ 健康教育の充実
 新学習指導要領においては、小学校中学年から保健の内容を指導、心の健康、食生活をはじめとする生活習慣の乱れ、生活習慣病、薬物乱用等の問題についての対応など、健康教育の充実を図ったところである。

 また、その指導に当たっては、健康や栄養等にかかわる指導における養護教諭や学校栄養職員などの専門性を有する教職員等の参加・協力が必要である。このため、養護教諭については、平成10年度に教育職員免許法を改正し、「保健」の授業の担任ができるよう措置が講じられたところであり、学校栄養職員については、平成10年6月の通知に基づき、「食」に関する専門家である学校栄養職員と担当教諭がティームを組んで教科指導や給食指導を行ったり、特別非常勤講師として学校栄養職員が「食」に関する指導を行えるような取組を推進している。

 さらに、学校給食については、食事内容の多様化を図り、児童生徒が楽しく、かつ、食事に関する自己管理能力を養うことができるカフェテリア方式等を進めるとともに、O157等の食中毒を防止するため、衛生管理の専門家を学校給食調理場に派遣し、巡回指導を行うなど、関係省庁とも連携して、学校給食施設の衛生管理の徹底を図っている。


○ 障害のある児童生徒のための教育・福祉・医療の連携強化
 障害のある児童生徒が、教育・福祉・医療サービスを総合的に受けられるようにするため、早期からの教育相談の在り方の研究を通じ、盲・聾・養護学校と児童相談所等とのネットワークづくりを進めるとともに、特殊教育における福祉・医療との連携に関する研究を通じ、盲・聾・養護学校を中心とした教育・福祉・医療関係機関のより幅広い連携を促進している。


(2) 男女共同参画社会の形成に向けた取組の促進
○ 男女平等を推進する教育・学習の充実
 平成8年12月に男女共同参画推進本部が策定した「男女共同参画2000年プラン」及び平成11年6月に成立、施行された男女共同参画社会基本法の趣旨を踏まえ、男女が社会の対等な構成員として、社会のあらゆる分野における活動に参画できる男女共同参画社会の実現に向けて、固定的な性別役割分担意識を是正し、人権意識に基づいた男女平等観の形成を促進する。

 このため、セミナーの開催や教育関係者の研修の充実、教材の開発などを通じ、学校教育及び社会教育において、男女平等を推進する教育・学習の充実を図っている。


(3) 将来の科学技術の発展を託す人材の養成や社会の要請に応える学術研究の振興
○ 科学技術創造立国に向けての学術研究の振興
 科学技術基本計画(平成8年7月閣議決定)や政府の行財政改革の推進、大学改革の展開など学術研究を取り巻く環境の著しい変化を踏まえ、平成10年1月に学術審議会に「科学技術創造立国を目指す我が国の学術研究の総合的推進について」諮問を行い、平成11年6月に答申がなされた。

 答申においては、自然等との調和を内包する持続的発展に適した「21世紀型科学技術」を発展させ、精神的充足感に重点を置いた「新しい豊かさ」を目指す価値体系を築き、新しい文明の構築への貢献を基本理念としつつ、学術研究に関する情報を積極的に世界へ発信することを通じて「知的存在感のある国」を目指すことを提言している。さらに、これらの基本的考え方の下、各種の具体的施策を提言している。今後、これらを踏まえ、学術研究の一層の振興に努める。


○ 高等専門学校の充実
 近年の科学技術の高度化や産業構造の変化等社会のニーズに対応するとともに、学校制度の複線化構造を進める観点から、各高等専門学校におけるカリキュラムの見直しなどの教育改革に対する取組、地域社会との連携協力を推進し、多様化・国際化を図る。高等専門学校卒業生の多様な進路の確保や社会人の再教育のニーズにこたえる専攻科の整備、従来の高等専門学校の学科の枠を越えた新分野の学科の新設・改組を進めるとともに、高等専門学校卒業後の大学への第3年次編入学など、他の教育機関との連携を積極的に進める。


○ 産業・就業構造の変化に対応した社会人再教育の推進[再掲]
 技術革新の進展、産業構造の変化に伴い、社会人が大学・大学院など高等教育機関において継続的又は短期的な教育を受け、生涯にわたり最新かつ高度の知識・技術を修得することが重要となってくる。また、社会人の再教育は、大学等の社会的責務であるとともに、教育研究の多様化・活性化を図り、高等教育改革を推進していく上でも重要な課題となっている。

 大学への社会人の受入れの拡大のため、社会人特別選抜制度、科目等履修生制度の充実や昼夜開講制、夜間大学院、サテライト教室(社会人を対象とする本校以外の教育の場)、公開講座等の充実を推進するとともに、国立大学における社会人の再教育に対応した講座の整備充実を図っている。


○ 青少年の科学や技術に対する興味・関心を高めるための科学や技術に関する教育の推進
 情報化、環境・エネルギー問題等、現在我が国が直面している諸問題の解決に科学技術は重要な役割を果たすものであり、初等中等教育段階での科学的素養の育成や技術に関する理解の促進を目指すとともに、大学や青少年教育施設等における科学教室の開催、大学・高等専門学校への体験入学の促進、大学等の研究所の青少年への開放、インターネットの活用による大学等の研究情報の学校への発信等を進める。また、科学技術庁と連携しつつ、中高生を対象として、大学、大学共同利用機関等の最先端の研究成果や研究現場に直接触れる機会を提供する「ふれあいサイエンスプログラム」を推進している。

 さらに、科学技術に関する博物館やユニバーシティ・ミュージアム等の活用、科学技術に関する展示会の開催により、青少年の科学や技術に関する教育活動の支援を進めている。とりわけ、学校休業土曜日を中心に青少年を対象とする科学・ものづくり教室を全国的に展開するため、全国の公民館、教室開放を行っている学校の施設、博物館、科学館等において開催する科学教室・ものづくり体験教室に対する支援を行うとともに、学習プログラムの充実を図っている。

 大学・高等専門学校教員や企業の研究者・技術者などの希望者を「サイエンス・ボランティア」として登録した名簿を、科学系博物館や青少年教育施設などに配付することによって、「サイエンス・ボランティア」がこれらの機関の依頼に応じて講師として出向き、講演や実験実演等を行うことを通じて、青少年が科学と技術の楽しさ、すばらしさに触れる機会を充実している。これら青少年の科学や技術に関する学習機会の充実に関しては、科学技術庁をはじめとする関係省庁と連携しての取組を推進する。


○ インターンシップの推進
 インターンシップ(学生等が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと)は、教育の改善・充実及び学生・生徒の学習意欲の喚起、高い職業意識の育成などの意義を有するものであり、インターンシップに取り組む大学等への財政支援や、インターンシップの調査研究を行い、その質的な充実を図っている。

 また、高校生のインターンシップについては、専門高校の生徒は全員、普通科、総合学科の生徒もできる限り多くの生徒がインターンシップを経験することを目標として推進を図る。このため、全国各地域で推進体制の整備が図られるよう、関係省庁や関係団体と連携し、普及啓発を図るための全国フォーラムの開催や事例集の作成配布などの諸施策を推進している。

 さらに、インターンシップの拡大に伴い、受入れ先等の確保が重要な課題となっていることから、政府機関や地方自治体など公的機関へ積極的な受入れを要請するとともに、関係省庁と連携して、企業等の受入れ先の確保に努める。


○ 産学連携による人材の育成
 平成11年度においては、引き続き、関係省庁とも連携を図りつつ、大学・高等専門学校及び企業に対する支援策や情報提供、産学連携を促進するための体制の整備などについて所要の措置を講ずることにより、大学等の教育課程に位置づけられたものを含め、本格的なインターンシップの取組が、早期に全国的に展開していくよう、その総合的な推進を図る。

 大学等におけるベンチャービジネス関連の教育・研究の充実等ベンチャービジネスを担う人材の育成を推進する。
 また、社会人の教員への採用を一層促進する。
 他方、産業界に対し、人的交流、資金、市場・技術動向等の情報提供など大学に対する積極的な協力を求める。 さらに、職業に関する高度な専門的知識を有する人材を育成するため、産業界や関係省庁と連携を図り、平成9年度から専修学校及び産業界関係者並びに有識者による協議会を開催し、モデル事業を実施するなど産学連携教育の効果的な方策についての調査研究を行い、専修学校と産業界との連携を推進している。


○ ものづくりに関する教育の充実
 ものづくり基盤技術基本法の趣旨を踏まえ、関係省庁と連携し、ものづくり基盤技術に関する研究開発、人材の育成及び学習の振興を図っている。高等教育においては、理工系分野における実験実習教育設備の高度化・現代化を図るとともに、大学・高等専門学校における創造教育プログラムの開発・実施、創造教育の実践事例の収集・配付等の施策を通じて理工系教育をさらに充実させていくことにより、ものづくりに関する教育の充実を図っている。また、小・中・高等学校においても、ものづくりに関する教育の充実が図られるよう積極的な取組を促し、専修学校においても、その人材、機能を活用した体験的な学習機会を提供するなど、ものづくりに関する学習機会の充実を図っている。


○ 起業家精神を有する人材の育成
 起業家精神を有し、高度な技術を身に付け、それを事業化できるような能力を有する人材の育成を図るため、ベンチャービジネスに関する授業科目の開設等、ベンチャービジネス関連の教育の充実について、各大学の取組を促す。また、起業家精神を有する人材の育成上、共同研究等産学連携を通じて大学の教員や学生が産業界の現実や起業家の実態に接することは有益であることも踏まえ、産学連携を一層推進する。

 小・中・高等学校においては、起業家精神の涵養の観点を考慮し、チャレンジ精神や創造性の育成を重視した教育を推進している。

○ 理工系分野の人材育成教育の充実
 近年の著しい技術革新に対応し、我が国の科学技術を支える創造性豊かな理工系人材を育成するため、理工系分野における学部・学科の改組・再編等に取り組むとともに実験実習教育設備の高度化・現代化を推進している。さらに、大学・高等専門学校における学生の創造性を育成するための様々な試み(創造教育プログラム)の開発・実施の支援や創造的な人材育成を図るための取組の事例集の作成・配付を行っている。

 また、大学・高等専門学校の理工系分野における魅力向上のため、大学・高等専門学校において、青少年が科学実験やものづくり、セミナーを通して理工系分野の魅力に触れることができる体験入学事業を実施している。

 さらに、工学教育について、技術革新の進展の早さ、国際的な工学教育の動向を踏まえ、学協会による標準的な教育カリキュラムの研究開発等に関する取組を支援するとともに、それらを踏まえた学協会と各大学における工学教育の一層の質の向上を目指した自主的な取組を促す。


○ 技術者教育におけるアクレディテーション・システムの創設の促進
 技術者資格の認定制度の国際的な相互承認が進展している動向を踏まえ、大学等の技術者教育の内容を評価し、質の維持向上を図るとともに、その評価システムを国際的な共通基準に適合させようとするアクレディテーション・システムの創設を促進する。


○ 若手研究者等の養成・確保と社会のニーズにこたえる研究環境の整備
 学術研究の進展の動向、人材の養成に対する社会的要請を踏まえ、大学院において、教育研究機能の質的強化、既存の組織や施設・設備の有効活用に努めつつ、大学院を中心とした教員組織、施設・設備の充実等を図るとともに、大学院と学外の研究開発機関等とが連携した教育研究を実施することなどにより、弾力的・開放的な教育研究を推進する。

 特に、将来の学術研究等を担う若手研究者の養成・確保のため、「ポストドクター等1万人支援計画」に基づき、施策の充実に努めてきたところであるが、平成11年度においても、学術審議会や科学技術会議のフォローアップの状況を勘案しつつ施策を進める。また、リサーチ・アシスタント制度等の推進により、独創的な研究を行うための人材面での支援を進める。

 また、若手研究者がその能力を十分に発揮できるよう、各省庁の連携・共同を適切に図りつつ、研究プロジェクトにおける若手研究者の積極的な活用を図っている。さらに、研究施設・設備の高度化、弾力的・流動的研究施設等の研究環境の整備に取り組む。


○ 競争的資金の充実
 大学等の研究者による独創的・先駆的な研究を推進するため、競争的資金の充実に努めている。その際、資金配分の重点化・効率化に資するよう、事前・中間・事後における外部評価の実施、評価結果の公表、研究資金の配分への反映を進める。

 科学研究費補助金については、平成11年度より一部研究種目の審査・配分業務について日本学術振興会に移管し、体制の抜本的改善を図ったところであり、さらなる評価の充実及び研究者へのサービスの向上を図る。なお、この移管により、日本学術振興会は研究支援機関としての機能が一層強化され、学術振興のための中核的機関として、諸外国機関との連携・強化が推進されている。


○ 卓越した研究拠点(COE)の形成
 大学等の学術研究を中核に据えた基礎的・独創的な研究を振興するため、我が国における学術研究基盤の整備に努めるとともに、特定の研究組織について重点的整備を行うなど、創造性豊かな世界の最先端の学術研究を推進する卓越した研究拠点―センター・オブ・エクセレンス(COE)―の形成に努める。


○ 生命科学研究の推進
 生命科学は、ゲノム研究に代表されるように、医療や農業・環境等の分野で豊かな応用成果をもたらし、世界に先駆けた研究成果が比較的短期間に特許に結びつく可能性が高いことから、戦略的に極めて重要な性格を有している。このため、「ライフサイエンスに関する研究開発基本計画」(平成9年8月内閣総理大臣決定)、「バイオテクノロジー産業の創造に向けた基本戦略」(平成11年7月文部省、科学技術庁、厚生省、農林水産省、通商産業省)、「大学等におけるゲノム研究の推進について」(平成11年6月学術審議会バイオサイエンス部会まとめ)等を踏まえ、欧米との激しい研究競争に遅れないよう、生命科学研究の推進を図っている。


○ 学術情報基盤の充実と情報学研究の推進
 高度情報通信社会において、我が国の学術情報流通の一層の促進を図り、学術研究の振興に貢献するため、学術情報基盤の整備に取り組む。
 特に、学術情報を迅速・的確に提供し、国内外に広く普及するため、学術情報センターを中心に全国の国公私立大学等を接続する学術情報ネットワーク(SINET)について、高速化、広域化を図るとともに、国立大学等のキャンパス情報ネットワーク(学内LAN)の高度化等を推進する。

 また、学術情報に関するデータベースの整備、提供を推進するため、大学等の研究者に対するデータベース化支援を推進するとともに、大学の研究・教育を支える重要な情報拠点である大学図書館に電子図書館的機能の整備を進める。

 さらに、情報学は、様々な学問分野の基盤となるとともに、他の学問領域に働きかけ新しい研究課題や研究手法を生み出す分野として、今後とも一層の学問的発展が期待されるため、平成10年1月の学術審議会建議「情報学研究の推進方策について」等を踏まえ、情報分野の中核的研究機関の創設準備を行うなど、情報学研究の推進を図っている。


○ 研究成果や活動等の社会・国民への積極的な発信
 学術研究に対する国民の理解を増進し、関心を喚起することにより、学術研究の振興に関する国民的合意が広く形成されることが重要である。このため、大学等の研究機関における研究内容・成果や活動状況について、一般公開やインターネット等による研究所紹介などにより、積極的に社会への発信を進める。


○ 研究評価の充実・活用
 国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針をも踏まえて、平成9年12月に行われた学術審議会建議「学術研究における評価の在り方について」に基づき、大学等における研究の評価について、その特性に配慮しつつ、産業界や関係団体の代表者などを含め、外部有識者の意見を聴く等による評価の導入など、評価の一層の充実を図るとともに、評価の結果等の公表や研究資金配分への反映を進める。


○ 産学連携による研究の推進
 大学と産業界の連携協力を一層推進するため、我が国の文化風土に対応した、21世紀にふさわしい新しい形態の産学連携手法を大学等の協力を得つつ構築し、産業界等社会全体にフィードバックする。

 大学等の研究成果(特許等)の効率的な移転を促進するため、「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」に基づき、通商産業省と連携しつつ、引き続き技術移転機関(TLO)の設立を促進するほか、平成11年度より、科学技術庁と連携して開催している「知的所有権セミナー」により、国公私立大学等教職員のいわゆる特許マインドの涵養を図る。 また、「研究交流促進法」により、国立大学等の敷地内に国以外の者による共同研究施設が整備される場合、土地の廉価使用が可能になるとともに、平成11年より不動産取得税の軽減措置を講ずるなど、産学連携のための施設整備の一層の促進を図っている。

 さらに、地域における研究開発の拠点である共同研究センター等の整備を図るほか、特に地域社会に国立大学がより積極的に貢献できるよう、地元企業等と国立大学との共同研究等を推進し、その研究成果を地域社会に還元するため、地方公共団体等の有する施設等を国立大学が活用する方策等について検討を進める。

 このほか、国立大学教官等の民間企業役員兼業について、現下の社会的・経済的情勢を踏まえ、政府に「国立大学教官等の民間企業役員兼業問題に関する連絡会議」を設置し、多面的に検討を進め、平成11年秋を目途として結論を得る。また、技術移転機関(TLO)への役員兼業については、国家公務員法第103条に基づき、人事院の関係規定を整備し、遅くとも平成12年4月1日から実施する。

 また、「産学の連携・協力の推進に係る関係省庁会議」において、産学連携の総合的な推進のための具体的方策について検討を行い、必要に応じ他省庁と協議の上その実現を図る。


(4) 情報化の進展への対応
○ 関係省庁との連携による教育の情報化の推進[再掲]
 平成10年12月に発足したバーチャル・エージェンシーの「教育の情報化プロジェクト」において、文部省・通産省・郵政省・自治省が連携し、今後の初等中等教育の情報化を総合的に推進する施策の検討結果をとりまとめ、平成11年7月に総理へ報告した。

 報告書では、教育の情報化によって「子どもたち」・「授業」・「学校」が変わる姿を目標として設定した上で、ハード面の施策として、すべての教室へのコンピュータ整備、校内LANの整備など、ソフト面の施策として、教員の情報リテラシーの向上、専修学校や企業の協力も得た教員研修の実現、地域や民間企業の協力による学校の情報化支援、教育用コンテンツの充実などについて、総合的に目指すべき方向を示しており、この報告を踏まえ、今後、関係省庁をはじめ産官学の連携を通じた具体的な実施計画を検討する。


○ 情報教育の充実[再掲]
 新学習指導要領においては、小、中、高等学校の各学校段階を通じて各教科等の学習においてコンピュータ等の積極的な活用を図ることとするとともに、中学校では技術・家庭科において「情報とコンピュータ」を必修とし、高等学校では新たな教科として普通教科「情報」、専門教科「情報」を設け、普通教科「情報」を必修とするなど情報教育を一層充実することとしている。

 学校における教育用コンピュータについて、平成11年度までに公立学校においては小学校で22台(児童2人に1台で指導)、中学校・普通科高等学校で42台(生徒1人に1台で指導)、盲・聾・養護学校で8台(児童生徒1人に1台で指導)の水準で整備を進めるとともに、教育用ソフトウェアの整備を着実に進める。

 さらに、平成12年度以降の教育用コンピュータ及びソフトウェア等の整備について、具体的な検討を進める。
 学校における情報通信ネットワークについては、新学習指導要領実施の前年度に当たる平成13年度までに、すべての学校がインターネットに接続できるよう計画的な整備を推進する。また、平成11年度において、教育センター等において、衛星通信を利用した教育関係職員の研修等を実施するための教育情報通信ネットワ−ク整備事業を推進するとともに、高度情報通信ネットワークの効果的な活用の在り方やこれに伴う様々な課題に関する実践研究を進めることにより、学校の情報化を推進するほか、民間団体等が行うインターネット等の利用環境の整備を支援する事業(こねっと・プラン等)との連携・協力を図る。

 また、初等中等教育における情報化の進展に対応した教員の指導力向上を図るため、教員養成カリキュラムにおいて、「情報機器の操作」を必修とする(平成12年度の大学等入学生から全面適用。一部は平成11年度から適用。)ほか、現職教員について、全教員がコンピュータを操作でき、半数はコンピュータを用いて指導できるようにすることを目指し、校内研修の活性化等を図っている。

 また、既存機関を活用して、教育、文化等に関する総合的な情報提供のナショナル・センター機能の整備を推進している。

○ 「教育情報衛星通信ネットワーク(エル・ネット)」の積極的な活用
 国立教育会館、国立オリンピック記念青少年総合センター、国立科学博物館、文部本省と、都道府県・指定都市の教育センター及び学校・社会教育施設等を結ぶ「教育情報衛星通信ネットワーク(エル・ネット)」が平成11年7月に本格的に稼働し、全国規模の教育関係職員の研修、緊急性の高い教育上の課題への対応、学校週5日制完全実施に対応した青少年向け教育プログラム、一般成人の学習機会等の充実が図られている。

 さらに、同ネットワークを活用し、学校が休業する土曜日に全国津々浦々の社会教育施設や学校等の受信先の子ども達に、スポーツ選手などのヒーロー・ヒロインや一流の科学者等が子ども達に夢や希望を直接語りかける番組を提供する「子ども放送局」事業の推進を図っている。


○ 学校図書館の充実
 学校図書館を積極的に活用した教育活動の展開に資するため、「学校図書館法」の一部改正を踏まえ、平成14年度末を目指して司書教諭の養成・発令の計画的促進を図るとともに、各教育委員会等における学校図書館の図書及び視聴覚資料の整備を支援する。また、情報化等の時代の進展に応じた新しい司書教諭講習科目を平成11年度から導入したほか、「学習情報センター」としての学校図書館の機能の充実や国際子ども図書館とのコンピュータによる情報ネットワーク化の推進等に努めるとともに、地域の人材や保護者を、学校図書館のボランティアとして活用する方途について実践研究を行っている。さらに、学校図書館の施設整備の在り方に係る手引き書を作成するとともに、図書・各種情報ソフトの充実等をはじめとする今後の学校図書館の振興方策についての検討を進め、長期的視野に立った整備・充実を図っている。


○ 高等教育におけるマルチメディアの活用[再掲]
 マルチメディア技術の進展に対応した高等教育の充実を図るため、大学設置基準等を平成10年3月に改正して、高等教育機関におけるマルチメディアを活用した遠隔授業の単位認定を可能とする制度整備を行ったところであり、今後、大学間の衛星通信を活用したネットワーク化の推進、メディア教育開発センターにおけるマルチメディアを利用して行う教育の内容、方法等の研究開発やその成果の各高等教育機関への提供などにより、高等教育におけるマルチメディアの一層の活用を図る。


○ 大学における情報処理教育の充実
 情報通信技術の進展に対応できる人材育成の機能を充実するため、学協会による標準的な教育カリキュラムの研究開発等の取組を支援するとともに、それらを踏まえた学協会と各大学における情報処理教育の一層の質の向上を目指した自主的な取組を促す。


○ 生涯学習情報の提供の充実
 人々の多様化、高度化、広域化する学習ニーズに対応して、関係機関、団体及び人材等の学習機会に関する情報や、関係施設の持つ学習に有用な素材等、学習情報の提供を充実させるため、インターネットを活用して全国的に生涯学習情報を提供するシステム(まなびねっとシステム)の整備を進めている。


○ 社会教育施設の高度化・情報化
 図書館・博物館をはじめとする社会教育施設について、その有する豊富な学習資源のデータベース化や電子図書館的機能の整備及び社会教育施設間や学校との情報ネットワーク化を推進するため、高度情報通信ネットワークを利用した新しい学習方法の在り方及び社会教育施設の高度化・情報化について調査研究を行い、順次その成果の取りまとめを行う。また、いつでも、どこでも、好きな時間に学習できるオン・ディマンド・システムによる学習教材の研究開発を推進している。


○ 文化の情報化
 高度情報通信社会の構築の進展と文化に対する国民のニーズの多様化に対応するため、文化に関する情報について国内外に総合的かつ体系的に提供し発信していくための情報基盤の整備を図ることとし、「文化総合情報システム」の整備を推進している。


(5) 教育の基礎となる文化の振興
○ 文化振興マスタープランの推進
 文化立国の実現に向けた基本的な指針である「文化振興マスタープラン」に基づき、芸術創造活動の活性化、伝統文化の継承・発展、地域文化・生活文化の振興、文化を支える人材の養成・確保、文化による国際貢献と文化発信、文化発信のための基盤整備等、文化行政の総合的推進のための取組を進めている。


○ 「地域こども文化プラン」の推進
 心の教育や完全学校週5日制の実施に対応するため、学校、地域社会や文化施設等の相互連絡を密にし、学校の内外における文化活動や鑑賞の機会を確保するための諸施策を「地域こども文化プラン」と位置づけて推進している。

 本プランでは、例えば、@子どもたちが舞台芸術に参加する機会や発表する場の提供など、地域における子どもたちの舞台芸術活動を支援すること、A地域の民俗芸能や伝統技術などに関する子どもたちの参加体験や学習活動の機会を提供すること、B子どもたちがなじみやすい作品を中心とした展覧会、文化財公開事業を開催すること、C子どもたちが優れた芸術に触れる機会を学校教育の現場において確保できるよう、優れた芸術団体を学校に派遣すること、D夢と感動を与える生の舞台芸術の巡回公演を実施すること、E高校生による文芸分野の講演会、ワークショップ等を実施することなどにより、子どもたちの豊かな人間性や多様な個性を育むことを目指す。


○ 伝統文化の継承・発展
 文化財の公開・活用や国内外の文化財の保存・修理、保存伝承基盤の充実などの文化財保護施策を推進するほか、文化財の保護対象の拡大についての検討を進める。その際、文化庁と建設省や自治省などが相互に関連する施策等について緊密な連携を図るとともに、歴史的文化環境の保護について検討し、文化財を活用した地域づくりの推進に努める。

 また、我が国の歴史と文化に対する理解の増進と国際親善の推進に寄与するという観点から、日本古美術品の海外展の開催や、アジア太平洋地域の世界遺産等の文化財保護に係る協力を推進しているとともに、ユネスコ世界遺産委員会への参加・協力などにより文化財の保護を通じた国際的な協力を推進する。


○ 芸術創造活動の活性化・文化のための人材養成及び基盤整備
 芸術創造活動を活性化するため、芸術支援事業であるアーツプラン21を推進している。また、文化を支える多様な人材の養成・確保を図るため、芸術フェローシップを計画的に推進し、若手芸術家の国内外での研修機会を充実するとともに、芸術団体等が実施する研修などの民間活動への支援を充実している。また、優れた芸術創造活動や世界に誇るべき文化財などを海外に一層積極的に発信するとともに、文化発信の拠点となる美術館・博物館等の活動基盤を整備し、その活動を活性化している。さらに、文化に関する総合的な情報システムの構築を推進し、広く国民や文化関係者、行政担当者等に情報提供を行っている。

 さらに、美術品を鑑賞する機会を拡大するため、「美術品の美術館における公開の促進に関する法律」に基づく登録美術品制度の円滑な実施を図り、優れた美術品の美術館における公開を促進する。


○ 文化の情報化[再掲]
 高度情報通信社会の構築の進展と文化に対する国民のニーズの多様化に対応するため、文化に関する情報について国内外に総合的かつ体系的に提供し発信していくための情報基盤の整備を図ることとし、「文化総合情報システム」の整備を推進している。


○ デジタル化・ネットワーク化に対応した著作権制度の整備
 文化の発展のために不可欠な法的基盤である著作権制度について、デジタル化・ネットワーク化等に伴う著作物の利用形態の多様化、社会経済状況の変化、著作権制度の国際的動向等を踏まえつつ、適時適切にその整備充実を図るため、国内外を通じた施策を一体的に実施する。このため、平成11年通常国会において、著作権法を改正したほか、著作権権利情報の一元的な提供に向けた調査研究事業など円滑な権利処理ルールの構築に向けた取組を推進する。国際的には、WIPO(世界知的所有権機関)において検討されている条約の策定作業等に参画するとともに、アジア・太平洋諸国を対象とした連携協力事業の一層の充実を図っている。

 また、学校教育、社会教育等における著作権保護意識の普及啓発にも積極的に取り組むとともに、特に平成11年度は著作権法100周年にあたるため、これを契機に一層の国民的機運を醸成すべく運動を展開する。


(6) 学校の内外を通じたスポーツの振興
○ 生涯にわたるスポーツライフの実現
 児童生徒に、自ら運動する意欲を培い、生涯にわたって積極的に運動に親しむ資質や能力を育成するとともに、基礎的な体力の向上を図ることを重視するため、新学習指導要領において、小・中・高等学校の「体育」「保健体育」について、児童生徒の発達段階に応じて運動を一層選択して履修できるようにすることや、体力の向上を図るための内容を重点化すること、また、新たに、体への気づき、体の調整、仲間との交流をねらいとした「体ほぐしの運動」を導入するなどの改善を図ったところである。

 また、国民が、生涯にわたり主体的にスポーツを実践できるようにするため、学校・家庭・地域が一体となって、住民主導のスポーツ・健康に関する企画や運営を行う体制づくりの推進やスポーツ施設の質的充実、学校体育施設の学校と地域社会との共同利用の推進、地域住民の主体的な運営により、子どもたちから高齢者、初心者からトップアスリートまでの様々な年齢、技術・技能の人が様々なスポーツに親しむことのできる総合型地域スポーツクラブの育成・定着化等の推進を図るなど、国民のスポーツ環境の整備を推進している。

 これにより、21世紀の早い時期に国民のスポーツ実施率(週に1回以上スポーツを実施する人の割合)を50%程度にまで引き上げることを目標とする。


○ 競技力向上トータルシステムの構築
 国際的に活躍できる選手を育成するため、スポーツ医・科学を実践的に導入した総合的・一体的な競技力向上トータルシステムの構築を図る。
 このため、ジュニア期からの一貫指導システムを構築するためのモデル事業を引き続き実施している。
 また、選手の育成拠点として、国立スポーツ科学センターの建設を平成12年度の完成を目指して着実に推進するとともに、我が国に適したナショナルトレーニングセンターの在り方について引き続き調査研究を行っている。これと並行して、各地域の基幹的スポーツ施設等を競技力向上のための強化拠点として位置づけるモデル事業を引き続き実施している。

 さらに、高度な技術を有するプロスポーツの選手等によるアマチュアへの技術指導を促進している。

○ 国際スポーツ大会の開催
 スポーツの振興のみならず国際親善の推進にも寄与する各種の国際スポーツ大会の招致や開催を協力する。特に、平成14年に日韓で共同開催されるワールドカップサッカー大会について、大会の成功に向けて可能な限りの支援を行うとともに、2008年夏季オリンピックの大阪招致について可能な限りの協力を行う。


○ スポーツ交流事業の推進
 首脳間の合意に基づき、日韓間のスポーツ交流事業を引き続き行うとともに、平成11年度からは日中間のスポーツ交流事業を実施するなど、各国とのスポーツ交流を推進する。


○ スポーツ振興投票の実施
 「スポーツ振興投票の実施等に関する法律」に基づき、平成12年度に予定されるスポーツ振興投票の販売開始に向けて所要の準備を行う。





3.学校外の社会との積極的な連携

 教育改革を進めるに当たっては、学校、家庭、地域社会が幅広く連携することが必要である。このため、その連携を強化するとともに、家庭教育の充実、学校外の体験活動の推進、ボランティア活動の促進、社会人や地域人材の学校への活用、青少年の非行やいじめ問題、薬物乱用問題、有害環境問題などへの適切な対応を進めている。



(1) 学校、家庭、地域社会の連携強化

○ 「全国子どもプラン」の推進[再掲]
 夢を持ったたくましい子どもをはぐくむため、平成14年度の完全学校週5日制の実施に向けて、地域で子どもを育てる環境を整備し、親と子どもたちの活動を振興する体制を整備することを目指し、策定した「全国子どもプラン(緊急3ヶ年戦略)」に基づき、「子ども放送局」の運営、「子どもセンター」の全国展開、関係省庁とも連携した子どもの多彩な体験活動機会の充実、家庭教育への支援等をはじめとする施策を、緊急かつ計画的に推進している。
 また、平成11年6月の生涯学習審議会答申「生活体験・自然体験が日本の子どもの心をはぐくむ」も踏まえ、さらに子どもたちに「生きる力」をはぐくむ地域社会の環境の充実を図っている。


○ PTA活動の活性化
 PTAは、教育支援組織の中で大きな役割を有するものであり、父母等のPTA会員の活動・交流と学校支援機能の充実など、その活性化を図るとともに、地域の様々な機関・団体との連携を進める。


○ 地域コミュニティの拠点としての学校施設の整備推進
 平成14年度から実施される新教育課程や完全学校週5日制に対応するとともに、地域コミュニティの拠点としての学校と家庭・地域社会との一層の連携を図るため、平成11年7月の「学校週5日制時代の公立学校施設に関する調査研究」報告等を踏まえ、学校施設の整備・充実を推進している。
 また、コミュニティ活動の中核として学校が役割を果たすことができるように、余裕教室の社会教育施設や社会福祉施設等の学校教育以外の施設への有効活用の観点から財産処分の手続の簡素化を図るなど、地域社会との一層の連携を促進する学校施設づくりを推進している。



(2) 家庭教育の充実

○ 家庭教育への支援強化
 乳幼児期の親子のきずなの形成に始まる家族との触れ合いを通じ、基本的な生活習慣・生活能力・豊かな情操、他人に対する思いやり、善悪の判断など基本的な倫理観、社会的なマナー、自制心や自立心など[生きる力]の基礎的な資質や能力を培う家庭教育の充実を支援していくため、家庭教育に関する学習機会や親子の共同体験の機会を充実するとともに、父親の家庭教育参加の支援・促進、地域で子どもを育てる体制づくりなどの施策を推進している。
 とりわけ、家庭教育に関する学習機会については、思春期の子どもを持つ親や祖父母を対象とした学級等の開設、インターネットを利用した学習機会の提供などを行う地方公共団体の取組を支援するとともに、企業内における学習機会の提供を促進し、その一層の充実を図っている。


○ 母子保健等の機会を活用した家庭教育の充実
 厚生省と連携して、どの親も通過する母子健康手帳の交付時や1歳6か月児や3歳児健康診査の実施時、小学校入学に際しての健康診断時など、母子保健等の機会を積極的に活用して、家庭でのしつけの在り方等を盛り込んだ「家庭教育手帳」を乳幼児を持つ親に配布するとともに、家庭教育学級の開催、「家庭教育ビデオ」の上映などの取組を推進している。また、各学校を通じて、「家庭教育ノート」を小・中学生等を持つ親に配布するとともに、PTAの学習会等での活用を推進している。


○ 親に対する相談体制の充実
 親に対する相談体制の充実を図るため、専門的な知識や能力を有する家庭教育カウンセラーの活用を図るとともに、児童相談所、保健所などの関係機関と協力した相談事業の展開、電話、ファックス等を利用して24時間子育ての相談に対応できるような体制づくりを推進している。



(3) 学校外の体験活動の推進

○ 子どもたちの体験活動等の情報提供体制の充実
 地域での子どもの体験活動機会や家庭教育支援に関する情報の提供を充実させるため、親や子どもたちの様々な活動に関する情報提供を簡便な情報誌を作成・配布したり、子どもの活動を支えるボランティア等の紹介、相談を行う「子どもセンター」(情報連絡組織)の全国展開を推進している。


○ 地域における子どもたちの体験活動の充実
 子どもたちにとって魅力的で多様な地域活動の機会を提供するため、地域に古くから伝わる伝承遊びやものづくりなど我が国の文化を伝える活動、冒険的な活動や自然体験活動、世代を超えてのボランティア活動やふれあい体験活動、国立公園等での環境保全活動(環境庁と連携)、地元の商店街等で様々な職業に触れる活動(通商産業省・中小企業庁と連携)などの取組を総合的に推進している。また、異年齢の子どもたちが夏休みに、農家等に長期間宿泊して、環境学習、農作業等の勤労体験、レクリエーション等の自然体験活動を行う取組を実施している(農林水産省と連携)。
 子どもたちの体験活動の場の整備を図るため、河川を調査し、子どもの遊び場としてふさわしい水辺を登録・整備する事業(建設省・環境庁と連携)、子どもたちが農村の自然の遊びに親しめるよう、水路等の整備を行う事業(農林水産省と連携)、子どもたちが身近に木登りをはじめとした冒険遊び等の多様な活動ができるような都市公園の整備・運営の在り方について、平成11年度末を目途に研究を進める事業(建設省と連携)を実施している。


○ 青少年団体における活動など学校外活動への参加の奨励
 子どもの学校外の体験活動を促進するため、学校やPTA等において、ボーイスカウト、子ども会、スポーツ少年団など青少年団体、ボランティア団体、文化・スポーツ団体等の地域における活動についての理解を深め、参加を奨励するなどの取組を「子どもセンター」での情報提供活動等で推進している。


○ 学校外活動の評価
 平成11年6月の生涯学習審議会の答申を踏まえ、ボランティア活動、文化・スポーツ活動など子どもたちの学校外活動を奨励するため、社会における多様な評価の在り方などについて、所要の取組を進める。


○ 社会教育施設等の活性化
 博物館の持つ機能を積極的に活用し、学校休業土曜日を中心に青少年が楽しく遊びながら自然科学の原理、技術、歴史、伝統文化などを体験的に理解できる機会を提供するため、参加体験的な展示の開発やハンズ・オン(自ら見て、触って、試して、考えること)活動を実施するなど、博物館の機能を高度化する先進的な取組を支援している。
 また、地域における学校外活動を促進するため、子どもにとって魅力ある教育用素材の宝庫である科学博物館、歴史民俗博物館、美術館、動植物園や公民館、図書館等の活動の活性化やマルチメディアの活用等の工夫を進めている。
 さらに、完全学校週5日制の実施に向け、週末の子どもの活動の場として、専修学校、大学等、専門高校の施設・機能の開放を促進している。



(4) ボランティア活動の促進

○ 学校におけるボランティア教育の充実
 学校におけるボランティア教育については、小・中・高等学校の新学習指導要領において、学習指導要領上「ボランティア活動」の文言を盛り込むとともに、特別活動・道徳等の中でボランティア活動などの体験活動を行うこととするなど、一層その充実を図ったところであり、今後、各学校における取組の充実を促すとともに、環境保全活動や社会福祉活動等のボランティアに関する地域の関係施設・機関や団体と学校との積極的な連携を推進している。
 学生のボランティア活動は、大学教育に地域社会の教育力を活用できるとともに、大学が地域社会に貢献できるという教育的意義を有するものである。現在、平成11年3月の「ボランティア活動の推進に関する調査研究協力者会議」の報告を踏まえ、ボランティア活動に対する評価方法の確立のための研究開発や大学内における情報提供・相談体制の整備、ボランティア養成講座の開設、学生がボランティアとして参加できる学内事業の実施、大学と受入機関、ボランティア団体、地域行政との連携強化など、大学等における学生のボランティア活動を推進している。


○ ボランティア活動に関する情報提供の充実
 青少年の自主的なボランティア活動を促進するため、ボランティア活動に関する情報収集・提供や相談等の体制づくりを進め、学校、ボランティア団体とのネットワークの形成を推進している。
 また、ボランティア活動に参加する動機づけを促進するため、平成11年度において、新たに全国ボランティア情報提供・相談窓口を開設し、どこに問い合わせれば希望するボランティア活動の情報が得られるかについての電話等による情報提供を行う。



(5) 社会人や地域人材の学校への活用

○ 社会人の学校への活用
 従来から閉鎖的と言われている教育現場に学校外から優れた人材を迎え入れ学校教育の多様化への対応とその活性化を図るため、知識・技術を持つ社会人(科学者、情報処理等の技術者、企業等の実務経験者、芸術家、地域の伝統文化の継承者、スポーツ選手、武道指導者、海外勤務経験者、外国人等)の学校への活用を進める。このため、小学校等において特別非常勤講師及び特別免許状を活用できる教科を全教科に拡大することや手続きの簡素化等を内容とする教育職員免許法の改正を平成10年度に実施したところであり、今後とも社会人活用の促進に努める。また、部活動への外部指導者の活用を進めている。


○ 学校支援ボランティア活動の推進
 学校の教育活動について地域の教育力を生かすため、保護者、地域人材や団体、企業等がボランティアとして学校をサポートする活動(学校支援ボランティア活動)を推進するとともに、これらの活動が積極的に行われるよう事例等を取りまとめて情報提供している。



(6) 青少年の非行、いじめ問題、薬物乱用問題、有害環境問題などへの適切な対応

○ 問題行動への毅然とした対応−少年非行、暴力行為、いじめ等への対応
 平成10年3月の児童生徒の問題行動等に関する調査研究協力者会議報告や6月の中央教育審議会答申、平成11年7月の青少年問題審議会答申を踏まえ、問題行動を予防するための「学校における指導体制の整備」と「学校と児童相談所、警察等の関係機関との連携」について引き続き周知を図るとともに、問題行動への毅然とした対応を促す。また、関係省庁に対し、学校と関係機関との連携について要請し、協力を得る。
 最近、いわゆる「学級崩壊」といわれる状況が指摘されており、その実態や原因を明確にしてその対応策を検討するため、国立教育研究所や大学の研究者、指導主事などからなる研究会に研究委嘱を行い、学校経営の改善を図っている。


○ 青少年の非行等の問題への対応
 近年深刻化しつつある青少年の非行等の問題に適切に対応するため、関係省庁との緊密な連携の下、非行等の問題行動の防止に関する青少年対策の検討に早急に取り組むとともに、各地域において、これまで必ずしも十分でなかった学校と児童相談所等児童福祉施設、警察などの関係機関、PTA、青少年団体などの関係団体や地域住民との連携を強化すること等を通じ、青少年の健全育成及び非行等の問題行動の防止への取組を強化する。


○ いじめ問題の解決に向けた取組
 学校においては、「弱い者をいじめることは人間として絶対に許されない」などいじめ問題の基本認識を徹底するとともに、実効性ある指導体制の確立やスクールカウンセラー制度の活用などによる教育相談体制の充実を図っている。
 また、学校外の関係機関・団体と連携し、いじめ問題の解決に向けて国民一人一人が取り組んでいく体制づくりに努めるとともに、地域ぐるみの青少年健全育成の推進など様々な取組を進めている。


○ 不登校問題への対応
 不登校問題への対応については、授業が分かりやすく子どもたちが進んで登校したいと思えるような楽しい学校づくりを促すための施策を引き続き推進する。また、不登校等の生徒指導上の諸問題に対応する教員の資質の向上を図るための研修、スクールカウンセラー制度の活用などによる教育相談体制の充実を図っている。さらに、適応指導教室や民間施設における適応指導を通じた学校復帰のための支援方策の在り方についての調査研究を新たに実施するとともに、研究者グループに委託している不登校生徒であった者の実態調査の結果も待って、不登校問題への対応策について検討を行っている。


○ カウンセリングの充実[再掲]
 スクールカウンセラーのより効果的な活用方法に関する調査研究を進め、その上で、スクールカウンセラーの今後の在り方について検討を行う。
 また、スクールカウンセラーの質・量の確保を図るため、大学の自主的判断を前提としつつ、臨床心理士等の高等教育機関における養成の充実を図る。
 なお、高度な専門性を備えた臨床心理士の国家資格制度の創設を含め厚生省等関係省庁と連携して検討を進める。
 子どもの心の居場所をつくるため、余裕教室などを活用して「心の教室」とも言うべきカウンセリングルームの設置を促進するとともに、外部から先進的な医学知識、健康問題の状況などをタイムリーに収集し、子どもや保護者からの相談に応じる体制を強化するため、「心の教室」へのコンピュータの設置を促進している。
 また、悩み等について気軽に相談し、ストレスを和らげることができるよう、養護教諭、学校栄養職員、学校医などのほか、「心の教室相談員」として教職経験者や青少年団体指導者、ボランティアなどの協力を得て、カウンセリングの充実を図っている。


○ 薬物乱用問題への対応
 薬物乱用対策推進本部(本部長:内閣総理大臣)が策定した「薬物乱用防止五か年戦略」を踏まえ、学校においては、教育活動全体を通じ、校長を中心に、教諭、養護教諭、学校医、学校薬剤師はもとより、地域の人材、関係機関等の協力を得て、薬物を乱用しない態度の育成を積極的に推進している。
 このため、警察職員や麻薬取締官OB等の専門家の協力を得て、全ての高等学校及び中学校において年に1回は薬物乱用防止教室を開催するよう努めるとともに、小学校においても薬物乱用防止教室の開催を推進することとし、指導者(講師)のための講習会の開催やマニュアルの作成を進めている。
 また、競技場等の大型ディスプレイを活用した広報啓発活動の推進、小学生を対象とした薬物乱用防止教育教材の作成を通じて、薬物乱用防止教育の充実に資する。
 さらに、新学習指導要領において、新たに、小学校の教科「体育」においても、薬物乱用防止に関する指導を行うこととしたところであり、また、中学校や高等学校においても、その指導内容の充実を図っている。


○ 子どもの電話24時間相談体制の整備
 子どもに対する相談体制の充実を図るため、他の各種相談機関や関係機関と連携を図り、ボランティアによる相談員の協力を得て、電話等を利用して24時間子どもの悩みに応えることができるような体制づくりを推進している。


○ 有害情報への取組
 一部のテレビなどのメディア上の子どもたちに対する有害情報の実態について、PTAが3ヶ年計画で実施する全国モニタリング調査を支援するなど、子どもたちを有害情報から守る取組を進めている。


○ 社会環境の浄化に関する地域を挙げた取組の充実
 青少年を取り巻く社会環境の浄化に関し、PTA、青少年団体等の民間団体がネットワークを結成し、学校、警察等の関係機関と連携を図りながら、有害環境の浄化、関係業界への働きかけ等地域を挙げた取組の充実を図っている。


○ 心豊かな子どもたちをはぐくむための国民的機運の醸成
 家庭教育の重要性を改めて訴えるとともに、家庭や地域社会全体で子どもと触れ合い話し合う機会を充実し、大人たちが手を携えて心豊かな子どもたちをはぐくむため、広く関係省庁や民間企業・団体の協賛を得て実施している「[子どもと話そう]全国キャンペーン」をさらに推進し、国民的機運を醸成している。
 そのため、家庭教育の充実などについてのフォーラム・協議会の開催や、父親の家庭教育への参加を促進するための経済界への働きかけなどの取組を充実している。
 また、心の教育に関し、地域で様々な活動をしている青少年団体等の取組や全国的規模の青少年団体等による普及啓発活動を支援する「子どもの「心の教育」全国アクションプラン」を展開している。





4.留学生交流等国際化の推進

 国際化が急速に進展する大競争時代の中で、世界各国と共生しつつ我が国の経済・社会の一層の発展・成熟を期するためには、日本人としての自覚とともに国際的な視野と経験を身に付け、21世紀の国際社会の中で世界に貢献しつつ主体的に生きる日本人を育成していくことが肝要である。また、我が国の教育機関が国際的に開かれたものとなり、人類の共有財産としての知識・技術の発展に貢献することが重要である。教育改革においては、このような国際化に対応した教育の在り方を実現していかなければならない。このためには、人的交流や教育研究機関の交流協力を推進することが不可欠であり、留学生交流、教員等の国際体験、研究者交流、国際機関を通じた協力、開発途上国に対する教育協力、外国人子女教育、外国人に対する日本語教育などの諸方策を推進するとともに、英語をはじめとする外国語教育の改善を図っている。



(1) 留学生交流の推進

○ 留学生交流の推進
 国際理解の増進、我が国と諸外国の相互の教育研究水準の向上、途上国の人材養成への貢献を進める観点から、我が国では、昭和58年以来留学生受入れ10万人計画のもとに各種の施策を総合的に推進しており、専修学校の専門課程を含めた高等教育機関への留学生受入れ体制の充実を図る。
 平成10年7月から、アジア通貨危機の影響を受けた私費留学生に対しての緊急的な支援措置として、学習奨励費(奨学金)を支給したほか、学校法人等に対し留学生宿舎建設奨励金の交付を行うとともに、平成10年9月から、法務省において、留学生の資格外活動許可の取扱いが変更され、従来より柔軟に留学生がアルバイトを行うことができる措置が講じられたところであり、さらに取組を進める。また、平成10年12月から、21世紀に向け、留学生等による高度で多様な知的交流活動を通じた我が国の知的資産の形成と知的国際貢献の拠点を目指す国際研究交流大学村(略称:国際大学村)を科学技術庁、通商産業省と連携して建設することとしており、引き続き準備を進めている。
 さらに、平成11年3月の留学生政策懇談会の報告では、留学生受入れ10万人計画を今後とも維持し、量的拡充とともに、一人一人を大事にする質的充実を一層重視することを提言している。そして、今後の施策の重点として、@大学の質的充実のための構造改革の推進、A世界に開かれた留学制度の構築、B官民一体となった留学生支援の充実を示している。今後、この提言に沿って、ア)アジア諸国等の将来の指導者を養成するヤング・リーダーズ・プログラムや、母国で一定の高等教育を受けた後、我が国の大学に編入学するツイニング・プログラムなど、新たな教育プログラムの創設について平成11年度から検討に着手している。イ)外国人留学生の大学入学選考の改善に資するため、現在検討を進めている新たな試験の在り方について、平成11年度中に結論を得るほか、高等学校相当の学校教育が12年未満で修了する国からの留学生に対し、必要な準備教育を行う機関の指定を平成11年度から拡大している。また、アジア太平洋諸国の大学間交流の推進を図るため、アジア太平洋大学交流機構(UMAP)の単位互換制度に基づき、平成11年度から試行に取り組んでいる。ウ)関係省庁・大学・地方公共団体・公益法人・企業等との一層の連携協力を図りつつ、官民一体となって、奨学金の整備と留学生宿舎の確保を推進するなど施策の具体化を図っている。



(2) 英語をはじめとする外国語教育の改善

○ 学校における英語をはじめとする外国語教育と国際理解教育の充実[再掲]
 新学習指導要領において、中・高等学校における外国語教育について、「外国語」を必修教科として位置付けて、言語の現実的な使用を念頭に置いた実践的コミュニケーション能力の一層の育成を推進する。また、小学校においては、地域や学校の実態等に応じ、新設される「総合的な学習の時間」などで、国際理解教育の一環として、児童が外国語に触れたり、外国の生活や文化などに慣れ親しんだりするなど小学校段階にふさわしい体験的な学習活動が行われるよう、小学校の英会話指導の手引きや英会話指導事例集を作成・配布することなどを検討する。
 また、外国語教育の充実や多様な文化・多元的な価値観を尊重する国際理解教育を進めるため、ネイティブ・スピーカーの活用を図る「語学指導等を行う外国青年招致事業」(JETプログラム)を推進している。
 さらに、地域に在住する外国人(ネイティブ・スピーカー)や海外勤務経験者等を特別非常勤講師等あるいは学校支援ボランティアとして活用することを推進している。
 また、英語のコミュニケーション能力の育成に関し、実践的指導力を有する教員を養成するため、衛星通信(CS)を活用した英語教員の研修の実施を検討するなど、英語担当教員の各種研修(海外・国内)の推進を図っている。



(3) 教員等の国際体験・国際貢献の充実

○ 教員等交流事業の推進
 教育の国際化のためには言語や文化の相互理解はもとより、教員の国際体験機会の提供が重要であり、教員の国際交流を推進している。
 また、日本人教員等と外国人教員等との交流の機会として、平成9年度から開始された米国人教員等を招致するフルブライト・メモリアル・プログラムを推進している。


○ 教員による教育協力への参加奨励・促進等
 教員による国際貢献と国際体験の機会を充実するため、青年海外協力隊などの国際教育協力活動への教員の参加を奨励し、参加に当たっての制約を緩和すべく検討する。なお、NGO(非政府組織)が行う教育関係の海外ボランティア活動との連携・協力や支援の在り方についても検討する。



(4) 学術国際交流の推進

○ 研究者交流の推進
 研究者交流を進めることによって、異なる考え方・研究方法等を融合し、国際的な視野と経験を持つ研究者の養成を図る観点から、外国人研究者の受入れ等を推進するとともに、外国人研究者の宿泊施設等受入れ体制の整備を行っている。
 また、我が国の優れた若手研究者の諸外国への派遣等を推進している。
 さらに、世界の第一線級の研究者が参加する国際シンポジウムの開催を着実に推進している。


○ 国際共同研究の推進
 二国間協定や多国間協定に基づく、例えば高エネルギー物理学や医学分野等における国際共同研究や、ユネスコ、ICSU(国際学術連合)等国際的な機関が提唱する、例えば海洋学、生態学などの環境分野等における国際共同研究を推進している。



(5) 教育の改善充実に向けた国際交流・協力の推進

○ 主要国首脳会議(サミット)を通じた教育改革の推進等
 平成11年6月にケルン(ドイツ)で開催された主要国首脳会議においては、教育が主要テーマの一つとして取り上げられ、成果として、首脳共同宣言(コミュニケ)及び別途採択された「ケルン憲章−生涯学習の目的と希望−」において、教育の重要性と今後の方向性が確認された。
 これらを受け、他の先進諸国と協調しながら引き続き教育改革を推進し、生涯学習社会の実現に努める。

○ 国際機関を通じた交流・協力の推進
 多国間の国際的枠組みを活用し、教育を通じた国際貢献を進めるとともに、我が国の教育の活性化を促すため、ユネスコ、OECD、APEC、EU等を通じた諸外国の教育関係者との交流・協力を進める。特にOECDとの協力では、平成11年5月に非公式教育大臣会合を日本で開催するなど、積極的な貢献に努めている。


○ 二国間の交流・協力の推進
 文部大臣から米国副大統領への提案(平成9年3月)及び日米文化教育交流会議(カルコン)での合意(平成9年5月)に基づき、日米間で教育改革に関する共同研究を行うなど、各国との交流・協力を推進している。
 また、平成10年秋の韓国の金大中大統領、中国の江沢民国家主席の訪日の際の合意を踏まえ、韓国・中国との留学生交流・青少年交流等についてさらなる交流を推進している。


○ 開発途上国に対する教育協力
 開発途上国の人づくりに対する協力のため、国立大学における人材養成の推進を図るとともに、国際協力事業団(JICA)を通じた大学教官等の専門家の派遣や国立大学等における外国人研修員の受入れを推進している。
 また、今後増え続ける開発途上国からの人づくり支援要請に応えるため、国際教育協力の推進のためのネットワークの拠点的機能を果たす国際教育協力研究センターを国立大学に整備している。


○ 海外子女教育の推進
 在外教育施設に在籍する児童生徒が通学している現地校において不適応を起こすなどの問題に対応するため、在外教育施設におけるカウンセラーの委託等を通じ、海外に在留する邦人の子どもたちに対するカウンセリング機能の強化を図るとともに、インターネット等の情報通信ネットワークを活用し、多様な教材を提供したり、指導を行っている。



(6) 外国人子女教育の推進及び外国人のための日本語教育の推進

○ 外国人子女教育の推進
 日本における外国人の急増を踏まえ、日本語指導カリキュラム、日本語能力評価法など外国人児童生徒の我が国の学校生活への円滑な適応に必要な学習システムの開発を進めている。
 また、地域における受入れの中核的役割を果たす学校を中心として、ボランティア団体等の地域の団体とも連携しながら外国人児童生徒に日本語指導等を行う体制の充実を図り、さらに生活面の適応等も含めて教育相談を行い、必要に応じて教員の教育活動にも協力体制を整備するとともに、外国人児童生徒の日本語指導等に関する各種情報を収集・分析・提供するなどの外国人子女教育に関するセンター機能の充実など、受入れ体制の整備を図っている。


○ 外国人のための日本語教育の推進
 日本に在住する外国人の増加や海外における日本語学習者の増加に伴い、国内外の日本語学習者の多様な学習需要に応じた日本語教育の推進を図ることとし、平成13年度までに高度情報化に対応した日本語教育の指針を作成するため、衛星通信やコンピュータなど、高度情報化に伴う新しい情報通信手段を利用した日本語教育の指導内容・方法に関する実証的調査研究を進めている。また、国立国語研究所や国内外の大学、日本語教育関係機関等との連携協力を強化するため、日本語学習支援ネットワークの構築に努めている。





5.教育改革の輪を広げるための経済界等との協議の場などの設定

 この教育改革プログラムの実現については、その着実な実施を図ることが必要であるが、さらにその改革が、社会において理解され、支持される体制を整えることが大切である。
 このため、関係省庁の協力を得ることはもちろんのこと、国公私立学校関係者、PTAや青少年団体等の生涯学習関係団体、経済団体等と文部省との定期的な協議の場を設けることとする。
 特に経済団体との協議においては、「心の教育」の推進、採用などにおける学(校)歴偏重の是正、父親の家庭教育への参加の促進、学校週5日制の完全実施に向けた取組、社会人の生涯学習活動の支援、大学等における教育・研究の推進、科学技術の振興及び産学官の連携、学生・生徒の就職・採用問題、学生・生徒のインターンシップの受け入れ等について連携・協力を求める。
 また、教育改革の輪が広がるよう、教育界、経済界、国や地方公共団体の代表者等によるフォーラムなどを国や地方レベルで定期的に行い、相互の意見や情報を交換する機会を設けることを進める。
 なお、文部省においては、特に、中央教育審議会を中心に関係審議会間の連携を深めるなど効率的・総合的な審議の推進を図るものとする。






進む教育改革


1999/9
「教育改革プログラム」の改訂について


平成11年9月
文  部  省



改訂の趣旨
(1) 前回の改訂以降、中央教育審議会、大学審議会等各審議会等の答申を受け、先の通常国会において成立、改正した学校教育法、地方分権一括法等いくつかの法律の内容を具体的に示すこと。

(2) 平成11年度予算における改革の進捗状況を具体的に示すこと。


改訂のポイント
 (1) 心の教育の充実

○ 中央教育審議会及び生涯学習審議会の答申を踏まえ、子ども放送局の創設、子どもセンターの全国展開、家庭教育手帳の配布等の「全国子どもプラン」の推進、道徳教育の改善充実、心の教室相談員の配置などの実施。

○ 教育課程審議会答申を踏まえ、総合的な学習の時間の創設、選択学習の一層の拡大、道徳教育の改善充実等を内容とする学習指導要領の改訂。

○ 教員養成カリキュラムの改善等を内容とする教育職員免許法を改正し、さらに、教育職員養成審議会の答申を踏まえ、新たな研修休業制度の検討、専修免許状への上進要件の見直しなどの推進。



 (2) 個性を伸ばした多様な選択ができる学校制度の実現

○ 中高一貫教育制度について、中等教育学校の創設等を内容とする学校教育法の改正を行い、平成11年度から実施。

○ 初等中等教育と高等教育との接続の改善について、中央教育審議会で審議。



 (3) 現場の自主性を尊重した学校づくりの促進

○ 中央教育審議会の答申等を踏まえ、教育長の任命承認制度の廃止、都道府県及び指定都市の教育長について教育委員との兼任制の導入、都道府県及び指定都市の教育委員の数の弾力化等を内容とする地方分権一括法の成立。

○ 学級編制の弾力化と教職員配置の在り方等について検討。


 (4) 大学改革と研究振興の推進

○ 大学審議会の答申を踏まえ、4年未満の在学で学部を卒業できる例外措置の導入、国立大学の責任ある組織運営体制の確立等を内容とする学校教育法等の改正。

○ 留学生政策懇願会の報告を踏まえ、量的拡充とともに質的充実の重視、国際研究交流大学村の建設促進。

○ 平成13年の科学技術庁との統合に向けて、学術研究と科学技術研究の総合的展開の推進。



 ※ 今までの策定・改訂の経緯
・ 策  定  平 成9年1月
・ 改  訂(1回目) 9年8月
・ 改  訂(2回目) 10年4月



教育改革プログラム【主要事項】タイムスケジュール(PDF形式)



(大臣官房政策課)

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