● 学校教育法施行規則等の一部を改正する省令の施行について(校長の資格、職員会議、学校評議員関係) 平成12年1月21日 文教地244

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                            文教地第244号
                            平成12年1月21日
各都道府県教育委員会
各都道府県知事
各指定都市教育委員会
各指定都市市長      殿
各国立大学長
国立久里浜養護学校長
                           文部事務次官
                           佐 藤 禎 一


     学校教育法施行規則等の一部を改正する省令の施行について(通知)


 このたび、別添のとおり、「学校教育法施行規則等の一部を改正する省令」(以下「改正省令」という。)が平成12年1月21日文部省令第3号をもって公布され、平成12年4月1日から施行されることとなりました。
 今回の改正の趣旨は、中央教育審議会答申「我が国の地方教育行政の今後の在り方について」(平成10年9月21日)に基づき、これからの学校が、より自主性・自律性を持って、校長のリーダーシップのもと組織的・機動的に運営され、幼児児童生徒の実態や地域の実情に応じた特色ある学校づくりを展開することができるよう、校長及び教頭の資格要件を緩和するとともに、職員会議及び学校評議員に関する規定を設けるものであります。
 この趣旨に即して、各学校において、学校運営が適正に進められ、地域の実情等に応じた教育活動が一層活発になるよう指導の徹底にご留意願います。
 改正省令の概要及び留意事項等は下記のとおりですので、関係する規程の整備等、事務処理上遺漏のないよう願います。また、都道府県教育委員会及び都道府県知事におかれては、域内の市町村教育委員会、所管又は所轄の学校その他の教育機関及び学校法人に対して、本改正の周知を図るとともに、適切な事務処理が図られるよう配慮願います。


                     記


1 改正の趣旨
(校長及び教頭の資格関係)
 校長(学長及び高等専門学校の校長を除く。以下同じ。)及びこれを補佐する教頭については、教育に関する理念や識見を有し、地域や学校の状況・課題を的確に把握しながら、リーダーシップを発揮するとともに、職員の意欲を引き出し、関係機関等との連携・折衝を適切に行い、組織的・機動的な学校運営を行うことができる資質を持つ優れた人材を確保することが重要である。このため、教育に関する職の経験や組織運営に関する経験、能力に着目して、地域や学校の実情に応じ、幅広く人材を確保することができるよう、学校教育法施行規則(以下「省令」という。)における校長及び教頭の資格要件を緩和するものであること。

(職員会議関係)
 職員会議は、校長を中心に職員が一致協力して学校の教育活動を展開するため、学校運営に関する校長の方針や様々な教育課題への対応方策についての共通理解を深めるとともに、幼児児童生徒の状況等について担当する学年・学級・教科を超えて情報交換を行うなど、職員間の意思疎通を図る上で、重要な意義を有するものである。しかしながら、職員会議についての法令上の根拠が明確でないことなどから、一部の地域において、校長と職員の意見や考え方の相違により、職員会議の本来の機能が発揮されない場合や、職員会議があたかも意思決定権を有するような運営がなされ、校長がその職責を果たせない場合などの問題点が指摘されていることにかんがみ、職員会議の運営の適正化を図る観点から、省令に職員会議に関する規定を新たに設け、その意義・役割を明確にするものであること。

(学校評議員関係)
 学校が地域住民の信頼に応え、家庭や地域と連携協力して一体となって子どもの健やかな成長を図っていくためには、今後、より一層地域に開かれた学校づくりを推進していく必要がある。こうした開かれた学校づくりを一層推進していくため、保護者や地域住民等の意向を把握・反映し、その協力を得るとともに、学校運営の状況等を周知するなど学校としての説明責任を果たしていく観点から、省令において新たに規定を設け、学校や地域の実情等に応じて、その設置者の判断により、学校に学校評議員を置くことができることとするものであること。


2 改正省令の概要
(校長及び教頭の資格関係)
(1)省令第8条第1号に規定する教育に関する職(以下「教育に関する職」という。)の範囲に、専修学校の校長及び教員、学校教育法第1条に規定する学校(以下「学校」という。)の実習助手、寮母及び学校栄養職員(共同調理場の当該職員を含む。)の職を加えるとともに、児童自立支援施設に係る規定の整備を行ったこと(省令第8条第1号)。
(2)10年以上「教育に関する職」にあつたことを、校長の資格に加えたこと(省令第8条第2号)。
(3)国立若しくは公立の学校の校長の任命権者又は私立学校の設置者は、学校の運営上特に必要がある場合には、第8条又は第9条の規定するもののほか、第8条に掲げる校長の資格を有する者と同等の資質を有すると認める者を校長として任命し又は採用することができることとしたこと(省令第9条の2)。
(4)教頭の資格については、第8条の校長の規定を準用することとしたこと(省令第10条)。

(職員会議関係)
(1)小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、盲学校、聾学校、養護学校及び幼稚園に、設置者の定めるところにより、校長の職務の円滑な執行に資するため、職員会議を置くことができることとしたこと。また、職員会議は校長が主宰するものであることとしたこと(省令第23条の2、第55条、第65条、第65条の10、第73条の16及び第77条)。
(2)国立大学の附属学校に、学長の定めるところにより、職員会議を置くことができることとしたこと(国立学校設置法施行規則第26条の3)。
(3)国立久里浜養護学校に、職員会議を置くこととし、職員会議に関し必要な事項は、校長が定め、文部大臣の承認を受けるものとしたこと(国立久里浜養護学校組織運営規則第9条)。

(学校評議員関係)
(1)小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、盲学校、聾学校、養護学校及び幼稚園に、設置者の定めるところにより、学校評議員を置くことができることとしたこと。また、学校評議員は、校長の求めに応じ、学校運営に閑し意見を述べることができることとし、当該学校の職員以外の者で教育に関する理解及び識見を有するもののうちから、校長の推薦により、当該学校の設置者が委嘱することとしたこと。(省令第23条の3、第55条、第65条、第65条の10、第73条の16及び第77条)
(2)国立大学の附属学校に、学長の定めるところにより、学校評議員を置くことができることとし、学校評議員は、その附属学校が附属する国立大学の職員以外の者で教育に関する理解及び識見を有するもののうちから、校長の推薦により、学長が委嘱することとしたこと(国立学校設置法施行規則第26条の4)。
(3)国立久里浜養護学校に、学校評議員を置くこととし、学校評議員に関し必要な事項は、文部大臣が定めることとしたこと(国立久里浜養護学校組織運営規則第10条)。

(その他)
(1)関係省令について所要の規定の整備を行ったこと。
(2)改正省令の施行日を平成12年4月1日としたこと。


3 留意事項
(校長及び教頭の資格関係)
(1)今回の改正は、学校の管理運営についての権限と責任を有する校長と、これを補佐する教頭に、幅広く人材を確保する観点から行うものであり、これにより、学校において、優れた資質能力を有する校長や教頭を中心に全職員が一致協力して、個性や特色ある教育活動が展開されることを期待するものであること。
(2)今回の改正により、教頭について、新たに各相当学校の教諭の免許状を有しない者を登用することができることとなるが、教頭が児童生徒の教育をつかさどる場合には、各相当学校の相当教科の教諭の免許状が必要であるとの従来の解釈及び運用が変更されるものではないこと。
(3)省令第9条の2については、学校において、幼児児童生徒の実態や地域の実情に応じた個性や特色ある教育活動を展開するため、学校の運営上特に必要がある場合に、学校の管理運営についての権限と責任を有する校長について、その職務にかんがみ特にその資格要件を緩和したものであること。

(職員会議関係)
(1)今回省令において規定した職員会議は、学校教育法第28条第3項等において「校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する」と規定されている学校の管理運営に関する校長の権限と責任を前提として、校長の職務の円滑な執行を補助するものとして位置付けられるものであることに十分留意すること。
(2)職員会議においては、設置者の定めるところにより、校長の職務の円滑な執行に資するため、学校の教育方針、教育目標、教育計画、教育課題への対応方策等に関する職員間の意思疎通、共通理解の促進、職員の意見交換などを行うことが考えられること。
(3)職員会議を構成する職員の範囲については、設置者の定めるところによることとなるが、教員以外の職員も含め、学校の実情に応じて学校の全ての職員が参加できるようその運営の在り方を見直すこと。
(4)職員会議は校長が主宰するものであり、これは、校長には、職員会議について必要な一切の処置をとる権限があり、校長自らが職員会議を管理し運営するという意味であること。
(5)学校の実態に応じて企画委員会や運営委員会等を積極的に活用するなど、組織的、機動的な学校運営に努めること。

(学校評議員関係)
(1)学校評議員の設置について
 @設置の在り方
 本制度は、地域住民の学校運営への参画の仕組みを新たに制度的に位置付けるものであること、学校や地域の実情に応じて柔軟な対応ができるようにすることが望ましいことから、省令に学校評議員に関する必要な基本的事項のみを定めることとし、これを必置とするものではないこと。なお、省令に規定する学校評議員ではないが、これに類似する仕組みを既に設けている場合、今回の省令改正により、これを廃止又は改正する必要はないこと。
 A設置者の定め
 人数や委嘱期間など学校評議員の具体の在り方については、当該学校の設置者(国立大学の附属学校にあっては学長。以下「設置者等」という。)が定めるものとしたこと。
 B設置形態
 学校評議員は学校毎に置くものであること。また、学校評議員は一人一人がそれぞれの責任において意見を述べるものであること。ただし、設置者等の定めや校長の判断により、必要に応じて、学校評議員が一堂に会して意見交換を行い意見を述べることができる機会を設けるなど、運用上の工夫を講じることにも配慮すること。
(2)学校評議員の運営について
 @校長が意見を求めること
 学校評議員は、校長の学校運営に関する権限と責任を前提として、校長の求めに応じて意見を述べることができるものとしたこと。このため、校長は、自らの判断により必要と認める場合に意見を求めることとなること。その際、校長は、学校評議員の意見に資するよう、学校評議員に対し、学校の活動状況等について十分説明することが必要であること。また、校長は、学校評議員の意見を参考としつつ、自らの権限と責任において判断し決定を下すものであること。
 A意見を求める事項
 学校評議員は校長が行う学校運営に関し意見を述べるものであることから、学校評議員に意見を求める事項は、校長の権限と責任に属するものであること。また、学校評議員に意見を求める事項としては、例えば、学校の教育目標や計画、教育活動の実施、学校と地域の連携の進め方などといった学校運営の基本方針や重要な活動に関する事項が想定されるものであるが、具体的にどのような事項に関し意見を求めるかについては、校長自らが判断するものであること。
 B具体の運営方法等
 学校評議員の具体の運営は、校長の責任と権限において行われるものであり、その際、校長は、その方法や手続について、設置者等の定める範囲内で必要な規程を定めることが可能であること。
(3)学校評議員の委嘱について
 @構成
 学校評議員については、設置者等及び校長の判断により、学校や地域の実情に応じて、できる限り幅広い分野から委嘱することが望ましいこと。
 A要件
 ア.学校評議員は、校長の求めに応じて校長が行う学校運営に閑し意見を述べるものであることから、教育に関する理解をその要件とするとともに、責任ある判断に基づき意見を述べることが必要であることから、教育に関する識見をその要件としたこと。このような観点から、学校評議員には、保護者や地域住民等を委嘱することを想定しているものであり、児童生徒を委嘱することは想定していないこと。
 イ.学校評議員は、学校外から意見を聞くものであるという観点から、当該学校の職員(国立大学の附属学校にあっては、当該大学の職員)以外から委嘱することとし、その趣旨を明らかにしたものであること。また、教育委員会の委員や教育長その他の職員は、当該学校の設置管理者としての立場からその管理運営に直接又は間接に関係するものであり、このような者を学校評議員として委嘱することは制度上なじまないものであること。
 B推薦や委嘱の手続等
 学校運営に関する設置者及び校長の責任と権限を踏まえ、学校評議員は、校長の推薦により設置者等が委嘱するものとしたこと。
 その推薦や委嘱に係る校長や設置者等の権限を制約するような運用とならないよう留意する必要があること。
 C身分取扱い
 学校評議員の身分取扱いについては、設置者の定めるところによるものであること。その際、守秘義務に関する規定を設けることについても検討する必要があること。
 また、学校評議員の任期については、校長の求めに応じて校長が行う学校運営に閑し意見を述べるものであることを踏まえ、学校や地域の実情に応じて設置者が定めるところによるものであること。

(その他)
 今回の省令改正に伴い、公立学校を設置する教育委員会にあっては、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第33条の規定に基づく教育委員会規則等について必要な規定の整備を行うこと。また、私立学校の設置者にあっても同様に必要な規程の整備を行うこと。

別添(略)



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