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TITLE:  教育改革に関する改正諸法令
AUTHOR: 羽山 健一
SOURCE: 大阪高法研ニュース 第201号(2002年4月)
WORDS:  全40字×279行
※ 本稿以降の改正については教育改革に関する改正法令(2001年〜2004年)を参照。

 

教育改革に関する改正諸法令

 

羽 山 健 一

 

  ここ一年のあいだに、教育改革に関する法令が多く改正されているので、その概要を簡単に紹介する。

 

I.教育改革の主な項目

 

  近年の文部科学省の教育改革[1]のスケジュールは「21世紀教育新生プラン」(2001年1月25日)に網羅されているが、その主なものを拾い上げると次のようになる。

【教育活動関係】
 ・社会奉仕体験活動の促進−−学校教育法、社会教育法の改正(2001年)
 ・少人数指導・習熟度別指導−−学校標準法の改正(2001年)
 ・出席停止制度の整備−−学校教育法の改正(2001年)
【学校運営、教職員関係】
 ・学校評議員制度−−学校教育法施行規則の改正(2000年)
 ・学校の自己評価システム
 ・指導力不足教員に対する人事管理システム−−地教行法の改正(2001年)
 ・教員評価システム(表彰、特別昇給制度)
 ・教員免許状制度の総合化・弾力化(更新制)−−教育職員免許法(2002年改正予定)
 ・行政研修制度の拡充(教職10年目研修)−−教育公務員特例法(2002年改正予定)
【大学関係】
 ・大学教員任期制−−大学の教員等の任期に関する法律の改正(1997年)
 ・講座の組織編成の柔軟化−−国立学校設置法、大学設置基準の改正(2001年)
 ・国立大学の独立行政法人化
【教育理念関係】
 ・教育基本法の見直し[2]

 

II.改正された諸法令の概要

 

■ 学校教育法施行規則改正の趣旨[3]

    改正:2000年1月21日文部省令第3号
    この省令は、2000(平成12)年4月1日から施行する。

1 校長及び教頭の資格関係

  校長(学長及び高等専門学校の校長を除く。以下同じ。)及びこれを補佐する教頭については、教育に関する理念や識見を有し、地域や学校の状況・課題を的確に把握しながら、リーダーシップを発揮するとともに、職員の意欲を引き出し、関係機関等との連携・折衝を適切に行い、組織的・機動的な学校運営を行うことができる資質を持つ優れた人材を確保することが重要である。このため、教育に関する職の経験や組織運営に関する経験、能力に着目して、地域や学校の実情に応じ、幅広く人材を確保することができるよう、学校教育法施行規則(以下「省令」という。)における校長及び教頭の資格要件を緩和するものであること。

2 職員会議関係

  職員会議は、校長を中心に職員が一致協力して学校の教育活動を展開するため、学校運営に関する校長の方針や様々な教育課題への対応方策についての共通理解を深めるとともに、幼児児童生徒の状況等について担当する学年・学級・教科を超えて情報交換を行うなど、職員間の意思疎通を図る上で、重要な意義を有するものである。しかしながら、職員会議についての法令上の根拠が明確でないことなどから、一部の地域において、校長と職員の意見や考え方の相違により、職員会議の本来の機能が発揮されない場合や、職員会議があたかも意思決定権を有するような運営がなされ、校長がその職責を果たせない場合などの問題点が指摘されていることにかんがみ、職員会議の運営の適正化を図る観点から、省令に職員会議に関する規定を新たに設け、その意義・役割を明確にするものであること。

3 学校評議員関係

  学校が地域住民の信頼に応え、家庭や地域と連携協力して一体となって子どもの健やかな成長を図っていくためには、今後、より一層地域に開かれた学校づくりを推進していく必要がある。こうした開かれた学校づくりを一層推進していくため、保護者や地域住民等の意向を把握・反映し、その協力を得るとともに、学校運営の状況等を周知するなど学校としての説明責任を果たしていく観点から、省令において新たに規定を設け、学校や地域の実情等に応じて、その設置者の判断により、学校に学校評議員を置くことができることとするものであること。

第23条の2
 小学校には、設置者の定めるところにより、校長の職務の円滑な執行に資するため、
職員会議を置くことができる。
A職員会議は、校長が主宰する。

第23条の3
 小学校には、設置者の定めるところにより、学校評議員を置くことができる。
A学校評議員は、校長の求めに応じ、学校運営に関し意見を述べることができる。
B学校評議員は、当該小学校の職員以外の者で教育に関する理解及び識見を有するも
ののうちから、校長の推薦により、当該小学校の設置者が委嘱する。

 

■ 公立義務教育諸学校の学級編成及び教職員定数の標準に関する法律の一部改正法の概要

  2001年3月30日成立
  2001(平成13)年4月1日施行

  「公立義務教育諸学校の学級編成及び教職員定数の標準に関する法律施行令の一部を改正する政令」及び「公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律施行令の一部を改正する政令」が義務教育標準法等一部改正法と同日に公布、施行された。

 これらの法令の改正は、

@ 公立の小学校、中学校、中等教育学校、高等学校及び特殊教育諸学校の教職員配置の適正化を図るため、これらの学校の教職員定数を改めること

A 地方分権を推進し、児童生徒の実態に応じた学校教育の充実を図るため、都道府県教育委員会が特に必要があると認める場合には公立義務教育諸学校に係る学級編成の基準の設定及び公立高等学校等に係る学級編成を弾力的に行うことができるようにすること

B 教職員定数を再任用短時間勤務職員及び非常勤講師の数に換算することができるようにし、あわせて市町村立の義務教育諸学校等の非常勤講師の報酬等を都道府県が負担し、その2分の1を国庫負担とすることとするとともに、当該非常勤講師の身分取扱に関する規定を整備すること

などにより、学校教育の水準の維持向上に資することを目的としたものである。

 

■ 国立学校設置法の一部改正法の概要

  2001年6月21日成立
  2002(平成14)年4月1日施行

  国立大学における教育研究体制の柔軟な設計ができるようにするため、これまで国立大学の学部等に講座・学科目等を置き、その種類等を省令で定めることとしていた規定(七条)を削除する。

 

■ 学校教育法の一部を改正する法律案の概要

  2001年6月29日成立
  この法律は公布の日から施行すること。ただし、第26条関係については公布の日
  から六月を経過した日から、第56条第2項関係、第67条第2項関係及び第73
  条の3関係については、2002(平成14)年4月1日から施行すること。

1.小・中・高等学校等における社会奉仕体験活動、自然体験活動等の体験活動の充実

 小学校、中学校、高等学校等において、社会奉仕体験活動、自然体験活動等の体験活動の充実に努めるものとするとともに、社会教育関係団体等の関係団体、関係機関との連携に十分配慮するものとする。(第18条の2関係)

2.児童生徒の問題行動への適切な対応

  小学校及び中学校の出席停止については、(1)他の児童生徒に傷害、心身の苦痛又は財産上の損失を与える行為、(2)職員に傷害又は心身の苦痛を与える行為、(3)施設又は設備を損壊する行為、(4)授業その他の教育活動の実施を妨げる行為、を繰り返し行う等性行不良であって他の児童生徒の教育に妨げがあるときに命ずることができることとし、要件の明確化を図る。

  また、出席停止を命ずる際には、保護者の意見の聴取を行う等、手続の明確化を図る。

 さらに、市町村の教育委員会は、出席停止の期間中の児童生徒の学習の支援その他の教育上必要な措置を講ずるものとする。(第26条関係)

3.大学制度の弾力化

 (1)対象分野を問わず、大学が特に優れた資質を有すると認める者は、高等学校を卒業した者等でなくても当該大学に入学させること(いわゆる「飛び入学」)ができることとする。また、大学院へも優秀な成績を修めた者が飛び入学できることとする。(第56条及び第67条関係)

 (2)大学は、夜間において授業を行う研究科及び通信による教育を行う研究科を置くことができることを明確化する。(第52条の2、第54条及び第66条の2関係)

 (3)大学は、勤務年数を問わずに、名誉教授の称号を授与できるようにする。(第68条の3関係)

4.「寮母」の名称の変更

 男女共同参画社会への対応等を図る観点から、「寮母」の名称を「寄宿舎指導員」に改める。(第73条の3関係)

第18条の2  小学校においては、前条各号に掲げる目標の達成に資するよう、
教育指導を行うに当たり、児童の体験的な学習活動、特にボランティア活動など
社会奉仕体験活動、自然体験活動その他の体験活動の充実に努めるものとする。
この場合において、社会教育関係団体その他の関係団体及び関係機関との連携に
十分配慮しなければならない。

第26条  市町村の教育委員会は、次に掲げる行為の一又は二以上を繰り返し
行う等性行不良であつて他の児童の教育に妨げがあると認める児童があるときは、
その保護者に対して、児童の出席停止を命ずることができる。
 一  他の児童に傷害、心身の苦痛又は財産上の損失を与える行為
 二  職員に傷害又は心身の苦痛を与える行為
 三  施設又は設備を損壊する行為
 四  授業その他の教育活動の実施を妨げる行為
A 市町村の教育委員会は、前項の規定により出席停止を命ずる場合には、あら
かじめ保護者の意見を聴取するとともに、理由及び期間を記載した文書を交付し
なければならない。
B 前項に規定するもののほか、出席停止の命令の手続に関し必要な事項は、教
育委員会規則で定めるものとする。
C 市町村の教育委員会は、出席停止の命令に係る児童の出席停止の期間におけ
る学習に対する支援その他の教育上必要な措置を講ずるものとする。

 

■ 社会教育法の一部を改正する法律案要綱

  2001年6月29日成立
  この法律は、公布の日から施行するものとすること。

第一 教育委員会の事務に関する規定の改正(第五条関係)

一 教育委員会の事務として、家庭教育に関する学習の機会を提供するための講座の開設等の事務を規定すること。

二 教育委員会の事務として、青少年に対し社会奉仕体験活動、自然体験活動その他の体験活動の機会を提供する事業の実施等の事務を規定すること。

第二 社会教育委員等の委嘱範囲の拡大(第十五条第二項及び第三十条第一項関係)

一 社会教育委員に家庭教育の向上に資する活動を行う者を委嘱することができるようにすること。

二 公民館運営審議会の委員に家庭教育の向上に資する活動を行う者を委嘱することができるようにすること。

第三 社会教育主事の資格要件の緩和(第九条の四関係)

社会教育主事となるための実務経験の要件を緩和し、社会教育に関係のある事業における業務であって、社会教育主事として必要な知識又は技能の習得に資するものとして文部科学大臣が指定するものに従事した期間を評価できるようにすること。

第四 国及び地方公共団体の任務に関する規定の改正(第三条第二項関係)

国及び地方公共団体が、社会教育に関する任務を行うに当たって、学校教育との連携の確保に努めるとともに、家庭教育の向上に資することとなるよう必要な配慮をするものとする旨を規定すること。

 

■ 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案の概要

  2001年6月29日成立
  この法律は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行すること。

1 教育委員会の活性化

(1)教育委員会の委員の構成

教育委員会は合議制の執行機関であることから、教育委員会に保護者や地域住民の意向をより一層的確に反映できるよう、委員の任命に当たり、年齢、性別、職業等に著しい偏りが生じないように配慮するとともに、委員のうちに保護者が含まれるように努めることを規定する。(第4条関係)

(2)教育委員会の会議の公開

教育委員会の会議について、その原則公開を法律で明定するとともに、非公開とする場合に関する規定を整備する。(第13条関係)

(3)教育行政に関する相談体制の整備

教育行政に関する地域住民の意見に一層的確に対応していく観点から、担当職員を指定することにより相談窓口を明示するようにするとともに、教育行政に関する相談についての教育委員会の職務権限を明らかにする。(第19条、第23条、第48条関係)

(4)校長の意見の一層の反映

校長のリーダーシップの発揮の観点から、県費負担教職員の人事について、校長の意見をより一層反映できるよう、市町村教育委員会が都道府県教育委員会に内申を行う場合、校長からの意見の申出があったときは、その意見を付するものとする。(第38条関係)

2 指導が不適切な教員の転職

都道府県教育委員会は、市町村の県費負担教職員で、(1)児童又は生徒に対する指導が不適切であること、(2)研修等必要な措置が講じられたとしてもなお児童又は生徒に対する指導を適切に行うことができないと認められること、の双方の要件に該当する者(分限免職及び分限休職に該当する者を除く)を免職した上で、引き続き当該都道府県の教員以外の職に採用することができることを規定する。

また、上記の要件に該当するかどうかを判断するための手続に関し必要な事項を教育委員会規則で定めるものとする。(第47条の2関係)

3 公立高等学校の通学区域に係る規定の削除

 規制緩和を一層推進する観点から、公立高等学校の通学区域に係る規定を削除し、通学区域の設定を当該高等学校を所管する教育委員会の判断に委ねることとする。 (第50条関係)

(県費負担教職員の免職及び都道府県の職への採用)
第四十七条の二 都道府県委員会は、地方公務員法第二十七条第二項及び第二十
八条第一項の規定にかかわらず、その任命に係る市町村の県費負担教職員(教諭、
養護教諭、助教諭及び養護助教諭(同法第二十八条の四第一項又は第二十八条の
五第一項の規定により採用された者(以下この項において「再任用職員」という。)
を除く。)並びに講師(再任用職員及び非常勤の講師を除く。)に限る。)で次
の各号のいずれにも該当するもの(同法第二十八条第一項各号又は第二項各号の
いずれかに該当する者を除く。)を免職し、引き続いて当該都道府県の常時勤務
を要する職(指導主事並びに校長、園長及び教員の職を除く。)に採用すること
ができる。
 一 児童又は生徒に対する指導が不適切であること。
 二 研修等必要な措置が講じられたとしてもなお児童又は生徒に対する指導を
 適切に行うことができないと認められること。
2 事実の確認の方法その他前項の県費負担教職員が同項各号に該当するかどう
かを判断するための手続に関し必要な事項は、都道府県の教育委員会規則で定め
るものとする。
3 都道府県委員会は、第一項の規定による採用に当たつては、公務の能率的な
運営を確保する見地から、同項の県費負担教職員の適性、知識等について十分に
考慮するものとする。
4 第四十条後段の規定は、第一項の場合について準用する。この場合において、
同条後段中「当該他の市町村」とあるのは、「当該都道府県」と読み替えるもの
とする。

 

III.第154回国会(常会)提出予定法律案について

 

■ 教育職員免許法の一部を改正する法律案

1 中学校又は高等学校の教諭の免許状を有する者は小学校の相当する教科及び総合的な学習の時間の教授を担任することができることとし、並びに高等学校の専門教科等の教諭の免許状を有する者は中学校の相当する教科及び総合的な学習の時間の教授又は実習を担任することができることとする。

2 教職経験を有する者が隣接校種の教諭の免許状を取得する際の要修得単位数を引き下げる。

3 特別免許状制度について、学歴要件の撤廃など授与要件を見直すとともに、その有効期限を撤廃する等の改正を行う。

4 現職教員について、免許状の取上げ事由等を見直し、懲戒免職の処分を受けた者の免許状は失効することとする等の改正を行う。

 

■ 教育公務員特例法の一部を改正する法律案

  国公立の小学校、中学校、高等学校等の教諭等の任命権者は、その教諭等のうち教諭等としての在職期間が10年(特別の理由があると認められるときは、8年以上12年以内において任命権者が定める年数)を超えた者に対して、その資質の向上を図るために必要な事項に関する研修を実施しなければならないこととする等の改正を行う。

 

< 注 >

[1]中央教育審議会「今後の地方教育行政の在り方について」1998年9月、旧文部省「教育改革プログラム」1999年9月、教育改革国民会議「教育を変える17の提案」2000年12月22日、文部科学省「21世紀教育新生プラン」2001年1月25日、中央教育審議会「今後の教員免許制度の在り方について」2002年2月21日
[2]西尾幹二編「すべての18歳に『奉仕義務』を−教育基本法見直し会議緊急報告」2000年10月小学館文庫、西澤潤一編「新教育基本法6つの提言」2001年9月小学館文庫
[3]平成12年1月21日、文教地第244号「学校教育法施行規則等の一部を改正する省令の施行について(通知)」


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