● 学校保健法等の一部を改正する法律の公布について 平成20年7月9日 20文科ス第522号



20文科ス第522号 平成20年7月9日
各都道府県教育委員会、各指定都市教育委員会、各都道府県知事、
各指定都市市長、各国公私立大学長、各国公私立高等専門学校長、
大学又は高等専門学校を設置する各地方公共団体の長、
各公立大学法人の理事長、独立行政法人国立高等専門学校機構理事長、
大学又は高等専門学校を設置する各学校法人の理事長、
大学を設置する各学校設置会社の代表取締役、放送大学学園理事長 宛
文部科学省スポーツ・青少年局長(樋口修資)


    学校保健法等の一部を改正する法律の公布について(通知)


 このたび、別添1のとおり、「学校保健法等の一部を改正する法律(平成20年法律第73号)」(以下「改正法」という。)が平成20年6月18日に公布され、平成21年4月1日から施行されることとなりました。
 今回の改正は、メンタルヘルスに関する問題やアレルギー疾患を抱える児童生徒等の増加、児童生徒等が被害者となる事件・事故・災害等の発生、さらには、学校における食育の推進の観点から「生きた教材」としての学校給食の重要性の高まりなど、近年の児童生徒等の健康・安全を取り巻く状況の変化にかんがみ、学校保健及び学校安全に関して、地域の実情や児童生徒等の実態を踏まえつつ、各学校において共通して取り組まれるべき事項について規定の整備を図るとともに、学校の設置者並びに国及び地方公共団体の責務を定め、また、学校給食を活用した食に関する指導の充実を図る等の措置を講ずるものです。
 改正の概要及び留意事項については下記のとおりですので、関係各位におかれましては、その趣旨を十分御理解の上、適切な対応をお願いするとともに、各都道府県教育委員会におかれては、所管の学校及び域内の市町村教育委員会に対して、各都道府県知事におかれては、所轄の学校(専修学校を含む。)及び学校法人等に対する周知を図るようお願いします。
 また、本改正法については、別添2及び別添3のとおり、衆議院文部科学委員会及び参議院文教科学委員会において、それぞれ附帯決議が付されておりますので、これらの点に十分留意されるよう御配慮願います。
 なお、改正法は、関係資料と併せて文部科学省のホームページに掲載しておりますので、御参照ください。また、関係政省令の改正及び関係告示の制定については、追ってこれを行い、その内容については別途通知する予定ですので、予め御承知おき願います。


                   記


第一 改正法の概要

第1 学校保健法の一部改正関係(改正法第1条関係)

一 総則
(1)法律の題名及び目的
 法律の題名を「学校保健安全法」に改めたこと(題名関係)。
 また、本法の目的を、学校における児童生徒等及び職員の健康の保持増進を図るため、学校における保健管理に関し必要な事項を定めるとともに、学校における教育活動が安全な環境において実施され、児童生徒等の安全の確保が図られるよう、学校における安全管理に関し必要な事項を定め、もつて学校教育の円滑な実施とその成果の確保に資することとしたこと。(第1条関係)

(2)国及び地方公共団体の責務
 国及び地方公共団体は、相互に連携を図り、各学校において保健及び安全に係る取組が確実かつ効果的に実施されるようにするため、財政上の措置その他の必要な施策を講ずるものとしたこと。
 国は、各学校における安全に係る取組を総合的かつ効果的に推進するため、学校安全の推進に関する計画の策定その他所要の措置を講ずるものとし、地方公共団体は、国が講ずる措置に準じた措置を講ずるように努めなければならないこととしたこと。(第3条関係)

二 学校保健に関する事項
(1)学校保健に関する学校の設置者の責務
 学校の設置者は、児童生徒等及び職員の心身の健康の保持増進を図るため、学校の施設及び設備並びに管理運営体制の整備充実その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとしたこと。(第4条関係)

(2)学校環境衛生基準
 文部科学大臣は、学校における環境衛生に係る事項について、児童生徒等及び職員の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとし、学校の設置者は、当該基準に照らしてその設置する学校の適切な環境の維持に努めなければならないものとしたこと。
 校長は、当該基準に照らし、適正を欠く事項があると認めた場合には、遅滞なく、改善に必要な措置を講じ、又は当該措置を講ずることができないときは、学校の設置者に対し、その旨を申し出るものとしたこと。(第6条関係)

(3)保健指導
 養護教諭その他の職員は、相互に連携して、児童生徒等の心身の状況を把握し、健康上の問題があると認めるときは、遅滞なく、児童生徒等に対して必要な指導を行うとともに、必要に応じ、その保護者に対して必要な助言を行うものとしたこと。(第9条関係)

(4)地域の医療機関等との連携
 学校においては、救急処置、健康相談又は保健指導を行うに当たつては、必要に応じ、地域の医療機関その他の関係機関との連携を図るよう努めるものとしたこと。(第10条関係)

三 学校安全に関する事項
(1)学校安全に関する設置者の責務
 学校の設置者は、児童生徒等の安全の確保を図るため、学校において、事故、加害行為、災害等(以下「事故等」という。)により児童生徒等に生ずる危険を防止し、及び事故等により児童生徒等に危険又は危害が現に生じた場合(「以下危険等発生時」という。)において適切に対処することができるよう、学校の施設及び設備並びに管理運営体制の整備充実その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとしたこと。(第26条関係)

(2)総合的な学校安全計画の策定及び実施
 学校においては、施設及び設備の安全点検、児童生徒等に対する通学を含めた学校生活その他の日常生活における安全に関する指導等について計画を策定し、これを実施しなければならないこととしたこと。(第27条関係)

(3)学校環境の安全の確保
 校長は、学校の施設又は設備について、児童生徒等の安全の確保を図る上で支障となる事項があると認めた場合には、遅滞なく、改善に必要な措置を講じ、又は当該措置を講ずることができないときは、学校の設置者に対し、その旨を申し出るものとしたこと。(第28条関係)

(4)危険等発生時対処要領の作成等
 学校においては、危険等発生時において学校の職員がとるべき措置の具体的内容及び手順を定めた対処要領を作成することとし、校長は、対処要領の職員に対する周知、訓練の実施その他の危険等発生時において職員が適切に対処するために必要な措置を講ずるものとしたこと。
 学校においては、事故等により児童生徒等に危害が生じた場合において、当該児童生徒等及び関係者の心身の健康を回復させるため、必要な支援を行うものとしたこと。(第29条関係)

(5)地域の関係機関等との連携
 学校においては、児童生徒等の保護者、警察署その他の関係機関、地域の安全を確保するための活動を行う団体、地域住民等との連携を図るよう努めるものとしたこと。(第30条関係)

四 その他
 専修学校における保健管理及び安全管理について、関係する規定を準用することとしたこと。(第32条関係)

第2 学校給食法の一部改正関係(改正法第2条関係)

(1)法律の目的
 本法の目的を、学校給食が児童及び生徒の心身の健全な発達に資するものであり、かつ、児童及び生徒の食に関する正しい理解と適切な判断力を養う上で重要な役割を果たすものであることにかんがみ、学校給食及び学校給食を活用した食に関する指導の実施に関し必要な事項を定め、もつて学校給食の普及充実及び学校における食育の推進を図ることとしたこと。(第1条関係)

(2)学校給食の目標
 学校給食を実施するに当たつては、義務教育諸学校における教育の目的を実現するために、次に掲げる目標が達成されるよう努めなければならないこととしたこと。
 1 適切な栄養の摂取による健康の保持増進を図ること。
 2 日常生活における食事について正しい理解を深め、健全な食生活を営むことができる判断力を培い、及び望ましい食習慣を養うこと。
 3 学校生活を豊かにし、明るい社交性及び協同の精神を養うこと。
 4 食生活が自然の恩恵の上に成り立つものであることについての理解を深め、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
 5 食生活が食にかかわる人々の様々な活動に支えられていることについての理解を深め、勤労を重んずる態度を養うこと。
 6 我が国や各地域の優れた伝統的な食文化についての理解を深めること。
 7 食料の生産、流通及び消費について、正しい理解に導くこと。(第2条関係)

(3)学校給食実施基準
 文部科学大臣は、学校給食の適切な実施のために必要な事項について維持されることが望ましい基準を定めるものとし、学校給食を実施する義務教育諸学校の設置者は、当該基準に照らして適切な学校給食の実施に努めるものとしたこと。(第8条関係)

(4)学校給食衛生管理基準
 1 文部科学大臣は、学校給食の適切な衛生管理を図る上で必要な事項について維持されることが望ましい基準を定めるものとし、学校給食を実施する義務教育諸学校の設置者は、当該基準に照らして適切な衛生管理に努めるものとしたこと。
 2 義務教育諸学校の校長は、1の基準に照らし、適正を欠く事項があると認めた場合には、遅滞なく、改善に必要な措置を講じ、又は当該措置を講ずることができないときは、学校の設置者に対し、その旨を申し出るものとしたこと。(第9条関係)

(5)学校給食を活用した食に関する指導
 1 栄養教諭は、児童又は生徒が健全な食生活を自ら営むことができる知識及び態度を養うため、学校給食を活用した食に関する実践的な指導を行うものとし、この場合において、校長は、当該指導が効果的に行われるよう、学校給食と関連付けつつ食に関する指導の全体的な計画を作成することその他の必要な措置を講ずるものとしたこと。
 2 栄養教諭が1の指導を行うに当たつては、地域の産物を学校給食に活用することその他の創意工夫を行い、地域の食文化、食に係る産業又は自然環境の恵沢に対する児童又は生徒の理解の増進を図るよう努めるものとしたこと。
 3 栄養教諭以外の学校給食栄養管理者は、栄養教諭に準じて、学校給食を活用した食に関する指導を行うよう努めるものとしたこと。(第10条関係)

第3 夜間課程を置く高等学校における学校給食に関する法律の一部改正関係(改正法第3条関係)
 夜間課程を置く高等学校における学校給食の実施について、学校給食実施基準及び学校給食衛生管理基準に関する規定を準用することとしたこと。(第7条関係)

第4 特別支援学校の幼稚部及び高等部における学校給食に関する法律の一部改正関係(改正法第4条関係)
 特別支援学校の幼稚部及び高等部における学校給食の実施について、学校給食実施基準及び学校給食衛生管理基準に関する規定を準用することとしたこと。(第6条関係)

第5 施行期日等
 1 この法律は、平成21年4月1日から施行すること。(附則第1条関係)
 2 政府は、この法律の施行後5年を経過した場合において、この法律による改正後の規定の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。(附則第2条関係)
 3 この法律の施行に伴い、関係法律に関し、所要の規定の整備を行うこと。(附則第3条から第11条まで関係)
 4 その他所要の改正を行うこと。

第二 留意事項

第1 学校保健安全法関連

一 学校保健及び学校安全に共通する留意事項
(1)施策の推進に当たっての配慮
 学校保健及び学校安全に係る施策の推進に当たっては、学校の実情や児童生徒等の発達段階、心身の状況、障害の有無について適切に配慮しつつ、校長の下で組織的な対応を図るとともに、各種の関係通知、文部科学省や関係団体が作成した報告書、指導用参考資料、調査結果等(別添4参照)に御留意いただき、適切な対応に努められたいこと。

(2)国及び地方公共団体の責務について(第3条)
 1 第1項において、国及び地方公共団体が学校保健及び学校安全に関して講ずべき必要な施策としては、例えば、物的条件や人的体制の整備充実に係る財政上又は法制上の措置、通知や各種会議等を通じた情報提供や指導助言、指導用参考資料や実践事例集の作成・配布、関係教職員を対象とした研修会の開催などが考えられること。
 また、文部科学省としては、学校保健、学校安全、食育・学校給食に関する各般の施策を引き続き推進することとしており、地方公共団体においても、これらの施策を参考にしつつ、適切な対応に努められたいこと。
 2 地方公共団体においては、第2項の規定に基づき新たに国が策定することとなる「学校安全の推進に関する計画」やその他国が講ずる所要の措置を参考にしつつ、地域の実情を踏まえた施策の実施に努められたいこと。

(3)学校及びその設置者の連携協力について
 本法において「学校においては」とは、これらの措置の実施をすべて学校長その他の教職員のみの責任とするものではなく、当該学校の管理運営について責任を有する設置者についても併せて果たすべき責務を規定したものであることに留意されたいこと。
 学校の設置者においては、第4条及び第26条の規定に基づき、その設置する学校が本法の規定に基づいて実施すべき各種の措置を円滑に実施することができるよう、当該学校の施設及び設備並びに管理運営体制の整備充実その他の必要な措置を講ずるよう努められたいこと。

二 学校保健に関する留意事項
(4)学校保健に関する学校の設置者の責務について(第4条)
 1 本条は、学校保健に関して学校の設置者が果たすべき役割の重要性にかんがみ、従来から各設置者が実施してきた学校保健に関する取組の一層の充実を図るため、その責務を法律上明確に規定したものであること。
 2 「施設及び設備並びに管理運営体制の整備充実」としては、例えば、保健室の相談スペースの拡充や備品の充実、換気設備や照明の整備、自動体外式除細動器の設置など物的条件の整備、養護教諭やスクールカウンセラーの適切(AED)な配置など人的体制の整備、教職員の資質向上を図るための研修会の開催などが考えられること。

(5)学校保健計画について(第5条)
 1 学校保健計画は、学校において必要とされる保健に関する具体的な実施計画であり、毎年度、学校の状況や前年度の学校保健の取組状況等を踏まえ、作成されるべきものであること。
 2 学校保健計画には、法律で規定された@児童生徒等及び職員の健康診断、A環境衛生検査、B児童生徒等に対する指導に関する事項を必ず盛り込むこととすること。
 3 学校保健に関する取組を進めるに当たっては、学校のみならず、保護者や関係機関・関係団体等と連携協力を図っていくことが重要であることから、学校教育法等において学校運営の状況に関する情報を積極的に提供するものとされていることも踏まえ、学校保健計画の内容については原則として保護者等の関係者に周知を図ることとすること。このことは、学校安全計画についても同様であること。

(6)学校環境衛生基準について(第6条)
 1 第6条の規定に基づき、新たに文部科学大臣が定める学校環境衛生基準については、現行の「学校環境衛生の基準」(平成4年文部省体育局長裁定)の内容を踏まえつつ、各学校や地域の実情により柔軟に対応しうるものとなるよう、今後内容の精査など必要な検討を進め、告示として制定することを予定していること。
 2 学校の環境衛生に関し適正を欠く事項があり、改善措置が必要な場合において、校長より第3項の申出を受けた当該学校の設置者は、適切な対応をとるよう努められたいこと。このことは、第28条に基づく学校の施設設備の改善措置についても同様であること。
 3 学校の環境衛生の維持改善に当たっては、受水槽など環境衛生に関係する施設設備の適切な管理を図るとともに、環境衛生検査に必要な図面等の書類や検査結果の保管について万全を期されたいこと。

(7)保健指導について(第9条)
 1 近年、メンタルヘルスに関する課題やアレルギー疾患等の現代的な健康課題が生ずるなど児童生徒等の心身の健康問題が多様化、深刻化している中、これらの問題に学校が適切に対応することが求められていることから、第9条においては、健康相談や担任教諭等の行う日常的な健康観察による児童生徒等の健康状態の把握、健康上の問題があると認められる児童生徒等に対する指導や保護者に対する助言を保健指導として位置付け、養護教諭を中心として、関係教職員の協力の下で実施されるべきことを明確に規定したものであること。
 したがって、このような保健指導の前提として行われる第8条の健康相談についても、児童生徒等の多様な健康課題に組織的に対応する観点から、特定の教職員に限らず、養護教諭、学校医・学校歯科医・学校薬剤師、担任教諭など関係教職員による積極的な参画が求められるものであること。
 2 学校医及び学校歯科医は、健康診断及びそれに基づく疾病の予防処置、改正法において明確化された保健指導の実施をはじめ、感染症対策、食育、生活習慣病の予防や歯・口の健康つくり等について、また、学校薬剤師は、学校環境衛生の維持管理をはじめ、薬物乱用防止教育等について、それぞれ重要な役割を担っており、さらには、学校と地域の医療機関等との連携の要としての役割も期待されることから、各学校において、児童生徒等の多様な健康課題に的確に対応するため、これらの者の有する専門的知見の積極的な活用に努められたいこと。

三 学校安全に関する留意事項
(8)学校安全に関する学校の設置者の責務について(第26条)
 1 本条は、学校安全に関して学校の設置者が果たすべき役割の重要性にかんがみ、従来から各設置者が実施してきた学校安全に関する取組の一層の充実を図るため、その責務を法律上明確に規定したものであること。
 2 「その設置する学校において」とは、@校舎、運動場など当該学校の敷地内のほか、A当該学校の敷地外であって、学校の設置者の管理責任の対象となる活動が行われる場所(農場など実習施設等)を想定していること。
 なお、通学路における児童生徒等の安全については、通学路を含めた地域社会における治安を確保する一般的な責務は当該地域を管轄する地方公共団体が有するものであるが、本法においては、第27条に規定する学校安全計画に基づき、各学校において児童生徒等に対する通学路における安全指導を行うこととするとともに、第30条において警察やボランティア団体等地域の関係機関・関係団体等との連携に努めることとされていることから、各学校においては適切な対応に努められたいこと。
 3 「加害行為」とは、他者の故意により、児童生徒等に危害を生じさせる行為を指すものであり、学校に侵入した不審者が児童生徒等に対して危害を加えるような場合等を想定していること。
 また、「加害行為」には、いじめや暴力行為など児童生徒同士による傷害行為も含まれるものと考えられること。この場合、いじめ等の発生防止については、基本的には生徒指導の観点から取り組まれるべき事項であるが、いじめ等により児童生徒等が身体的危害を受けるような状態にあり、当該児童生徒等の安全を確保する必要があるような場合には、学校安全の観点から本法の対象となること。
 4 「災害」については、地震、風水害、火災といったすべての学校において対応が求められる災害のほか、津波、火山活動による災害、原子力災害などについても、各学校の所在する地域の実情に応じて適切な対応に努められたいこと。
 5 「事故、加害行為、災害等」の「等」としては、施設設備からの有害物質の発生などが想定されうること。
 6 「施設及び設備並びに管理運営体制の整備充実」としては、例えば、防犯カメラやインターホンの導入など安全管理面からの物的条件の整備、警備員やスクールガード・リーダーの配置など学校安全に関する人的体制の整備、教職員の資質向上を図るための研修会の開催などが考えられること。

(9)学校安全計画について(第27条)
 1 学校安全計画は、学校において必要とされる安全に関する具体的な実施計画であり、毎年度、学校の状況や前年度の学校安全の取組状況等を踏まえ、作成されるべきものであること。
 2 学校においては、生活安全(防犯を含む。)、交通安全及び災害安全(防災)に対応した総合的な安全対策を講ずることが求められており、改正法においては、これらの課題に的確に対応するため、各学校が策定する学校安全計画において、@学校の施設設備の安全点検、A児童生徒等に対する通学を含めた学校生活その他の日常生活における安全指導、B教職員に対する研修に関する事項を必要的記載事項として位置付けたものであること。
 @ 学校の施設設備の安全点検については、校舎等からの落下事故、学校に設置された遊具による事故などが発生していることや近年の地震から想定される被害等も踏まえ、施設設備の不備や危険箇所の点検・確認を行うとともに、必要に応じて補修、修繕等の改善措置(第28条)を講ずることが求められること。
 なお、学校の施設設備の安全管理を行うに当たっては、児童生徒等の多様な行動に対応したものとなるよう留意されたいこと。
 A 児童生徒等に対する安全指導については、児童生徒等に安全に行動する能力を身に付けさせることを目的として行うものであり、児童生徒等を取り巻く環境を安全に保つ活動である安全管理と一体的に取り組むことが重要であること。近年、学校内外において児童生徒等が巻き込まれる事件・事故・災害等が発生していることを踏まえ、防犯教室や交通安全教室の開催、避難訓練の実施、通学路の危険箇所を示したマップの作成など安全指導の一層の充実に努められたいこと。
 B 教職員の研修については、学校安全に関する取組がすべての教職員の連携協力により学校全体として行われることが必要であることを踏まえ、文部科学省が作成している安全教育参考資料や独立行政法人日本スポーツ振興センターが作成している事故事例集等も活用しつつ、また、必要に応じて警察等の関係機関との連携を図りながら、学校安全に関する教職員の資質の向上に努められたいこと。

(10)危険等発生時対処要領の作成等について(第29条)
 1 危険等発生時対処要領は、危険等が発生した際に教職員が円滑かつ的確な対応を図るために作成するものであること。内容としては、不審者の侵入事件や防災をはじめ各学校の実情に応じたものとすること。また、作成後は、毎年度適切な見直しを行うことが必要であること。
 2 第3項の「その他の関係者」としては、事故等により心理的外傷その他の心身の健康に対する影響を受けた保護者や教職員が想定されること。また、「必要な支援」としては、スクールカウンセラー等による児童生徒等へのカウンセリング、関係医療機関の紹介などが想定されること。

第2 学校給食法関連

(1)学校における食育の推進と栄養教諭の配置促進について
 改正法により、法律の目的に「学校における食育の推進」が明確に位置付けられ、学校給食の目標についても食育推進の観点から見直しが行われるとともに、第10条においては、栄養教諭が学校給食を活用した食に関する実践的な指導を行うこととされたところであり、各都道府県教育委員会等においては、このような改正法の趣旨を踏まえ、学校給食を活用しつつ、教育活動全体を通じて学校における食育の更なる推進を図るとともに、学校における食育推進の中核的な役割を担う栄養教諭の一層の配置拡大に努めていただきたいこと。
 なお、このことについては、「栄養教諭の配置促進について」(平成19年7月11日付け19文科ス第156号文部科学省スポーツ・青少年局長及び初等中等教育局長通知並びに19文科ス第157号文部科学事務次官通知)も併せて参照されたいこと。
(2)学校給食における地場産物の活用の推進(第10条第2項)
 栄養教諭が学校給食を活用した食に関する実践的な指導を行うに当たり、学校給食において地場産物を活用することは、地域の自然や環境、食文化、産業について理解を深めたり、生産者や生産過程を理解し、食に携わる人々や食べ物への感謝の気持ちを抱くことができるなど教育的意義を有するものであることから、学校給食実施校におかれては、学校給食における地場産物の積極的な活用に配慮いただきたいこと。また、米飯給食は、日本人の伝統的食生活の根幹である米飯の正しい食習慣を身に付けさせたり、我が国の優れた伝統的な食文化についての理解を深めること(第2条第6号)ができるなどの教育的意義を有するものであり、引き続きその普及・定着に努められたいこと。
 なお、学校給食の食材として具体的にどのような食材を用いるかについては、児童生徒の健康状態、家庭における食生活、生活活動の実態、食品の安全性の確保など地域の実情等を踏まえ、学校給食実施者が適切に判断すべきものであること。

(3)学校給食実施基準及び学校給食衛生管理基準(第8条及び第9条)
 1 第8条及び第9条の規定に基づき、新たに文部科学大臣が定める学校給食実施基準及び学校給食衛生管理基準については、現行の「学校給食実施基準」(昭和29年文部省告示第90号)及び「学校給食衛生管理の基準」(平成9年文部省体育局長通知)の内容を踏まえつつ、各学校や地域の実情により柔軟に対応しうるものとなるよう、今後内容の精査など必要な検討を進め、告示として制定することを予定していること。
 2 学校給食の衛生管理上適正を欠く事項があり、改善措置が必要な場合において、校長又は共同調理場の長より第3項の申し出を受けた当該学校又は共同調理場の設置者は、適切な対応をとるよう努められたいこと。
 3 学校給食の衛生管理に関しては、食の安全を揺るがす様々な事案の発生が報告されている現状を踏まえ、より安全で安心な食事を児童生徒に提供するため、今後とも、学校給食の衛生管理の徹底に努めていただきたいこと。



(参考)文部科学省ホームページアドレス
学校保健法等の一部を改正する法律関係資料(概要・法律・新旧対照表)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/kakutei/08040703.htm
(ホーム>政策関連情報>国会提出法律>第169回国会における文部科学省成立法律)

(別添1)官報
(別添2)附帯決議(衆議院)
(別添3)附帯決議(参議院)
(別添4)関係通知等



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