◆199112KHK113A2L0044GJ
TITLE:  体罰関係文書の情報公開
AUTHOR: 馬場 健一
SOURCE: 大阪高法研ニュース 第113号(1991年12月)
WORDS:  全40字×44行

 

体罰関係文書の情報公開

 

北九州大学法学部 ・ 馬 場 健 一 

 

  今年こちらに赴任するまでは大阪におりまして、そのご縁でなぜか(?)現在も大阪高法研の会員です。この秋に北九州市の情報公開条例で体罰事故関係の書類の公開を市教委に請求したところ、問題のある実態が明らかになり、地元を中心に複数紙にかなり大きく報道されました。体罰実態の把握と、一市民としてそうした情報にどれほどアクセスできるのか(従ってそうしたかたちで体罰を監視できるのか)という軽い関心からはじめたものでしたが、意外な展開に驚いています。資料収集から日も浅く、問題の本格的な分析はこれからですが、暫定的にコメントさせていただきます。

 新聞記事にあるとおり、入手したのは「事故報告書」(89・90年度と今年度の公開請求時点までに存在する分)と毎年文部省に提出する「懲戒処分等一覧」(89・90年度分)です。両者をつきあわせれば、どんな体罰事例が報告されており、それにいかなる処分がなされているかがわかると考えたからです。(今年度にも一件「報告書」がありましたが、これに対して処分がされていないことは口頭で回答を得ました。)公開はどちらもプライバシー保護を理由に部分公開でした。(非公開部分の広範さも問題だが略します。)

  入手できた情報をもとに明らかになった問題点をまとめると次の三点になります。(新聞記事とは数字や説明に多少食い違いがありますがこれが最も正確なものです。)@「報告書」が出ながら教委内部の連絡漏れで処分の検討さえされていない事例があった(5件)。

A逆に処分の対象になった体罰事例として「一覧」には記載されていながら報告書が出ていないものがあった(6件)。B全体として処分が他の地区の教委と比べても著しく軽い。

以上です。各々につき簡単に説明します。@はマスコミの関心が集中したところです。私の得た情報では、「報告書」が出ているのは15件(14名)、うち「一覧」に載っているのが5件(4名)(停職1、減給2、訓告1)だけ、残り10件は訓告等にさえならなかったということだけだったのですが、この10件の内5件は連絡漏れ、5件は「校長注意」(校長が叱ること。訓告や厳重注意以下の扱い。)という措置だということがマスコミの調べで明らかになりました。連絡漏れの5件をめぐっては教育長が記者会見をして弁明をする事態にまでなりました。Aはどの新聞記事でも触れられなかったことですが、こうした事例が6件(4名)あります。うち3件(2名)は「報告書」の出ている事例で処分された加害教員が、その事件の前後に行っているいわば「余罪」で、これを含めた上で処分がされています。残り3件(2名)は関連する「報告書」が全くないのに処分(訓告と厳重注意)だけはされているという事例です。最後にBの処分の軽さについてです。以上の説明から体罰事件総数21件、加害教員16名となりますが、処分されたのは6名だけ(停職1、減給2、訓告2、厳重注意1)で、残り10名は上記のような事情で結局「校長注意」か不処分でした(報道後も変化なし)。この10名のうち9名は鼓膜を破るなど怪我をさせており、残り1名は眼鏡を壊しています。これだけひどいことをしながら訓告にさえならないのが常態化している例を私は知りません。これからさきに調査を続け、また他地域の実状等も詳しく知りたいと思っています。皆さんの御協力をお願いします。



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