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TITLE:  北欧諸国における子どもの権利と教育
AUTHOR: 北川 邦一
SOURCE: 大阪高法研ニュース 第160号(1995年12月)
WORDS:  全40字×112行

 

北欧諸国における子どもの権利と教育

 

(大手前女子短期大学)北 川 邦 一 

 

  子どもの権利や教育に関しては、もしかすれば「大国」よりもむしろ「小国」の方が積極的な施策が実施されているのではないかと考え、この夏から北欧4ヶ国政府諸機関に手紙を出し資料を送ってもらった。入手資料は言語力の関係で英文に限られているが、今回はとりあえずその一部を紹介する。

 

     T フィンランドにおける子どもの権利

(1)子どもの権利実現に対する政府の積極的姿勢

  フィンランドは、91年6月30日、子どもの権利条約を批准したが、同国政府は、子どもの権利条約を冊子にして学校等に配布する、子どもと青少年に条約を知らせるためのテレビ番組シリーズをつくる、子ども及び女性の権利の促進のためのセミナーを開催する等の施策を実施した。94年4月20日、子どもの権利の実施に関する政府報告書を発表する際の声明では、同政府は国連子どもの権利委員会への報告書を「子どもと若者の権利に関する事項を行政各部門におけるアジェンダ(実施日程事項)として位置づける優れた道具として活用して子どもの権利実施の促進に努めてゆく」と強調し、この報告書を自国の全図書館、学校及び子ども関係機関の職員に配布しただけでなく、『フィンランドにおける子どもの権利』と題した英訳本(A5判193頁)を広く諸外国にも配布した。更に、同国では93年末、政府が憲法改正案を提出し憲法改正が議会で課題とされているが、その改正案には@子どもの権利の特別の保護のための条項A不平等に扱うことを受容できる理由がない限り、基本的権利及び人権において子どもを大人と区別して処遇することを禁止する条項B子どもの福祉と保護のために財団を設立する条項が含められている。

 

(2) 子どもの意見表明権・自己決定権の尊重

  フィンランドでは、@90年の「子ども福祉法」の改革によって、子どもが自分に関するケア(福祉措置)を受ける決定又は施設入所決定に対して代替意見を述べる権利が一五歳から12歳に引き下げられた。子どもが異議を有する時は決定は地方裁判所に提出され、子どもはそれに対して独立で異議申し立てをする権利を有する。A91年に新しい精神健康法が実施され、12歳以上の子どもが精神医学的保護を拒否する時は、意に反する治療についての決定は地方裁判所に提出され、子どもがそれに異議申し立てができるよう改善された。B93年3月1日実施の「患者の地位と権利に関する法律」の規定によって、子どもは充分成熟していればその医療における問題の決定をする権利を有し、保護者が自分のカルテを見ることに同意し又は同意しない決定をする権利を有する。それをできる子どもの最小年齢を法律で定めていないのは医療職員が所与の状況下で子どもの成熟を判断するためであるとされている。

 

(3) フィンランドにおける子どもの表現、集会、結社の自由

  フィンランドでは、子どもの市民的自由について、@定期的出版物の編集長は18歳以上でなければならない(出版の自由法第12条)A法的有効に公的集会を組織する自然人は、18歳に達していなければならない(公の集会法第2条)B法的に登録された結社の執行部の長は18歳以上、他の理事は15歳以上でなければならない(結社法第35条)、等の制限がある。しかし、これらの制限は、公の秩序や他の人の人権を守るためのものとして上記のとおり場合を特定して法律で定められている。又、子どもが出版すること一般は自由であり、子どもが集会に参加する権利自体には年齢制限はなく、結社の成員であることにも年齢の制限はなく、子どもが思想的目的で結社の成員になる権利も認められている。

 

U ノルウェーの高校生の学校管理参加と生徒会

(1) ノルウェーの高等学校生徒の権利

  (同国発行英文「高等学校教育に関する法律」、1974年制定.1993年改正、抄訳)

第15条 学習環境及び生徒の権利と義務

生徒は、カリキュラムに定められた教育を受ける権利を有する。又、生徒は教育計画 Educational programme の目標を達成するために積極的に教育計画に参加する義務を負う。

 県における生徒代表は、理事会の会議で、職員Employees が会議に出席し発言する権利と同じ、出席し発言する権利を有する。

第27条 学校委員会

 各学校には、職員及び県の代表及び2名の生徒代表による学校委員会school committeeを置かなければならない。

  委員会はその学校に関するあらゆる事項について意見を表明する権利を有する。

  県は、委員会を学校理事会board of the schoolに任命することができる。

 県が学校委員会の他に学校理事会を任命する場合は、地方自治法Local Government Actの第11条により、生徒は理事会にその構成員として少なくとも2名の代表を有しなければならない。

第31条 生徒評議会及び生徒総会 Pupils' council and general meeting

  各学校は、少なくとも生徒20人に1人以上の構成員による生徒評議会を置かなければならない。生徒評議会は、その議長及び副議長を選ぶ。

  生徒評議会又は5分の1の生徒の要求により全生徒の生徒総会を学校で行うことができる。

  生徒評議会の選挙は、投票により行われる。

  生徒評議会は、生徒の学習条件及び福祉に関する事項を扱う。

 

(2) ノルウェーの高校生評議会(生徒会)

(同国国立教育資料センター1994年発行英文資料 "The guide" 要点抄訳)

 [学級評議会]学級評議会class council はそのクラスの全生徒から成り、例えば生徒評議会student councilに生徒の意見が求められて報告が提出される前に生徒が諸事項mattersを討論することができる会議である。学級評議会は、学習環境や学級などその学級だけの諸事項も扱うことができる。…議長は通常は学級代表class representativeが努める。

 [学級教員評議会]council of class teachers (略)

 [学級全体会議]class general meeting

  学級全体会議あるいは学級時間class periodsは、多くの学校で導入されている。

  生徒、教員、及び管理者administratorsが会する会議である。

  学級時間は学習計画作成や学習方法討論にも充てられる。学校によっては、自由時間に学級全体会議を予定として組み込んでいる。

 [生徒評議会]student council 生徒評議会は、学校評価あるいは学習及び教育行政

に関する他の問題を討論することができる。生徒評議会は、生徒が学級代表を通じてあるいは直接に生徒評議会の執行部に諸事項を具申するならば最も良く機能する。

 [生徒評議会の構成員としての学級代表]生徒評議会の会合の前に、生徒評議会で取り上げられた事項を、例えば学級全員会議や自由時間Free periodsに学級で討論しておくことは重要である。

  生徒評議会が“The Guide”に沿って機能し得る次のような例がある。

 ・学年の始めに各学級は生徒評議会が勧告した線に沿って様々な教員の教科書booklet の使い方を討論することができる。学校は教科書の使い方に関する全計画をもっていることがある。そのような場合には、生徒はその計画を討論することができる。そのような計画がないときには、生徒評議会は計画が描かれるように提案しその仕事に参加することができるであろう。……

 ・最初の会合で生徒評議会は、“The Guide”による評議会自体のための計画を作成すべきである。……

[生徒評議会執行部の構成員とその義務]

  全生徒は生徒評議会執行部の選挙に立候補することができる。

  生徒評議会執行部は、生徒評議会の効果的な活動及び日々生徒評議会の前に置かれる問題を処理することに責任を負う。

 生徒評議会はしばしば1週間に1回、定められた曜日に開催されることが利益になる。(生徒評議会執行部には、会長、副会長、書記、会計、その他の役員が置かれる。)

[総会]General meetings 定期的に開催されるべきである。

[事務所と当番名簿]Office and duty roster 生徒評議会は生徒が評議会委員と会えるように事務所をもち、事務所(開設)時間と当番を決めるべきである。

 


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