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◆198612KHK055A2L0368E TITLE: 青少年条例の運用実態と問題点−条例運用の具体的検証を中心として− AUTHOR: 吉田 卓司 SOURCE: 関西非行問題研究11号(1986年) WORDS: 全40字×368行
吉 田 卓 司
総 数 | 売春防止法違反 | 淫行(児福法)違反 | 淫行(刑法犯) | みだらな行為(条例犯) | ぐ犯行為 | その他の性行為 |
9813 | 811 | 909 | 2 | 3926 | 753 | 3412 |
罰 則 | ※59年の 送検人数 | ||
懲役刑 | 罰金刑 | ||
北海道 | 3万円以下 | 422 | |
青 森 | 5万円以下 | 17 | |
岩 手 | 1年以下 | 10万円以下 | 34 |
宮 城 | 10万円以下 | 162 | |
秋 田 | 1年以下 | 10万円以下 | 49 |
山 形 | 6月以下 | 10万円以下 | 139 |
福 島 | 6月以下 | 10万円以下 | 170 |
茨 木 | 10万円以下 | 56 | |
栃 木 | 3万円以下 | 62 | |
群 馬 | 1年以下 | 10万円以下 | 138 |
埼 玉 | 1年以下 | 10万円以下 | 245 |
千 葉 | 処罰規定なし | ||
東 京 | 処罰規定なし | ||
神奈川 | 1年以下 | 10万円以下 | 269 |
新 潟 | 1年以下 | 10万円以下 | 302 |
山 梨 | 5万円以下 | 12 | |
長 野 | 県条例なし | ||
静 岡 | 10万円以下 | 103 | |
富 山 | 1年以下 | 10万円以下 | 133 |
石 川 | 5万円以下 | 45 | |
福 井 | 1年以下 | 10万円以下 | 31 |
岐 阜 | 1年以下 | 10万円以下 | 99 |
愛 知 | 1年以下 | 10万円以下 | 157 |
三 重 | 5万円以下 | 59 | |
滋 賀 | 6月以下 | 10万円以下 | 52 |
京 都 | 1年以下 | 10万円以下 | 106 |
大 阪 | 6月以下 | 5万円以下 | |
兵 庫 | 5万円以下 | 311 | |
奈 良 | 3万円以下 | 64 | |
和歌山 | 1年以下 | 5万円以下 | 28 |
鳥 取 | 5万円以下 | 46 | |
島 根 | 1年以下 | 10万円以下 | |
岡 山 | 1年以下 | 10万円以下 | 315 |
広 島 | 1年以下 | 5万円以下 | 229 |
山 口 | 1年以下 | 10万円以下 | 6 |
(他県条例の適用) | |||
徳 島 | 5万円以下 | 20 | |
香 川 | 6月以下 | 3万円以下 | 21 |
愛 媛 | 5万円以下 | 106 | |
高 知 | 1年以下 | 10万円以下 | 25 |
福 岡 | 2年以下 | 10万円以下 | 396 |
佐 賀 | 2年以下 | 10万円以下 | 31 |
長 崎 | 2年以下 | 10万円以下 | 50 |
熊 本 | 2年以下 | 10万円以下 | 48 |
大 分 | 1年以下 | 10万円以下 | 62 |
宮 崎 | 6月以下 | 5万円以下 | 42 |
鹿児島 | 1年以下 | 10万円以下 | 86 |
沖 縄 | 2年以下 | 10万円以下 | 57 |
計 | 4,678 |
1、説論 | 主に担任の先生が説きさとす |
2、訓戒 | 生徒と保護者に対して、校長もしくは指導部教諭がさとしいましめる |
3、停学 | 校長が訓戒を与えた上、停学家庭謹慎をさせる |
@有期停学・・・・7日間 | |
A無期停学・・・・8日間以上 | |
4、退学 | 退学処分は職員会議をへて、校長がこれをおこなう |
(1) | 凶悪行為[殺人、強盗、強姦、放火]…退学 |
(2) | 粗暴行為[暴行、傷害、リンチ、恐喝、脅迫〕…無期停学 退学 |
(3) | 窃盗行為[校内・校外における盗み、すり、万引]…無期停学 退学 |
(4) | 知能犯行為[詐欺、横領]無期停学 退学 |
(5) | 風俗犯行為[とばく、わいせつ行為]…有期停学 無期停学 退学 |
(6) | その他の触法行為[住居侵入、ぞう物保持(盗品等の保持)、わいせつ物所持、失火、タキ火等のいたずら]…訓戒 有期停学 無期停学 |
(7) | ぐ犯・不良行為 [飲酒、喫煙〕…有期停学 無期停学 [凶器所持、たかり、家出、無断外泊、パーティーへの無断参加、公共物の破損、怠学、風俗営業(パチンコ、キャバレー等)への出入、不純異性交遊、不良団体加盟〕・・・訓戒 有期停学 無期停学 |
(8) | その他の行為 [カンニング]…有期停学 [授業妨害、教師の説諭無視、校異・教材の悪意的破損、登下校途中の喫茶店や遊戯場への立入]…訓戒 有期停学 [言動の粗暴行為、授業態度の不良、掃除当番の逃避、朝礼への不参加、無届早退・欠課]…訓戒 [服装・頭髪等の違反で生徒会の注意に従わない場合]…有期停学 無期停学 退学 [身分証明書の勝手な書きかえ]…有期停学 無期停学 |
(9) | 交通関係の不良行為 [無免許運転、スピード違反、怪我をさせたとき]・・・無期停学 退学 [その他の交通法令違反]…有期停学 [登下校時の単車、乗用車等の運転、利用]・・・有期停学 [定期券の悪質な不正使用(期間切、区間外使用、定期券の貸借)、定期券面の偽造(使用未遂、使用)]…有期停学 無期停学 |
(1) | 近畿2府4県の実態調査結果については、吉田卓司「青少年の健全育成と表現の自由」関西非行問題研究6号(1981年)17〜36頁。近畿出版倫理連合会の自主規制の実状については、同「『低俗出版物』規制の現状」少年補導304号(1981年)24〜29頁に詳しい。また、いわゆる「ゆるやかな条例」ないし「自主規制型条例」の一つである京都府の条例運用については、同「青少年条例による出版物規制と環境浄化活動」法と政策15号(1983年)39〜43頁。本稿では、これらの80年代前半の実態把握を基礎とし、さらに条例運用のその後の実態に注目しようとするものである。前掲出稿との重復を極力避けようと努めたので、参照いただければ幸いである。 |
(2) | 例えば、青少年保護を目的とする法規制が地域社会の自主的な非行防止を低下させるとの実践的な問題提起(鍋谷博敏「少年警察と青少年条例」法律時報増刊『青少年条例』(1981年)31〜38頁、36頁)は注目に値しよう。 |
(3) | 朝日新聞・1984年3月12日および同3月14日参照。 |
(4) | 昭和30年代から昭和70年代後半にいたるマスコミ規制立法をめぐる動向については、中村泰次「青少年条例ラッシュの実態」新聞研究372号(1978年)43〜47頁に詳しい。 |
(5) | 西日本新聞・1984年3月9日 |
(6) | マスコミ倫理懇談会全国協議会による「都道府県青少年対策担当者に対するアンケート」調査による(法律時報増刊『青少年条例』(1981年)263頁)。 |
(7) | 吉田・前掲注(1)論文「青少年の健全育成と表現の自由」22〜25頁。 |
(8) | 「警察の不偏不党・公平中立という点も、実質的には訓示規定程度の無内容なものに転化し、…政治警察への傾斜は、まさに現実的危険として存在する」といわれる(中山研一「治安と防衛」『現代国家権力と法(現代法学全集53巻)』(1978年)91〜216頁、198頁)。 |
(9) | 青少年向け雑誌が、青少年条例の有害図書に指定されたのは、本稿で取り上げた福岡県の事例が最初ではない。1976年に宮城県青少年条例によって、青少年向け雑誌「GORO」(小学館)が指定をうけたことがある(朝日新聞・1976年3月14日)。この事例では、高校生による婦女暴行事件が加害者である少年が、前記「GORO」の記事に刺激されて犯行に走ったと自供したため、同県警防犯少年課で同誌を検討、「内容に問題がある」と判断して、県青少年室に連格。同室でも検討の上有害指定をおこなった(林田広美「青少年の性犯罪とマスコミ」新聞研究297号(1976年)87〜88頁参照)。宮城県「GORO」有害指定事件が、マスコミを短格的に非行原因としたこと等の諸問題では、本稿の福岡県少女雑誌有害指定事件と同様の側面をもつ。しかしながら、福岡の指定は、具体的事件を媒介とせず国会での自民党議員の発言を契機とした有害指定であり、「有害基準」が時の政治状況によって容易に変化しうる点で極めて大きな法規制の矛盾をあらわしたものといえるのではないだろうか。 |
(10) | ナチス・ドイツ時代においては、出版物に対する自主規制が言論統制の有力な手段であったことは、国家権力が直接に法規制をするのではない場合にも、社会的集団や法の有する副次的機能が深刻な、権利侵害を惹起する危険性を示している。なお石村書治「言論の自由とマスメディアの『自主規制』」福岡大学創立30週年記念論文集・法学編(1964年)1〜51頁参照。 |
(11) | 例えば、旭川家裁 昭和41年7月28日決定(家月19巻1号81頁) 北海道青少年保護育成条例の「淫行またはわいせつな行為」とは、「青少年の精神的、知的な未熟さや情緒的な不安定に乗じたような形態における、つまり誘惑、威迫、立場利用、欺もう、あるいは困惑、自棄につけこむ等の手段を講じて青少年を自己の性的行為の相手方とせしめた場合にのみを指すものと解すべきである」とした。 |
(12) | 例えば、東京高判 昭和39年4月22日(東京速報1182号)。 青少年条例における「淫行とは、健全な常識がある一般社会人からみて、結婚を前提としない欲望を満たすためのみに行なう不純とされる性行為」とする。 |
(13) | 例えば、「深夜同伴」規定違反事件が審判不開始とされた判例−釧路家裁、昭和51年9月25日決定(家月29巻5号94頁)−についてみると、 C(19歳)は、昭和51年4月5日、午後11時から翌日午前0時25分頃までの間、幼なじみのD子(16歳)をその依頼に応じて、自動車に同乗させて走行中のところ、警官に発見され、北海道青少年保護育成条例違反事件として家裁送致となったが、家裁は、当該行為に「青少年の福祉を害する危険」はないとし、Cを非行なしとして、審判不開始とした。 このように、青少年の福祉を害すると思われない事実についても、条例による取締りがおこなわれているのである。このことは条例自体にも広範囲にわたる処罰を可能とするような不明確性の乏しい規定が現存することを示している。 |
(14) | 出版物に対する条例運用上の問題性も看過しえない。 例えば、「青少年条例違反による自動販売機の押収」がいくつかの県でおこなわれた。 岡山県倉敷市内の喫茶店と飲食店前の二ヵ所の自動販売機で、岡山県が昭和56年8月および11月に有害指定した二種類の雑誌(¥300、¥400)を収納し、販売していたとして、昭和57年4月に自動販売機二台を押収するという強行処置をとった。同県児島署では、青少年非行防止活動の一環として有害図書自動販売機の撤去運動を推進していたが、同年1月頃図書自動販売機が管内に設置されはじめたことで、同署員が見回り中に、県指定の有害図書が収納されていることがわかったもの。(オカニチ昭和57年4月20日版) このように、条例が条文上定めた法的制裁の効果を超えて、規制をおこなっている現状を知ることができる。 |
(15) | 仙台桜ケ丘中学事件では、警官の不用意な言動から、中学生が私服警官と衝突し、少年は公務執行防害等で現行犯逮捕され家裁送致となったが、家裁では「とりたてて問題を起こす生徒ではない」として審判不開始の決定が出される等。少年警察活動要綱や犯罪捜査規範など内部規範で「捜査に当っては少年の心情を傷つけないよう努め」、「捜査の時期、場所、方法等について慎重に注意する」といった自己規制が、単に訓示的意味しかもたなくなっているのではないかと思われる。 日弁連『第28回人権擁護大会シンポジウム第一分科会報告書「学校生活と子どもの人権」』(1985年)、および寺村恒郎「少年警察強化は何を狙うか」文化評論307号(1986年)82頁、87〜88頁。 |
(16) | 高校の生活指導における実践例の中でも、警察への対応に苦慮する事例は、少なくない。例えば、1日でも学校を休めば留年が決定的となる生徒に対して、警察からの出頭要請は「他人をひどい目にあわせておいて、自分だけが単位不足などとよく言えたものだ、学校をやめて罪をつぐなうぐらいの気持ちはないのか」の激しく怒鳴り、親も「耐えられない」というほどで、学校が指導部長と担任の二人で警察に学校内の事情説明に行った際も「先生が背後で知恵をつけると証拠いん滅の罪になりますよ」と担当警官から強迫まがいの言葉を聞いている。久保田武嗣「A子が変わり三組が生きかえるまで−−実践記録・教育実践をどう集成化してきたか−−」高校生活指導78号(1985年)62頁、69〜70頁。 |
(17) | ウォルター・L・エイムズ(後藤典訳)『日本警察の生態学』(1985年)187頁においては、警察が創価学会などの特定の宗教に関与することを禁止し、あるいは被差別階層出身者を採用しないことなどの実態が社会的調査に明かにされている。特定の革新政党を公安警察の対象とし、一方で保守政党議員に警察OBが多いことなどは国民公知のことであろう。なお、大野達三『日本の政治警察』(1973年)参照 |
(18) | 「みどりちゃん事件」については、荒川雅行「少年保護事件における二つの最高裁決定」関西非行問題研究9号(1984年)53〜59頁、およびそこに掲げられている参考文献参照。 |
(19) | 中山研一、前注(8)掲書104〜105頁参照。 |
(20) | 中山研一『現代社会の治安法』(1970年)83頁では、東京都青少年の健全な育成に関する条例を治安法として挙げられ、前注(8)掲書170頁において、中山教授は「青少年の健全育成ということ自体が治安的観点の中にとりこまれざるをえない現実の下では、これを上からの治安対策から切り離し、自主的・自律的な下からの運動として展開する努力こそが追求されるべきであろう」とされる。 |
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