● 公務員制度改革大綱 平成13年12月25日 閣議決定

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公務員制度改革大綱


平成13年12月25日
閣 議 決 定


I 政府全体としての適切な人事・組織マネジメントの実現

1 基本的考え方
2 政府全体の新たな人事・組織マネジメントの方向
 (1)法律による人事・組織マネジメントに係るルールの明確化
 (2)内閣と第三者機関の機能の整理
3 具体的な制度における内閣と第三者機関の機能の整理
 (1)職員の採用について
 (2)職員の配置、人材育成、服務管理等について
 (3)勤務条件に関連する事項について

II 新たな公務員制度の概要

1 新人事制度の構築
 (1)能力等級制度の導入
 (2)能力等級を基礎とした新任用制度の確立
 (3)能力・職責・業績を反映した新給与制度の確立
 (4)能力評価と業績評価からなる新評価制度の導入
 (5)組織目標の設定及び行動規準の確立
 (6)人材育成を図る仕組みの整備
 (7)本府省幹部候補職員を計画的に育成する仕組みの導入
 (8)上級幹部職員の新人事制度
 (9)職員の能力開発と自主性への配慮
2 多様な人材の確保等
 (1)採用試験制度の見直し
 (2)民間からの人材の確保
 (3)公募制の積極的活用
 (4)女性の採用・登用の拡大
3 適正な再就職ルールの確立
 (1)営利企業への再就職に係る承認制度及び行為規制
 (2)特殊法人等への再就職に係るルール
 (3)公益法人への再就職に係るルール
 (4)再就職状況全般に係る公表制度
 (5)退職手当制度の見直し
4 組織のパフォーマンスの向上
 (1)機動的・弾力的な組織・定員管理
 (2)国家戦略スタッフの創設
 (3)超過勤務の縮減等

III 改革に向けた今後の取組

1 国家公務員制度改革の今後の検討方針等
 (1)法制化スケジュール等
 (2)一般の行政職員以外の職員に関する検討
2 地方公務員制度の改革及びそのスケジュール
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 現在の我が国は、右肩上がりの経済成長が終えんし、限られた資源の中で国家として多様な価値を追求せざるを得ないなど、極めて厳しい状況に置かれている。眼下には、膨大な財政赤字の累積や社会保障の問題を始めとして困難な課題が山積しており、我が国の将来展望を切り開くためにはもはや一刻の猶予も残されていない。このような状況の下で、政府の政策立案・実施のトータルの質が従来とは比較にならないほど厳しく問われている。
 近年、政府は、行政改革を最重要課題の一つとして位置付け、中央省庁改革により新たな府省体制を確立するとともに内閣機能の強化を図るなど、積極的に改革を推進してきたところである。
 しかしながら、行政の組織・運営を支える公務員をめぐっては、政策立案能力に対する信頼の低下、前例踏襲主義、コスト意識・サービス意識の欠如など、様々な厳しい指摘がなされている。
 真に国民本位の行政を実現するためには、公務員自身の意識・行動自体を大きく改革することが不可欠であり、公務員の意識・行動原理に大きな影響を及ぼす公務員制度を見直すことが重要である。

 公務員制度の見直しに当たっては、公務に求められる専門性、中立性、能率性、継続・安定性の確保に留意しつつ、政府のパフォーマンスを飛躍的に高めることを目指し、行政ニーズに即応した人材を確保し、公務員が互いに競い合う中で持てる力を国民のために最大限に発揮し得る環境を整備するとともに、その時々で最適な組織編成を機動的・弾力的に行うことができるようにすることが必要である。また、行政を支える公務員が、国民の信頼を確保しつつ、主体的に能力向上に取り組み、多様なキャリアパスを自ら選択することなどにより、高い使命感と働きがいを持って職務を遂行できるようにすることが重要である。
 このように、正に国民が望む行政、国民にとって真に必要な行政は何かという観点からの制度設計が求められている。

 今回の公務員制度改革は、以上のような視点に立って、真に国民本位の行政の実現を図ることを基本理念として掲げ、国民の立場から公務員制度を抜本的に改革することにより、行政の在り方自体を改革することを目指すものである。

 また、公務の安定的・継続的な運営の確保の観点、国民生活へ与える影響の観点などを総合的に勘案し、公務員の労働基本権の制約については、今後もこれに代わる相応の措置を確保しつつ、現行の制約を維持することとする。




I 政府全体としての適切な人事・組織マネジメントの実現

1 基本的考え方

 時代の要請に応じ、国家的見地からの総合的・戦略的な政策の企画立案や機動的・効率的な行政サービスの提供を実現するためには、行政運営について責任を持つ内閣及び各府省が適切に人事・組織マネジメントを行うことが不可欠である。
 複雑高度化した行政課題に対応できない硬直的な企画立案、非効率な業務執行を生み出す制度疲労を来した行政システムなど、行政が直面している問題は、人事管理に対する意識の不足等により、各府省において主体的かつ責任ある人事・組織マネジメントが十分に行われてこなかったことにも起因していると考えられる。

 また、行政課題が複雑高度化するとともに機動的な行政運営が求められる中、行政システムの在り方も、情報公開、政策評価等の制度を導入するなど、問題を先送りすることなく公正な政策判断を保つために国民に対して透明かつ明確な責任の所在の下で行政運営を行う方向へと転換してきている。
 しかし、現在の人事・組織マネジメントの枠組みにおける事前かつ個別詳細なチェックは、各主任大臣等が人的資源等を活用して機動的な行政運営を行う上での制約となっている面がある。また、各主任大臣等が実際の行政課題に応じた人事管理を行うためには、内閣による適切な企画立案が求められるが、現状は第三者機関に大きく依存しており、内閣が十分に責任を果たしてきたとは評価し難いところである。

 したがって、政府全体の人事・組織マネジメントについて、これまでの枠組みを改め、人事行政の中立性・公正性を確保しつつ、国民に対して開かれたシステムの下で、国民を代表する国会に対して責任を持つ内閣及びその構成員たる各府省の主任大臣等が、行政を支える公務員の人事行政について主体的に責任を持って取り組んでいく枠組みとすることが必要である。さらに、中央人事行政機関等による人事・組織管理面での事前かつ詳細な制度的規制を見直すとともに、内閣及び各主任大臣等が機動的・弾力的に人事・組織マネジメントを行っていくことが必要である。
 一方、公務員の労働基本権が制約されている下では、公務員の処遇を適切に確保するための枠組みが必要である。

 以上のような認識の下、公務員制度を抜本的に改革する観点から、政府全体としての適切な人事・組織マネジメントを実現するための新たな枠組みを構築する。


2 政府全体の新たな人事・組織マネジメントの方向

(1)法律による人事・組織マネジメントに係るルールの明確化
 公務員が民主的コントロールの下に置かれるという大原則の下、公務員制度の骨格は法律で明らかにされるべきものである。公務員の在り方を始め、人事制度の趣旨、枠組み、重要な基準等は、法律で明確に規定する。

(2)内閣と第三者機関の機能の整理

  1. 人事管理権者としての各主任大臣等の主体的な責任と権限の明確化
 各主任大臣等は、適切かつ弾力的な人事・組織マネジメントを通じて、所掌する行政組織の人的資源を公正かつ最大限に活用し、機動的・効率的な行政運営を実現する。
 そのため、各主任大臣等を、自らの判断と責任において、所掌する行政組織の人事・組織の設計・運用を行う「人事管理権者」として制度上明確に位置付ける。
 人事管理権者は、法令に基づき、人事マネジメント一般について、主体的な責任を持って取り組むとともに、今般の改革で弾力化される組織・定員管理や主体的に行うポスト管理等を通じて、弾力的な組織マネジメントを行うこととする。
 各府省は、適切かつ弾力的な人事・組織マネジメントを実施するために、人事及び組織担当部局の充実を図ることとする。

  2. 内閣の人事行政の企画立案機能、総合調整機能の強化
 内閣は、国民を代表する国会に対し連帯して責任を負う観点から、民主的コントロールの下で公務員制度の企画立案等に責任を持って取り組んでいくこととする。
 内閣は、法律案の策定や法律の委任に基づく政令の制定等を通じて、人事行政に係る企画立案機能を積極的に発揮し、人事管理権者が行う適切かつ弾力的な人事・組織マネジメントに必要なルール等を定める。さらに、法律が人事院規則に委任した事項についても、適切な行政運営を確保する観点から必要な見直し等が図られるよう、内閣から人事院に対して具体的対応を求める要請を行うことができるようにする。この場合、内閣と人事院との関係等を考慮して制度を検討する。
 また、内閣としての人事行政の統一保持を図るため、人事管理権者の行う人事管理に係る総合調整機能を発揮することとし、その機能の強化を図る。

  3. 第三者機関による職員の利益の保護、人事行政の中立性・公正性の確保
 人事院は、職員の利益の保護、人事行政の中立性・公正性の確保の観点から、国会及び内閣に対して必要な意見を述べるとともに、法律の委任に基づき人事院規則を定める。また、人事院は、給与等の勤務条件の設定について引き続き関与する。
 人事院は、職員の利益の保護、人事行政の中立性・公正性の確保の観点から、あらかじめ定められた明確な基準の下で、人事管理権者に対し、人事行政の改善に関する勧告などの事後チェックを行う。

  4. 救済制度等について
 人事管理に関して職員に不利益が生じている場合に適切に対応するため、人事管理権者が行うべき苦情処理の在り方を検討するとともに、人事院による公正な救済を適切に受けられるよう、その救済機能の充実・強化を図る。


3 具体的な制度における内閣と第三者機関の機能の整理

 上記2に従い、具体的な制度における内閣と第三者機関の機能について整理を行う。

(1)職員の採用について
 行政の実際の需要に即した人材を確保するため、人事管理権者が主体となって採用を行う。内閣は、採用に係る制度の企画立案を行い、各府省の必要とする人材の円滑な確保を図る。
 人事院は、情実採用などを防止するため、あらかじめ定められた明確な基準の下で実効性のあるチェックを行う。

(2)職員の配置、人材育成、服務管理等について
 人事管理権者が所掌する行政分野における機動的・効率的な行政運営を行うため、職員の適切な配置のための任用、職員の研修等による育成や退職時を含む適切な服務管理等を人事管理権者が主体的な責任を持って行う。内閣は、人事管理権者の行う職員の配置、人材育成、服務管理等に必要な人事管理の制度の企画立案及び内閣としての人事管理の統一保持上必要な総合調整を行う。 人事院は、職員の利益の保護、人事行政の中立性・公正性の確保の観点から、あらかじめ定められた明確な基準の下で、人事管理権者に対し、人事行政の改善に関する勧告などの事後チェックを行う。

(3)勤務条件に関連する事項について
 財政民主主義及び勤務条件法定主義の下で、勤務条件に関連する事項については人事院が関与する。人事院は、給与水準等の設計と国会及び内閣に対する勧告や人員枠となる能力等級ごとの人員数についての国会及び内閣に対する意見の申出などを行う。あわせて、勤務条件の基準化と事後チェック化を通じて各府省の弾力的な対応を可能とする。




II 新たな公務員制度の概要

1 新人事制度の構築

  1. 改革の基本的考え方
 行政ニーズが複雑高度化、多様化してきている中で、公務員が国民の期待にこたえ、真に国民本位の良質で効率的な行政サービスを提供するためには、それにふさわしい任用、給与等の人事制度を構築し、各府省が適切に運用していくことが重要な課題となっている。
 しかしながら、公務員の人事制度は、高度成長期を経て今日まで基本的な変更を加えられることなく維持されてきており、現行のままではこのような新しい時代の要請に十分にこたえた人事管理を展開していくことが困難となってきている。
 すなわち、現行の人事制度においては、職員の能力や成果を適切に評価し、その結果を任用や給与に有効に活用する仕組みが不十分であることなどから、採用試験区分や採用年次等を過度に重視した硬直的な任用や年功的な給与処遇が見られること、また、職務や職種の特性等を踏まえた職員の計画的な能力開発の仕組みが不十分で持てる人材を必ずしも有効に活用できていないこと、さらには、組織の目標や職員に求められる行動の規準が不明確で徹底する手段もないことなど、様々な問題が生じている。
 また、事前かつ詳細な制度的規制により、各府省における機動的・弾力的な人事・組織マネジメントが阻害されているとの指摘もある。

 このため、新たに能力等級制度を導入し、これを基礎として任用、給与、評価等の諸制度を再構築することにより、これまでのように個々の職務を詳細に格付け、在職年数等を基準として昇任や昇格を行うのではなく、能力や業績を適正に評価した上で、真に能力本位で適材適所の人事配置を推進するとともに、能力・職責・業績を適切に反映したインセンティブに富んだ給与処遇を実現する。
 また、職務や職種の特性に応じた複線型の人材の育成及び活用も念頭に置き、職員一人一人の能力や意欲等を踏まえた計画的な人材育成の仕組みを整備するとともに、所属組織の目標や求められる行動の規準を職員に明示することにより、職員の主体的な能力向上や業務への取組を促し、組織目標の着実な達成を図る。
 これらの制度の具体化に当たっては、各府省が、その時々の行政需要に応じ、自らの判断と責任において機動的・弾力的に人事・組織マネジメントを行うことができるような制度設計を行う。

  2. 今後の検討における留意事項
 この新人事制度は、一般の行政職員を対象とするものであり、その他の職員については、今後、それぞれの職種の特性等を十分念頭に置いて検討する。
 また、評価制度において一定期間の試行を行いつつ、各府省の実情を十分に踏まえて新人事制度の具体化を進めるほか、各制度ごとに必要に応じて経過措置を講ずるなどにより、新制度への円滑な移行を図る。

(1)能力等級制度の導入

  1. 基本的考え方
 新人事制度の基礎となるものとして、職務(官職)を通じて現に発揮している職務遂行能力に応じて職員を等級に格付ける能力等級制度を設け、これを任用、給与及び評価の基準として活用することにより、トータルシステムとしての人事システムを構築する。
 能力等級制度は、上級幹部職員(現行の指定職俸給表の適用を受ける職員に相当する職員をいう。以下同じ。)を除く職員に適用する。

  2. 具体的措置
ア 能力等級表
 職員一人一人の職務遂行能力の評価及び等級への格付けを適正に行うためには、公務部門の多様な組織や職務の実態を踏まえて等級ごとに職務遂行能力基準(以下「能力基準」という。)を適切に定める必要がある。このため、府省共通の能力等級表を設け、同表において、組織段階ごとに、基本職位、代表職務及び能力基準を定める。
 組織段階は、本府省、地方支分部局等に応じて複数設け、組織段階ごとに典型的な職制段階(課長・企画官、課長補佐、係長、係員など)に応じた複数の基本職位を定めるとともに、基本職位ごとに代表職務(基本職位の前提となった職制の代表的な職名)及び対応する等級を定める。
 等級数は、現行の組織段階及び職制段階の実態を踏まえ、求められる職務遂行能力の内容・程度の相違、昇格による適切なインセンティブの付与及び弾力的な任用の必要性を考慮して設定する。
 組織段階、等級ごとに、職務に通常求められる職務行動の基準を府省共通の能力基準として定める。ただし、各府省ごとに、業務内容の特性等に応じて職務行動をより具体的に記述するなど、能力基準の内容の追加等を行うことができるものとする。
 なお、本府省及び地方支分部局等の各機関の組織段階への分類は、人事管理権者が、あらかじめ定められた明確な基準に基づき、業務内容や組織体制を実質的に評価して行う。
イ 人員枠
 適正な給与管理及び人件費管理を行う観点から、各府省の機構及び人員構成等を踏まえ、等級別に人員枠を設定する。
 人事管理権者は、あらかじめ定められた明確な基準等を踏まえ、前年度人件費、各府省の実態等を勘案し、等級ごとの人員数を含めた人件費予算の要求を行い、内閣は、等級ごとの人員数を含めた政府予算案を確定して国会に提出する。国会による人件費予算の決定により、等級ごとの人員数を人員枠とする。
 人事院は、あらかじめ定められた明確な基準に基づき、等級ごとの人員数について、国会及び内閣に対して意見の申出を行う。

ウ 昇格・降格
 人事管理権者は、能力評価により現等級に求められる職務遂行能力の発揮度が優れている者を昇格候補者とし、当該昇格候補者について上位の等級に求められる職務遂行能力の発揮に対する期待度等を考慮し、人員枠の範囲内で昇格させる。なお、上位の基本職位に対応する等級への昇格は、原則として上位の基本職位に分類された職務への任用と同時に行う。
 また、能力評価により職務遂行能力の発揮度が現等級に求められる水準に達しない者等については、あらかじめ定められた明確な基準と手続に基づき、厳正に降格処分を行う。
(2)能力等級を基礎とした新任用制度の確立

  1. 基本的考え方
 現行の任用制度においては、任用の基準が制度上措置されておらず、評価システムが十分に機能していないこともあって、採用試験区分や採用年次等に基づく画一的・硬直的な人事管理が一般的に見られ、また、勤務実績不良者の判断が難しく、これらの者に対する厳正な処分を十分に行うことができない状況にある。
 このため、能力等級制度を基礎とした新たな任用制度を整備し、能力基準や能力評価を活用することにより、真に能力本位で適材適所の人事配置を実現する。
 これにより、人事管理権者は、所属する職員の能力を最大限に活用し、機動的・効率的な行政運営を確保する。

  2. 具体的措置
ア 職務分類
 能力基準を任用の基準として活用するため、人事管理権者は、あらかじめ定められた分類に関する明確な基準、能力等級表の能力基準及び代表職務に応じて、その府省に属する職務を基本職位に分類整理する。

イ 昇任・降任
 上位の基本職位に分類された職務に就くことを「昇任」、下位の基本職位に分類された職務に就くことを「降任」とし、能力本位で適材適所の人事配置を推進する。
 人事管理権者は、能力評価の結果、就けようとする職務に求められる適性及びその他の事情を総合的に考慮して職員を昇任させる。
 昇任は、原則として昇格と同時に行う。ただし、人事管理権者は、昇任させようとする上位の基本職位の職務に対応する等級の者が当該府省に不足する場合、特別の職務知識等を必要とする職務であるため下位の基本職位の職務に就いている者以外に適材が得られない場合など、あらかじめ定められた事由に該当する場合には、昇格させることなく昇任させることができるものとする。
 また、特別の職務知識等を必要とする職務であるため上位の基本職位の職務に就いている者以外に適材が得られない場合など、あらかじめ定められた事由に該当する場合には、等級が1級上位の者を下位の基本職位に分類された職務に充てることができるものとする。

ウ 管理職等の厳正な登用審査
 人事管理権者は、行政運営の中核的役割を担う本府省の課長・企画官等の幹部職員や職員の人事管理に責任を持つ地方支分部局等の課長等の管理職に職員を初めて登用する場合には、当該登用の適正性を確保するため、厳正な登用審査を付加することにより、適格性等を審査する。

エ 勤務実績不良者等の不適格者に対する厳正な処分
 能力本位の任用及び公務員の中立性・公正性を確保する観点から、免職及び降格について厳正に対処できるよう、評価制度の整備も踏まえ明確な基準及び手続を定める。
 降格について明確な基準及び手続が定められることから、降任については特別の基準及び手続を設定しない。

(3)能力・職責・業績を反映した新給与制度の確立

  1. 基本的考え方
 職員一人一人の貢献度をその能力・職責・業績に応じて適切に反映した、能力向上と業績達成に対するインセンティブに富んだ給与処遇を実現するため、新たな給与制度を導入する。
 人事院は、法律で定める情勢適応の原則に従って給与水準等を設計し、国会及び内閣に勧告する。
 内閣は、人事院が示した勧告について閣議でその取扱いを決定して法律案及び予算案として国会に提出する。

  2. 具体的措置
ア 基本給(能力給)
 現行の俸給月額に替わる基本的な給与種目として、基本給を設ける。
 基本給には、それぞれの等級ごとに、一定の水準を定める部分(定額部分)と、職員の職務遂行能力の向上に対応して一定の範囲内で原則として年1回これに加算していく部分(加算部分)を設ける。
 定額部分については、上位の等級ほど高い職務遂行能力を求められることに対応した水準を設定する。加算部分については、各等級において職員が職務遂行能力を発揮していくことに適切に対応するとともに、年功的な要素を抑制する等の観点を踏まえ、加算の段階及びそれぞれの水準を設定する。
 人事管理権者は、職員が勤務を継続していく中で業績評価の結果等に表れた職員の職務遂行能力の発揮状況を総合的に勘案し、あらかじめ設けられている段階により加算を行う。職員の職務遂行能力の向上が認められない場合等には、加算を行わない。また、標準を上回る加算については、適用枠を設ける。

イ 職責手当(職責給)
 管理・監督の地位にある職員の職務の特殊性や職責の変化に機動的・弾力的に対応するため、基本給を補完する給与種目として、職責手当を設ける。
 職責手当には、職責の大きさに応じた職責段階を設ける。
 人事管理権者は、あらかじめ定められた明確な基準に基づき、個々の職務についてその時々の職責を評価し、原則として年1回職責段階を決定する。ただし、年度途中であっても職責の変化に伴い職責段階を変更することもできるものとする。
 職責手当が支給される職員には超過勤務手当等を支給しない。

ウ 業績手当(業績給)
 民間における賞与に相当する給与種目として、業績手当を設ける。
 業績手当は、安定的に支給する部分(基礎的支給部分)と勤務実績に対応して支給する部分(業績反映部分)で構成し、6月と12月に支給する。
 人事管理権者は、職員の勤務実績を業績反映部分の支給額に適切に反映できるよう、あらかじめ定められた明確な基準に基づき、それぞれの実情に応じて、標準を上回る又は下回る支給額の段階数、具体的な額及び分布率を設定する。個々人の業績反映部分の支給額は、直近の業績評価を重要な参考資料として人事管理権者が決定する。なお、本府省課長級等の等級が上位の者については、業績反映部分の比率を高める。基礎的支給部分、業績反映部分ともに、職員の勤務状況(期間率)を反映させる。

エ その他の手当
 職責手当及び業績手当の新設に伴い、俸給の特別調整額、期末手当、勤勉手当等のうち、これらと趣旨が重複することとなる既存の手当は廃止する。
 また、本府省の職務の困難性、特殊性等に適切に対処するため、当該職務を担う課長補佐及び係長を対象に本省勤務手当を新設する。
 扶養手当については、生活スタイルの変化など社会情勢の変化を踏まえ、配偶者に係る扶養手当を中心にその在り方について必要な見直しを行う。

(4)能力評価と業績評価からなる新評価制度の導入

  1. 基本的考え方
 職員一人一人の主体的な能力開発や業務遂行を促し、人的資源の最大活用と組織のパフォーマンスの向上を図るとともに、能力等級制度を基礎とした任用制度、給与制度を始めとする新人事制度を適切に運用するため、現行の勤務評定制度に替え、能力評価と業績評価からなる新たな評価制度を導入する。

  2. 具体的措置
ア 能力評価
 能力評価においては、職務遂行能力の発揮度を能力基準に照らして評価することにより、職員の主体的な能力発揮・能力開発を促すとともに、人事管理権者による等級への格付け及び任免の際の重要な参考資料とするほか、計画的な人材育成に活用する。

イ 業績評価
 業績評価においては、目標管理の手法を用いて業績を評価することにより、職員が組織の目標を明確に意識して、主体的な業務遂行に当たることを促すとともに、人事管理権者による基本給の加算部分決定の勘案要素とし、業績手当の業績反映部分決定の重要な参考資料とするほか、計画的な人材育成に活用する。

ウ 評価制度の適正な運用を図るための仕組みの導入等
 評価の公正性・納得性を確保するため、複数の評価者による評価、評価者訓練、評価のフィードバック、職員の苦情に適切に対応する仕組みの整備などを、各府省の実情を踏まえつつ行うとともに、制度の趣旨・内容を職員に周知徹底し、評価制度の適正な運用を図る。各府省は、新評価制度の実施に当たり、人事担当部局などにおいて、評価制度の適正な管理・運用を行うために必要な体制を整備する。
 新人事制度を適切に実施するためには、公正で納得性の高い評価制度の円滑な導入が不可欠であることから、各府省がそれぞれの実情を踏まえた手法により評価の試行を十分に行い、その試行結果を踏まえつつ具体的な制度設計を行う。

(5)組織目標の設定及び行動規準の確立

  1. 基本的考え方
 職員一人一人が所属組織の目標の達成に向けて主体的に取り組み、国民の視点に立って常に業務の改善に努めることにより、行政サービスの質の向上と業務の効率化を図るため、組織の目標及び国家公務員として求められる行動の規準を明確化する。

  2. 具体的措置
 各府省は、各部局の実情及び必要性に応じて組織目標を設定する。また、国家公務員全体に共通する行動規準を設定するほか、人事管理権者は、必要に応じて、その任務や業務の特性に応じた行動規準を設定する。
 各府省は、設定した組織目標及び行動規準を職員に周知徹底するほか、人事管理権者は、職員がこれらを踏まえて業務目標を設定し業績を挙げた場合等には評価に反映するものとする。また、行動規準にのっとり、例えば業務の改善提案等により成果を挙げるなど他の模範となった職員に対し褒賞を行う等の行動規準の遵守を確保するための適切な措置を講ずる。

(6)人材育成を図る仕組みの整備

  1. 基本的考え方
 時代の変化に対応した職員の能力・資質の向上を図るため、人事管理権者が職員の育成に関する方針を定め、行政課題に的確に対応する能力を有する職員の計画的育成に努めるとともに、職員も自ら進んで職務遂行能力の開発及び向上に努める仕組みを整備する。また、民間の能力活用の観点から、研修のアウトソーシング化を進める。

  2. 具体的措置
 人材育成の条件整備の一つとして、人事管理権者は、原則として、本府省であれば課長補佐段階までの職員を対象とし、組織の実態等を考慮して、育成段階ごとに育成目標、実施を予定している研修、代表的な人事配置等を示す人材育成コースを設定し、職員に提示する。職員の育成に関する方針及び人材育成コースを前提に、評価も活用しつつ、日常の職務や職員との面談の機会を通じて指導・助言を行い、職員の主体的な能力の開発及び向上を促進する。
 なお、人材育成コースは、その後の人事配置を制約する性格のものとしては位置付けない。

 新たに能力等級制度を導入すること及び適材適所の人事配置や専門能力を高めるための人材育成の仕組みの整備等を積極的に行うことに伴い、国家行政組織法の一部を改正する法律(昭和25年法律第139号)附則第2項に基づく官の制度(事務官・技官等の別)は廃止する。

  3. 人事管理権者、内閣及び人事院の役割分担
 人事管理権者は、職員の育成に関する責務を負う。
 内閣は、人事管理権者が行う職員の育成に関する方針の企画立案及び実施に関する総合的企画・調整を行う。
 人事院は、人事行政の中立性・公正性の確保の観点から、必要な基準の設定、人事管理権者に対する改善の勧告を行う。

(7)本府省幹部候補職員を計画的に育成する仕組みの導入

  1. 基本的考え方
 複雑高度化する行政課題に的確に対応していくため、幅広い知識・経験や総合的視野、高いレベルの政策立案能力等が要求される本府省幹部職員を計画的に育成していくことがより一層重要になっている。一方、採用試験区分や採用年次等に基づいて一律に本府省幹部職員への登用がなされているなどの問題がある。
 このため、本府省幹部職員について厳正な登用審査を実施するとともに、採用試験区分にとらわれることなく、本府省幹部職員としてふさわしい意欲と能力を有する者を、本府省幹部候補職員として計画的に育成することを目的とする仕組みの導入を図る。

  2. 具体的措置
 I 種採用職員及びI 種採用職員以外の職員のうち人事管理権者がその定める基準により選考する職員を対象とし、本府省課長補佐の一定段階までを集中育成期間とする。集中育成期間中は、能力評価及び業績評価に加えて、職務遂行状況や育成状況を把握し、集中育成の対象としての適性を厳正に評価した上で、集中育成対象とすることが不適当であると認める職員はその対象から外すものとする。集中育成の対象となっている職員に対しては、計画的な勤務経験及び研修・留学機会の付与等により特別な人材育成を図る。

(8)上級幹部職員の新人事制度

  1. 基本的考え方
 内閣を構成する大臣が大胆な価値選択や政策決定を行い、各府省の公務員がこれを政策立案面や実施面で補佐するという役割分担の下で、事務次官、局長、審議官等の上級幹部職員については、所管行政の専門家として課長以下の他の職員と一体となって大臣等を直接補佐し、重要政策の企画立案や地方支分部局等の事務の管理・監督に当たることから、引き続き一般職の職員とする。また、人事管理権者が個別に適材適所で人事配置を行い、職務と業績を基準に処遇することが適当であることから、能力等級制度を適用せず、これらの職員にふさわしい任用・給与制度を設計する。
 人事管理権者は、高度の行政課題に的確に対応するため、上級幹部職員についても、採用試験の区分にとらわれることなく、真に適材適所の人事配置を行う。

  2. 具体的措置
ア 任用
 機動的・弾力的な適材適所の人事配置を確保し得る任用制度や職務、職責に適切に対応した給与制度の基礎となるものとして、事務次官、局長、審議官といった代表的な役職段階に応じ、簡素な段階の基本職位を設定する。
 人事管理権者は、上級幹部職員としての適格性に関する統一的基準、個別の職務に求められる知識・能力及び行政課題等を考慮して、上級幹部職員を任用する。

イ 給与
 上級幹部職員の給与は、年功的要素を排し職責反映をより徹底させるため年俸制とし、人事管理権者は、基本職位ごとの基本的な職責に応じ、更に必要がある場合には、個々の職務のその時々の行政課題の重要度、複雑・困難度等をも考慮して、あらかじめ定められた明確な基準に基づき、支給額を弾力的に決定する。年俸は、毎月支給する給与と年2回特別に支給する給与とに分けて支給することとし、特別に支給する給与については、勤務成績が良好でない場合には、一定の範囲内で減額を行う。

(9)職員の能力開発と自主性への配慮

  1. 基本的考え方
 複雑高度化する行政課題に的確に対応するため、公務員に一層高い能力と資質が求められる中で、職員の能力開発の機会を拡充するとともに、職員が自らの能力を主体的に高めることができる環境を整備することが重要である。

  2. 具体的措置
ア 留学派遣の機会の拡充
 新人事制度においては、人材育成コースを中心とする人材育成の仕組みを整備することとしており、留学についても職員の能力開発の効果が大きいことから、政府全体の留学派遣者数の拡大を図る。なお、留学派遣者が復帰後早期に退職する問題に対処するため、早期退職の場合の留学派遣費の償還等について法整備を行う。

イ 自己啓発のための休業制度の導入
 意欲ある職員の主体的な能力開発を支援するため、大学院等に進学する場合や研究所・シンクタンク等で研究活動に従事する場合など、職員の能力開発に資する活動で公務に有益と認められる事由を設定し、一定の基準に基づく人事管理権者の許可を得て、一定期間、給与の支給を受けずに身分を保有したままで、自主的に自己啓発のための活動を行うことができる仕組みの導入を図る。


2 多様な人材の確保等

 公務員が真に国民本位の良質で効率的な行政サービスを提供するためには、公務部門が時々刻々変化する行政課題に迅速・的確に対応し得る能力を常に確保していくことが重要であり、そのためには、能力本位の人事制度を新たに導入するとともに、職員の意欲と能力に応じた適材適所の人事配置を行うための方策を講ずることにより、公務部内の人的資源を最大限に活用することに加え、外部から多様で質の高い人材を公務に誘致し確保していくことが求められている。
 このような観点から、新規学卒者等の採用段階において、各府省が、多数の候補者の中から、それぞれの行政ニーズに即した人材を適切に選抜できるように採用試験制度の見直しを行うとともに、政策立案能力の向上や行政の閉鎖性・硬直性の改善を図るため、民間の有為な人材を弾力的に確保し得るシステムを構築することにより、人事管理権者が、広く多様な人材ソースの中から可能な限りその主体的な判断に基づいて、行政に真に必要で有為な人材を採用できるようにする。
 また、職員の意欲と能力に応じた適材適所の人事配置を図り、組織活力を高めるため、公募制の積極的な活用を図るとともに、女性の採用・登用を拡大する。

(1)採用試験制度の見直し

  1. 基本的考え方
 複雑多様化する行政課題に対応するためには、それに対応し得る能力と意欲を持った有為な人材を、広く多様な人材ソースから公務部門に積極的に誘致し確保することが喫緊の課題となっており、特に新規学卒者等の採用段階において、従来にも増して多様で質の高い人材を確保し、効果的に育成・活用していくことが重要である。
 このため、各府省がそれぞれの行政ニーズに即した有為な人材を確保できるよう、採用試験の企画立案について内閣が主体的に行う仕組みに転換するとともに、公務を志す者を幅広い層から確保し、より多くの候補者の中から、人事管理権者が総合的な人物評価に基づき主体的に採用者を決定できるよう、採用試験の公開平等、成績主義の原則に配慮しつつ、試験内容を改善するとともに、試験合格者数を大幅に増加させることとする。また、総合的な人物評価においては、社会奉仕活動の経験等も考慮するものとする。
 なお、人材の効率的な確保・育成の観点から、I 種・II種・III種の採用試験の区分は維持するが、現行のキャリアシステムの弊害を是正するため、採用後は、I 種採用職員について厳正な評価を行うとともに、II種・III種採用職員についても新人事制度における集中育成の対象としての道を開くことなどにより、採用試験区分にとらわれない能力重視の人事管理を推進する。

  2. 具体的措置
ア 採用試験の見直し
ア)当面の見直し
 上記の基本的考え方に基づき、新人事制度に移行するまでの当面の見直しとして、以下の措置を講ずることを目指す。また、志望者層の一層の拡大を図るため、業務説明会の開催やインターンシップの実施に積極的に取り組む。
a I 種試験
 有識者や各府省の協力の下、試験内容の改善に着手し、可能なものについては平成15年度の試験から実現する。また、平成16年4月に予定される法科大学院の新設も踏まえ、より多様な人材を確保するため、行政区分の試験内容の見直しを行う。
 人事管理権者が多くの候補者の中から人物本位で採用できるよう、現在、採用予定数の概ね2倍程度となっている合格者数を、平成14年度の試験において、概ね2.5倍程度に増加させる。また、平成15年度の試験から、合格者数を採用予定数の概ね4倍程度を目途に増加させるとともに、各府省が合格発表後に採用面接を十分に行い得るよう試験のスケジュールを見直す。
b II種・III種試験
 II種・III種試験については、各府省の行政ニーズに合った多様で質の高い人材を十分に確保する観点から、試験内容の改善を図るとともに、必要に応じて合格者数を増加させる。
イ)抜本的な見直し
 平成16年度以降の採用試験については、新人事制度移行への対応及び司法制度改革も視野に入れつつ、適切な合格者数、優れた人材を幅広く柔軟に採用できるような試験の在り方など、多様で質の高い人材を広く求める観点から、内閣を中心に、新人事制度における位置付け、法科大学院の新設への対応など採用試験の抜本改革の在り方について検討し、平成14年前半を目途に成案を得る。

イ 内閣と人事院の役割分担
 採用試験制度の企画立案については、内閣が行うこととし、人事院は人事行政の中立性・公正性の確保の観点から必要に応じて意見の申出を行う。また、採用試験は人事院が行う。

(2)民間からの人材の確保

  1. 基本的考え方
 従来の人事管理においては、新規学卒者等を内部育成し、その人的資源・能力の範囲内で当面する行政課題に対応する傾向が強く、また、公務の中立性・公正性を重視するあまり、官民の人的交流にも消極的であった。
 しかしながら、今後、複雑高度化する行政課題に適切に対応していくためには、このような内部人材本位、過度に厳格な官民区分の考え方に根ざした人事慣行から、有能な人材を外部からも積極的に確保していく行政課題・仕事本位の人事管理へと発想を転換していくことが必要である。
 また、従来から指摘されている公務員の前例踏襲主義、コスト意識・サービス意識の欠如などといった意識・行動の変革を促し、行政の硬直性や閉鎖性を改善し、国民の求めるオープンで質の高い行政を実現するためにも、民間企業に負担をもたらすことのないよう留意しつつ、官民の人的交流を積極的に推進していくことが必要である。
 民間からの人材の確保に関する制度としては、中途採用制度、官民人事交流制度、任期付職員制度等が順次整備されてきたが、民間からの人材の活用に対する各府省の意欲が十分ではないことや、過度に厳格な官民区分の考え方に根ざした諸規制や煩雑な人事院の事前承認・協議手続等の各種の制約があることにより、未だ十分な成果が挙がっていない状況にある。
 今後、官民の人的交流を積極的に推進するため、各府省の民間からの人材確保についての意識改革も促しつつ、従来の諸規制や制約を見直すなど必要な措置を講ずる。

  2. 具体的措置
ア 民間企業の従業員としての地位の併有(身分併有)を可能とする方向での制度改正
 民間からの人材の確保に関する現行制度においては、民間企業を退職しないと公務員として採用できない取扱いとなっており、このことが官民交流の最大の阻害要因となっている。
 このため、国と民間企業との間の人事交流に関する法律(平成11年法律第224号。以下「官民人事交流法」という。)について、交流採用職員の身分併有を認めるための法律改正を行い、民間企業を退職しなくとも公務員として採用できるようにするとともに、交流採用職員の適正な公務遂行を確保するため、交流元企業による不当な影響力の行使の制限に必要な事項を、人事管理権者と交流元企業との間で取り決める旨を新たに規定する。あわせて、雇用保険の期間通算等の関連制度上の措置を講ずるほか、民間企業と交流採用職員の間に生じていた退職金の期間通算、社内住宅ローン等の問題についても、解消を図る。
 一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律(平成12年法律第125号。以下「任期付職員法」という。)に基づき採用される任期付職員についても、所属元企業と密接な関係にある官職に就ける場合等公務の中立性・公正性確保の観点から問題となる場合を除き、身分併有を認め、民間企業に雇用されたまま採用できるようにする。この場合においては、官民人事交流法と同様の取扱いを図る。

イ 人事院の事前承認・協議手続等の見直し
 行政需要に応じた人材を確保できるよう、人事院の事前承認・協議手続等を見直し、あらかじめ定められた明確な基準の下で人事管理権者が主体的に採用を行うことができるようにする。
 人事院は、情実採用の排除等の観点からチェックを行い、人事管理権者からの採用の決定の届出を受け、基準に合致しない場合には実際の採用までの一定期間内に取消などの措置を求めることとする。なお、一定の要件の下に届出を不要とすることについても検討する。

ウ 給与格付けの弾力化
 民間からの人材の採用に際しての給与格付けは、採用される者の民間企業における経験年数等による一律的な基準の適用を改め、新人事制度における新たな給与決定方式を踏まえ、採用前の業績等に基づき職務遂行能力を適切に判断して行う。

エ その他の推進方策
 内閣は、官民交流推進のための方針の策定、交流拡大に対するインセンティブとなるような人事・組織上の方策についての検討など、民間からの人材の確保の推進に積極的に取り組む。
 また、任期付職員法等により採用する場合、行政ニーズに応じ、広く有能な人材を求めるため、人事管理権者は公募制を積極的に活用する。

(3)公募制の積極的活用

  1. 基本的考え方
 現在、民間から人材を採用する場合には、公募制が活用されているが、公務部内の任用においては、職員の能力等を勘案してポストに適した職員を人事管理権者が選ぶという考え方が採られている。今後は、部内の任用においても公募制を活用することにより、職員が能動的に自らの能力を活かせるポストに応募できるようにするとともに、組織の活性化を図る。
 例えば、期間の限られた特定のプロジェクトなどに従事させるため特別の専門能力や一定の知識経験を有する者を選抜する場合には、公募制を活用することにより、職員の意思とも合致した最適な人事配置の促進を図る。
 また、慣習的・固定的な人事配置を見直し、多様な経歴の人材を起用することにより、縦割り意識や前例踏襲的な意識の改革の推進に資するという観点や、職員による主体的なキャリアの形成を促進することにより、エンプロイアビリティ(雇用可能性)を向上するという観点からも、公募制を積極的に活用する。

  2. 具体的措置
 民間から人材を採用する場合や府省内における弾力的な人事配置を促進する場合はもとより、府省の枠を越えて人材を起用する場合についても一般的ルールを整備すること等により、公募制を積極的に活用する。
 府省の枠を越えて公募する場合の一般的ルールについては、人事管理権者の人事・組織マネジメントに支障を来さない範囲において、職員の直接応募を可能とする方向で整備を図る。その際、応募の手続や公募府省の人事管理権者・応募者・応募者の所属府省の人事管理権者の間での調整、相談等の方法について一定のルールを定めるものとする。また、応募者の所属府省の人事管理権者は応募者の意思をできる限り尊重すること、職員は応募を理由に不利益な取扱いを受けないこと、公募により選抜された職員は原則として一定期間経過後に元の府省に戻ることを前提とするが両人事管理権者間で合意できた場合には本人の意向にも配慮しつつ転籍も可能とすることなどを基本とする。

(4)女性の採用・登用の拡大

  1. 基本的考え方
 「男女共同参画基本計画」(平成12年12月12日閣議決定)においても示されているとおり、政策・方針決定過程への男女共同参画は民主主義の要請である。 性別に基づく固定的役割分担意識等により、女性に意欲と能力があってもそれを十分に活用できていない状況を積極的に改善していくことは、新たな発想や価値観を行政に組み込み、経済社会の課題に迅速かつ柔軟に対応し、バランスのとれた質の高い行政の実現を図っていく上でも不可欠である。
 このため、各府省は女性の積極的な採用に努めるとともに、女性が進んで公務員を職業として選択し、意欲を持って働くことができるよう、能力等級制度の導入や人材育成を図る仕組みの整備、公募制の活用などにより、意欲と能力のある女性の登用を積極的に推進する。
 また、各府省においては、男女ともに仕事と家庭・地域生活を両立できるような勤務環境の改善に努める。

  2. 具体的措置
ア 採用・登用の拡大への取組
 男女共同参画社会を実現するためには、国が率先垂範して、政策・方針決定過程への女性の参画を拡大していく必要があることから、公務部門における女性の採用・登用の拡大に積極的に取り組む。このため、各府省は、「男女共同参画基本計画」及び「女性国家公務員の採用・登用等の促進について」(平成13年6月5日男女共同参画推進本部決定)を踏まえ、男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号)の趣旨にのっとった総合的かつ計画的な取組を推進する。
 具体的には、各府省は、「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」(平成13年5月人事院策定)を踏まえて策定した「女性職員の採用・登用拡大計画」における目標、目標達成に向けての具体的取組等について、自らその点検・評価に努めつつ、計画の着実な推進を図る。また、これらの計画の内容や推進状況について、男女共同参画会議においても必要な監視を行う。
 さらに、各府省は、職員の配置、職務経験の付与について、男女で偏りがないよう配慮し、女性の登用に結び付くような計画的な育成に努める。また、職場における固定的な役割分担などを取り除くための不断の努力を行うとともに、女性の能力向上のための研修等の実施や管理職員を始めとする全職員を対象とした男女共同参画の実現に向けての意識啓発に努める。

イ 勤務環境の改善
 男女ともに仕事と家庭・地域生活を両立できるように勤務環境を改善する。 このため、各府省は、両立を困難にしている原因の一つである超過勤務について、その縮減に向けた取組を推進する。特に、育児・介護を行う職員に対しては十分な配慮を行う。
 また、各府省は、育児休業、介護休暇等の両立支援のための制度について、男性の取得実績が少ないことにかんがみ、男女ともに制度を活用しやすいよう意識改革を行うなどの勤務環境の整備に努める。
 さらに、子供の看護のための休暇の創設についても検討する。


3 適正な再就職ルールの確立

 今般の改革は、能力・実績主義の徹底による年功によらない実力本位の処遇の下で、キャリアパスの多様化を図り、個々の職員の持てる能力を最大限に発揮させる人材活用を行うことを基本としている。
 我が国が高齢社会を迎えている中、政府においても、専門的ノウハウの蓄積を必要とする分野などにおいて中高齢者の人材活用を図っていくことが重要であるが、政策企画部門などにおいて人材の流動性を高め、機動的・弾力的な人材戦略を実現する等の観点からは、行政内部で適切な人事配置を図るほか、公務員を退職した者が適切なルールの下、自らの能力を社会で活かしていく道が開かれていることが必要となる。
 公務員の再就職については、いわゆる「天下り」問題として国民の強い批判があることを真摯に受け止め、再就職が、権限・予算等を背景とした押し付け的なものであったり、特殊法人等の公的部門を再就職の安易な受け皿とすることがないよう、国民の信頼を確保し得るルールを確立することとする。また、そのルールについては、実施状況を踏まえつつ適時適切に見直しを行うものとする。
 再就職ルールは、従来の事前の規制に重点を置いた仕組みから、事前・事後のチェックを通じ、総合的に適正化を図る仕組みに転換することとし、

  1. 営利企業への再就職に係る承認制度及び行為規制
  2. 特殊法人等及び公益法人への再就職に係るルール
  3. 再就職状況全般に係る公表制度

が相互補完的な役割を担うことにより公務員の再就職の適正化の取組を強化することとする。
 また、退職手当制度についても任用・給与制度の見直しや退職管理の在り方を踏まえ必要な見直しを行う。

(1)営利企業への再就職に係る承認制度及び行為規制

  1. 承認制度
 現在の人事院による再就職承認制度を改め、職員の再就職の承認は、職員の適切な服務管理と行政の公正な運営に一義的な責任を有する人事管理権者が厳格かつ明確な基準の下で行うものとする。
 承認制度の適切な運用を図るため、以下のとおり、内閣、人事管理権者、人事院がそれぞれの役割を適切に担うこととする。あわせて、職員が自らの能力を活かして再就職することを支援するため、在職中からの能力開発支援や再就職のための人材バンク等の整備など職員の再就職支援方策の充実を図る。

ア 内閣
 内閣の責任において、政府全体の行政の公正な運営等を確保するため、再就職の承認基準については政令で定めることとする。承認基準の策定に当たっては、各府省の権限・予算等を背景とした押し付け的な再就職を認めない等の観点に立ち、真に個人の能力を活用して行われる再就職を阻害することのないよう留意しつつ、不承認とすべき権限・予算関係を明確に列挙(原則として再就職が認められるべき権限関係(軽微な権限、裁量の余地の少ない権限等)についても明示)するなど、人事管理権者が行う承認審査の統一的で客観的な運用が確保されるようにする。
 内閣は、承認案件について人事管理権者から報告を受けるとともに、各府省における承認制度の運用について必要な総合調整を行う。
 内閣は、毎年1回、国会に対し、承認制度の運用状況について報告することとする。

イ 人事管理権者
 再就職の承認は、人事管理権者があらかじめ定められた各府省共通の承認基準にのっとって行う。
 人事管理権者は、当該府省における承認基準の具体的運用についての基準(運用基準)を定め、公表することとする。運用基準においては、各府省の所管する許認可等についての承認審査上の取扱い(軽微な権限、裁量の余地の少ない権限の具体的明示等)等を明らかにする。
 人事管理権者は、承認審査が承認基準にのっとり適正に行われていることについての説明責任を果たすため、毎年1回、すべての承認案件について、承認基準に合致していることを明確に示すため、再就職者及び再就職先に関する必要な情報を公表することとする。一定の職位以上の職員に係る承認については、その都度公表することとする。

ウ 人事院
 人事院は、人事行政の公正の確保及び職員の利益の保護の観点から、内閣が政令で定める承認基準に対して意見の申出を行うことができることとする。
 また、人事管理権者の定める運用基準や承認事務の実施状況について必要な改善勧告を行うことができることとする。

  2. 行為規制
 行政の公正な運営に対する国民の信頼を確保するため、営利企業に再就職した公務員について、新たに再就職後の行為規制を導入することとする。
 規制内容については、営利企業に再就職した者が、離職後一定期間、当該営利企業に関する許認可、補助金、契約等の案件に関し、離職前一定期間に在職していた府省の担当職員に職務上の行為(不作為を含む。)を依頼する行為を禁止することを基本とする。
 規制の実効性を担保するため、違反行為に対し、罰則等を含め制裁措置の導入を図る。
(2)特殊法人等への再就職に係るルール
 現在の特殊法人等(認可法人を含む。)への公務員の再就職に関しては、例えば、退職金が高すぎるのではないか、各府省OB人事の一環として取り扱われているのではないか、処遇に業績が反映されていないのではないか等の国民の厳しい批判があるところである。これら国民の厳しい批判を真摯に受け止め、次の対応を行うこととする。

  1. 内閣の役割の強化
 内閣は、下記2から5までに掲げる法人の役員の人事及び処遇の在り方について、透明で客観的なルールを定め、公表するとともに、その実施につき、各府省を適切に監督する体制を強化する。

  2. 特殊法人等
ア 役員退職金について、平成13年度中に大幅削減を決定する。
イ 役員給与について、公務員及び特殊法人等の職員並びに民間企業の役員給与の水準を勘案しつつ、適切な水準となるよう、平成13年度中に削減を決定する。
ウ 上記ア及びイの対応を行った上、役員給与・退職金の支給基準を公表する。

  3. 独立行政法人
ア 今回の特殊法人等改革で独立行政法人に移行することが決定した法人についても、平成13年度中に上記Aの対応を行う。
イ 役員給与等の支給基準を定め、外部有識者からなる評価委員会の評価を受けるという独立行政法人制度を通じて、毎事業年度終了後及び中期目標期間終了後に業務の実績について評価を行う。その評価結果については、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)の定めるところに従い、報酬(役員給与・退職金の大幅カットを含む。)や役員人事(解任を含む。)に反映させる。
ウ 高齢役員の就任規制については、現在の特殊法人等に関する規制に準じた規制を導入する。
エ 役員報酬・退職手当の支給基準については、独立行政法人通則法に従い、すべて公表する。

 上記2及び3の法人への公務員出身者の就任については、役員出向の道を開く。その実際の運用に当たっては、短期在職について厳しく対応する。なお、役員出向によらない場合と均衡を失しないよう制度を構築する。

  4. 特殊会社
ア 移行後の法人において、常勤役員について、法人の業務内容等に応じ、内部登用を含め民間人の積極的な起用に努める。
イ 特に、監査役員については、関係省庁以外の者及び外部の者の登用に努める。

  5. 民間法人化された特殊法人・認可法人
ア 公益法人に対する指導監督基準の在り方を踏まえ、役員人事、ディスクロージャー等に関する政府としての統一的な指導監督基準を策定する。
イ 特に、監査役員については、関係省庁以外の者及び外部の者の登用に努める。

  6. その他
ア 各独立行政法人等(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号)の対象法人)の役員について、当該法人は、退職公務員及び独立行政法人等の退職者の状況を公表するとともに、その子会社及び一定規模以上の委託先の役員について、退職公務員及び当該独立行政法人等の退職者の状況を把握し、公表するよう努める。内閣は、公表されたものをとりまとめる。
イ 上記AからDまでに掲げる法人のうち、上記アに掲げる法人以外の法人については、当該法人が、その法人の役員に就いている退職公務員の状況を公表するとともに、その子会社及び一定規模以上の委託先の役員に就いている退職公務員及びその法人の退職者の状況を把握し、公表するよう努める。内閣は、公表されたものをとりまとめる。

(3)公益法人への再就職に係るルール
 公益法人の民間法人としての性格を踏まえつつ、以下の方針に従い見直しを行う。

  1. 役員報酬に対する国の助成を廃止する。
  2. 退職公務員の役員就任状況について適切な情報開示に努める。
  3. 補助金等を受ける等の公益法人については、役員の報酬規程・退職金規程を定め、公開する。
  4. 国と特に密接な関係を持つ公益法人に対し、役員の報酬・退職金につき、現在の指導監督基準に加え、新たに公務員の水準と比べても不当に高額に過ぎないよう指導するとともに、公的部門における高齢役員に関する対応状況を踏まえ、役員の退職年齢について適切な内部規程を整備するよう要請する。

(4)再就職状況全般に係る公表制度
 公務員の再就職の状況についての透明性を確保するため、再就職状況全般に関する公表制度を整備する。
 各府省は、内閣の定めるところにより、毎年1回、本府省の課長・企画官相当職以上(地方支分部局における本府省の課長・企画官相当職以上を含む。)の離職者の離職後2年以内の再就職先について、営利企業・特殊法人等・公益法人などすべての再就職先を対象に、再就職者氏名、離職時官職、再就職先の名称及び業務内容、再就職先での役職、承認の有無等について公表することとする。
 内閣は、各府省の公表事項をとりまとめ、毎年1回公表することとする。

(5)退職手当制度の見直し
 退職手当に職員の在職中の貢献度をより的確に反映するとともに、人材の流動化を阻害することのないよう、退職手当制度について、長期勤続者に過度に有利となっている現状を是正することとし、新たな任用・給与制度の具体的内容を踏まえ、支給率カーブ、算定方式の在り方等の見直しを行う。また、民間企業の退職金の支給実態を踏まえ、全体的な支給水準の見直しを行う。


4 組織のパフォーマンスの向上

 政府全体としての組織のパフォーマンスの最大化を図り、時代の要請に応じた総合的・戦略的な政策立案、国民のニーズにこたえた効率的な業務執行を実現するためには、企画立案と執行それぞれの特性を十分踏まえつつ、その時々の行政課題に応じた最適な組織を編成することができるようにする一方で、国政全体を見渡した総合的な政策判断と機動的な意思決定を行い得る行政システムを構築することが必要である。
 このため、行政運営の責任を有する各府省がその判断と責任において機動的・弾力的に組織・定員管理を行い得るようにするとともに、内閣なかんずく内閣総理大臣の政策立案を補佐する機能の充実を図る。
 また、組織のパフォーマンスを向上させるためには各組織内における勤務環境を良好なものとすることが不可欠であるため、超過勤務の縮減等勤務環境の改善に向けた取組を積極的に推進する。
 なお、各府省は、主体的な組織・定員管理を行うことなどにより企画立案と執行それぞれの機能強化を図ることを通じて、引き続き自主的に企画立案と執行の分離を進める。

(1)機動的・弾力的な組織・定員管理

  1. 基本的考え方
 国の公務員総数が全体として削減され、行政組織の減量化が求められている中で、限りある組織・人的資源を最大限に活用し、時々刻々変化する内外環境に即応して、政府のパフォーマンスの最大化を図るためには、その時々で最適と考えられる組織編成・人員配置を機動的・弾力的に行うことが必要である。
 このため、行政組織の減量化等を実現しつつ、各府省が可能な限り自らの判断と責任において組織編成、定員移動を柔軟に行うことができる仕組みを構築する。また、政府全体として最適な人員配置が実現できるよう、機能強化が必要であると考えられる部門に府省の枠を越えて人員の再配置を行うことができる仕組みを創設する。

  2. 具体的措置
ア 自主的な組織・定員管理の実現等
 機動的・弾力的な組織・定員管理の実現に資するため定められた「組織・定員管理に係る基準」により、組織管理においては、本省庁内部部局の課・室等の改編について、各府省ごとの課・室等の総数等の範囲内であれば、局・部の改編に伴うもの及び会計間の改編を除き、各府省の判断と責任において行うことができることとしたところである。
 また、定員管理においては、本省庁を通ずる内部部局の範囲内での定員移動について、減量・効率化計画その他の既定の方針等により合理化を要するとされる部門からの定員移動及び会計間の定員移動を除き、各府省の判断と責任において行うことができることとしたところである。
 さらに、年度途中の緊急ニーズについて、各府省は組織の改編や定員の配置を機動的に設計するとともに、総務省行政管理局は迅速に対応することとしたところである。
 各府省はこれらの仕組みを必要に応じて適切に活用し、組織のパフォーマンスの向上に努める。

 また、上記以外の場合を含め、「組織・定員管理に係る基準」に基づき組織・定員管理を行うことにより、各府省の審査関係事務負担の軽減・合理化を図り、機動的・弾力的な組織・定員管理の実現に資するものとする。

イ インナーソーシング制度の構築
 公務員総数が全体として削減されていく中で、政府全体の人員配置の最適化を図る観点から、内閣の重要課題として特定分野の機能強化が必要と判断される場合には、当該分野を担当する府省内での人員の再配置はもとより、府省の枠を越えて他府省からもダイナミックに人員の再配置を行い得る仕組み(インナーソーシング制度)を構築する。このため、人員の再配置を円滑に進める方策について引き続き検討する。

(2)国家戦略スタッフの創設

  1. 基本的考え方
 国際化の進展、社会経済の複雑化の中で、国政全体を見渡した総合的・戦略的な政策判断と機動的な意思決定の必要性が増大している。
 このため、中央省庁等改革の趣旨を踏まえ、国政運営における内閣なかんずく内閣総理大臣の指導性を強化する観点から、その時々の内閣が実現を目指す国家的重要政策に応じて、内閣総理大臣が自らの判断に基づき、行政内外から内閣の重要政策の企画立案・総合調整等に従事する職員を国家戦略スタッフとして機動的かつ柔軟に任用、配置できる仕組みを導入する。

  2. 具体的措置
ア 国家戦略スタッフ
 国家戦略スタッフは、既存の内閣官房の組織・業務を前提として、その時々の内閣総理大臣自らの判断に基づき配置し、その採用については、できる限り公募制を活用し、広く行政内外から募集するものとする。公募制による場合には、その審査は、内閣総理大臣を中心として行う。
 国家戦略スタッフについては、出身府省等によりポストが固定化することがないようにする。また、出身府省等にとらわれず内閣官房が主体的に任期の決定や配置などの人事管理を行う。
 国家戦略スタッフを機動的・弾力的に任用・配置するため、内閣官房の組織・定員について、更に柔軟度を高めることとし、国家戦略スタッフについては、求められる高い能力や職責に応じた処遇を確保する。
 また、内閣官房の職員が必要に応じて国家戦略スタッフを補佐する。

イ 大臣スタッフ
 各府省の大臣についても、その企画立案を直接補佐し、その政策の円滑な実施を図るため、官房審議官の活用、任期付職員の採用等により大臣スタッフの充実を図る。

(3)超過勤務の縮減等

  1. 基本的考え方
 組織のパフォーマンスの向上を図るためには、組織を支える個々の職員が心身ともに充実した状態で職務に遂行できる環境づくりを行うことが重要である。
 現在の行政部内においては、恒常的な長時間に及ぶ超過勤務により、職員の活力が低下し、政策立案や業務執行などに支障を来すとともに、職員の心身の健康や生活にも深刻な影響を及ぼす状況があるとの認識に立ち、超過勤務の縮減を今回の改革における最重要課題の一つとして位置付け、政府を挙げてこの問題に積極的かつ継続的に取り組むこととする。
 このほか、公務の効率的な遂行を図るなどの観点から、必要な経費が適切に措置されているかを政府部内において点検し、勤務環境の改善に積極的に取り組む。

  2. 具体的措置
ア 業務の徹底した見直し等
 超過勤務の縮減を図るためには、恒常的な長時間の超過勤務の要因と思われる国会関係、法令審査、予算折衝、各省協議などの業務の徹底した見直し等を行う必要がある。このため、各府省において引き続き徹底した見直し等を行うとともに、政府を挙げた継続的な取組が不可欠であることから、政府部内における恒常的な取組体制を整備する。
 特に、国会答弁作成業務については、実態調査により休日出勤・深夜に及ぶ勤務の要因であることが明らかになっており、政府部内での合理化に向けた一層の取組を進めるとともに、国会に対して質問通告の早期化等の協力を要請する。

イ 適切な勤務時間管理の徹底等
 超過勤務の縮減を図るためには、部下の勤務時間を管理すべき管理職員が恒常的な長時間の超過勤務の問題を自らの課題としてその解決に取り組むことが重要である。このため、定期的に管理職員に対して意識調査を実施することなどを通じて積極的に意識啓発に努めるとともに、各府省の責任の下、管理職員に対して勤務時間管理のより一層の徹底や個々の職員の勤務実態に即した弾力的な勤務時間の設定、年次休暇・代休の取得しやすい環境作りを促すこととし、その上で、管理職員に対する部下の勤務時間管理に係る実態調査を行う。
 また、管理職員の評価に当たっては、業務の成果との関係も考慮しつつ、超過勤務縮減に対する具体的な取組状況等を勘案することとする。




III 改革に向けた今後の取組

1 国家公務員制度改革の今後の検討方針等

(1)法制化スケジュール等
 国家公務員制度の改革に係る法制化に当たっては、制度全体の基礎となる国家公務員法の改正案について、内閣官房行政改革推進事務局が中心となって検討を進め、平成15年中を目標に国会に提出することとし、関係法律案の立案及び政令、各府省令等の下位法令の整備を平成17年度末までに計画的に行う。その際、各制度を所管する府省等との更なる連携の下、人事院のより一層の協力を求めつつ、制度の詳細設計に向けて職員団体を始めとする関係者とも十分意見交換を行っていくこととする。
 新たな公務員制度については、円滑な移行のための必要な準備期間を確保の上、全体として平成18年度を目途に新たな制度に移行することを目指し、所要の準備を計画的に進めることとする。
 また、早期に具体化できるものについては、逐次その実現を図ることとする。

(2)一般の行政職員以外の職員に関する検討
 今回の大綱においては、一般の行政職員を中心とした制度改革の方向を示したが、国家公務員の職種は極めて多種多様であり、今後、政府において、特例法により制度が規定されている職種を含めこれまで検討を行っていない一般の行政職員以外の職種に係る制度の検討を急ぐとともに、特別職に関する制度についても、それぞれの職務の特殊性等を十分勘案しつつ、一般の行政職員に係る制度の改革案に準じて必要な検討を進めることとする。


2 地方公務員制度の改革及びそのスケジュール

 地方分権の進展等に対応し、地方公共団体が住民に対し質の高い行政サービスを効率的・安定的に提供していくためには、地方公務員が、身分保障に安住せず、その持てる能力を最大限発揮し、地域の諸課題に取り組んでいくことができるようにすることが必要である。このため、地方公務員制度においても、能力本位で適材適所の任用や能力・職責・業績が適切に反映される給与処遇を実現するとともに、地方分権に対応して政策形成能力の充実等を図るための計画的な人材育成、民間からの人材を始め多様な人材の確保等に取り組むなど、地方自治の本旨に基づき、地方公共団体の実情を十分勘案しながら、国家公務員制度の改革に準じ、所要の改革を行う。
 今後の地方公務員制度の改革スケジュールについては、国家公務員法改正と同時期に地方公務員法の所要の改正を行うこととするなど、関係法令の整備を進め、国家公務員制度の改革スケジュールに準じて速やかに改革の取組を進めることとする。



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