● いじめ防止対策推進法の公布について 平成25年6月28日 25文科初第430号



25文科初第430号 平成25年6月28日
各都道府県教育委員会、各指定都市教育委員会、各都道府県知事、附属学校を置く各国立大学法人学長、独立行政法人国立高等専門学校機構理事長、各私立高等専門学校を設置する学校法人の長、小中高等学校を設置する学校設置会社を、所轄する構造改革特別区域法第12条第、1項の認定を受けた各地方公共団体の長 宛
文部科学省初等中等教育局長(布村幸彦)、文部科学省高等教育局長(板東久美子)


    いじめ防止対策推進法の公布について(通知)


 このたび,第183回国会(常会)においていじめ防止対策推進法(以下「法」という。)が成立し,平成25年6月28日に,平成25年法律第71号として公布されました。
 この法律は,いじめが,いじめを受けた児童等の教育を受ける権利を著しく侵害し,その心身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を与えるのみならず,その生命又は身体に重大な危険を生じさせるおそれがあるものであることに鑑み,いじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進するため,いじめの防止等のための対策に関し,基本理念を定め,国及び地方公共団体等の責務を明らかにし,並びにいじめの防止等のための対策に関する基本的な方針の策定について定めるとともに,いじめの防止等のための対策の基本となる事項を定めるものであり,公布の日から起算して3月を経過した日から施行することとされております。
 今回公布された法においては,国に対し,いじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針(以下「いじめ防止基本方針」という。)の策定を求めているとともに,地方公共団体に対しては,いじめ防止基本方針を参酌し,その地域の実情に応じた同様の基本的な方針(以下「地域いじめ防止基本方針」という。)の策定に努めるよう求め,また,学校に対しては,いじめ防止基本方針又は地域いじめ防止基本方針を参酌し,その学校の実情に応じた同様の基本的な方針の策定を求めています。さらに,学校の設置者及びその設置する学校が講ずべきいじめの防止等に関する措置や,重大事態への対処等について規定しております。
 文部科学省においては,今後,法に基づき,いじめ防止基本方針の策定をはじめとして,いじめの問題に関する対策の総合的な策定と実施を一層推進してまいります。
 各関係機関におかれては,法の意義を御理解の上,いじめの問題に取り組むに当たって格別の御協力を賜るようお願いします。
 なお,この法については,衆議院文部科学委員会及び参議院文教科学委員会において附帯決議が付されております。
 都道府県・指定都市教育委員会にあっては所管の学校,域内の市区町村教育委員会及び市町村長に対して,都道府県知事にあっては所轄の私立学校,学校法人及び公立大学法人の設置する公立高等専門学校に対して,国立大学法人学長にあっては設置する附属学校に対して,独立行政法人国立高等専門学校機構理事長にあっては,設置する国立高等専門学校に対して,各私立高等専門学校を設置する学校法人の長にあっては,設置する私立高等専門学校に対して,構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の長にあっては認可した学校に対して,周知方お願いします。

添付資料
別添1 いじめ防止対策推進法(概要)
別添2 いじめ防止対策推進法のあらまし(平成25年6月28日付け官報)
別添3 いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号)[略]
別添4 いじめ防止対策推進法案に対する附帯決議 (衆議院文部科学委員会)
別添5 いじめ防止対策推進法案に対する附帯決議 (参議院文教科学委員会)



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別添1 いじめ防止対策推進法(概要)

一 総則

1 「いじめ」を「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校(※)に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係にある他の児童生徒が行う心理的又  は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」と定義すること。
 ※小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校(幼稚部を除く。)
2 いじめの防止等のための対策の基本理念、いじめの禁止、関係者の責務等を定めること。

二 いじめの防止基本方針等

1 国、地方公共団体及び学校の各主体による「いじめの防止等のための対策に関する基本的な方針」の策定(※)について定めること。
※国及び学校は策定の義務、地方公共団体は策定の努力義務
2 地方公共団体は、関係機関等の連携を図るため、学校、教育委員会、児童相談所、法務局、警察その他の関係者により構成されるいじめ問題対策連絡協議会を置くことができること。

三 基本的施策・いじめの防止等に関する措置

1 学校の設置者及び学校が講ずべき基本的施策として(1)道徳教育等の充実、(2)早期発見のための措置、(3)相談体制の整備、(4)インターネットを通じて行われるいじめに対する対策の推進を定めるとともに、国及び地方公共団体が講ずべき基本的施策として(5)いじめの防止等の対策に従事する人材の確保等、(6)調査研究の推進、(7)啓発活動について定めること。
2 学校は、いじめの防止等に関する措置を実効的に行うため、複数の教職員、心理、福祉等の専門家その他の関係者により構成される組織を置くこと。
3 個別のいじめに対して学校が講ずべき措置として(1)いじめの事実確認、(2)いじめを受けた児童生徒又はその保護者に対する支援、(3)いじめを行った児童生徒に対する指導又はその保護者に対する助言について定めるとともに、いじめが犯罪行為として取り扱われるべきものであると認めるときの所轄警察署との連携について定めること。
4 懲戒、出席停止制度の適切な運用等その他いじめの防止等に関する措置を定めること。

四 重大事態への対処

1 学校の設置者又はその設置する学校は、重大事態に対処し、及び同種の事態の発生の防止に資するため、速やかに、適切な方法により事実関係を明確にするための調査を行うものとすること。
2 学校の設置者又はその設置する学校は、1の調査を行ったときは、当該調査に係るいじめを受けた児童生徒及びその保護者に対し、必要な情報を適切に提供するものとすること。
3 地方公共団体の長等(※)に対する重大事態が発生した旨の報告、地方公共団体の長等による1の調査の再調査、再調査の結果を踏まえて措置を講ずること等について定めること。
 ※公立学校は地方公共団体の長、国立学校は文部科学大臣、私立学校は所轄庁である都道府県知事

五 雑則

学校評価における留意事項及び高等専門学校における措置に関する規定を設けること。
(一から五までのいずれも、公布日から起算して三月を経過した日から施行)



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別添2 いじめ防止対策推進法のあらまし(平成25年6月28日付け官報)
◇いじめ防止対策推進法(法律第七十一号)(文部科学省)

1 総則

(一) 目的
 この法律は、いじめが、いじめを受けた児童等の教育を受ける権利を著しく侵害し、その心身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を与えるのみならず、その生命又は身体に重大な危険を生じさせるおそれがあるものであることに鑑み、児童等の尊厳を保持するため、いじめの防止等のための対策に関し、基本理念を定め、国及び地方公共団体等の責務を明らかにし、いじめの防止等のための対策に関する基本的な方針の策定について定めるとともに、いじめの防止等のための対策の基本となる事項を定めることにより、いじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進することを目的とすることとした。(第一条関係)
(二) 定義
 この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいうこととした。(第二条関係)
(三) 基本理念
 いじめの防止等のための対策は、いじめが全ての児童等に関係する問題であることに鑑み、児童等が安心して学習その他の活動に取り組むことができるよう、学校の内外を問わずいじめが行われなくなるようにすることを旨として行われなければならないこととした。(第三条関係)
(四) いじめの禁止
 児童等は、いじめを行ってはならないこととした。(第四条関係)

2 いじめ防止基本方針等

(一) いじめ防止基本方針
 文部科学大臣は、関係行政機関の長と連携協力して、いじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針を定めることとした。(第一一条関係)
(二) 地方いじめ防止基本方針
 地方公共団体は、いじめ防止基本方針を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体におけるいじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針を定めるよう努めることとした。(第一二条関係)
(三) 学校いじめ防止基本方針
 学校は、いじめ防止基本方針又は地方いじめ防止基本方針を参酌し、その学校の実情に応じ、当該学校におけるいじめの防止等のための対策に関する基本的な方針を定めることとした。(第一三条関係)
(四) いじめ問題対策連絡協議会
 地方公共団体は、いじめの防止等に関係する機関及び団体の連携を図るため、条例の定めるところにより、学校、教育委員会、児童相談所、法務局又は地方法務局、都道府県警察その他の関係者により構成されるいじめ問題対策連絡協議会を置くことができることとした。(第一四条関係)

3 基本的施策

(一) 学校におけるいじめの防止
 学校の設置者及びその設置する学校は、児童等の豊かな情操と道徳心を培い、心の通う対人交流の能力の素地を養うことがいじめの防止に資することを踏まえ、全ての教育活動を通じた道徳教育及び体験活動等の充実を図らなければならないこととした。(第一五条関係)
(二) いじめの早期発見のための措置
 学校の設置者及びその設置する学校は、当該学校におけるいじめを早期に発見するため、当該学校に在籍する児童等に対する定期的な調査その他の必要な措置を講ずることとした。(第一六条関係)

4 いじめの防止等に関する措置

(一) 学校におけるいじめの防止等の対策のための組織
 学校は、当該学校におけるいじめの防止等に関する措置を実効的に行うため、当該学校の複数の教職員、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者その他の関係者により構成されるいじめの防止等の対策のための組織を置くこととした。(第二二条関係)
(二) いじめに対する措置(第二三条関係)
(1)学校の教職員、地方公共団体の職員その他の児童等からの相談に応じる者及び児童等の保護者は、児童等からいじめに係る相談を受けた場合において、いじめの事実があると思われるときは、いじめを受けたと思われる児童等が在籍する学校への通報その他の適切な措置をとることとした。
(2)学校は、いじめが犯罪行為として取り扱われるべきものであると認めるときは所轄警察署と連携してこれに対処するものとし、当該学校に在籍する児童等の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるおそれがあるときは直ちに所轄警察署に通報し、適切に、援助を求めなければならないこととした。

5 重大事態への対処関係

(一) 学校の設置者又はその設置する学校は、いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認められる等の場合には、その事態(以下「重大事態」という。)に対処し、及び当該重大事態と同種の事態の発生の防止に資するため、速やかに、当該学校の設置者又はその設置する学校の下に組織を設け、質問票の使用その他の適切な方法により当該重大事態に係る事実関係を明確にするための調査を行うこととした。(第二八条関係)
(二) 重大事態が発生した場合には、学校の設置者等は、(一)の調査の結果について調査を行うことができることとしたとともに、その調査の結果を踏まえ、当該調査に係る重大事態の対処又は当該重大事態と同種の事態の発生の防止のために必要な措置を講ずることとした。(第二九条〜第三三条関係)

6 雑則

 学校の評価を行う場合においていじめの防止等のための対策を取り扱うに当たっては、いじめの事実が隠蔽されず、いじめの実態の把握及びいじめに対する措置が適切に行われるよう、いじめの早期発見、いじめの再発を防止するための取組等について適正な評価が行われるようにしなければならないこととした。(第三四条関係)

7 施行期日

 この法律は、公布の日から起算して三月を経過した日から施行することとした。



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別添4 いじめ防止対策推進法案に対する附帯決議 (衆議院文部科学委員会)

いじめ防止対策推進法案に対する附帯決議(平成25年6月19日 衆議院文部科学委員会)

 政府及び関係者は、いじめ問題の克服の重要性に鑑み、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

一 いじめには多様な態様があることに鑑み、本法の対象となるいじめに該当するか否かを判断するに当たり、「心身の苦痛を感じているもの」との要件が限定して解釈されることのないよう努めること。

二 教職員はいじめを受けた児童等を徹底して守り通す責務を有するものとして、いじめに係る研修の実施等により資質の向上を図ること。

三 本法に基づき設けられるいじめの防止等のための対策を担う附属機関その他の組織においては、適切にいじめの問題に対処する観点から、専門的な知識及び経験を有する第三者等の参加を図り、公平性・中立性が確保されるよう努めること。

四 いじめを受けた児童等の保護者に対する支援を行うに当たっては、必要に応じていじめ事案に関する適切な情報提供が行われるよう努めること。

五 重大事態への対処に当たっては、いじめを受けた児童等やその保護者からの申立てがあったときは、適切かつ真摯に対応すること。

六 いじめ事案への適切な対応を図るため、教育委員会制度の課題について検討を行うこと。

七 教職員による体罰は、児童等の心身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を与えるものであることに鑑み、体罰の禁止の徹底に向け、必要な対策を講ずること。



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別添5 いじめ防止対策推進法案に対する附帯決議 (参議院文教科学委員会)

いじめ防止対策推進法案に対する附帯決議 (平成25年6月20日 参議院文教科学委員会)
平成二十五年六月二十日
参議院文教科学委員会

 政府及び関係者は、いじめ問題の克服の重要性に鑑み、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

一、いじめには多様な態様があることに鑑み、本法の対象となるいじめに該当するか否かを判断するに当たり、「心身の苦痛を感じているもの」との要件が限定して解釈されることのないよう努めること。

二、いじめは学校種を問わず発生することから、専修学校など本法の対象とはならない学校種においても、それぞれの実情に応じて、いじめに対して適切な対策が講ぜられるよう努めること。

三、本法の運用に当たっては、いじめの被害者に寄り添った対策が講ぜられるよう留意するとともに、いじめ防止等について児童等の主体的かつ積極的な参加が確保できるよう留意すること。

四、国がいじめ防止基本方針を策定するに当たっては、いじめ防止等の対策を実効的に行うようにするため、専門家等の意見を反映するよう留意するとともに、本法の施行状況について評価を行い、その結果及びいじめの情勢の推移等を踏まえ、適時適切の見直しその他必要な措置を講じること。

五、いじめの実態把握を行うに当たっては、必要に応じて質問票の使用や聴取り調査を行うこと等により、早期かつ効果的に発見できるよう留意すること。

六、本法に基づき設けられるいじめの防止等のための対策を担う附属機関その他の組織においては、適切にいじめの問題に対処する観点から、専門的な知識及び経験を有する第三者等の参加を図り、公平性・中立性が確保されるよう努めること。

七、いじめが起きた際の質問票を用いる等による調査の結果等について、いじめを受けた児童等の保護者と適切に共有されるよう、必要に応じて専門的な知識及び経験を有する者の意見を踏まえながら対応すること。

八、いじめには様々な要因があることに鑑み、第二十五条の運用に当たっては、懲戒を加える際にはこれまでどおり教育的配慮に十分に留意すること。

右決議する。









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