◆ H17.03.06 東京地裁八王子支部決定 平成17年(む)63号 東京都立野津田高校卒業式ビラ配り市民逮捕事件(勾留請求却下決定取消準抗告事件) 事案:  東京都町田市の都立野津田高校の敷地で日の丸、君が代に反対するビラを配ったとして、男性2人が建造物侵入容疑で逮捕された事件で、東京地裁八王子支部は2人の勾留請求を却下し、さらに検察側が申し立てた準抗告も棄却した。     決   定 被疑者 ○○○○○  上記被疑者に対する建造物侵入被疑事件について、平成17年3月5日東京地方裁判所八王子支部裁判官がした勾留請求却下の裁判に対し、同日、東京地方検察庁八王子支部検察官から適法な準抗告の申立てがあったので、当裁判所は、次のとおり決定する。     主   文 本件準抗告の申立てを棄却する。     理   由 1 本件準抗告の申立ての趣旨及び理由は、東京地方検察庁八王子支部検察官作成の準抗告及び裁判の執行停止申立書(「準抗告申立書に関する追完」と題する書面を含む。)記載のとおりであるからこれを引用するが、要するに、本件被疑事実が建造物侵入罪の構成要件を充足しないとして本件勾留請求を却下した原裁判は違法であるから、これを取り消した上、勾留状の発布を求めるというものである。 2 そこで検討するに、本件被疑事実の要旨は、いわゆる中核派の構成員である被疑者が、ほか1名と共謀の上、平成17年3月4日午前8時2分ころから同日午前8時45分ころまでの間、同派傘下団体の全国労働組合交流センターが発行する「不起立闘争の拡大こそ戦争協力拒否の闘い」と見出しのあるビラを配布する目的で、東京都立野津田高等学校の敷地内に立ち入り、もって、正当な理由がないのに人の看守する建造物に侵入したというものである。  しかしながら、一件記録によれば、被疑者らが立ち入った上記高等学校の敷地部分は、同高等学校の門塀等物的囲障設備の外側に存在する土地であり、これを建造物侵入罪の客体である「建造物の囲繞地」と評価することは困難である。被疑者らが同高等学校関係者から敷地の外との境界線を示されて注意を受けたにもかかわらず敷地内に立ち入ったこと等、検察官主張の事情を考慮してもなお、同敷地部分が軽犯罪法1粂32号にいう「入ることを禁じた場所」に当たるか否かはともかく、上記の結論は左右されないというべきである。 3 以上より、本件勾留請求を却下した原裁判に違法はなく、正当というべきであり、したがって、本件準抗告の申立ては理由がないから、刑事訴訟法432条、426条1項後段によりこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。 平成17年3月6日 東京地方裁判所八王子支部刑事第3部 裁判長裁判官 長谷川憲一 裁判官 小野寺明 裁判官 丹下将克