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TITLE:  韓国の教育基本法(訳)
AUTHOR: 上村 正則(福岡教法研)
SOURCE: 全国教法研理論フォーラム報告資料(2004年4月3日)
WORDS:  全40字×210行


教育基本法

1997年12月13日
改正 2000年1月28日
2001年1月29日
2002年12月5日


第1章 総則

第1条(目的)この法は、教育に関する国民の権利・義務と国家及び地方自治団体の責任を定め、教育制度とその運営に関する基本的事項を規定することを目的とする。

第2条(教育理念)教育は、弘益人間の理念のもと、すべての国民をして人格を陶冶し、自主的生活能力と民主市民として必要な資質を備えさせて人間らしい人生を営為させ、民主国家の発展と人類共栄の理想を実現することに寄与することを目的とする。
 【訳注】弘益人間=広く人間世界に利益を与えること(檀君の建国理念)

策3条(学習権)すべての国民は、平生にかけて学習し、能力と適性に応じて教育を受ける擬制を有する。
 【訳注】平生=生涯

第4条(教育の機会均等)すべての国民は、性別、宗教、信念、社会的身分、経済的地位又は身体的条件等を理由に教育において差別を受けない。

第5条(教育の自主性等)@国家及び地方自治団体は、教育の自主性及び専門性を保障しなければならないのであって、地域の実情に合う教育実施のための施策を樹立・実施しなければならない。
A学校運営の自律性は尊重されて、教職員・学生・学父母及び地域住民等は、法令が定めるところによって学校運営に参加することができる。
 【訳注】学父母(学父兄)=保護者

第6条(教育の中立性)@教育は、教育本来の目的によってその機能を果たすように運営されなければならないのであって、どのような政治的・党派的又は個人的偏見の伝播のための方便に利用されてはならない。
A国家及び地方自治団体が設立する学校においては、特定の宗教のための宗教教育をしてはならない。

第7条(教育財政)@国家及び地方自治団体は、教育財政を安定的に確保するために必要な施策を樹立・実施しなければならない。
A教育財政の安定的確保のための地方教育財政交付金及び地方教育譲与金等に関して、必要な事項は別に法律で定める。

第8条(義務教育)@義務教育は、6年の初等教育及び3年の中等教育で行う。ただし、3年の中等教育に関する義務教育は、国家の財政与件を考慮して大統領令が定めるところによって順次的に実施する。
Aすべての国民は、第1項の規定による義務教育を受ける権利を有する。

第9条(学校教育)@幼児教育・初等教育・中等教育及び高等教育を実施するために、学校を設置する。
A学校は、公共性を持って、学生の教育の他に学術と文化的伝統を維持・発展させ、住民の平生教育のために努力しなければならない。
B学校教育は、学生の創造力啓発及び人性の涵養を含む全人的教育を重視して成し遂げられなければならない。
C学校の種類と学校の設立・経営等学校教育に関する基本的事項は、別に法律で定める。

第10条(社会教育)@国民の平生教育のためのあらゆる形態の社会教育は、奨励されなければならない。
A社会教育の履修は、法令が定めるところによって、それに相応な学校教育の履修で認定することができる。
B社会教育施設の種類と設立・経営等社会教育に関する基本的な事項は、別に法律で定める。

第11条(学校等の設立)@国家及び地方自治団体は、学校及び社会教育施設を設立・経営する。
A法人又は私人は、法律が定めるところによって、学校及び社会教育施設を設立・経営することができる。

第2章 教育当事者

第12条(学習者)@学生を含む学習者の基本的人権は、学校教育又は社会教育の過程で尊重され保護される。
A教育内容・教育方法・教材及び教育施設は、学習者の人格を尊重して個性を重視し、学習者の能力が最大限に発揮されるように講究されなければならない。
B学生は、学校の規則を尊重しなければならないのであって、教員の教育・研究活動を妨害したり、学内の秩序を紊乱してはならない。

第13条(保護者)@父母等保護者は、その保養する子女又は児童が正しい人性をもち健康に成長するように、教育する権利と責任を持つ。
A父母等保護者は、その保護する子女又は児童の教育に関して学校に意見を提示することができ、学校はこれを尊重しなければならない。

第14条(教員)@学校教育において、教員の専門性は尊重され、教員の経済的・社会的地位は優遇され、その身分は保障される。
A教員は、教育者として備えるべき品性と資質を向上させるために努力しなければならない。
B教員は、特定政党又は政派を支持したり反対するために、学生を扇動したりしてはならない。
C教員は、法律の定めるところによって他の公職に就任することができる。
D教員の任用・服務・報酬及び年金等に関して必要な事項は、別に法律で定める。

第15条(教員団体)@教員は、相互協同して教育の振興と文化の暢達に努力して、教員の経済的・社会的地位を向上させるために各地方自治団体及び中央に教員団体を組織することができる。
A第1項の規定による教員団体の組織に関して必要な事項は、大統領令で定める。

第16条(学校等の設立・経営者)@学校及び社会教育施設の設立・経営者は、法令が定めるところにより、教育のための施設・設備・財政及び教員等を確保してこれを運用・管理する。
A学校の長及び社会教育施設の設立・経営者は、法令が定めるところにより、学習者を選定・教育し、学習者の学習成果等教育の過程を記録・管理する。
B学校及び社会教育施設の教育内容は、学習者に事前に公開されなければならない。

第17条(国家及び地方自治団体)国家及び地方自治団体は、学校及び社会教育施設を指導・監督する。

第3章 教育の振興

第17条の2(男女平等教育の増進)@国家及び地方自治団体は、男女平等精神をよりいっそう積極的に実施できる施設を樹立・実施しなければならない。
A第1項の規定による施設には、体育・科学技術等女性の活動が脆弱な分野を重点に育成することができる教育的方案が含まれなければならない。
B学校教育での男女平等増進のための学校教育課程の基準課内容等大統領令が定める重要事項に関する教育人的資源部長官の諮問に応えるために、男女平等教育審議会を設置する。
C第3項の規定による男女平等教育審議会の委員の資格・構成・運営等につき必要な事項は、大統領令で定める。
 (2001年1月29日 本条改正)(2000年1月28日 本条新設)

第18条(特殊教育)国家及び地方自治団体は、身体的・精神的・知的障害等によって特別な教育的配慮が必要な者のための学校を設立・経営しなければならないのであって、これらの教育を支援するために必要な施設を樹立・実施しなければならない。

第19条(英才教育)国家及び地方自治団体は、学問・芸術又は体育等の分野で才能が特に優れている者の教育に関して必要な施策を樹立・実施しなければならない。

第20条(幼児教育)国家及び地方自治団体は、幼児教育を振興するために必要な施策を樹立・実施しなければならない。

第21条(職業教育)国家及び地方自治団体は、すべての国民が学校教育と社会教育を通じて、職業に対する素養と能力の啓発のための教育を受けることができるようにするために必要な施策を樹立・実施しなければならない。

第22条(科学・技術教育)国家及び地方自治団体は、科学・技術教育を振興するために必要な施策を樹立・実施しなければならない。

第23条(教育の情報化)国家及び地方自治団体は、情報化教育及び情報通信媒体を利用する教育の支援と教育情報産業の育成等教育の情報化に関して必要な施策を樹立・実施しなければならない。

第23条の2(教育行政業務の電子化)国家及び地方自治団体は、学校及び教育行政機関の行政業務を電子的に処理することができるように必要な施策を講究しなければならない。
 (2002年12月5日 本条新設)

第24条(学術文化の振興)国家及び地方自治団体は、学術文化を研究・振興するために学術文化施設設置及び研究費支援等の施策を樹立・実施しなければならない。

第25条(私学の育成)国家及び地方自治団体は、私立学校を支援・育成しなければならないのであって、私立学校の多様と特性ある設立目的が尊重されるようにしなければならない。

第26条(評価及び認証制度)@国家は、国民の学習成果等が公平に評価されて社会的に通用することができるようにするために、学力評価及び能力認証に関する制度を樹立・実施することができる。
A第1項の規定による評価及び認証制度は、学校の教育課程等教育制度と相互連繋されなければならない。

第27条(保健及び福祉の増進)国家及び地方自治団体は、学生及び教職員の健康及び福祉の増進のために必要な施策を樹立・実施しなければならない。

第28条(奨学制度等)@国家及び地方自治団体は、経済的理由により教育を受けることが困難な者のための奨学制度及び学費補助制度等を樹立・実施しなければならない。
A国家は、教員養成教育を受ける者及び国家が特に必要とする分野を国内外で専攻するか研究する者に、学費その他必要な経費の全部又は一部を補助することができる。
B第1項及び第2項の規定による奨学金及び学費補助金等の支給方法及び節次と支給を受ける者の資格及び義務等に関して必要な事項は大統領令で定める。
 【訳注】節次=手続き・手順

第29条(国際教育)@国家は、国民が国際社会の一員として具備すべき素養と能力を育成できるように国際化教育に努力しなければならない。
A国家は、外国に居住する同胞に必要な学校教育又は社会教育を実施するために必要な施策を講究しなければならない。
B国家は、学問研究の振興のために国外留学に関する施策を講究しなければならず、国外でのわが国に対する理解とわが文化の正体性確立のための教育・研究活動を支援しなければならない。C国家は、外国政府及び国際機構等との教育協力に必要な施策を講究しなければならない。

 附則



第1条(施行日)この法は1998年3月1日から施行する。
第2条(別法律の廃止)教育法はこれを廃止する。
第3条(別法律の改正) 略
第4条(別法令との関係) 略


大韓民国憲法(1987年10月29日 全文改正・公布)



第31条(教育を受ける権利・義務等)
@すべての国民は、能力に応じて等しく教育を受ける権利を有する。
Aすべての国民は、その保護する子女に、少なくとも初等教育と法律が定める教育を受けさせる義務を負う。
B義務教育は無償とする。
C教育の自主性・専門性・政治的中立性及び大学の自律性は、法律が定めるところによって保障される。
D国家は、平生教育を振興しなければならない。
E学校教育及び平生教育を含む教育制度とその運用、教育財政及び教員の地位に関する基本的な事項は法律で定める。


(上村正則 訳)





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