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◆199301KHK126A2L0125JF TITLE: 大阪府立高等学校における学校内規等の資料提供要求について AUTHOR: 松岡 義之 SOURCE: 大阪高法研ニュース 第126号(1993年1月) WORDS: 全40字×125行
大阪経済法科大学法学部 松 岡 義 之
目 次
はじめに
1 本件の趣旨
2 提供要求及び提供文書の内容
3 本件の経過
4 本件までの現状
5 本件の意義
むすび
はじめに
今般大阪府教育委員会に、大阪府立高等学校(1校)の学校内規のおよそすべてを情報公開(情報提供)させたが、それらについての概要を報告させていただく。
本件は、大阪府立高等学校における内規等(学校の内部規則並びに内部通達及び教員、生徒またはそれら双方を拘束する校則等の文書をいう。以下同じ)を公開させ、もって校則を含む内規等の執行(解釈と運用)について学校教育現場における体系的な法令解釈を明らかにさせようとするものである。
本件で要求した文書の内容は、次に掲げるとおりである。
ア 学習の評価並びに課程の修了及び卒業の認定に関する内規等
イ 校務分掌、学校長の補助機関並びに教職員の協議機関の設置及びそれらの運用
に関する内規等
ウ 生徒の服装、頭髪等の規制及び指導に関する内規等
エ 生徒の賞罰に関する内規等
オ 生徒会組織、クラブ活動等の特別活動に関する内規等
学校には当然存在するであろう内規等内容を列記したつもりである。(これらに掲げたもの以外には、施設利用に関する内規等がある。)
今回提供された文書の題目は、つぎに掲げるとおりである。
ア 学習の評価並びに課程の修了及び卒業の認定
(ア) 判定会議規定 (イ) 学習評価規定 (ウ) 成績評価規定
(エ) 出欠取扱規定 (オ) 教育課程表 (カ) 定期考査規定
(キ) 考査時の注意事項
イ 校務分掌、学校長の補助機関並びに教員の協議機関の設置及びそれらの運用
(ア) 担任及び分掌についての申し合わせ事項 (イ) 校内人事委員会規定
(ウ) 予算委員会規定 (エ) 補導委員会規定 (オ) 教員会議規則
(カ) 職員会議規則 (キ) 選挙規定 (ク) 部活動内規
(ケ) 活動における申し合わせ事項 (コ) 部活動にともなう日番について
ウ 服装、頭髪等の規制及び指導
(ア) 生徒心得 (イ) 生徒証明書について (ウ) 事務室取扱い注意事項
(エ) 許可願・届出事項一覧
エ 生徒の賞罰
(ア) 学則(抜粋) (イ) 補導委員会規定
オ 生徒会組織、クラブ指導等の特別活動
(ア) 生徒会則 (イ) 部・同好会規定 (ウ) 部活動内規 (エ) 合宿規定
(オ) 合宿に関する申し合わせ事項 (カ) 部活動内規
(キ) 活動における申し合わせ事項 (ク) 部活動にともなう日番について
今回の開示要求の経過は、つぎのとおりである。
(1) 大阪府府民情報室(エコーセンター)に府立高等学校の内規等の公開請求をしたい旨申出て、公開請求の手続きについて教示を受ける。1992年12月15日
(2) 大阪府府民情報室を経て、大阪府教育委員会に対して、公開請求書を持参し、府立高校内規等の公開請求をしようとするが、大阪府教育委員会事務局から、当該文書について情報提供として開示できるか検討したい旨の申出を受けたので、公文書公開請求を保留し、当該情報の提供を要求した。12月17日
(3) 大阪府教育委員会事務局に、12月25日までに提供可否の回答することを、確約させた。
(4) 大阪府教育委員会事務局は、大阪府府民情報室を経て、要求文書を郵送した。
12月25日
(5) 要求文書が送達される。12月27日
現在配布されている多くの生徒手帳に記載されている情報は、心得書きや行為規範的な色彩が濃く、法的に実際の成績評価や懲戒手続きに関しての手続き論的事項ついて触れていない。
過去の私的経験として、高等学校時代に内規等の閲覧を求めたことがあったが、教員に拒否されたことがある。
当時拒否した教員の主張として、次に掲げる事項があった。
(ア) 内規等は、内部文書として秘匿するべきである。
(おまえら(生徒)が見るもんじゃない論)
(イ) 内規等は、教員の申し合わせであるから、公開対象の公文書ではない。
(他の教員との兼ね合いがね論)
(ウ) 教員が校則の制定、執行、解釈の行為権限を独占して行うべきである。
(おれ(教員)が法律だ論)
以上の3点は、学校内での生徒に対する不公正な問題(指導拒否者等に対する教員の報復的な評価、懲戒等)の温床となっている場合があるので、速やかに改めなければならないだろう。
内規等は、学校長が制定するのが建前であり、一般に教員及び学校長が参加した教員会議等で学校長の承認のもとに制定されている(学校長の措置命令の場合もある)ので、大阪府公文書公開等条例が公開対象とする公文書である。
内規等の法的性格としては、校則と同様であろうから一般的な学説として、(ア) 特別権力関係説(イ) 附合契約説(ウ) 在学契約説の3説があてはまるであろう。(「校則に基づく生徒指導と行政指導」長谷川 正治 大阪高法研ニュース 第117号)
上記のいずれの説を採ったとしても、通常であれば、措置命令または約款もしくは契約条項の事前あるいは事後告知を禁じてはおらず、むしろ良心的であるならば、当然にそれらの事項に関して周知徹底を図ろうとするはずであるが、逆にこれらを秘匿し、教員に都合のよい情報のみを提供することによる生徒らの不安感、混乱あるいは無知に乗じるは、悪徳商法の業者らと何ら変わりがない。
「生徒の権利」(アメリカ自由人権協会 編)によると合衆国のマサチューセッツ州では、校則(内規等)は文書化され、教育委員会によって承認を受け、州の教育省に提出されて、希望するすべての者に無償で提供されなければならない。と定め、他州でも評価や懲戒に聴聞や異議申立てを認めて、それらの適正手続に配慮している。
本邦では、教育での不利益処分(行政は「懲戒」や「単位不認定」を不利益処分としていない)に対する異議申立てを認める(行政不服審査法 4条1項但書八号の規定によって除外されている)どころか、教員のし意的な評価(全く共通的基準がない)や独善的な懲戒(告知、聴聞の手続きがない)から脱却できないでいる(いまだかつて教育関係で聴聞の権利を認める校則や内規を見たことがない)現状は教育措置とは到底いえない。
今回提供された内規等の内容は、概ね想像していたとおりの内容が記載されており、特に例示して紹介するべきものはなかった。
本件で、これまでに述べてきたことをふまえて、内規等が正規の手続きに準じて、府民に公開されたことは、学校事務における根幹として運用されている内規等についても、その情報を住民が享受できる(住民が参加できる)公的な証明である。
また当然に在学中の生徒であっても、公開請求をし(情報提供を要求し)さえすれば、学校の内規を手に入れることができるはずであるから、学校の秘匿主義に対し、謬りであるという回答として非常に重要である。
むすび
内規等が行政指導上の通達であるにせよ、法例等の条理に基づく規則であるにしても、被支配者に対して秘匿されていた(いる)。
どのような生徒に有利な内規を制定していようが、秘匿されていたのなら最も不利益な措置といわざるをえない。
今回は、在学していた大阪府立高等学校の内規等を大阪府教育委員会の情報提供によって、公開請求(条例による)によらなくても公開されることを確認できた。
他の学校の内規についても、その公開を求めていきたい。
今後は、学校内規を生徒に(外部にも)秘匿するのではなく積極的に提供し、もって適性な手続きに配慮して、現在の学校の場当り主義を変革した学校現場での今後の展開を期待する。
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