◆199910KHK186A1L0686C
TITLE:  教科「情報」新設に見る中等情報教育政策の一断面
AUTHOR: 田中規久雄
SOURCE: 大阪高法研ニュース 第186号(1999年10月)
WORDS:  全40字×686行

 

教科「情報」新設に見る中等情報教育政策の一断面

 

大阪大学大学院法学研究科講師  田中規久雄

 

1 はじめに

 1999年3月29日に「学校教育法施行規則の一部を改正する省令」が出され,高等学校において新教科「情報」が,それも「情報A」,「情報B」,「情報C」それぞれ2単位のどれか1科目以上の必修教科として設置され,その基準は同日「高等学校学習指導要領の全部の改正」 1 という形で告示された 2

 学習指導要領は戦後,今回を含め大きくいって7度の改訂期があったが,教科に関していえば1989年の小学校低学年の「生活科」と高等学校の「地理歴史科」と「公民科」の新設が耳新しいところではある.しかし前者は従来の理科と社会の統合,後者は従来の「社会科」の分離であった.その意味で,新教科「情報」は従来の科目のプリンシプルに根拠を置かない全くの新教科である上に,全日制の場合,現行の89年学習指導要領 3 では「週当たりの授業時数は,32単位時間を標準とする」とされていたのが,「完全学校週5日制の下で,『ゆとり』の中で『特色ある教育』を展開」 4 するために,「週当たりの授業時数は,30単位時間を標準とする」と改訂され,総授業時数が減少している中での教科新設であって,これは戦後の教育課程行政史に大きな足跡を残すものとなるだろう.

 そこで本稿では,この高等学校必修教科「情報」の成立経緯を中心にその大まかな方向性を俯瞰しておきたい 5

 

2 1989年学習指導要領

2.1 臨教審答申

 先に,今回新設の教科「情報」は,「従来の科目のプリンシプルに根拠を置かない」と述べたが,いわゆるコンピュータに関わる情報教育は,1989(平成元)年の現行学習指導要領においても,数学,理科などの教科の関連する部分で分散して扱うように考慮はされていた 6

 これは,1984年8月に総理大臣に諮問を受けた「臨時教育審議会」が,(1)21世紀に向けての教育の基本的な在り方,(2)生涯学習の組織化・体系化と学歴社会の弊害の是正,(3)高等教育の高度化・個性化,(4)初等中等教育の充実・多様化,(5)教員の資質向上,(6)国際化への対応,(7)情報化への対応,(8)教育行財政の見直し,以上8つの主要課題を対象に1987年8月までに出した答申,ことに,「個性重視」,「生涯学習体系への移行」,「国際化・情報化など変化への対応」の3つの原則を掲げた最終答申をうけ,1985年に文部大臣から諮問を受けた教育課程審議会が1987年に出した答申に基いている.

 これらは,情報および情報手段を主体的に選択活用する「情報活用能力」を育成すべきこと述べていたが,1991年にはこの「情報活用能力」を,(1)情報の判断・選択・処理・創造の能力,(2)情報化社会の特質と人間とのかかわり合いの理解,(3)情報の重要性認識と責任の理解,(4)情報科学の基礎と手段の理解,及び基本的な基礎能力,とする 7 「情報教育に関する手引」 8 が作成されている.

2.2 教科と情報教育

 さて,この89年高校学習指導要領を普通科目を中心にみてみると,たとえば「数学A」には「(4)計算とコンピュータ ア コンピュータの操作 イ 流れ図とプログラム ウ コンピュータによる計算」,「数学B」には「(4)算法とコンピュータ ア コンピュータの機能 イ いろいろな算法のプログラム」といった項目があるし,「数学C」には,「応用数理の観点から,コンピュータを活用」すること自体が科目の目標となっていた 9

 また,「総合理科」では「データの整理には,適宜コンピュータの活用を図るこ

と.」があり,「物理IA」では「(4)情報とその処理 ア 情報の伝達 イ 情報の処理 ウ 情報の記憶」という項目があげられ,「イについては,コンピュータの仕組みと特徴に触れる」とされ,いわゆる「情報(処理)教育」 10 に最も近い形態をとっているが,「深入りしないこと」と釘を刺されている 11 .「物理IB」では,「『探究活動』においては,・・・,物理学的に探究する方法を習得させ,創意ある研究報告書を作成させること.その際,多様な教材と組み合わせて,適宜コンピュータの活用を図ること.」とされ 12 ,「物理II」では「(4)課題研究 ア 特定の物理的事象に関する探究活動 イ 物理学の歴史的実験例の研究」という項目が挙げられ,「内容の(4)については,・・・,研究を行うに当たっては,・・・,物理学的に探究する方法を習得させ,問題解決の能力を育成すること.その際,解決すべき課題についての情報の検索,計測,結果の集計・処理などに,適宜コンピュータなどを活用させること.」とされている 13

 「美術I」では,内容のA表現,B鑑賞のうち,「内容のAの指導に当たっては,学校の実態に応じてコンピュータ等の機器の活用も考慮する.」 14 とされ,家庭科では「生活技術」において,「(5)家庭生活と情報 ア 情報の収集と選択 イ コンピュータの活用 ウ 家庭生活とコンピュータ」があげられ 15 ,「内容の(5)の指導に当たっては,家庭生活と情報についての基本的事項を理解させ,コンピュータの基本的な操作を中心とした指導を行うよう配慮すること.」とされている 16

 「地理歴史」,「公民」などの教科においては,直接に「コンピュータ」という言葉は出てこないが,「世界史A」では「(4)現代世界と日本」で,「原子力の利用,情報科学,宇宙科学の出現など現代の科学技術の人類への寄与と課題に触れ,人類の生存と環境,世界の平和と安全などについて考察させるとともに,国際的な交流と協調の必要性に着目させる.」,「地理B」では,「イ 産業の国際化,情報化と地域分化諸地域の産業活動の現状と動向を国際化,情報化の進展と関連付けて理解させ,これらの社会の変化が諸地域の産業活動に及ぼす影響について考察させる.」,「現代社会」では「大衆社会,高齢化社会,情報化社会など現代社会の特質を理解させ,それとの関連で学ぶことの意義及び青年期における自己形成の課題について認識を深めさせ,進路の選択と併せてよく生きることと生きがいの追求について自覚を深めさせる.」,「現代の市場と企業,技術革新などと情報化や国際化の進展について理解させ,我が国の経済社会の変化について考えさせる.」,「倫理」では「現代の人間像に触れながら,核家族化,高齢化,情報化,国際化などの現代社会の特質への理解を深め,人間と社会のかかわりを考えさせる.」と,情報化社会への理解を促すように規定されている.

 これらの教育内容は,各科目の実際の選択率や,内容を選択して指導してよい場合が多いことなどから,現実的にはあまり実施されていないことや,分散型そのものへの批判が指摘されてきたが 17 ,ここで認識しておくべきことは,それらすべては基本的には各教科・科目のプリンシプルに従属する教育手段,教育内容としてあげられていることである.

3 情報教育統合への要求

3.1 社会状況の進展

 こうして,いわゆる情報教育は初等中等教育において公的に認知されたのではあるが,統合的な情報教育を求める声は強まっていく 18

 文部省科学研究費で取り上げられた研究を見ても,すでに1988年には,坂元昇他「初等中等教育のコンピュータに関する教育のカリキュラム開発等に関する基礎的研究(昭62科研費特定1成果報告書)」がたとえば,イギリスなどの実情を報告していた

が,1991年には,西之園晴夫他「中等教育における情報教育のカリキュラム開発と教師教育に関する研究(平2科研費総合A成果報告書)」が統合的な情報教育を前提に報告されている.

 1994年は,社会的な進展の激しかった年である.ひとつは,文部省・通産省の次年度の共同実験プロジェクトとして,いわゆる「100校プロジェクト」の募集があったことである.これによって,初等中等教育現場からもサーバを設置しインターネットに接続することが現実的に見えてきた 19 .もうひとつは,UNESCO/IFIP勧告「中等教育で情報教育を(Informatics for Secondary Education; A Curriculum for Schools, Produced by a Working Party of the International Federation for Information Processing (IFIP) under the Auspices of UNESCO.)」が,情報技術教育が今後の国民経済に重要な影響を与えるとし,アジア諸国に大きな衝撃を与えたことである.

 また研究面では,この1994年に,先述の1991年研究ですでに科学技術に偏よらず,人文・社会分野まで視野に入れた情報教育を提唱していた西之園らが,機械による情報処理から人間の創造活動に着目した「情報教育」の視点を打ち出すとともに,統合化のみならず,高等教育への連続性,接続性(articulation)の問題を強調した,西之園晴夫他「高等学校段階における情報教育カリキュラムの開発と大学教育の連続性に関する研究(平5科研費総合A成果報告書)」を出し,大きな影響を与えることとなる.

3.2 改革への胎動

 次いで,1995年1月,1994年6月に設置されていた「マルチメディアの発展に対応した文教施策の推進に関する懇談会」が「審議のまとめ」を出す.これは「21世紀に向けた教育改革政策のきっかけ」であり,「今日の情報化に対応する基本的な施策のほとんどが指摘されている」 20 と評されている.

 次いで,高度情報社会推進本部(本部長:総理大臣)が「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」 21 を発表したことに見られるように,このころから,政府も国策として積極的に情報社会化を進める決意を公にし,それを受けて文部省は8月,「教育,学術,文化,スポーツ分野における情報化実施指針」を出し,高度情報通信ネットワークや衛星通信設備などの整備をうたった.

 研究面では,西之園らが統合カリキュラムと連続性の問題を 22 ,坂元昂らが諸外国の状況を 23 ,それぞれ引き続き研究してきた成果があらわされている.

 1996年4月には,すでに1995年4月に設置されていた第15期中央教育審議会に対して,教育工学関連学協会連合情報教育プロジェクト委員会ワーキンググループ(代表:岡本敏雄)が「小・中・高一貫情報教育に関する学習指導要領への提案」 24 を行なう 25

内容は以下のような構成であった.

 ・理念:小中高一貫した情報教育.

 ・小学校:教科「表現・コミュニケーション」 26

 ・中学校:教科「情報」.

 ・高等学校:

   教科「情報」(必修2単位).

   科目:情報IA(体験的理解から導入する科目).

      情報IB(内容的理解から導入する科目).

 以上のような流れの中で,1996年7月19日,その後の方向を決定することになる.第15期中央教育審議会「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(第1次答申)」 27 が出される.

 第15期中教審は,1995年4月26日に文部大臣より「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」諮問され,(1)今後における教育の在り方及び学校・家庭・地域社会の役割と連携のあり方,(2)一人一人の能力・適性に応じた教育と学校間の接続の改善,(3)国際化,情報化,科学技術の発展等社会の変化に対応する教育の在り方,を主要検討課題としていたが,第1次答申は上記(1)と(3)を中心に検討されている.「生きる力」というキーワードで有名なこの答申は,第3部第3章「情報化と教育[2]情報教育の体系的な実施」で以下の様に述べている.

  情報化がこれからますます進展していくことを踏まえるとき,子供たちに,広く情報の理解,選択,整理,創造,発信などの基礎的な能力の育成を図るとともに,コンピュータ等の情報機器を活用し得る基礎的な能力やコンピュータ等の持つ可能性と限界,さらには情報化社会の特質等についての正しい知識などを培っておくことは,今後一層重要なことになると考える.

  情報教育(情報についての全般的な教育)は既に我が国の初等中等教育においても取り組まれてきているが,子供たちの発達段階を十分に考慮しながら,小・中・高等学校の各段階における系統的・体系的な情報教育を一層充実させていく必要がある.特に,コンピュータを中心とした情報教育については次のような充実を図っていくべきである.

  各学校段階ごとには,まず,小学校では,各教科において,創作・表現活動,調べ学習,探究的な学習などにおいて,学習活動を豊かにする道具としてのコンピュータの活用を図りながら,コンピュータに慣れ親しませるようにしていくことが必要である.学校や地域の実態等に応じ,「総合的な学習の時間」を活用して,コンピュータに触れながら,どのように活用できるかを体験的に学習できるようにすることも意義のあることである.

  中学校では,コンピュータの扱い方を含め,情報を適切に活用する基礎的な能力を養うようにするとともに,生徒の興味や関心等に応じてさらに発展させた内容を学習することができるようにすることが必要である.これらの学習と併せて,学校や地域の実態等に応じ,「総合的な学習の時間」を活用して,情報通信ネットワークを活用した学習等ができるようにしたり,各教科において,課題の発見,情報の収集,調査結果の処理・発表など,学習内容を豊かにする道具としてのコンピュータの活用を図っていくことも意義のあることである.

  高等学校では,小・中学校での学習の基礎の上に立って,各教科でのコンピュータの活用を一層促すような配慮が必要である.専門高校や総合学科については,情報関連科目の充実を図ること,普通科については,学校や生徒の実態等に応じて情報に関する教科・科目が履修できるように配慮することが必要である 28

中教審答申を受けた文部大臣は,1996年8月27日,教育課程審議会に諮問する 29 .また同月,情報処理学会「情報処理教育カリキュラム調査委員会初等・中等教育分科会」(以下,情報処理学会分科会と略す)は.文部省初等中等教育局長宛て.中教審答申を踏まえた上で,初等中等教育で行なうべき内容を提案している.

4 現実化への進行

4.1 調査研究協力者会議の設置

 1996年10月18日,第1回「情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議」(以下,協力者会議と略す)が開催され,「情報」を独立教科にするのかなどがはやくも議論されている 30 .協力者会議は,初等中等教育局長から「情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究について」以下のことを委嘱されていた.

 1 趣旨

 中央教育審議会の答申等を踏まえ,今後の情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進方策等について,調査研究を行う.

 2 調査研究事項

 (1)コンピュータ等の情報機器及び情報通信ネットワークの教育利用の基本的な在り方  について

 (2)学校における情報関連施設・設備の整備について

 (3)教育用ソフトウェアの開発及び整備について

 (4)各学校段階を通じた系統的・体系的な情報教育について

 (5)情報教育の指導体制について

 (6)初等中等教育における情報化の推進に関する総合的な計画について

 (7)その他必要な事項について

 11月には,情報処理学会シンポジウム「産業構造の転換と情報処理教育」が開かれ,主に「産業を育むための教育」の視点 31 から報告検討がなされた 32 .このシンポジウムでは,「情報教育による柔軟な思考と問題解決能力なくしては,諸外国に伍して今後の情報化社会をリードしていけないだろうという危惧」が強調されたという 33

 こうした,経済的危機感の高まりは1997年5月16日の閣議決定「経済構造の変革と創造のための行動計画」 34 にも反映し,そこでは「国民一人一人の情報活用能力の向上は,高度情報通信社会において我が国が経済活力,国際競争力を維持向上させていく上で不可欠の要素である.」とされた.

 この間も協力者会議は進められていたが,1997年6月16日の第10回協力者会議では,後に1999年学習指導要領の基本コンセプトとなる情報活用能力の3観点として,「情報活用の実践力」,「情報科学の基礎の習得」,「高度情報化社会を創造する態度」があげられた.

 教育課程審議会においては,7月16日の第19回総会に協力者会議事務局から報告案等の資料が配布され 35 ,情報教育についての議論がなされるが,この時点では独立教科に関する異論はなかったようであるが,高校での必修化はまだ難しいのではないかという意見が出ていた 36

 しかし,協力者会議は,1997年10月3日「体系的な情報教育の実施に向けて(情報科の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議−第1次報告)」 37 の中で,「独立教科を設けることのメリットを最大限に生かすには,必修にすることが最も望ましい.」とした.

 第1次報告は,情報教育の目標として,

 ・「生きる力」の育成と「情報活用の実践力」

 ・情報活用の基礎・基本となる「情報の科学的な理解」

 ・健全な社会建設のための「情報社会に参画する態度」

 を上げ,「それらは独立のものとして扱うのではなく,相互に関連づけることが重要である」とした.

 高等学校の科目編成としては,「高等学校では,普通教育に関する教科として教科『情報(仮称)』を設置し,その中に科目を複数設定する(いずれも2単位程度).内容としては,『情報の科学的な理解』及び『情報社会に参画する態度』に関する事項で構成する基礎的な科目を設けることとする」と「情報活用の実践力」は共通として,あと2目標の重点づけなどで科目にバリエーションをもたらすように構想していたのである.

4.2 教育課程審議会中間まとめ

 こうした中で,97年11月17日教育課程審議会は,「教育課程の基準の改善の基本方向について(中間まとめ)」を出した 38

 中間まとめ参考資料「教科等の構成及び授業時数等(案)」 39 では,今日の形である,独立教科「情報」と科目「情報A」,「情報B」,「情報C」が提案されたが,中間まとめではその相互関係や必修化には触れられず,情報をも扱う「総合的な学習の時間」が必修とされた 40

 すでに1997年9月25日,(財)社会経済生産性本部情報化推進国民会議は,「情報教育の推進に関する緊急提言」 41 を文部大臣に提出していた.この提言は,

  情報教育のための独立した必修の教科・科目を新設すること21世紀を視野に入れた情報教育の推進体制を確立するために,次期の教育課程には「情報」を専門に扱う独立の教科・科目を新設する.

  情報教育は高度情報通信社会の基礎的能力を育てるものであり,広く国民に普及させるべきであるため,必修として位置づける.

  この独立教科・科目において,小・中・高等学校の各学校段階にわたり,情報の基礎概念,ハードウェア・ソフトウェアの操作,ネットワーク等による情報活用のあり方,情報倫理等,一貫した情報教育を展開する.

  具体的には,小学校では,コンピュータを始めとした諸手段による「表現・コミュニケーション」を各教科で分散的に学習する.

  中学校では,独立の教科として「情報科」を新設する.

  高等学校においても,高等教育への接続性を加味しつつ,独立の教科として「情報科」を新設する.

  なお,教育課程審議会は「総合的な学習の時間」を新設し,国際理解,環境,情報等を扱うとの構想を審議しているといわれる.

  確かに,情報教育の横断的性質を考えると,この構想には一定の利点がある.

  しかし,「総合的な学習の時間」における情報教育は,機器を介した情報教育,情報機器を学習の道具として活用した教育が中心となりがちで,情報そのものに関する教育,情報の基礎概念に関する教育は不十分となる可能性が強い.

  この意味で,やはり情報教育は独立教科・科目を設けて行うことがふさわしく,「総合的な学習の時間」等の形態での扱いは補完的なものとすべきである.

としていたが,この時点では反映されず同会議は,1998年1月30日,企業に対するアンケートを基に,「産業界は,高度情報通信社会に対応するために,情報教育を必修教科とすることを強く期待している.」とする,「教育課程審議会の『中間まとめ』に対する意見」を教育課程審議会に提出した 42

 また,情報処理学会分科会も「協力者会議第1次報告」・「教課審中間まとめ」を受けて,1998年2月「初等・中等教育における情報教育の提案」 43 を初中局長に提出し,情報AとBを選択必修とし,Bを選択した生徒はさらにCも選択できるような階梯をつけた科目構成をした学習指導要領案を含む,高等学校における教科「情報」の独立必修化を唱えた.1998年4月24日の第19回協力者会議の議事録 44 を見ると,

 (2)教育課程検討状況について

 i)WG主査から,3〜4月にかけてワーキンググループで検討を進めてきた,高等学校普通教科「情報」の教科のねらい,科目構成,各科目のねらい,内容構成,内容の取り扱い等について説明があり,次のような質疑応答があった.

  ○教科「情報」に3科目設ける理由はなにか.

  また,新教科なので,演習や実習を多く取り入れるなど,従来の科目にないものが望まれる.

  △生徒の多様な興味関心に応じた選択を可能にするため,3科目置くこととした.3科目のうちから1科目を選択履修するという形を想定している.ただし,この点については教課審の今後の議論にゆだねられる.

  また,「情報A」については全体の2分の1,「情報B」「情報C」については,3分の1を演習や実習に充てるなど,座学にならないように配慮している.

  ○教科「情報」の3科目には重複し,分けること自体に無理がある項目・単位があると思う.

 こうした共通の単位を,ステップ1,2,3,…として順番に選択出来るように工夫できないか.

  △まず「情報A」を履修し,積み上げて履修できるような科目構成も考えられるが,専門教科でも多様な科目が用意されることから,普通教科では3科目並列して1科目選択履修とした.基本的には3科目のうちいずれかを,興味関心等に応じて履修することになろうから,共通に必要な内容は,3科目間に重複する部分もある.

  ○教科の性格をもっと明確にする必要がある.例えば「数学で扱う」なのか,「数学でも扱う」なのか.他の教科に全て含まれていれば,改めて「情報」という教科は必要ないということにならないように,他教科との整合性や関連性を明確にすることが必要だ.

といった議論があり,2月の情報処理学会分科会「提案」の後,WG検討した結果,協力者会議の中にはまだ情報処理学会案のような積み重ね型教科を考えていたメンバーもいたようだが,この時点で方向はほぼ並列3科目となったようである.

4.3 インターネットへの認識

 さて,ここの学校にとっては,パソコンなどとは比較にならない超弩級情報教育インフラとしてインターネットがあるが,これに関しては,先の1997年5月16日閣議決定が「すべての学校をインターネットに接続する」ことを方向づけ,この前後,1996年11月には「マルチメディア教育環境整備・活用プロジェクト」としてNTTが文部省の協力を得て運営する「こねっとプラン」 45 や,1995から6年度の100校プロジェクトを引き継ぐ1997年度「高度ネットワーク利用教育実証事業」として新100校プロジェクトが始まったり,97年12月3日には,文部省と郵政省の共同で,「教育分野におけるインターネットの活用促進に関する懇談会−子供たちが自由にインターネットを活用できる環境づくりを目指して」が立ち上がり,教育におけるインターネット利用が急速に進んでいた.

 そこに,「情報教育の推進は,単に文教政策としてでなく,緊急経済対策として,・・・教育課程の基準改訂までもが取り上げられる時代になった.」 46 とまで評される,1997年11月18日,経済対策閣僚会議「21世紀を切りひらく緊急経済対策」 47 の発表があり,初等中等教育のインフラ整備は経済政策ともなって,一段と進行し,また1998年6月17日には,教育分野におけるインターネットの活用促進に関する懇談会(報告書)「子供たちが自由にインターネットを活用できる環境づくりを目指して」 48 が出されている.

5 政策の確定

5.1 目標の収束

 同日(6月17日)には,第21回協力者会議が最終報告書(案)を検討している.しかし,6月24日の第22回協力者会議で,「最終報告書の公表については,『学校における情報教育の実態調査』の公表時期や教育課程審議会の最終答申のタイミングもみて決定することとし,日程調整は主査に一任された.」結果,その最終報告を待たずして,1998年7月29日には教育課程審議会が「幼稚園,小学校,中学校,高等学校,盲学校,聾学校及び養護学校の教育課程の基準の改善について(答申)」が出ている.

 以下,高等学校普通教育を中心に簡単に見てみると,

・各学校段階を一貫した系統的な教育が行われるよう更に関係教科等の改善充実を図り・・・高等学校においては,情報手段の活用を図りながら情報を適切に判断・分析するための知識・技能を習得させ,情報社会に主体的に対応する態度を育てることなどを内容とする教科「情報」を新設し必修とする

・普通教科「情報」には,生徒が興味・関心等に応じて選択的に履修できるように,「情報A」,「情報B」,「情報C」の3科目を置く

 a「情報A」においては,コンピュータや情報通信ネットワークなどを活用して情報を選択・処理・発信できる基礎的な技能の育成に重点を置く.

 内容は,例えば,情報活用における情報手段の有効性,情報の収集・発信・処理と情報手段の活用,情報手段の発達に伴う生活の変化などで構成する.

 b「情報B」においては,コンピュータの機能や仕組み及びコンピュータ活用の方法について科学的に理解させることに重点を置く.

 内容は,例えば,問題解決におけるコンピュータの活用の方法,コンピュータの仕組みと働き,情報処理の定式化とデータ管理,情報社会を支える情報技術などで構成する.

 c「情報C」においては,情報通信ネットワークなどが社会の中で果たしている役割や影響を理解し,情報社会に参加する上での望ましい態度を育成することに重点を置く.

 内容は,例えば,デジタル表現,情報通信ネットワークとコミュニケーション,情報の収集・発信と自己責任,情報化の進展と社会への影響などで構成する.

・特別の事情がある場合には,当分の間,数学や理科等に関する科目において,情報科を設定した趣旨にふさわしい内容(2単位相当分)を履修することをもって,情報科の履修に替えることができることとする経過措置を設ける

 以上の様に,答申は,独立・必修・並立3科目(「基礎技能」・「科学的理解」・「情報社会参加」の重点別)を提案したのである.ここに,協力者会議第1次報告のスタンスであった様な,「基礎技能」を共通とし,「科学的理解」・「情報社会参加」の配分で科目のバリエーションを作ろうとした立場や,情報処理学会分科会案の様な,「積層型科目」案は完全に潰えたように思えた.

 さてその協力者会議の方は,8月5日になって漸く,「情報化の進展に対応した教育環境の実現に向けて (情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議 最終報告)」を出す.

 その内容は,教課審答申への単なる追従ではなく,それを補完するものであるように思われる.

 たとえば,まず「情報活用能力」を,

 (1)課題や目的に応じて情報手段を適切に活用することを含めて,必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し,受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力(情報活用の実践力)

 (2) 情報活用の基礎となる情報手段の特性の理解と,情報を適切に扱ったり,自らの情報活用を評価・改善するための基礎的な理論や方法の理解(情報の科学的な理解)

 (3) 社会生活の中で情報や情報技術が果たしている役割や及ぼしている影響を理解し,情報モラルの必要性や情報に対する責任について考え,望ましい情報社会の創造に参画しようとする態度(情報社会に参画する態度)

 とした上で,

 なお,実際の学習活動では,情報手段を具体的に活用する体験 49 が必要であり,必要最小限の基本操作の習得にも配慮する必要がある.(ここでいう情報手段は,コンピュータ等の情報機器や情報通信ネットワーク等を指す.)

 と述べている.

 これを教課審があげた「科目の目標」と比較してみると,教課審のいう「基礎技能」を当然のものとして無内容とみなし,協力者会議第1次報告の捉え方であった,「情報活用の実践力」を共通とし,「科学的理解」・「情報社会参加」のふたつを軸とする,という思想を見ることができる.この場合,情報Aを「科学的理解」・「情報社会参加」をほぼタイなものした派生科目として捉え 50 ,第1次報告にいう「情報活用の実践力」を「情報手段活用」とみなして3科目共通のものとすれば,第1次報告の2本柱の科目構成はいまだ生きていることとなる.それは,「情報手段を活用する上での留意点」として,

 以上の学習活動においては,情報手段を適切に活用することが必要である.そのためには,機器の基本操作を習得させることが不可欠になるが,小学校段階では,「情報活用の実践力」を育成する学習活動の中で,慣れ,親しみながら習得させることを基本とすべきである.また,具体的で直感的に理解できるものから,徐々に自由度が高く,抽象度や応用範囲の広いものを学習の題材として用いたり,あるいは,学習内容の広がりに対応して学習の幅を学校外に広げることや,課題の発見,情報の収集,調査結果の発表などに役立つ情報通信ネットワークの活用を取り入れることが望ましい.

 と述べていることにも伺われるのではないだろうか.

5.2 インターネットの整備決定

 なお,1996年7月19日の第15期中央教育審議会第1次答申で,「近い将来,すべての学校がインターネットに接続することを目指しつつ,」と述べられていたインフラ整備は,先述の1997年5月の閣議決定「経済構造の変革と創造のための行動計画」に見られるような経済政策的側面もあり,急速に整備決定が進行する.1998年4月の文部省「教育改革プログラム」(改訂) 51 では,「中学校,高等学校,特殊教育諸学校は平成13年度までに,小学校は平成15年度までに,すべての学校がインターネットに接続できるよう計画的な整備を推進する」とされていたが,その後,1998年12月には「小学校については,15年度までの接続計画を2年前倒しし,13年度までにすべての学校を接続(平成10年12月整備計画(案)改訂)」することとなった. 52

6 カリキュラムの具体化

6.1 内容の研究試作

 研究面では,すでに1997年,変化の激しい情報教育領域において普遍的な部分と変化する部分をうまく切り分けて対応していく学校を基盤とするカリキュラム開発(School-based Curriculum)を提唱する,岡本敏雄他「情報教育のための小中高の接続性を有したカリキュラムの開発」平成8科研費基盤B1成果報告書や,教育工学関連学協会のメンバーを中心とした「高等学校段階における情報教育実施と評価のためのフィージビリティ・スタディ」平成7,8年度科研費基盤B1最終報告書が出ていると同時に,すでにこの1997年段階で,岡本敏雄他「高度情報通信社会での教師教育に関わる内容・制度・形態の総合的研究」(平9科研費基盤A1)の研究過程では,99年学習指導要領の科目構成のプロトタイプを情報A,B,Cの並立3科目からの選択必修という構成で下表の様に構築し[( )内は配当単位時間数] 53 ,さらに教科書項目案を検討している 54

科目 情報A 2単位
重点 情報の利活用及び実践的能力の向上
第1章
第2章
第3章
第4章
情報の表現(24)
コンピュータと情報通信(17)
情報の探索と発信(17)
情報システムと社会(12)
科目 情報B 2単位
重点 情報の科学的理解
第1章
第2章
第3章
第4章
問題解決とソフトウェアの利用(13)
モデルの構成と検証(14)
アルゴリズムとプログラミング(25)
通信とネットワーク(18)
科目 情報C 2単位
重点 情報社会への参画と創造
第1章
第2章
第3章
第4章
情報の処理・分析(16)
情報の創作と社会への参画(20)
情報の管理・運用(14)
新しい情報システム(20)

 また,情報処理学会分科会は先の「初等・中等教育における情報教育の提案」をした後,「初等中等教育委員会」と名称を変更し,教課審に従った3科目並列型の試作教科書の作成に臨み,1998年10月にこれを公開する 55 .その章立ては以下のようなものである.

科目 情報A
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
コンピュータネットワークの利用
電子情報ネットワークへの参加
電子情報ネットワークの成り立ち
電子情報ネットワークへの情報発信
インターネット社会における「自由・平等・公正」
科目 情報B
第1章
第2章
第3章
第4章
情報社会と私たちの生活
問題解決におけるコンピュータの活用方法
情報処理の定式化とデータ管理
コンピュータの構成
科目 情報C
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
情報化の進展と社会への影響
情報の表現
情報ネットワークとコミュニケーション
WWWによる情報発信
インターネット社会のルールとマナー

 

前者の指導要領案・教科書案の代表的な立場は,

  教育におけるコンピュータ利用は,以下の3つの視点から捉えることができる.
   through:各教科における内容理解のためのコンピュータの利活用
   with:各教科での課題解決,創作活動,コミュニケーション活動等のための道具的な利用
   about:情報の科学的な理解やスキルを育成するための情報技術に関する教育これらは統合されるべきである.情報手段の利活用といった視点では"with","through"が生かされなければならない.これは様々な教科の指導において有効である.そして独立教科としての"情報"を考えるとき,"about"の視点が中核となろう.

とする 56

 後者の指導要領案・教科書案の代表的な立場は,

  情報教育には,コンピュータを教育に応用して効果を上げるという立場と,コンピュータ自体を教えることによって情報活用能力を育て,必要な場面でその力が発揮されることを期待する立場とがある.前者を教育方法学の立場,後者を情報科学の立場と呼ぶことにしよう.協力者会議の内容は教育方法学の立場に立つものであり,情報科学の立場からは基礎と応用の内容は入れ替わることになる.
   この二つの立場のどちらか一方に立つことは,望ましくない.応用する場面と無関係にコンピュータの原理を教えても,コンピュータに興味を持つ生徒以外には迷惑である.現在,数学嫌いが多く生じているのも,生徒から見てどこで役に立つのか分らない代数演算の運用(例えば因数分解)を強制するからである.一方,現在多くの大学で行なわれているように,ワープロや表計算の使い方を教えるだけの教育も,変化の激しい情報技術に対しては早々に陳腐化が起こって教育的でない.コンピュータのような複雑な道具に対しては,その基本原理の確実な理解があって初めて,実際の応用の場面で活用することが出来るようになるのである.

とする 57

 前者は,「独立教科としての"情報"を考えるとき,"about"の視点が中核となろう.」と述べている点で,「この二つの立場のどちらか一方に立つことは,望ましくない.」とバランスを説く後者よりもむしろ「情報科学的」だということになる.

 門外漢にとって見れば,後者の議論は,むしろ「理学的教育」を説いているのであって,何か対立があるとすれば「工学的教育」に対してであって,これは「教育方法学」と「情報科学」の対立ではなく.広い意味での「教育方法学」,通常いわれる「教科教育学」内部でのスタンスの違いと捉えるほうが正鵠を射ているように思える.

6.2 1999年学習指導要領

 さて,以上のような経緯の下,1999(平成11)年3月29日「高等学校学習指導要領」が告示される.学習指導要領自体の検討は今後教科書の発行や,授業の開始があってから本格化するものと思われる.

 以下ここでは,一瞥だけするにとどめる.

 まず,独立必修教科で,情報A,B,Cの3科目から2単位選択必修である点は最初に述べた.

 次に各科目の目標は,

 情報A コンピュータや情報通信ネットワークなどの活用を通して,情報を適切に収集・処理・発信するための基礎的な知識と技能を習得させるとともに,情報を主体的に活用しようとする態度を育てる.

 情報B コンピュータにおける情報の表し方や処理の仕組み,情報社会を支える情報技術の役割や影響を理解させ,問題解決においてコンピュータを効果的に活用するための科学的な考え方や方法を習得させる.

 情報C 情報のディジタル化や情報通信ネットワークの特性を理解させ,表現やコ

ミュニケーションにおいてコンピュータなどを効果的に活用する能力を養うとともに,情報化の進展が社会に及ぼす影響を理解させ,情報社会に参加する上での望ましい態度を育てる.

 である 58

 指導計画の作成に関しては,

 2)各科目の目標及び内容等に即してコンピュータや情報通信ネットワークなどを活用した実習を積極的に取り入れること.原則として,「情報A」では総授業時数の2分の1以上を,「情報B」及び「情報C」では総授業時数の3分の1以上を,実習に配当すること

 と実習重視である.

 代替措置は附則に,

 (1)「数学B」のうち第2章第4節第2款第6の2に示す内容の(3)若しくは(4)の履修又は「生活技術」の履修(第2章第9節第2款第3の2に示す内容の(3)を履修する場合に限る.)(これらの場合,代替できる単位数はそれぞれ1単位とする.)

 (2)普通科及び総合学科における「農業情報処理」,「情報技術基礎」,「情報処

理」,「水産情報技術」,「家庭情報処理」,「看護情報処理」又は「福祉情報処理」の履修

 (3)公民,数学,理科又は家庭の各教科に属する学校設定科目として設ける情報に関する科目の履修(公民に属する科目の履修をもって代替できる単位数は1単位とする.)

とある.

7 おわりに

 以上,高等学校新教科「情報」成立までの経緯と若干の考察を行ったが,論争の渦中に居たわけではないのでとんでもない勘違いをしているのではないかと恐れている.諸家のご教示を頂ければ幸いである.

 また,焦点を絞ったため,次のような問題については全く触れることができなかったので今後の課題としたい.

 1)小・中学校教育,大学教育との接合性(articulation)の問題.

 2)総合的な学習の時間との関連.

 3)インターネット接続を除くインフラ整備の問題.

 4)教員養成の問題.

 ことに教員養成については,普通教育教科であるにも関わらず,「教員養成大学では難しい」 59 といわれている上に,文部省は,免許認定講習会を開催する予定にしており,平成11年度中に講習会講師を養成するための講座を実施し,12年度から14年度の間に毎年3千人,合計9千人の教員を現職教員の中から確保する計画である 60 ことには懸念を感じることを付記しておきたい.

【 注 】

[1] http://www.monbu.go.jp/news/00000317/km.html
[2] 教科の設定,改廃は学校教育法第43条に「高等学校の学科及び教科に関する事項は,前二条の規定に従い,監督庁が,これを定める.」と規定され,監督庁である文部大臣(法106条による)が「学校教育法施行規則」という文部省令や,その委任を受けた「学習指導要領」という文書でその内容を明示するという仕組みである.
[3] http://www.monbu.go.jp/printing/sidou/00000003/
[4] 文部省「改訂のポイント」http://www.monbu.go.jp/news/00000317/p.html
[5] ただし,範囲は専門教育としての「情報科」ではなく,国民教養としての普通教育に関する教科としての「情報」に限定する.
[6] 同時に,中学校学習指導要領(http://www.monbu.go.jp/printing/sidou/00000002/)は,「コンピュータの操作等を通して,その役割と機能について理解させ,情報を適切に活用する基礎的な能力を養う」ことを目標として,技術・家庭に「情報基礎」という項目を規定した.
[7] 同旨,岡本敏雄「初等中等教育と先端情報技術応用」情報処理学会『情報処理』39巻7号,628頁.
[8] 文部省「情報教育に関する手引」平成3年7月.当時の調査研究協力者会議のメンバーが中心となって作成した.
[9] ついでながら,1997年1月の大学センター入試から,数学グループの出題として,情報関係を統合して試験する「情報関係基礎」が登場しているのにも注目される.http://www.ics.teikyo-u.ac.jp/ce/CenterExams/ 参照.
[10] なお,本稿では「情報処理教育」と「情報教育」を厳密には区別しないが,「情報処理教育」は「機械による情報の処理そのものを中心」とするのに対し,「情報教育」は「人間の創造的な活動に焦点をあてた内容」であるとする観点がある.岡本敏雄・西之園晴夫・永野和男「初等中等教育での情報教育の内容」情報処理学会『情報処理』38巻8号,1997年8月,713頁参照.)
[11] もっとも,99年指導要領の教科「情報」の規定にも「深入りしないこと」という言葉は散見される.
[12] 「化学IB」,「生物IB」,「地学IB」もそれぞれ同旨.
[13] 「化学II」,「生物II」,「地学II」もそれぞれ同旨.
[14] 工芸Iも同旨.
[15] 「生活一般」も同じ.
[16] 「生活一般」では,「・・・,実験・実習を中心とした指導を行うよう配慮する.」となっている.
[17] たとえば,武井恵雄・大岩元「高等教育の接続性から見た情報教育」情報処理学会『情報処理』38巻9号,1997年9月,816頁.
[18] たとえば,分散型でなく伝統的教科と並存する「融合的カリキュラム(comprehensive curriculum)については,岡本敏雄・西之園晴夫「初等中等教育での情報教育の取り組みと現状」情報処理学会『情報処理』38巻7号,1997年7月,596頁参照.
[19] たとえば,高橋邦夫「100校プロジェクトの実践から」情報処理学会『情報処理』39巻7号,1998年7月,638頁から参照.
[20] 坂元昂「21世紀に向けた教育改革政策」情報処理学会『情報処理』39巻7号,1998年7月,622頁.
[21] http://www.kantei.go.jp/jp/it/990422ho-7.html
[22] 西之園晴夫他「高等学校段階における情報教育カリキュラムの開発と大学教育の連続性に関する研究(平6科研費総合A研究成果最終報告書)」
[23] 坂本昂他「諸外国の情報教育・コンピュータ教育の実態調査(平6科研費総合A中間報告書)」
[24] http://www.ai.is.uec.ac.jp/u/chusen/OKAMAOTO/sidouyouryou.html
[25] 教育工学関連学協会連合は,日本教育工学会,教育システム情報学会.日本科学教育学会,日本認知科学会,日本視聴覚・放送教育学会,日本教育方法学会,電子情報通信学会「教育工学研究専門委員会」,情報処理学会「コンピュータと教育研究会」,人工知能学会「知的教育システム研究会」,国立大学教育実践研究指導関連センター協議会から構成される.
[26] この発想は最終的には「総合的な学習の時間」に引き継がれる.
[27] http://www.monbu.go.jp/singi/cyukyo/00000151/
[28] この段階では,まだ必修といった強い表現は出ていないことに留意.
[29] http://www.monbu.go.jp/singi/katei/00000130/
[30] 以下,議事録は,http://www.monbu.go.jp/singi/chosa/ を参照.
[31] 情報処理学会『情報処理』40巻2号,1999年2月,会告25頁.
[32] 1999年に,「情報化社会を生きるための初等中等教育」という視点からの論考を加え,『21世紀:豊かな情報化社会の実現を願って−教育の視点から−」情報処理学会,としてまとめられる.
[33] 前掲,武井・大岩論文811頁.
[34] 骨子について,http://www.miti.go.jp/topic-j/e3275aaj.html 参照.
[35] http://www.monbu.go.jp/singi/chosa/00000257/
[36] http://www.monbu.go.jp/singi/katei/00000088/
[37] http://www.monbu.go.jp/singi/chosa/00000098/
[38] http://www.monbu.go.jp/singi/katei/00000128/
[39] http://www.monbu.go.jp/singi/katei/00000133/
[40] また,注目すべきこととしては,高等学校の普通教科「情報」については教科別委員会は設けずに,協力者会議に審議を委託したことがある.
[41] http://www.jpc-sed.or.jp/cisi/teigen.htm なお情報教育専門委員会委員長は岡本敏雄氏.
[42] http://www.jpc-sed.or.jp/cisi/kianketo.htm
[43] http://www.hucom.tp.titech.ac.jp/matsuda/informatics/IPSJ.html
[44] http://www.monbu.go.jp/singi/chosa/00000292/
[45] http://www.wnn.or.jp/wnn-s/
[46] 前掲坂元論文624頁.
[47] http://www.epa.go.jp/j-j/doc/1997taisaku11-18-j-j.html
[48] http://www.mpt.go.jp/whatsnew/edu_inet.html
[49] 便宜上これを,「情報手段活用」と呼ぶ.
[50] 実際,最終報告では「『情報A』は,コンピュータや情報通信ネットワークなどの活用に,『情報B』は,コンピュータの機能や仕組み及びコンピュータ活用の考え方や方法の科学的な理解に,『情報C』は,情報通信ネットワークなどの社会における役割や影響の理解に,それぞれ重点を置いて内容が構成されることとなる.」として,事実上情報Aの独自性を否定している.
[51] http://www.monbu.go.jp/series/00000032/
[52] http://www.monbu.go.jp/special/media/00000018/
[53] 岡本敏雄「初等中等教育における“情報”教育の体系と政策的対応」『教育システム情報学会誌』15巻1号,1998年4月,38頁.
[54] 岡本敏雄「高等学校普通教科『情報』のための教員養成カリキュラムの内容・方法について」日本教育工学会シンポジウム予稿集,1998年6月,3-5頁,参照.
[55] http://www.ics.teikyo-u.ac.jp/InformationStudy/
[56] 岡本敏雄,前掲「初等中等教育における“情報”教育の体系と政策的対応」36頁.
[57] 前掲,1998年2月情報処理学会分科会提案.
[58] ちなみに,情報Aが基礎ないしは職業高校向け,情報Bが理科進学系,情報Cが文科進学系という俗説のあること,ならびにその批判については,川合慧「新教科『情報』と大学での情報教育」情報処理学会コンピュータと教育研究会主催「夏の情報教育シンポジウムSummer Symposium in Shinshu'99−教育の新時代:高校の新教科『情報』が開く世界−」予稿集(http://info2.rikkyo.ac.jp/sss99/)参照.
[59] 96年12月16日第2回協力者会議
[60] 文部省初等中等教育局「平成11年度予算(案)新規事項資料」(http://www.monbu.go.jp/special/yosan/00000027/pdfpage.htm)参照.

 


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