学年主任 | (ファシリテイター) まず、それぞれの生徒本人から、今の気持ちを話してもらいましょう。
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E | H君や I 君に、喧嘩を仕掛けさせたことは、本当に悪いことをしたと思います。ごめんなさい。
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H | 僕も「やって来い」とか言われて、 I に殴りかかっていったので、悪かったと思うし、E君がホントに反省してくれているなら、それでいいと思う。僕が、そういうことをしたから、F君やG君まで学校に来れなくなって、悪いことをしたと思う。僕さえ、殴りかかるようなことをしなかったら、こんなことにはならなかったと思って、ものすごく反省しています。
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I | 皆が、反省して、謝ってくれて、これからこんなことがなくなるなら、僕はそれで、いいと思う。
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学年主任 | 生徒の話を聞いてもらいましたが、保護者の方は、どのようにお考えですか。
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Eの父 | 今回のことは、学校から連絡を受けて、はじめて知って、驚いていますし、親としての指導も甘かったと思います。治療費の補償も含めて、できる限りのことはさせていただきます。本当に、申し訳ございませんでした。
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Hの父 | 子どもの言うとおりです。うちの子にも、反省するべきところが、かなりありますし、 I 君には、大変悪いことをした。親としての指導不行き届きがあったと思っています。
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I の母 | 少し子どもたちに訊いてみたいことがあるのですが、よろしいでしょうか。
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学年主任 | 結構ですよ。
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I の母 | E君は、自分のしたことのどういうところが、悪かったと思いますか。
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E | (少し考えて)H君の背中を蹴ったりして、喧嘩させたこと。
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I の母 | 確かに、H君には、ほんとに悪いことをしたと思っているのよね。それだけかしら。
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E | I 君とH君が怪我をしたこと。
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I の母 | E君には弟さんか妹さんはいますか。
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E | 妹がいます。
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I の母 | E君の妹さんが、友達に、こういうことをされたら、E君はどう思うかな。
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E | ものすごく、腹が立つ。
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I の母 | もし人が、自分のせいで怪我をして、例えば顔に傷でも残ったら、どうしようもないよね。そういうことを考えたことはあるかな。
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E | そういうことは、考えたことがないです。
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Hの父 | (Hに対して)おまえは、そういうことを考えたことあるんか。
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H | ない。
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Hの父 | (Hに対して)そう言うと思うたけどな、こういうことをして、やったほうの親もされたほうの親も、どういう気持ちになるか、わかるやろ。
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H | ・・・。
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Hの父 | 本当に、悲しい気持ちになるんやで。
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H | ウン。
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I の母 | (Eに対して)軽い冗談のつもりでしたことが、たくさんの人を、ものすごく傷つけたり、場合によっては、「取り返しのつかないことになってしまう」ということ。そして、そんなことになったら、被害を受けた方だけではなくて、「やってしまった方も、大変な思いをしなくてはならない」ということをわかってほしかったのよ。
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E | はい。
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Eの母 | I 君の母さんがおっしゃることは、よくわかります。私の子どもは、何がどう悪いのか、よくわかっていないところがあり、この場で、お話をしていただいたことで、少しは反省ができたのではないかと思います。本当に申し訳ありませんでした。
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学年主任 | 今後の学校での指導について、保護者の方のご意見がありましたら、お願いします。
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I の母 | このような機会をつくっていただいたことで、十分だと思います。
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Hの父 | 怪我をしたとはいえ、うちの子(H)も、実際に悪いところがあるし、E君については、できるだけ寛大な措置をお願いしたいと思います。
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Eの父 | I 君の母さんが、ここで話されたことは、うちの子にとっては、本当にこれから考えを改めていかないといけないことで、また家でも、いい聞かせていきたいと思います。また、皆さんの暖かい言葉も、身にしみました。ありがとうございました。
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学年主任 | (生徒対して)最後にいいたいことがあれば、言ってください。
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E | 自分のしたことが、どういうふうに、ほかの人に悪い影響を与えるか、少しは、わかった。本当にごめんなさい。
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H | 僕も、やっぱり、被害者というだけじゃないし、悪かったと思う。F君やG君とも、ちゃんと、こうやって話しをして、謝りたい。
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I | 皆、最初、謝ってくれたときよりは、もっと反省できたように思う。僕も、F君やG君と、この後、話ができれば、いいたいことがあります。
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学年主任 | 以上のお話の様子は、特別指導の会議で伝え、それを踏まえて、今後の指導内容を考えいきたいと思います。本日は、どうもありがとうございました。
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学年副主任 | (ファシリテイター) まず、それぞれの生徒本人から、言いたいことを話してください。
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F | H君に「たたいて来い」みたいなことを軽はずみに言って、 I 君と喧嘩させるみたいになって、自分が悪かったところは、反省しています。
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G | 僕も、同じです。冗談でも、人を戦わせるみたいなことは、よくないし、してはいけないことをしたと思います。
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H | この前の会でも言ったけど、「やって来い」とか言われて、 I に殴りかかっていったので、悪かったと思うし、僕が、そういうことをしなかったから、F君やG君も、こんなこと(謹慎処分)にならなくてよかったと思うので、悪いことをしたと思います。ごめんなさい。
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I | H君に訊きたいことがあるんですけど、いいですか。
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学年副主任 | いいですよ。
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I | 僕に殴りかかってきたとき、どういうきもちだったのか、訊きたいです。
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H | ・・・。
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I | H君は、僕のことを、軽い奴とか、弱い奴と思っていたんじゃないの。
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H | 「弱い」とか、じゃなくて、「あんまり反撃してこないやろうなぁー」と思って。
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I | それって、本当は、人間に上下とかはないんだけど、僕のことを「自分よりも下」に見たということかな。
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H | 下に見るということはないけど、 I 君が、人に優しいところに付け込んだと思う。そういう自分が、一番いけないし、悪かったところと、あれから反省して、今は思っている。
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F | ( I に対して)じゃ、なんで、あの時は、 I 君は、いつもと違って、あんなに殴り返していったのか、分からなかったけど。
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I | それは、Hが僕を下に見ていたように思って、それが許せなかったという感じ。
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G | H君が、F君や僕が「やって来い」みたいに軽く言ったことで、 I 君を叩きに行ったという話になっているんだけど、そんなにF君や僕の言ったことが、H君にプレッシャーになったとは思われないんだけど。
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H | G君やF君からは、少し前の家庭科の実習のときに、叩かれたこともあったから、やっぱり、怖かったから。
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F | あの家庭科の実習のときに、背中を叩いたのは、H君が包丁をもっている時に、つまらない冗談をいったりしいて、危ないから、ちゃんとしろと言って、叩いたということだから、ちょっと、それで怖いというのは、どうかな。
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G | それに、僕も逆に、体育の授業の後で、着替え中に、H君に後ろから叩かれたことがあって、結構痛かったから覚えているんだけど、叩かれて、いやな思いとか怖いというのが自分の気持ちにあるんなら、そこも、相手のことを考えて反省してほしい。
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H | はい。されたことばかり覚えていて、そういう、自分がやったことは、よく覚えてないけど、本当に、そういうことがあったように思うし、ごめんないさい。
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I | (Hに対して)じゃあ、どうして、そういうふうに、人を叩いたり、いろいろちょっかいをだしてしまうのか。その理由を訊きたいんだけど。
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H | なんか。そういうふうにするのが、普通になっているというか・・・。(ちょっと考えて、はっきりした答えが見つからない様子)
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F | 普通って言うのは、おかしいよな。でも、そういう空気を作っているのは、僕らかもしれへんから、だめなことなんだけど。何もないのに、叩くっていうのは、友達になりたいけど、あんまりクラスで、仲のいい友達がいないから、僕らのところへ寄ってきて、それで、いろいろちょっかいをだしてしまうという感じではないの。そんなふうに感じるんだけど。だから、E君の言うような「しばいて来い」とか無茶なことを言われても、仲間のしるしみたいに、喧嘩し掛けていったりしたんちゃうかなって、思うんだけど。
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H | (しばらく考えて)そうやな。
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学年副主任 | かなり、今回のことについて、それぞれの人の心の動きや背景も、はっきりしてきたように思いますが、それぞれ、今後の反省点とかは、どうですか。
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F | こうやって考えてみると、H君があまり友達もいなくて、寂しい思いをしているのを知りながら、それを逆に、とって、「自分のおもしろいように」というか、「悪いことをさせて楽しむ」みたいな雰囲気をつくっていたことは、本当に反省しています。自分では、何もしていない、というか、そんなに悪いことをしたつもりはかったけれども、やっぱり、これは「いじめ」の一種だと思いました。自分も、やられたときのことは、よく覚えているのに、人には、自分が思った以上に、ひどいことをしているのだな、とかプレシャーをかけているのだなと思いました。
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G | F君がいっていたように、これまでも、今回のようなことは、あったのに、はやし立てたりはしなくても、「やれ。やれ。」みたいな感じで、それを傍から見ていて、それがH君のいうようなプレッシャーになっていたんだなと反省しました。
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I | 僕も、これまでも、今回よりは軽かったけども、同じようなことは、あったのに、そのときは、「自分が我慢したらいい」という感じとか、「まぁ、いいか」とか「H君が悪いから」とか見逃していて、これが「いじめだ」という意識が低かったと思います。今考えれば、自分がキレて人に怪我させるよりも、もっと早くに、先生に相談するとか、やれることはいろいろあったと思います。
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H | F君の話で、自分がなぜ、あんなことをしていたのか、わかったような感じです。やっぱり、友達と仲良くやっていきたいし、その仲良くする仕方が、わかってなかったというのが、なんだか、ちょっと恥ずかしいことだなと。とにかく、E君もF君もG君も皆はやく、学校に戻ってきてほしいです。
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学年副主任 | 皆が、ここで気づいたことは、大変、意味のあることがたくさん含まれていましたし、教えられるのではなく、自らの力で考えて、そのようなことが理解できたことに大きな意義があると思います。では、ここでの皆の話したことは、このあとの先生方の会議で伝え、君たちの反省が深まったことを踏まえて、今後の指導内容を考えいきたいと思います。
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1. | 平成18年10月29日文科省初等中等教育局長711号
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2. | 教育再生会議「いじめ問題への緊急提言−教育関係者、国民に向けて−」平成18年11月29日。同提言に関する教育実践の視点からの批判的検討については、吉田卓司「教育再生会議「いじめ緊急提言」の検討−修復的司法の視点から−」全国教育法研究会会報72号(2007年)参照。
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3. | そもそも、教育再生会議の提言は、立案の基礎となる公的資料にさえも信頼性を欠くという状況である。例えば、教育再生会議の第1回学校再生分科会・規範意識・家族・地域教育再生合同分科会では、いじめが、「昭和60(1985)年度20年間にわたって減少しつづけている」という実態と乖離した「いじめ発生件数の推移」等の文科省統計を「資料(8−1)」として委員に配布しているほか、文部科学省の統計報告において「1999〜2005年度にいじめを苦にした児童・生徒の自殺件数」をゼロとしていることについて、被害者遺族やメディア等関係者から様々な疑問と批判の声が相次ぎ、文部科学省自らがいじめ自殺の可能性がある一部の事例について再調査したところ、41件中の14件でいじめが確認されている。このような客観性に乏しい資料を第1回の議論の出発点として提起された提言に対して、科学的、教育的な観点から、十分な検証が行われる必要があろう。読売新聞2007年2月2日版、毎日新聞等2007年1月29日版参照。
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4. | 前野育三教授は、英語圏や北欧諸国におけるRestorative Justiceの汎用状況に鑑み「Restorative Justiceは、司法の枠をはるかに超えて、社会における揉め事の解決方法として、近代以前の伝統のよい部分を近代社会に適合的なものに改良して広めようという、ひとつの社会運動であると解釈しなければ理解できない局面がある。それは司法の対象となるような大きな事件のダイヴァージョンとして用いられるだけでなく、より日常的な小さな紛争の、最も平和的で満足度の高い解決方法の追求である」と述べられている。本稿においても、Restorative Justiceの語義を、被害者と加害者の主体的な参加を前提とする紛争調停のシステムであるとともに、それを支える理念ととらえたうえで、Restorative Justiceの訳として、「修復的司法」の訳語を用いる。前野育三・吉田卓司「修復的司法と市民社会(四)」関西学院大学法政学会『法と政治』54巻1号151頁。なお、同時に、被害者側と加害者側の両者の主体的参加に基づく和解手続も、修復的司法の重要な要素といえるが、本稿では、それをVOMと略記する場合があることを、あらかじめ記しておきたい。
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5. | Restorative Justice and Civil Society, edited by Heather Strang and John Braithwaite, Cambridge University Press, 2001. 同書は、それぞれ独立した14章の論文から構成されており、学校教育における修復的司法については、12章と13章に述べられている。吉田卓司「修復的司法と市民社会(四)」関西学院大学法政学会『法と政治』54巻1号152頁以下(2003年)は、その第12章リサ・キャメロン、マーガレット・ソースボーン「修復的司法と学校懲戒−両者は互いに排斥しあうものであろうか」の全訳である。また、同「修復的司法と市民社会(七)」関西学院大学法政学会『法と政治』54巻4号35頁以下(2003年)は、同書第13章ブレンダ・モリソンソ「学校システム−市民社会の統制におけるその能力の進展」の全訳であり、オーストラリアにおける学校の生徒指導事件に対する修復的司法の実践について、その修復的司法的生徒指導の評価に関する実証的研究である。
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6. | 東京都は修復的司法を活用した実際の授業の実例として「万引の被害に遭った店と学校とが協力して万引被害の実態、被害に遭った店の苦悩、万引犯を捕まえた時にどのように対応すべきか等について話し合う」、「イギリスのテムズバレー警察で採用されているように、被害者と加害者とが参加する修復的なカンファレンス(会議)を活用し、被害者と加害者がお互いの思いを率直に話し合って問題を解決すること」を例示している(報道発表資料2004年8月)。このテムズバレー警察の修復的なカンファレンスとは、イギリスの1998年犯罪及び秩序違反法(Crime and Disorder Act 1998)に基づいて行われているものであるが、同法65条が、警察官に司法前処理として、叱責(reprimand)と警告(warning)という処分の権限を与え、さらに66条によって、警察官は警告を与えた犯罪少年を、少年犯罪チームに送致しなければならず、少年犯罪チームは、当該少年を評定し、当該少年が、再犯を回避し社会復帰するためのプログラムに参加するように手配しなければならないとされていることから、この叱責・警告の制度を利用して、テムズバレー警察が、被害者と加害者が参加する修復的カンファレンスを導入しているものであり (小宮信夫「イギリスの修復的司法−少年犯罪とコミュニティ−」日本刑事政策研究所「罪と罰」40巻4号(平成15年8月号)参照)、学校教育における修復的司法の導入とは、かなり異質のものと言わざるをえない。
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7. | オーストラリアの調査研究では、カンファレンスに参加した関係者の99%が「他者から理解されていると感じ」、被害者の89%が「カンファレンスから自分たちに必要なものが得られた」と報告している(前掲拙稿「修復的司法と市民社会(四)」154頁以下)。
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8. | なお、北欧諸国の修復的司法についても、参照すべき点は、多いように思われる。吉田卓司「フィンランドの修復的司法」関西学院大学法政学会『法と政治』58巻1号165頁以下(2007年)参照
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9. | 日本における修復的司法の導入を提言するものとして、細木正文「ゼロ・トレランス批判と代替施策の模索―学校における修復的司法」『季刊教育法』153号28頁。
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10. | 本事例の記述に際しては、個々の生徒の特定を回避する目的から、非本質的な部分については、改変を加えている。なお、修復的司法の事例研究を含むものとして、Jim Consedine / Helen Bowen RESTORATIVE JUSTICE : Contemporary Themes And Practice,(前野育三、高橋貞彦監訳、ジム・コンセディーン、ヘレン・ボーエン編「修復的司法−現代的課題と実践−」関西学院大学出版会2001年)訳書156頁以下参照。
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11. | 吉田卓司「生徒指導法を学ぶ」三学出版、2004年、54頁参照。
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12. | なお、本件とは別に、いじめ防止のための指導として、「いじめに第三者なし」との観点から、本件に直接的には関わりがない生徒たちも含めて、学年全体を体育館に集め、いじめ行為について、スクールカウンセラーのT先生からロールプレイを含む講話を聞く機会を設けた。
講話の内容は、いじめの構造として、@被害者自身、A被害者に暴言・暴力や嫌がらせをする直接的加害者、Bいじめ行為をはやしたてるなど加勢、助長する者、Cいじめ行為を見て見ぬフリをする傍観者の四者が存在するということの説明があり、実際にカウンセラー自らが講堂の真ん中に位置して、いじめ被害者の役を演じ、本件加害生徒Eが、被害者の役のカウンセラーに「のろま」、「ボケ」、「ハゲ」などの暴言を吐き、これに他の数名の生徒が「もっとやれ、やれ」とはやしたてる役を演じた。そして、他の多くの生徒は、これをじっと見ているか、関心のない態度をとっている、というロールプレイ体験をしてみせたのである。そして、「自分は何も悪いことはしていない」と思っている傍観者の人も、いじめをしりながら、傍観視することは、いじめの被害者の視点から見れば、直接の加害者と同様に、被害者を心理的に追い詰め、孤独感、無力感を与えているということを当該学年の全体が理解する契機となるよう講話をしめくくった。
なお、この講話の実施については、事前に被害生徒側の要望を考慮し、内容についての了解を得た上で実施した。
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13. | 前掲拙稿「修復的司法と市民社会(四)」166頁以下
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14. | 小野田正利『悲鳴をあげる学校』旬報社(2006年)
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