● 教育公務員特例法の一部を改正する法律等の公布について(10年経験者研修関係) 平成14年8月8日 14文科初575                              14文科初第575号                              平成14年8月8日 各都道府県教育委員会 各指定都市教育委員会 各中核市教育委員会     殿 附属学校を置く各国立大学長 国立久里浜養護学校長                          文部科学事務次官                                小 野  元 之    教育公務員特例法の一部を改正する法律等の公布について(通知)  このたび,別添(省略)のとおり,「教育公務員特例法の一部を改正する法律」(以下「改正法」という。)が,平成14年6月12日法律第63号をもって公布され,平成15年4月1日から施行されることとなりました。  今回の改正の趣旨,要点及び留意事項は,下記のとおりですので,各位におかれては,事務処理上遺漏のないように願います。  各都道府県教育委員会におかれては,域内の関係者に対して,今回の改正の趣旨について周知を図るとともに,必要な指導,助言又は援助をお願いします。                    記 第1 改正法の趣旨  平成14年度から全国の小・中学校で実施されている新しい学習指導要領等の下,基礎・基本を確実に身に付けさせ,自ら学び考える力などを育成し,確かな学力の向上を図るとともに,心の教育の充実を図るためには,実際に指導に当たる教諭等にこれまで以上の指導力が必要とされていることから,教育公務員特例法(以下「法」という。)を改正して,教諭等としての在職期間が10年に達した者に対する個々の能力,適性等に応じた研修を制度化するものであること。 第2 改正法の概要 1 10年経験者研修関係 (1)小学校等の教諭等の任命権者は,小学校等の教諭等に対して,その在職期間が10年(特別の事情がある場合には,10年を標準として任命権者が定める年数)に達した後相当の期間内に,個々の能力,適性等に応じて必要な事項に関する研修(以下「10年経験者研修」という。)を実施しなければならないこととすること。(法第20条の3第1項関係) (2)任命権者は,10年経験者研修を実施するに当たり,10年経験者研修を受ける者の能力,適性等について評価を行い,その結果に基づき,当該者ごとに10年経験者研修に関する計画書を作成しなければならないこととすること。(法第20条の3第2項関係) (3)任命権者が定める10年経験者研修に関する計画は,教員の経験に応じて実施する体系的な研修の一環をなすものとして樹立されなければならないこととすること。(法第20条の4関係) 2 施行期日  改正法は,平成15年4月1日から施行すること。(改正法附則第1条関係) 3 その他 (1)市町村の設置する幼稚園の教諭等に対する10年経験者研修は,当分の間,当該市町村を包括する都道府県の教育委員会が実施しなければならないこと等とすること。(改正法附則第2条関係) (2)指定都市及び中核市の県費負担教職員に対する10年経験者研修は当該指定都市又は当該中核市の教育委員会が,市町村の設置する中等教育学校の県費負担教職員に対する10年経験者研修は当該市町村の教育委員会がそれぞれ行うこととすること。(改正法附則第3条関係) (3)中核市の設置する盲学校,聾学校及び養護学校の幼稚部の教諭等に対する10年経験者研修は,当分の間,当該中核市を包括する都道府県の教育委員会が実施しなければならないこととすること。(改正法附則第3条関係) 第3 留意事項 1 対象となる教諭等 (1)改正法第20条の3第1項の「在職期間」とは,国立,公立又は私立の小学校等の教諭等として在職した期間(臨時的に任用された期間を除く。)であること。 (2)在職期間が10年に達した後相当の期間内に実施することとするが,特別の事情がある場合には,10年を標準として,任命権者が定めた年数に達した後相当の期間内に実施すること。  この相当の期間内とは,10年に達した日から1年以内に10年経験者研修を開始することを意味すること。  また,特別の事情がある場合としては,  @ 在職年数が10年に達した教諭等の状況や,研修の体系的な整備に関する考え方との調整のため,10年とは異なる年数を定めることが適切な場合  A 学校種ごとに,在職年数が10年に達した教諭等の状況の違い等があるため,学校種ごとに,異なる年数を定めること(例えば,小学校は12年,中学校は9年,盲・聾・養護学校は11年と定めること)が適切な場合  B 10年経験者研修の全部又は一部を教科別に実施していること等から,本来研修を実施すべき時期に対象となる教諭等の数が少なく,複数年度分を併せて実施することが適切な場合  C 対象となる教諭等の数が多いため,本来研修を実施すべき時期に一斉に実施することが困難であり,一部の教諭等について実施時期を早める又は遅らせることが適切な場合  D 対象となる教諭等が配置されている学校の状況等により,本来研修を実施すべき時期に実施することが困難であるため,実施時期を早める又は遅らせることが適切な場合 等が考えられ,これらの場合には,任命権者は,各々の事情に応じて,10年と数年程度,異なる年数を定めることが可能であること。 2 10年経験者研修の具体的な内容及び方法等 (1)各任命権者においては,下記(2)及び(3)を参考にして,10年経験者研修が,教員一人一人の専門性の向上や得意分野を伸ばすなど,教諭等のニーズに応じたものとなるよう,各々の実情に応じて,具体的な研修の内容及び方法,実施期間,場所等に関し,様々な創意工夫を凝らしていただきたいこと。 (2)文部科学省としては,10年経験者研修の概要としては下記のものを想定していること。  @ 研修の実施に当たり,事前に,個々の教諭等の能力,適性等を評価し,教諭等ごとに研修計画書を作成すること。  A 夏季・冬季の長期休業期間等に,20日間程度,教育センター等において研修を実施すること。  B 課業期間に,20日間程度,長期休業期間中の研修において修得した知識や経験を基に,主として校内において研修を実施すること。  C 研修終了時に,個々の教員の能力,通性等を再び評価し,その結果を,その後の研修等に活用すること。  なお,  ア A及びBにおいて,20日間程度としているのは参考にすぎず,各任命権者において,各々の実情や研修の必要性に応じて,20日を下回る日数や上回る日数を定めることや,個々の教諭等ごとに異なる日数を定めることも可能であること。また,幼稚園については,A及びBともに,10日程度を想定していること。  イ Aの教育センター等における研修は,既存の研修を活用することや,一部を課業期間中に実施することも考えられること。また,研修を実施する場所についても,教育センター以外も考えられること。  ウ 任命権者において,特に,教育センターや学校内においては実施できないような専門的な内容の研修を受講させることが適切であると判断した場合等には,大学,大学院等の授業参加を研修と位置付けることや,民間組織等が開設する研修コース等を活用することも考えられること。 (3)文部科学省として,10年経験者研修の具体的な内容及び方法については下記のものを想定していること。  @ 長期休業期間等における研修  ア 教科指導,生徒指導等に関する研修  指導力に優れた教諭等や指導主事を講師として,少人数形式による模擬授業や教材研究,ケーススタディー等を通じた研修を実施  なお,この中には,道徳,特別活動,総合的な学習の時間等に関する研修も含まれること。  イ 通性に応じた得意分野づくり等の選択研修  社会体験研修,情報教育や環境教育,カウンセリング,学習障害,特殊教育等について専門的な研修を実施  A 課業期間における研修  基本的に,学校内において,校長の下,実際の授業実践を通じた授業研究や教材研究,特定課題研究等を通じた研修を実施  なお,@及びA以外にも,学校評価,情報提供や学校運営等の喫緊の課題に関する研修も想定していること。 (4)(2)及び(3)については,別紙1及び2を参照されたいこと。なお,文部科学省としては,10年経験者研修の実施期間としては,1年以内を想定していること。 3 評価及び研修計画書の作成等 (1)文部科学省としては,評価及び研修計画書の作成の概要として,下記のものを想定していること。各任命権者においては,これを参考にして,各々の実情に応じて,様々な創意工夫を凝らし,有意義な10年経験者研修を実施する上で必要かつ適切な評価及び研修計画書の作成をしていただきたいこと。  @ 各任命権者において,教育センター等において実施する10年経験者研修の内容等を踏まえつつ,10年経験者研修を受ける教諭等の能力,通性等について評価を行うための評価基準を作成する。  A 校長は,@の評価基準に基づいて,教頭や教務主任等を活用すること等により,評価案及び研修計画書案の作成を行い,教育委員会に提出する。  この際,指導主事等も,校長による評価案及び研修計画書案の作成に協力することが望ましい。  B 教育委員会は,校長より提出された評価案及び研修計画書案について,必要な調整を行い,決定する。  C 校長が,対象となる教諭等に対し,研修計画書に基づき,10年経験者研修を受けるよう職務上の命令を発する。  なお,県費負担教職員については,評価及び研修計画書の作成は,都道府県教育委員会ではなく,市町村教育委員会が行うものであること(法第20条の3第2項及び法第20条の2第2項参照)。また,評価基準については,文部科学省として想定している例を追って送付することとしており,各任命権者においては,これを参考としつつ各々の事情に応じて様々な創意工夫を凝らしていただきたいこと。 (2)評価や研修計画書の作成に当たり,教諭等自身に自己評価を行わせ,それを聴取することや,教諭等の意見や希望を参考として聴取することは,教諭等自身に自らの課題や適性,得意分野等を再確認させ,研修意欲を喚起するとともに,研修内容をより適切なものとするうえで,望ましいと考えていること。  ただし,評価や研修計画の作成は,任命権者の権限と責任において行うべきものであり,本人の自己評価や意見等をそのまま評価や研修計画に反映させることは不適切であること。 (3)決定した評価や研修計画については,教諭等自身が,自らの課題を明確に認識して研修に取り組むことが望ましいことから,必要に応じて教諭等に示して説明することも考えられること。 (4)10年経験者研修終了後も,引き続き10年経験者研修を受けた教諭等の資質の向上を図っていくため,研修終了時に,再度,評価を行い,その結果を,当該教諭等に対する今後の指導や研修に活用していくことが望ましいこと。また,この評価の結果についても,必要に応じて教諭等に示して説明することも考えられること。  なお,10年経験者研修終了時における評価は,上記の趣旨から行われるものであり,その評価結果が直ちに勤務評定につながるものではないこと。 4 その他 (1)10年経験者研修を実施するに当たって,各任命権者及び校長は,授業等の校務に支障がないよう,また,研修の時間を十分に取ることができるよう,人事異動や各学校における校務分掌等において十分に配慮を行うこと。 (2)各任命権者においては,10年経験者研修が,十分に効果をあげ得るよう,10年経験者研修に関する計画の策定や,その評価に当たっては,校長会等の関係者等と連携し,教員のニーズや学校現場の意見を反映させることが望ましいこと。 (3)10年経験者研修終了時における当該研修を受けた教諭等についての成果や当該教諭等を対象としたアンケート調査等を活用すること等によって,10年経験者研修の内容等を改善していくことが望ましいこと。 (4)各任命権者においては,10年経験者研修の実施に当たって,現在実施している研修の精選や見直しを積極的に行っていただきたいこと。 (5)これからの学校教育においては,様々な得意分野や専門分野を持った教職員が連携協力して教育効果等を高めることが必要とされていることから,養護教諭,学校事務職員,学校栄養職員等についても,これらの専門性を高め,学校運営への積極的な参加を促す観点から,研修内容の見直しや充実に努めること。 (6)職務上の命令による研修だけでなく,教員が自ら行う自主研修も大事であることから,各任命権者においては,自主研修について,場の提供や情報の提供等,奨励や支援に努めること。 (7)私立学校において「10年経験者研修」を行う際に,個々の私立学校では対応が難しいものについて,例えば,教育センター等における10年経験者研修に私立学校の教諭等の参加を認めるなど,各任命権者においては,適宜その実施に協力することについて検討していただきたいこと。 (8)法第20条の3第1項に規定する在職期間の計算方法,10年経験者研修を実施する期間,10年経験者研修の対象から除く者については,追って政令で定めることとしていること。