● 国旗及び国歌に関する関係資料集 平成11年9月17日 文部省初等中等教育局


「学校における国旗及び国歌に関する指導について(通知)」文初小第145号 (平成11年9月17日)添付資料

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国旗及び国歌に関する関係資料集


平成11年9月
文部省初等中等教育局


I  国旗及び国歌に関する関係資料 (略)
II  「国旗及び国歌に関する法律」主要国会審議状況
III 付属資料 (略)


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I  国旗及び国歌に関する関係資料 (略)

1 学習指導要領における国旗,国歌の取扱い
2 小学校学習指導要領解説社会編,音楽編,特別活動編
3 学習指導要領における国旗,国歌の取扱いの経緯
4 諸外国における国旗,国歌の取扱い
5 国旗,国歌の由来等(文部省において整理したもの)


II  「国旗及び国歌に関する法律」主要国会審議状況

1 国旗・国歌の法制化の意義について
2 「君が代」の歌詞の意味についての政府の解釈について

  【法制化と学校における指導】
3 国旗・国歌の法制化による,今後の学校における国旗・国歌の指導について
4 学校における国旗・国歌の指導の意義について
5 学校における国旗・国歌の指導内容について

  【国旗・国歌の指導と児童・生徒】
6 学校における国旗・国歌の指導と,児童・生徒の内心の自由との関係について
7 国旗・国歌の指導と児童・生徒の評価について

  【国旗・国歌の指導と教職員】
8 国旗・国歌の指導に係る教職員の職務と内心の自由との関係について
9 国旗・国歌の指導に関する教職員への職務命令や処分について

  【国旗の歴史及び国歌の由来】
10 学校における日章旗及び君が代の歴史や由来の指導について

  【君が代の歌詞の意味】
11 国歌「君が代」の歌詞の意味についての政府の解釈と学校における指導について
12 国語において古典あるいは文学作品としての「君が代」を教えることについて

  【歴史教育】
13 歴史教育,特に近現代史の指導との関係について

  【その他】
14 入学式,卒業式の実施方法について
15 学習指導要領に特に定められている場合以外の国旗・国歌の指導について

 この資料は,第145回通常国会における,「国旗及び国歌に関する法律案」の審議にかかる,衆議院本会議,衆議院内閣委員会,衆議院内閣委員会文教委員会連合審査会,参議院本会議,参議院国旗及び国歌に関する特別委員会の議事録を,文部省初等中等教育局において抄録したものである。


III 付属資料 (略)

1 官報(平成11年8月13日)
2 法成立を受けての内閣総理大臣談話等
3 国旗及び国歌に関する法律案の趣旨説明
4 国旗及び国歌に関する法律参照条文
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1 国旗・国歌の法制化の意義について


(答)
○ 我が国は成文法の国であること,また諸外国では国旗と国歌を法制化している国もあることなどから,21世紀を迎えることを一つの契機として,これまで慣習として定着してきた国旗と国歌を成文法で明確に規定することが必要と考え,法制化を図ることといたしたところであります。
(平成11年6月29日 衆議院本会議 内閣総理大臣)

○ 政府としては,今回の法制化に当たり,国旗の掲揚等に関し義務づけを行うことは考えておらず,したがって,国民の生活に何らの影響や変化が生ずることとはならないと考えている。
(平成11年6月29日 衆議院本会議 内閣総理大臣)

○ 今回の法案は,国旗・国歌の根拠について,慣習であるものを成文法としてより明確に位置づけるものであり,学校教育において,国旗・国歌に対する正しい理解をさらに促進するものであると考えており,意義のあるものと受けとめております。
(平成11年6月29日 衆議院本会議 文部大臣)

○ 私は,国旗・国歌はいずれの国でも国家の象徴として大切に扱われているものでありまして,国家にとりましてはなくてはならないものであると考えております。また,国旗・国歌は,国民の間に定着することを通じまして,国民のアイデンティティーのあかしとして重要な役割も果たしておると考えております。
 そこで,今,先生からいろいろの過去の歴史のことにつきましてもお話がございましたが,昭和20年8月15日以前に生起した出来事に対する認識と評価につきましては,歴史認識や歴史観の問題として考えるべきものであり,日の丸や君が代はこれと区別して考えていくべきものであると考えております。
 我が国は戦後一貫して,我が国はもとよりでありますが,世界の平和と繁栄のために力を尽くしてきたところであり,今後ともその地位にふさわしい責任を国際社会の中で果たしていく考えであります。
 いずれにいたしましても,我が国の末永い平和と繁栄を願うことといたしまして,国旗と国歌というものを大切にいたしていかなければならないと考えておりまして,しばしば申し上げておりますが,新しい世紀を迎えるに当たりまして,この点につきましても,国民の御意思としてこれを法定化いたしていくことによりまして,次代を背負う青少年も含めまして国旗と国歌に対する認識を深めていただくと同時に,諸外国の国旗・国歌に対してもこれまた同様に国際人として十分な認識のもとに対処いたしていくことができれば幸いである,このように考えておる次第でございます。
(平成11年8月9日 参議院国旗及び国歌に関する特別委員会  内閣総理大臣)

○ 国旗・国歌はいずれの国でも国家の象徴として大切に扱われ,我が国の国旗である日の丸と国歌である君が代はいずれも長い歴史を有しており,既に慣習法として定着しているものではございますが,21世紀を目前に控え,本法律案が国会にて可決,成立されればまことに意義深いと受けとめております。成文法で明確に規定されることによりまして,国民の皆様方から日の丸の歴史や君が代の由来,歌詞などについてより理解を深めていただくことを心から願っておるところでございます。
(平成11年8月9日 参議院国旗及び国歌に関する特別委員会 内閣総理大臣)


2 「君が代」の歌詞の意味についての政府の解釈について


(答)
○ 日本国憲法下においては,国歌君が代の「君」は,日本国及び日本国民統合の象徴であり,その地位が主権の存する日本国民の総意に基づく天皇のことを指しており,君が代とは,日本国民の総意に基づき,天皇を日本国及び日本国民統合の象徴とする我が国のことであり,君が代の歌詞も,そうした我が国の末永い繁栄と平和を祈念したものと解することが適当であると考え,かつ,君が代についてこのような理解は,今日,広く各世代の理解を得られるものと考えております。
(平成11年6月29日 衆議院本会議 内閣総理大臣)

○ 君が代の「君」に関することにつきましては,君が代の歌詞そのものが,平安時代の古今和歌集や和漢朗詠集に起源をもち,その後,明治時代に至るまでの祝い歌として長い間民衆の幅広い支持を受けたもので,この場合の君が代の「君」とは,相手を指すことが一般的で,必ずしも天皇を指していると限らなかったと考えられます。
 ところで,古歌君が代が明治時代に国歌として歌われるようになってからは,大日本帝国憲法の精神を踏まえ,君が代の「君」は,日本を統治する天皇の意味で用いられました。
 終戦後,日本国憲法が制定され,天皇の地位も戦前とは変わったことから,日本国憲法下においては,国歌君が代の「君」は,日本国及び日本国民統合の象徴であり,その地位が主権の存する日本国民の総意に基づく天皇のことを指しており,君が代は,日本国民の総意に基づき,天皇を日本国及び日本国民統合の象徴とする我が国のことであり,君が代の歌詞も,そうした我が国の末永い繁栄と平和を祈念したものと解することが適当であると考え,かつ,君が代についてこのような理解は,今日広く各世代の理解を得られるものと考えておるところでございます。
(平成11年7月21日 衆議院内閣委員会 内閣総理大臣)


3 国旗・国歌の法制化による,今後の学校における国旗・国歌の指導について


(答)
○ 今回の法案は,国旗・国歌の根拠について,慣習であるものを成文法としてより明確に位置づけるものであり,これによって,学校教育においても,国旗・国歌に対する正しい理解がさらに進むものと考えております。
 また,法制化に伴い,学校教育における国旗・国歌の指導に関する取り扱いを変えるものではないと考えており,今後とも,各学校における適切な指導を期待するものであります。
(平成11年6月29日 衆議院本会議 内閣総理大臣)

○ 文部省といたしましては,法制化が行われた場合においても,学習指導要領に基づき,学校におけるこれまでの国旗・国歌の指導に関する取扱いを変えるものではないと考えており,今後とも,学校における指導の充実に努めてまいります。
(平成11年6月29日 衆議院本会議 文部大臣)


4 学校における国旗・国歌の指導の意義について


(答)
○ 学校における国旗・国歌の指導は,児童生徒に我が国の国旗と国歌の意義を理解させ,これを尊重する態度を育てるとともに,諸外国の国旗と国歌も同様に尊重する態度を育てるために行っているものである。
(平成11年7月21日 衆議院内閣委員会文教委員会連合審査会 文部大臣)

○ 国旗・国歌の指導につきましては,学習指導要領に基づき,具体的には社会科で国旗・国歌の意義を理解させ,諸外国の国旗・国歌を含めそれらを尊重する態度を育成すること,音楽の授業では国歌君が代を指導すること,入学式や卒業式などでは国旗を掲揚し国歌を斉唱するよう指導することといたしているところでございます。
(平成11年7月30日 参議院国旗及び国歌に関する特別委員会 文部大臣)


5 学校における国旗・国歌の指導内容について


(答)
○<社会科>
 社会科におきましても,学年によりましてそれぞれ主たるねらいを異にしているわけでございますけれども,具体的には6学年までに,国旗と国歌はいずれの国も持っている,それから国旗と国歌はいずれの国でもその国の象徴として大切にしている,そしてお互いに尊重し合うことが必要であること,そして我が国の国旗と国歌は長年の慣行により日の丸が国旗であり君が代が国歌であることが広く国民の認識として定着していること,さらには6年を修了するまでに社会科あるいは音楽の授業を通じまして,国歌君が代は日本国憲法下におきましては天皇を日本国並びに日本国民統合の象徴とする我が国がいつまでも繁栄するようにと願いを込めた歌であることが理解できるようにする,これがこれまでの文部省の具体的な各学校にお願いしております指導の内容でございます。
 また,中学校は,こういった小学校段階の指導の上に,公民的分野におきまして国家間の相互の主権の尊重と協力,こういった学習をする際に,やはり同様に小学校段階と同じような内容をさらに深めて身につけさせるというようなことでございます。

<音楽>
 音楽は,先ほども申し上げましたように,小学校1年生の段階からまずみんなと一緒に歌えるようになるということから始めまして,歌詞や旋律を正しく歌えるようにするというところまで小学校6年生でしっかりと教えていただく。その際に,国歌の意義につきましては,社会科の指導の内容と関連をいたしまして,先ほど申し上げましたような内容をしっかり身につけさせるということをねらいとしているわけでございます。

<特別活動>
 特別活動は,小学校,中学校,高等学校,もちろん子供の発達段階によりましてそれぞれの主体的な参加の態度あるいは受けとめ方,それぞれ違うことはもとよりでございますけれども,全体といたしまして,これら小中学校段階における各社会科や音楽の教科におきます指導を踏まえまして,それぞれの学年に応じて,具体的に卒業式,入学式という場におきまして国旗を前にしきちっとした態度でそれを斉唱すると,基本的なマナーをいわば実践する場として設けられているわけでございまして,これら総体といたしまして国旗・国歌に対する正しい理解と態度を育てていく,こういうことを小中高等学校の段階を通じて指導を行うという仕組みになっているところでございます。
(平成11年7月30日 参議院国旗及び国歌に関する特別委員会 政府委員)


6 学校における国旗・国歌の指導と,児童・生徒の内心の自由との関係について


(答)
○ 我が国の国民として,学校教育におきまして,国旗・国歌の意義を理解させ,それらを尊重する態度を育てることは極めて重要であることから,学習指導要領に基づいて,校長,教員は,児童生徒に対し国旗・国歌の指導をするものであります。このことは,児童生徒の内心にまで立ち至って強制しようとする趣旨のものでなく,あくまでも教育指導上の課題として指導を進めていくことを意味するものでございます。
 この考え方は,平成6年に政府の統一見解として示しておるところでございまして,国旗・国歌が法制化された後も,この考え方は変わるところはないと考えます。
(平成11年7月21日 衆議院内閣委員会 内閣総理大臣)

○ 学校における国旗・国歌の指導は,児童生徒に我が国の国旗・国歌の意義を理解させまして,そしてこれを尊重する態度を育てるとともに,諸外国の国旗と国歌も同様に尊重する態度を育てるということが重要なことでございます。学習指導要領に基づきます国旗・国歌の指導は,憲法,教育基本法に基づきまして,人格の完成を目指し,平和的な国家及び社会の形成者としての国民を育成することを目的として行っているものでございまして,憲法に定めております思想及び良心の自由を制約するものではないと考えております。
(平成11年7月21日 衆議院内閣委員会文教委員会連合審査会 文部大臣)

○ どのような行為が強制することになるかについては,当然,具体的な指導の状況において判断をしなければならないことと考えておりますが,例えば長時間にわたって指導を繰り返すなど,児童生徒に精神的な苦痛を伴うような指導を行う,それからまた,たびたびよく新聞等々で言われますように,口をこじあけてまで歌わす,これは全く許されないことであると私は思っております。
 児童生徒が例えば国歌を歌わないということのみを理由にいたしまして不利益な取り扱いをするなどということは,一般的に申しますが,大変不適切なことと考えておるところでございます。
(平成11年7月21日 衆議院内閣委員会文教委員会連合審査会 文部大臣)

○ やはり指導ということは教え導くということだと思っています。強制というのは無理強いをするということですね。そこに違いがあると思います。
 今の御指摘の,学校において学習指導要領に基づいて具体的な教育課程を編成して,適切な教材を用いて児童生徒に必要な教育内容を教えることになっておりまして,児童生徒に必要な事項を教え指導することは,これは教え導くという形でやるわけでございまして,通常の指導方法で行われる場合にはいわゆる強制はないと私は信じております。
(平成11年8月6日 参議院国旗及び国歌に関する特別委員会 文部大臣)

○ 起立をしなかった,あるいは歌わなかったといったような児童生徒がいた場合に,これに対しまして事後にどのような指導を行っていくかということにつきましては,まさに教育指導上の課題として学校現場に任されているわけでございますけれども,その際に,御指摘のように,単に従わなかった,あるいは単に起立をしなかった,あるいは歌わなかったといったようなことのみをもって,何らかの不利益をこうむるようなことが学校内で行われたり,あるいは児童生徒に心理的な強制力が働くような方法でその後の指導等が行われるということはあってはならないことと私ども思っているわけでございます。
 したがいまして,学校全体の教育活動を,また式の進行全体を著しく妨害するといったようなことは別にいたしまして,今御指摘のような点につきましては,各学校におきまして,あくまでも教育上の配慮のもとに,校長のもとに全教職員が一致した適切な指導をしていただくように私どもとしてもお願いをしてまいりたいと思っております。
(平成11年7月21日 衆議院内閣委員会文教委員会連合審査会 政府委員)

○ およそ教育におきまして,さまざまな場面で子供の内面にかかわってくる指導があり得ると。そもそも教育自身が精神的な作用を伴うものでございますので,そういった場面は非常に多いわけでございます。
 しかしながら,すべての子供に一定のことを教えることが直ちに強制であるということになりますと,これはおよそ公教育は成り立たないわけでございまして,内心にかかわるかどうか,あるいは内面的な作用にかかわってくるかどうかという問題と,それが内心にわたって憲法が保障するような内心の自由を侵害することに当たるかどうかと,この問題は教育上きちっと分けて論議をされるべきだと思っております。
(平成11年8月2日 参議院国旗及び国歌に関する特別委員会 政府委員)


7 国旗・国歌の指導と児童・生徒の評価について


(答)
○ 入学式,卒業式などの特別活動については指導要録や内申書におけるいわゆる五段階評価等による評定の対象にはならないと考えております。
(平成11年8月2日 参議院国旗及び国歌に関する特別委員会 文部大臣)

○ 児童生徒に対する評価はさまざまな場面で行われます。個々の授業や儀式について,教師がそれを適切に教育のプロセスとして評価していくという場面もございますし,あるいは学期ごとにいわゆる通信簿というような形で評価するという場面もございます。あるいは一般的には,年間を通じて,学校における指導の基本的な様式として指導要録というものをつくるということが学校教育法施行規則で決まっているわけでございますが,例えばこの指導要録について見てみますと,入学式,卒業式などにおきます特別活動につきましては,いわゆる五段階評価というような評定の対象にはしないということに文部省としてもいたして,指導しているわけでございます。
 なお,これらの書式の中におきましては,児童生徒の日常の活動状況について主な事実や所見を記載する所見欄というものも設けられておりますが,文部省の指導といたしましては,所見欄につきましては,当該児童生徒の長所を取り上げることが基本となるものであるということに十分留意をするようにという指導を行っているところでございます。
 したがいまして,御指摘のような,単に歌わなかったあるいは起立しなかったというようなことがそのまま指導要録等に記載されることには通常ならないものと私どもは考えているところでございます。
(平成11年7月21日 衆議院内閣委員会 政府委員)


8 国旗・国歌の指導に係る教職員の職務と内心の自由との関係について

(答)
○ 学校は,児童生徒の発達段階に即して教育を施すことを目的とするものでございまして,校長や教員は,関係の法令や上司の職務上の命令に従って教育指導を行わなければならないという職務上の責務を負うものでございます。
 学習指導要領におきましては,各学校の教育課程の基準として,法規としての性質を有するものでございまして,各学校においては,学習指導要領を基準として校長が教育課程を編成し,これに基づいて教員は学習指導を実施するという職務上の責務を負うものでございます。
(平成11年7月21日 衆議院内閣委員会文教委員会連合審査会 文部大臣)

○ 一般に,思想,良心の自由は,それが内心にとどまる限りにおいては絶対的に保障されなければならないということは繰り返し申し上げているとおりでございますが,それが外部的行為となってあらわれる場合には,一定の合理的範囲内の制約を受け得るものと解されております。校長が学習指導要領に基づき法令の定めるところに従い所属教職員に対して本来行うべき職務を命じることは,当該教職員の思想,良心の自由を侵すことにはならないと考えられます。
(平成11年7月21日 衆議院内閣委員会文教委員会連合審査会 文部大臣)

○ 一般に,思想,良心の自由というものは,それが内心にとどまる限りにおいては絶対的に保障されなければならないと考えております。しかし,それが外部的行為となってあらわれるような場合には,一定の合理的範囲内の制約を受け得るものと考えております。
 学校において,校長の判断で学習指導要領に基づき式典を厳粛に実施するとともに,児童生徒に国旗・国歌を尊重する態度を指導する一環として児童生徒にみずから範を示すことによる教育上の効果を期待して,教員に対しても国旗に敬意を払い国歌を斉唱するよう命ずることは,学校という機関や教員の職務の特性にかんがえてみれば,社会通念上合理的な範囲内のものと考えられます。そういう点から,これを命ずることにより,教員の思想,良心の自由を制約するものではないと考えております。
(平成11年7月21日 衆議院内閣委員会文教委員会連合審査会 文部大臣)

○ 教員は,関係の法令や上司の職務上の命令に従いまして教育指導を行わなければならないものでございまして,各学校においては,法規としての性質を有する学習指導要領を基準といたしまして,校長が教育課程を編成し,これに基づいて教員は国旗・国歌に関する指導を含め教育指導を実施するという職務上の責務を負うものでございます。
 本法案は,国旗・国歌の根拠について,慣習であるものを成文法として明確に位置づけるものでございます。これによって国旗・国歌の指導にかかわる教員の職務上の責務について変更を加えるものではございません。
(平成11年8月2日 参議院国旗及び国歌に関する特別委員会 文部大臣)


9 国旗・国歌の指導に関する教職員への職務命令や処分について


(答)
<職務命令について>
○ 学校におきましては,国旗・国歌の指導を行うに当たりまして,校長は日ごろから職員会議等の場を通じて,教員等の間で国旗・国歌の指導あるいはその意義等につきまして,意思疎通,共通理解を図るように努めて,全教員が一致協力して積極的に国旗・国歌の指導を行うような学校運営上の配慮を行うことは御指摘のように大変大事なことでございます。
 しかしながら,このような取り組みをしたにもかかわらず国旗・国歌の指導を教員に求めることが困難な場合,そういう場合につきましては,校長は,学校運営の責任者として学習指導要領の趣旨を実現するために,必要に応じ教員に対し職務命令を発することもあり得るものでございます。
(平成11年8月2日 参議院国旗及び国歌に関する特別委員会 政府委員)

○ 私は,教育というのは根本的に先生と児童生徒の信頼関係であり,またそれを生み出すのは先生方同士の信頼関係だと思っています。ですから,職務命令というのは最後のことでありまして,その前に,さまざまな努力ということはしていかなきゃならないと思っています。
 ただ,極めて難しい問題に入っていったときに最終的にはやむを得ないことがあるかもしれませんが,それに至るまでは校長先生も,また現場の先生方もよくお話し合いをしていただきたいと思っています。
(平成11年8月6日 参議院国旗及び国歌に関する特別委員会 文部大臣)

<処分について>
○ 職務命令を受けた教員は,これに従い,指導を行う職務上の責務を有し,これに従わなかった場合につきましては,地方公務員法に基づき懲戒処分を行うことができることとされているところでございます。
 そこで,実際の処分を行うかどうか,処分を行う場合にどの程度の処分とするかにつきましては,基本的には任命権者でございます都道府県教育委員会の裁量にゆだねられているものでございまして,任命権者である都道府県におきまして,個々の事案に応じ,問題となる行為の性質,対応,結果,影響等を総合的に考慮して適切に判断すべきものでございます。
 なお,処分につきましては,その裁量権が乱用されることがあってはならないことはもとよりのことでございます。
(平成11年8月6日 参議院国旗及び国歌に関する特別委員会 政府委員)

○ 教育の現場というのは信頼関係でございますので,とことんきちっと話し合いをされて,処分であるとかそういうものはもう本当に最終段階,万やむを得ないときというふうに考えております。このことは,国旗・国歌が法制化されたときにも全く同じ考えでございます。
(平成11年8月6日 参議院国旗及び国歌に関する特別委員会 文部大臣)


10 学校における日章旗及び君が代の歴史や由来の指導について


(答)
 学校におきます国旗・国歌の指導は,児童生徒に我が国の国旗と国歌の意義を理解させ,これを尊重する態度を育てるとともに,諸外国の国旗と国歌も同様に尊重する態度を育てるために行っているものであります。国旗・国歌の意義を正しく理解するためには,我が国の国旗・国歌の歴史や由来などについて学習することは大事なことだと考えます。
 現在でも,例えば小学校6年生社会科の教科書において,国旗や国歌はその国の成り立ちと深い関係があること,日の丸は幕末から日本船の総船印として定められ,その後,明治政府によって日本の商船旗として定められたことなどの経緯をたどって国旗として扱われるようになったことなどの記述がみられるところでございます。
 今後とも我が国の国旗・国歌の歴史や由来などについて適切に指導が行われることを期待いたしておるところでございます。
(平成11年8月9日 参議院国旗及び国歌に関する特別委員会 内閣総理大臣)

○ 6年生になりますと,国旗や国歌はそれぞれの国の成り立ちと深い関係があること,こういったことを学習する。具体的には,日の丸の場合ですと,幕末から日本の船の総船印として定められた,その後,明治政府によりまして日本の商船旗として定められたことなどの経緯をたどって国旗として定着するようになってきたというようなことも記述がふえまして,世界各国の国旗や国歌の成り立ちについても調べてみましょうというような学習の方法も提示いたしまして,各学校におきまして,教師の適切な指導のもとに国旗や国歌の由来等もあわせて学習することによりまして,最終的には国旗・国歌の正しい理解を得るということになっているわけでございます。
 特に,国歌の歌詞の意味につきましては,先ほど来お答えしておりますように,少なくとも小学校卒業までには音楽と社会科の授業が相まって,今回,政府の見解で示されておりますようなそういった君が代の歌詞の意味を正しく理解させる,そういう活動を継続的に行うようにいたしているところでございます。
(平成11年8月2日 参議院国旗及び国歌に関する特別委員会 政府委員)


11 国歌「君が代」の歌詞の意味についての政府の解釈と学校における指導について


(答)
○ これまで文部省におかれましては,国歌の指導に当たっては,社会科と音楽の指導が相まって,小学校卒業までに,国歌君が代が我が国憲法のもとにおいて天皇を日本国並びに日本国民統合の象徴とする我が国がいつまでも繁栄するようにとの願いを込めてきた歌であることを理解できるように指導をしていくものと考えておるわけでございます。このことは,この法案の審議に際して示されました政府の見解と異なるものではないわけでございまして,今後,文部省におかれましても,各学校において政府見解にのった適切な指導が行われていくと思うわけでございます。
 その指導の結果,生徒や児童一人一人が君が代の歌詞の意味などについてどのように受けとめていくかは,最終的には個々人の内心にかかわる事柄であろうと考えております。
(平成11年8月6日 参議院国旗及び国歌に関する特別委員会 内閣官房長官)

○ 国歌の指導に当たりましては,社会科と音楽の指導が相まって,小学校卒業までに,今回の法案の審議等に際して示されました君が代の解釈,繰り返して申し上げますと,「日本国民の総意に基づき,天皇を日本国及び日本国民統合の象徴とする我が国のことであり,君が代の歌詞も,そうした我が国の末永い繁栄と平和を祈念したもの」との政府の見解にのった適切な指導が行われるよう配慮していく必要があると思っています。
(平成11年8月6日 参議院国旗及び国歌に関する特別委員会 文部大臣)

○ 国歌の指導に当たりましては,文部省といたしましては従来から,今回の政府の見解と基本的に同じでございますけれども,国歌君が代は,日本国憲法において天皇を日本国並びに日本国民統合の象徴とする我が国がいつまでも繁栄するようにとの願いを込めた歌であることを理解できるようにするという観点から指導を行うようにお願いをしているところでございます。
 もとより,児童生徒の内心にまで立ち入って強制しようという趣旨のものではございませんので,個々の児童が最終的に君が代の歌詞の意味についてどのように受けとめるかということにつきましては,個々人の内心にかかわること,これは総理が一般国民について本会議でお述べになったことと基本的には同じだろうと思っておりますが,私どもといたしましては,従来からも国旗・国歌の意義につきまして文部省としての指導内容を示してきたところでございますし,今回の国旗・国歌の法案の提出に伴いまして政府としての見解が示された以上,学校教育におきましてこの見解をもとに指導をお願いするということになろうかと思っているところでございますし,このことは従来からの文部省の指導と基本的に変わるものではないと思っているところであります。
(平成11年7月30日 参議院国旗及び国歌に関する特別委員会 政府委員)


12 国語において古典あるいは文学作品としての「君が代」を教えることについて


(答)
○ まず,学習指導要領では,小学校,中学校,高等学校のいずれの段階におきましても,国語の授業において国旗・国歌の指導を義務づけているものではございません。高等学校等において古典の教材として指導する場合におきましては,当然に,古典の文法解釈というふうなこと,そしてその古典の時代の解釈などについて教えるものだと思います。
 (中略)
 これは,国としてはこういう解釈であるよと,しかし個人個人の解釈,さらに古典的な解釈,これはそれぞれ違った解釈があり得ると思っております。
(平成11年8月6日 参議院国旗及び国歌に関する特別委員会 文部大臣)

○ 国語において国歌君が代を教材として取り上げなさいということは,学習指導要領においては何らどの学年についても触れていないわけでございますけれども,国歌の歴史的な由来なり,あるいはその歴史的に使われてきた過程なり,こういったものを理解させていくということは,国歌の君が代の歌詞の正しい理解を行っていくということで極めて重要でございます。
 そういった学習の過程,あるいは国語におきます文学作品としての取り扱い,これはまた別途文学作品としての取り扱いがあろうかと思いますけれども,学習の過程におきまして,そういった文学的な意味も含め,あるいは歴史的に使われてきた経緯等も含めて教えていって,最終的に政府の見解にのっとった適切な理解が導かれればよい,そういった指導が適切ではないかと思っているところでございます。
 なお,学校におきますこういった指導につきましては,教師,学校に対して義務づけを行っているものでございまして,教師や学校はこういった考え方にのっとって指導を行っていただきたいと思っているところでございますけれども,最終的に個々の児童生徒が君が代の歌詞の意味などについてどのように受けとめるかということにつきましては,個々人の内心にかかわる事項であろうかと考えているところでございます。
(平成11年8月2日 参議院国旗及び国歌に関する特別委員会 政府委員)


13 歴史教育,特に近現代史の指導との関係について


(答)
○ まず,学校における歴史教育というものを考えてみますと,小中高等学校を通じまして,児童生徒の発達段階に応じて,具体的な事象の学習を通して歴史に対する興味や関心を高めます。そして,歴史的事象を多角的に考察し,公正に判断する能力と態度を育てたり,歴史的思考力を培いまして,国民としての自覚と国際社会に生きる日本人としての資質を養うことをねらいとして行われていることでございます。もう申し上げるまでもございません。
 特に近現代史の教育につきましては,従来から,国際理解と国際協調の観点から,調和のとれた指導の充実に努めてまいりました。歴史教育におきましては,客観的,学問的な研究成果を踏まえながら,事実は事実として正しく指導すること,また,あくまで児童生徒の発達段階に応じて指導することが重要であると考えております。
 私は,戦前戦後の客観的な事実については子供たちにしっかり教えていかなければならないことであると考えております。こういう意味で,歴史教育,特に近現代史を正しく日本の児童生徒に教えることも国際理解を深める上で極めて重要であると考えております。
(平成11年8月6日 参議院国旗及び国歌に関する特別委員会 文部大臣)


14 入学式,卒業式の実施方法について


(答)
○ 入学式,卒業式ということの意味でございますが,学校において行われるさまざまな行事の中でも,入学式や卒業式は学校生活に有意義な変化や折り目をつけるというところだと思うのです。そこでは,厳粛かつ清新な雰囲気の中で,そして愉快な,気持ちのよい雰囲気の中で,新しい生活の展開への動機づけを行っていく,そして学校,社会,国家などに対する集団への所属感を深める上でよい機会となるものと考えております。このような意義を踏まえまして,入学式や卒業式などにおいて国旗を掲揚するとともに国歌を斉唱するよう指導することにいたしている次第でございます。
 入学式,卒業式は,新しい生活の展開への動機づけを行う機会でございますので,繰り返しになりますが,厳粛かつ清新な雰囲気をつくり出すよう工夫することが極めて大切であると考えております。
 その具体的な実施方法につきましては,各学校や,特に校長や設置者である教育委員会の判断にゆだねられている次第でございます。
(平成11年7月21日 衆議院内閣委員会文教委員会連合審査会 文部大臣)

○ 卒業式,入学式におきまして国旗を掲揚し国歌を斉唱するように指導するものとする,このことは法規的な性格を持つ命令として具体的に学習指導要領に書いているわけでございますので,これはすべての学校において守っていただくと。ただ,その式典の内容まで文部省の学習指導要領に書いているわけではございませんので,これは最終的には各設置者の判断,あるいはそれに基づく校長の責任においてさまざま工夫があってしかるべきということでございますけれども,最初に申し上げました国旗を掲揚し国歌を斉唱する,この二点だけは守っていただくという必要があるというわけでございます。
(平成11年8月2日 参議院国旗及び国歌に関する特別委員会 政府委員)

○ 卒業式,入学式に国旗を掲揚し,国歌を斉唱すると学習指導要領に書いてあるわけでございまして,国旗日の丸,国歌君が代を掲揚し斉唱する以外に各学校においてどのような形で子供たちの卒業,入学を祝うかというのは,各学校において十分御議論をいただき,地域の方々や父母の方々に御了解をいただいた上でそれが祝われるかたちになっていく,これは各学校あるいは設置者である教育委員会の判断にゆだねられているところでございます。
(平成11年8月2日 参議院国旗及び国歌に関する特別委員会 政府委員)


15 学習指導要領に特に定められている場合以外の国旗・国歌の指導について


(答)
○ 私が,総合的な学習の時間で国際理解教育を行うときに国旗・国歌を扱うこともあるというふうなことを申し上げました。そこをきちっと意味をもう一度申し上げますと,こういう機会に国際理解をやろうというふうなことも考えられておりますので,そういう国際理解をやりながら自分自身の国旗あるいは国歌,外国の国旗・国歌ということについて学ぶことがいいと私は考えた次第でございます。
 また,学習指導要領で定められております小中学校の社会科,小学校の音楽科,入学式や卒業式における指導だけではなく,各学校の判断によりまして創意をして,地理や歴史を勉強する地理・歴史科,公民科,外国語科などや総合的な学習の時間などにおきまして,国際理解教育を推進するという観点から国旗・国歌を尊重する教育を行っていくことが大切であるということを申し上げた次第でございます。
 また,運動会等々のことにつきましては,これはもちろん各学校の御判断でやっていただいていいと思いますが,いろいろなところで日の丸とか君が代とか,そういうふうなものについて御理解を深めていただきたいと思います。
(平成11年8月2日 参議院国旗及び国歌に関する特別委員会 文部大臣)

○ 学習指導要領におきましては,特別活動の内容といたしまして,「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」と書いてございまして,学習指導要領上,全国のすべての学校で入学式,卒業式,これはやっていただきたい。「など」というところでどういう内容を踏まえるかということにつきましては,文部省は従来から,始業式や終業式,運動会,開校記念日,いろんな学校における行事,儀式がある,そういったことを前提にして各学校や地域の判断において行う,これはゆだねられているところでございますので,入学式,卒業式以外にすべてやらなければならない,あるいはやらなければ学習指導要領に違反するというようなものではございませんで,各学校長の判断によりまして,やっていただくかやっていただかないかは任されているということでございます。
 ただ,学校において,始業式や終業式や運動会等においても国旗を掲揚し国歌を斉唱するというような教育活動を一たん決めましたら,その後の教員の職務の手続きというのは,これは入学式や卒業式と何ら変わるところはないわけでございますので,活動自体をやるやらないということは学校の判断でございますけれども,決められた教育課程の実施という点におきましては,すべての教育活動に共通に,校長や教育委員会の責任のもとにおいて行っていただくということになろうかと存じます。
(平成11年8月2日 参議院国旗及び国歌に関する特別委員会 政府委員)






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