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TITLE:  学校における新校風意識(SI)の諸問題
AUTHOR: 松岡 義之
SOURCE: 大阪高法研ニュース 第127号(1993年2月)
WORDS:  全40字×43行

 

学校における新校風意識(SI)の諸問題

 

大阪経済法科大学 松 岡 義 之

 

  昨今、企業における「CI」(コーポレーティッド・アイデンティティ)と同様、学校にも「SI」(スクールアイデンティティ)という企画を採用するべきとの意識が定着しつつあります。

  本学、大阪国際大学グループ(旧帝国女子大学グループ)や近畿大学(93年度から本格化)(以上、私立大学)、国公立でも大阪大学などで、「UI」(ユニバーシティ・アイデンティティ)と称して、学章、シンボルマーク等の改定があり、イメージチェンジを図っています。

 大阪国際大や近大等の付属校があるものを除くUIは、対象が「大学」という教育研究機関(?) ですから、単に学章等の変更程度に終始しています。(いつ悪化するか、わかりませんが。)

 一般的にCI等は、「コミュニケーションツール」(広報用資材)(大阪府では、VIとして府の規定色(大阪府ブルー)や規定字体(ユニバース、ツディ)を定め、名刺、封筒、広報用自動車、府職員の制服(女子事務職や守衛員等)、庁舎案内、提出書類の様式等の規格を改めました。)や「アイキャッチャー」(視覚的広報物)などを体系的に統一し、規制すること「VI」(ビジュアル・アイデンティティ)と「社訓」(学校では校訓)や創業の理念(学校では建学の精神)といった精神面の「MI」(マインド アイデンティティ) が必要となる場合があります。

  これらのSIが、VIとMIという形をもってイビツに波及してくると、私立の高等学校や中学校(特に「女子校」など)では、往々にして服装や身なりの厳格な統制を生んでいます。

 では、なぜ学校は、SIをしたがるのでしょうか。                

  近代的なSIは、嘉悦女子学園(東京都)が高校の制服を一新したことが原因して、入試の受験者が倍増したことがきっかけとなっていると聴きます。

  私立の学校においては、いかに(絶対数が減少している中)優秀な生徒を獲得しようかと、伝統的イメージを持つ学校を含めて、新しいイメージ造り(例 新しい校名、可愛い制服、綺麗な校舎、面白いカリキュラム、特色あるシステム)に躍起であり、また公立学校においても公立の地盤沈下、地域の公立離れに楔を打つため(指導困難校の服装指導などではSIというより、単に「生徒指導」が行い易くなるためという側面もありますが。)という理由で次第に導入されつつあります。

  また、CI等で社風等を浸透させるために多用される手法として、「QC」(品質管理(クオリティ・コントロール))のためにQC委員会と称する「品質維持」のため協議機関を設けるという方法をとります。

  学校においての生徒のQCは「生徒会」という協議機関の形ではなく、「風紀委員会」という名の生徒による相互監視体制(生徒の品質維持)という方法に姿を変えます。

  過去、企業が「社風」に合わないことを理由にして、社員を不当解雇したことがありましたが、同様の問題が学校において「社風」を「校風」と、「不当解雇」を「不当退学」と読み替えた事態が発生しているのではないでしょうか。

 



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