◆200606KHK226A2L0051A
TITLE:  教育基本法の改悪に反対する声明
AUTHOR: 全国教育法研究会事務局
SOURCE: 全国教育法研究会会報 第69号(2006年6月)
WORDS:  全40字×51行


教育基本法の改悪に反対する声明


2006年5月31日
全国教育法研究会事務局



  教育基本法が、いま危機に瀕している。教育基本法は、戦前・戦中の国家主義的・軍国主義的な教育に対する反省を踏まえ、1947年に成立した。それは「教育の憲法」と呼ばれ、平和主義・民主主義を謳った日本国憲法とともに、戦後の民主主義教育と戦後の社会を支えてきた。

  その教育基本法の「改正」案が、憲法・教育法関係者の反対を無視し、また国民的議論も十分になされないまま、国会に提出されている。

  この法案には、以下のような重大な問題点が含まれている。

  第一に、現行10条1項では、教育は「国民全体に対し直接に責任を負」うとされているのに対し、法案16条1項では、教育は「この法律及び他の法律に定めるところにより行われる」とある。この法案が、法律によって教育を統制しようとすることを目指していることは明白である。

  第二に、法案は、その2条で、「教育の目標」として「愛国心」、「公共心」といった徳目を掲げている。これは法律によって道徳規範に強制力を与えるものであり、「思想及び良心の自由」を保障する憲法19条に違反している疑いがある。

  第三に、法案16条2項は、教育に関する総合的な施策の策定・実施権限を「国」に与えている。また、法案17条は、「政府」に教育振興基本計画の策定権限を与えている。これらは、国が教育内容の管理・統制をおこなうための仕組みであると捉えざるをえない。

  こうした点をみるとき、国民の自主的・自律的な人格形成を保障している現行・教育基本法が、今日、国家による教育の権力的統制をめざす別の「新法」に換えられようとしているのは明白である。

  ここ数年、石原都政下の東京において、教職員に対する「日の丸・君が代」の強制と処分、「つくる会」教科書の採択、「奉仕活動」の必修化、職員会議での「挙手・採決」の禁止等々、憲法と教育基本法の理念を蹂躙しようとする動きが目立っている。特に「日の丸・君が代」に関して言えば、すでに東京都の教職員は、行政から「踏み絵を踏まされる」立場から、子どもに対し「踏み絵を踏ませる」立場に変えられようとしている。こうした東京都の動向は、東京がまず「突出」することによって、全国レベルの教育状況を変えていこうという意図的・運動的なものであったといえる。

  今日における教育基本法「改正」の動きは、そうした東京都の教育状況、石原都知事らの意図とパラレルな関係にある。それゆえに、万一この改悪がなされた場合には、日本全体の教育がゆがめられ、一挙に「東京」化していく危険性がある。行政が教職員を管理統制し、さらに教職員を通して子どもを管理統制する。教育によって子どもに「愛国心」を涵養しようとする。そうした企図の行きつく先は、戦前・戦中の教育の歴史を見れば、自ずと明らかである。

  全国の多くの教師・保護者が参加している本会・全国教育法研究会(略称・教法研)は、教育の場を通して子ども・保護者・教師の人権について学び研究し、それらを実現すべく実践してきた研究団体である。本会にとって憲法・教育基本法は、価値観の大前提であり、同時に実践の基準でもあった。戦後、私たちが手にした精神の自由・人間の尊厳・平和と友好を守り続けるために、またそれらの諸価値を伝えてゆくために、全国教育法研究会は、教育基本法の改正に反対し、法案の廃案を強く求める。







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