■ 日韓併合100年首相談話 2010年8月10日 内閣総理大臣菅直人

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    日韓併合100年首相談話

    2010年8月10日 内閣総理大臣 菅直人


 本年は日韓関係にとって大きな節目の年だ。ちょうど100年前の8月、日韓併合条約が締結され、以後36年に及ぶ植民地支配が始まった。三・一独立運動などの激しい抵抗にも示されたとおり、政治的・軍事的背景の下、当時の韓国の人々は、その意に反して行われた植民地支配によって、国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷つけられた。

 私は歴史に対して誠実に向き合いたいと思う。歴史の事実を直視する勇気とそれを受け止める謙虚さを持ち、自らの過ちを省みることに率直でありたいと思う。痛みを与えた側は忘れやすく、与えられた側はそれを容易に忘れることは出来ないものだ。この植民地支配がもたらした多大の損害と苦痛に対し、ここに改めて痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明する。

 このような認識の下、これからの100年を見据え、未来志向の日韓関係を構築していく。また、これまで行ってきたいわゆる在サハリン韓国人支援、朝鮮半島出身者の遺骨返還支援といった人道的な協力を今後とも誠実に実施していく。さらに日本が統治していた期間に朝鮮総督府を経由してもたらされ、日本政府が保管している朝鮮王室儀軌などの朝鮮半島由来の貴重な図書について、韓国の人々の期待に応えて近くこれらをお渡ししたいと思う。

 日本と韓国は2000年来の活発な文化の交流や人の往来を通じ、世界に誇る素晴らしい文化と伝統を深く共有している。さらに、今日の両国の交流は極めて重層的かつ広範多岐にわたり、両国の国民が互いに抱く親近感と友情はかつてないほど強くなっている。また、両国の経済関係や人的交流の規模は国交正常化以来飛躍的に拡大し、互いに切磋琢磨(せっさたくま)しながら、その結び付きは極めて強固なものとなっている。

 日韓両国は今この21世紀において、民主主義や自由、市場経済といった価値を共有する最も重要で緊密な隣国同士となっている。それは、2国間関係にとどまらず、将来の東アジア共同体の構築をも念頭に置いたこの地域の平和と安定、世界経済の成長と発展、そして核軍縮や気候変動、貧困や平和構築といった地球規模の課題まで、幅広く地域と世界の平和と繁栄のために協力してリーダーシップを発揮するパートナーの関係だ。

 私はこの大きな歴史の節目に、日韓両国のきずながより深く、より固いものとなることを強く希求するとともに、両国間の未来をひらくために不断の努力を惜しまない決意を表明する。


(日経新聞 2010年8月10日)




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