● 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律の公布について(通知)(不登校関連) 平成28年12月22日 28文科初第1271号



28文科初第1271号 平成28年12月22日
各都道府県教育委員会教育長、各指定都市教育委員会教育長、各都道府県知事、附属学校を置く各国立大学法人学長、小中高等学校を設置する学校設置会社を所轄する構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の長 宛
文部科学省初等中等教育局長(藤原誠)


義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律の公布について(通知)


 このたび,別添のとおり,「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(以下「法」という。)が平成28年12月14日法律第105号として公布されました。
 この法律は,教育機会の確保等に関する施策に関し,基本理念を定め,並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに,基本指針の策定その他の必要な事項を定めることにより,教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進することを目的としており,公布の日から起算して2月を経過した日から施行することとしています(ただし,法第4章は公布の日から施行。)。
 法においては,教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進するための基本指針を文部科学大臣が定めることとしています。また,国及び地方公共団体が講じ,又は講ずるよう努めるべき不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等に関する施策,夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供等に関する施策及び教育機会の確保等に関するその他の施策等について規定しています。
 文部科学省においては,今後,法に基づき,基本指針の策定をはじめとして,教育機会の確保等に関する施策の推進を図ってまいります。
 各地方公共団体におかれても,法の意義を御理解の上,教育機会の確保等に関する施策の推進を図っていただくようお願いいたします。
 なお,法の採決に当たっては,衆議院文部科学委員会及び参議院文教科学委員会において,児童生徒の意思を十分に尊重して支援が行われるよう配慮すること,不登校というだけで問題行動であると受け取られないよう配慮すること,例えばいじめから身を守るために一定期間休むことを認めるなど児童生徒の状況に応じた支援を行うことなどの附帯決議が付されています。
 こうした配慮事項は,平成28年9月14日付け28文科初第770号「不登校児童生徒への支援の在り方について」においても同様の内容を周知したところですが,法や附帯決議の趣旨を踏まえ,個々の不登校児童生徒の状況に応じた支援が一層適切に行われるよう,留意をお願いいたします。
 都道府県・指定都市教育委員会教育長におかれては所管の学校,域内の市区町村教育委員会教育長及び市町村長に対して,都道府県知事におかれては所轄の私立学校及び学校法人に対して,国立大学法人学長におかれては設置する附属学校に対して,構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の長におかれては認可した学校に対して,周知方お願いいたします。


別添1 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(概要)
別添2 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律のあらまし(平成28年12月14日付け官報)
別添3 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(平成28年法律第105号)
別添4 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案に対する附帯決議(衆議院文部科学委員会)
別添5 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案に対する附帯決議(参議院文教科学委員会)




------------------------------------------------------------
別添1 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(概要)

一 総則(第1条〜第6条)
目的 教育基本法及び児童の権利に関する条約等の趣旨にのっとり、不登校児童生徒に対する教育機会の確保、夜間等において授業を行う学校における就学機会の提供その他の義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等を総合的に推進
基本理念
1 全児童生徒が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるよう、学校における環境の確保
2 不登校児童生徒が行う多様な学習活動の実情を踏まえ、個々の状況に応じた必要な支援
3 不登校児童生徒が安心して教育を受けられるよう、学校における環境の整備
4 義務教育の段階の普通教育に相当する教育を十分に受けていない者の意思を尊重しつつ、年齢又は国籍等にかかわりなく、能力に応じた教育機会を確保するとともに、自立的に生きる基礎を培い、豊かな人生を送ることができるよう、教育水準を維持向上
5 国、地方公共団体、民間団体等の密接な連携
国の責務、地方公共団体の責務、財政上の措置等について規定

二 基本指針(第7条)
1 文部科学大臣は、基本指針を定め、公表する
2 作成又は変更するときは、地方公共団体及び民間団体等の意見を反映させるための措置を講ずる

三 不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等(第8条〜第13条)
国及び地方公共団体は、以下の措置を講じ、又は講ずるよう努める
1 全児童生徒に対する学校における取組への支援に必要な措置
2 教職員、心理・福祉等の専門家等の関係者間での情報の共有の促進等に必要な措置
3 不登校特例校及び教育支援センターの整備並びにそれらにおける教育の充実等に必要な措置
4 学校以外の場における不登校児童生徒の学習活動、その心身の状況等の継続的な把握に必要な措置
5 学校以外の場での多様で適切な学習活動の重要性に鑑み、個々の休養の必要性を踏まえ、不登校児童生徒等に対する情報の提供等の支援に必要な措置

四 夜間等において授業を行う学校における就学の機会の提供等(第14条・第15条)
1 地方公共団体は、夜間等において授業を行う学校における就学の機会の提供等を講ずる
2 都道府県及び区域内の市町村は、1の事務の役割分担等を協議する協議会を組織することができる
構成員:(1)都道府県の知事及び教育委員会、(2)都道府県内の市町村長及び教育委員会、(3)民間団体等

五 教育機会の確保等に関するその他の施策(第16条〜第20条)
1 実態把握及び学習活動に対する支援の方法に関する調査研究等
2 国民の理解の増進
3 人材の確保等
4 教材の提供その他の学習の支援
5 学校生活上の困難を有する児童生徒等からの教育及び福祉をはじめとする各種相談に総合的に対応する体制の整備

六 その他
1 公布日から2月後に施行(四は、公布日から施行)
2 政府は、速やかに、必要な経済的支援の在り方について検討し、必要な措置を講ずる
3 政府は、多様な学習活動の実情を踏まえ、施行後3年以内に検討を加え、教育機会の確保等の在り方の見直しを含め、必要な措置を講ずる




------------------------------------------------------------
別添2 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律のあらまし(平成28年12月14日付け官報)

◇義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(法律第百五号)(文部科学省)

1 目的
この法律は、教育基本法及び児童の権利に関する条約等の教育に関する条約の趣旨にのっとり、教育機会の確保等に関する施策に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、基本指針の策定その他の必要な事項を定めることにより、教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進することを目的とすることとした。(第一条関係)

2 定義
この法律において、次に掲げる用語の意義は、それぞれに定めるところによることとした。(第二条関係)
(一)学校
   学校教育法第一条に規定する小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部若しくは中学部をいうこと。
(二)児童生徒
   学校教育法第一八条に規定する学齢児童又は学齢生徒をいうこと。
(三)不登校児童生徒
   相当の期間学校を欠席する児童生徒であって、学校における集団の生活に関する心理的な負担その他の事由のために就学が困難である状況として文部科学大臣が定める状況にあると認められるものを いうこと。
(四)教育機会の確保等
   不登校児童生徒に対する教育の機会の確保、夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供その他の義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保及び当該教育を十分に受けていない者に対する支援をいうこと。

3 基本理念
教育機会の確保等に関する施策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならないこととした。(第三条関係)
(一)全ての児童生徒が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるよう、学校における環境の確保が図られるようにすること。
(二)不登校児童生徒が行う多様な学習活動の実情を踏まえ、個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援が行われるようにすること。
(三)不登校児童生徒が安心して教育を十分に受けられるよう、学校における環境の整備が図られるようにすること。
(四)義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない者の意思を十分に尊重しつつ、その年齢又は国籍その他の置かれている事情にかかわりなく、その能力に応じた教育を受ける機会が確保されるようにするとともに、その者が、その教育を通じて、社会において自立的に生きる基礎を培い、豊かな人生を送ることができるよう、その教育水準の維持向上が図られるようにすること。
(五)国、地方公共団体、教育機会の確保等に関する活動を行う民間の団体その他の関係者の相互の密接な連携の下に行われるようにすること。

4 国及び地方公共団体の責務
(一)国は、基本理念にのっとり、教育機会の確保等に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有することとした。(第四条関係)
(二)地方公共団体は、基本理念にのっとり、教育機会の確保等に関する施策について、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有することとした。(第五条関係)

5 財政上の措置等
国及び地方公共団体は、教育機会の確保等に関する施策を実施するため必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めるものとした。(第六条関係)

6 基本指針
文部科学大臣は、教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針を定めることとした。(第七条関係)

7 不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等
(一)学校における取組への支援
   国及び地方公共団体は、児童生徒と学校の教職員との信頼関係及び児童生徒相互の良好な関係の構築を図るための取組、児童生徒の置かれている環境その他の事情及びその意思を把握するための取組、学校生活上の困難を有する個々の児童生徒の状況に応じた支援その他の学校における取組を支援するために必要な措置を講ずるよう努めるものとした。(第八条関係)
(二)支援の状況等に係る情報の共有の促進等
   国及び地方公共団体は、不登校児童生徒の状況及び不登校児童生徒に対する支援の状況に係る情報を学校の教職員、心理、福祉等に関する専門的知識を有する者その他の関係者間で共有することを促進するために必要な措置その他の措置を講ずるものとした。(第九条関係)
(三)特別の教育課程に基づく教育を行う学校の整備等
   国及び地方公共団体は、不登校児童生徒に対しその実態に配慮して特別に編成された教育課程に基づく教育を行う学校の整備及び当該教育を行う学校における教育の充実のために必要な措置を講ずるよう努めるものとした。(第一〇条関係)
(四)学習支援を行う教育施設の整備等
   国及び地方公共団体は、不登校児童生徒の学習活動に対する支援を行う公立の教育施設の整備及び当該支援を行う公立の教育施設における教育の充実のために必要な措置を講ずるよう努めるものとした。(第一一条関係)
(五)学校以外の場における学習活動の状況等の継続的な把握
   国及び地方公共団体は、不登校児童生徒が学校以外の場において行う学習活動の状況、不登校児童生徒の心身の状況その他の不登校児童生徒の状況を継続的に把握するために必要な措置を講ずるものとした。(第一二条関係)
(六)学校以外の場における学習活動等を行う不登校児童生徒に対する支援
   国及び地方公共団体は、不登校児童生徒が学校以外の場において行う多様で適切な学習活動の重要性に鑑み、個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえ、当該不登校児童生徒の状況に応じた学習活動が行われることとなるよう、当該不登校児童生徒及びその保護者に対する必要な情報の提供、助言その他の支援を行うために必要な措置を講ずるものとした。(第一三条関係)

8 夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供等
(一)就学の機会の提供等
   地方公共団体は、夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供その他の必要な措置を講ずるものとした。(第一四条関係)
(二)協議会
   都道府県及び当該都道府県の区域内の市町村は、一に規定する就学の機会の提供その他の必要な措置に係る事務についての当該都道府県及び当該市町村の役割分担に関する事項の協議並びに当該事務の実施に係る連絡調整を行うための協議会を組織することができることとした。(第一五条関係)

9 教育機会の確保等に関するその他の施策
(一)調査研究等
   国は、義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない者の実態の把握に努めるとともに、その者の学習活動に対する支援の方法に関する調査研究並びにこれに関する情報の収 集、整理、分析及び提供を行うものとした。(第一六条関係)
(二)国民の理解の増進
   国及び地方公共団体は、広報活動等を通じて、教育機会の確保等に関する国民の理解を深めるよう必要な措置を講ずるよう努めるものとした。(第一七条関係)
(三)人材の確保等
   国及び地方公共団体は、学校の教職員その他の教育機会の確保等に携わる者の養成及び研修の充実を通じたこれらの者の資質の向上、教育機会の確保等に係る体制等の充実のための学校の教職員の配置、心理、福祉等に関する専門的知識を有する者であって教育相談に応じるものの確保その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとした。(第一八条関係)
(四)教材の提供その他の学習支援
   国及び地方公共団体は、義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない者のうち中学校を卒業した者と同等以上の学力を修得することを希望する者に対して、教材の提供(通信の方法によるものを含む。)その他の学習の支援のために必要な措置を講ずるよう努めるものとした。(第一九条関係)
(五)相談体制の整備
   国及び地方公共団体は、関係省庁相互間その他関係機関、学校及び民間の団体の間の連携の強化その他必要な体制の整備に努めるものとした。(第二○条関係)

10 施行期日等
(一)検討
(1) 政府は、速やかに、教育機会の確保等のために必要な経済的支援の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとした。(附則第二項関係)
(2) 政府は、この法律の施行後三年以内にこの法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づき、教育機会の確保等の在り方の見直しを含め、必要な措置を講ずるものとした。(附則第三項関係)
(二)施行期日
  この法律は、一部の規定を除き、公布の日から起算して二月を経過した日から施行することとした。






Copyright© 執筆者,大阪教育法研究会