● 総合学科について 平成5年3月22日 文初職203



平五、三、二二 文初職二〇三 
各都道府県教育委員会、各都道府県知事、附属学校を置く各国立大学長あて 
文部省初等中等教育局長通知

    総合学科について

 高等学校に総合学科を設けることについては、平成五年三月二二日付け文初高第二〇二号初等中等教育局長通達により通知したところであります。
 総合学科は普通教育及び専門教育を選択履修を旨として総合的に施す学科であり、高等学校教育の一層の個性化・多様化を推進するため、普通科、専門学科に並ぶ新たな学科として設けられたものであります。
 ついては、別添の高等学校教育の改革の推進に関する会議の第四次報告(以下「第四次報告」という。)の内容を十分に参考の上、総合学科の設置に対する積極的な取組みをお願いします。第四次報告のうち特に留意すべき内容は下記のとおりであります。
 また、既存の普通科及び専門学科についても、特色ある個性的な教育の展開の一層の推進が重要であり、上記第四次報告においても指摘されているとおり、多様な生徒の持つ様々な能力・適性等に対応できるよう積極的な取組みをお願いします。
 なお、総合学科における教職員定数及び施設・設備の整備に対する措置等については、国としても別途検討中であることを申し添えます。

          記

T 教育の特色及び活用される諸制度について
一 教育の特色
(1) 将来の職業選択を視野に入れた自己の進路への自覚を深めさせる学習を重視すること。
 このため、在学中に自己の進路への自覚を深める動機付けとなるような科目を開設するとともに、生徒の科目選択に対する助言や就職希望者・進学希望者の双方を視野に入れた進路指導などのガイダンス機能を充実すること。
(2) 生徒の個性を生かした主体的な学習を通して、学ぶことの楽しさや成就感を体験させる学習を可能にすること。
 このため、教育課程の編成に当たっては幅広く選択科目を開設し、生徒の個性を生かした主体的な選択や実践的・体験的な学習を重視し、多様な能力・適性等に対応した柔軟な教育を行うことができるようにすること。

二 活用される諸制度
 上記の総合学科における教育の特色を発揮させるため、総合学科への入学者選抜に当たっては、多様な能力・適性等を持つ生徒を入学させるため、文化・スポーツ活動、ボランティア活動等の実績を重視した推薦入学の導入をはじめとする多様な選抜方法を工夫するほか、次のような制度の積極的な活用を図ること。
 @ 単位制による教育課程編成
 学年による教育課程の枠を設け、学年ごとに課程の修了の認定を行う学年制ではなく、卒業までに所要の単位を修得すれば卒業を認定する単位制により教育課程を編成することを原則とすること。
 また、学期の区分に応じた分割履修や二以上の学年にわたっての分割履修を広く認めるなど教育課程の弾力化を図るとともに、その履修については生徒の選択を尊重すること。
 A 学校間連携の推進
 総合学科においては、可能な限り多様な学科・科目を開設する必要があるため、他の高等学校と連携する方策を積極的に活用するものとすること。その場合、他校において当該教科・科目の授業を特定の学期又は期間に実施する等の協力を得るなど適切な措置を講じること。
 B 専修学校における学習成果や技能審査の成果の単位認定の活用
 総合学科においては、地域の実情や生徒の進路希望等に応じ、専修学校高等課程等における学習成果や技能審査の成果の単位認定の活用に努めること。
 C 専門学科への転学の配慮
 専門教科・科目の履修を通して特定の分野への関心が高まり、専門的に当該分野を深く学び卒業後はその分野への就職・進学を希望するようになった生徒に対応するため、専門学科への転学が可能になるよう特段の配慮を行うこと。
 D 転・編入学についての積極的な受入れ
 総合学科においては、選択幅の広い教育課程編成を行ったり、複数の年度にわたって履修できる科目を設けたりするなど弾力的な教育課程編成に特色があるので、いったん入学した高等学校になじめない生徒や中途退学をしたものの高等学校に再度就学したい生徒に対し、転・編入学の積極的な受入れを進めることにも配慮すること。

U 教育課程の編成について
 総合学科の教育課程は、高等学校必修科目、学科の原則履修科目、総合選択科目、自由選択科目による構成が考えられるが、各学校においてその教育内容・方法等について創意工夫を行い、それぞれの特色を発揮することが望まれること。

一 学科の原則履修科目
 総合学科においては、自己の進路への自覚を深めさせるとともに、将来の職業生活の基礎となる知識・技術等を修得させるため、原則として全ての生徒に履修させる「産業社会と人間」、情報に関する基礎的科目及び「課題研究」を開設することが適切であること。
(1) 産業社会と人間
@ 「産業社会と人間」の目標は、次のとおりとすること。
 ア 自己の生き方を探求させるという観点から、自己啓発的な体験学習や討論などを通して、職業の選択決定に必要な能力・態度、将来の職業生活に必要な態度やコミュニケーション能力を養うとともに、自己の充実や生きがいを目指し、生涯にわたって学習に取り組む意欲や態度の育成を図ること。
 イ 現実の産業社会やその中での自己の在り方生き方について認識させ、豊かな社会を築くために積極的に寄与する意欲や態度の育成を図ることとすること。
A 「産業社会と人間」の内容は、「職業と生活」(職業人として必要とされる能力・態度、望ましい職業観を養う学習)、「我が国の産業の発展と社会の変化」(我が国の産業の発展について理解し、それがもたらした社会の変化について考察する学習)及び「進路と自己実現」(自己の将来の生き方や進路について考察する学習)とすること。
B 「産業社会と人間」は、学習指導要領上の「その他特に必要な教科に関する科目」(第一章第二款の四)として設けること。
 また、履修単位数は二単位から四単位を標準とし、原則として入学年次に履修させること。
C 指導教員については、上記Aの内容のうち、特定の教科に相当しないものにあっては免許状の教科を問わず指導するものとし、特別な知識・技術を必要とする内容の学習を行う場合には当該学習内容と関連の高い教科の免許状を有する者が中心となり、複数の教員によるティームティーチングによって指導するものとすること。
(2) 情報に関する基礎的科目
@ 情報に関する基礎的科目の目標は、社会における情報化の進展及び情報の意義や役割について理解させるとともに、コンピュータとその活用についての基礎的な知識と技術の習得を通して、情報を主体的に活用する能力と態度の育成を図り、情報化社会と人間との望ましいかかわり方について認識させることとすること。
A 情報に関する基礎的科目については、地域、学校及び生徒の実態等に応じ、次の二つの場合が考えられること。
 ア 教科「数学」や「理科」等の教科に関する「その他の科目」(学習指導要領第一章第二款の三)又は「その他特に必要な教科に関する科目」(同章第二款の四)として設ける科目とする場合。
 イ 学習指導要領第二款の二に掲げる「情報処理」、「情報技術基礎」、「農業情報処理」、「水産情報処理」、「家庭情報処理」又は「看護情報処理」とする場合。
B 情報に関する基礎的科目の履修単位数は、二単位から四単位を標準とすること。
C 指導教員については、情報に関する基礎的科目を上記Aの「その他の科目」又は職業教科・科目として設ける場合には当該教科の免許状を有する者、「その他特に必要な教科に関する科目」として設ける場合には当該学習内容と関連の高い教科の免許状を有し当該科目を担当するものとして適当な者が指導するものとすること。
(3) 課題研究
@ 「課題研究」の目標は、多様な教科・科目の選択履修によって深められた知的好奇心等に基づいて自ら課題を設定し、その課題の解決を図る学習を通して問題解決能力や自発的、創造的な学習態度を育てるとともに、自己の将来の進路選択を含め人間としての在り方生き方について考察させることとすること。
A 「課題研究」は、地域、学校及び生徒の実態等に応じ、職業教科以外の教科に関する「その他の科目」(学習指導要領第一章第二款の三)又は「その他特に必要な教科に関する科目」(同第二款の四)として設けること。
B 「課題研究」の履修単位数は、二単位から四単位を標準とし、原則として卒業年次に履修させること。
C 指導教員については、「課題研究」を上記Aの「その他の科目」として設ける場合には当該教科の免許状を有する者、「その他特に必要な教科に関する科目」として設ける場合には、当該学習内容と関連の高い教科の免許状を有し当該科目を担当するものとして適当な者が指導するものとすること。

二 総合選択科目
 総合学科においては、生徒の主体的な選択を重視する観点に立ち、普通科目及び専門科目にわたって多様な選択科目(総合選択科目)を開設すること。その際、上記一の学科の原則履修科目と併せて三〇単位以上となるよう専門教科・科目を設けることとすること。
 総合選択科目の開設に当たっては、生徒にある程度のまとまりのある学習を可能にするとともに、生徒自身の進路の方向に沿った科目履修ができるようにするため、体系性や専門性等において相互に関連する総合選択科目によって構成される科目群(総合選択科目群)としてまとめて開設すること。
 生徒は、総合選択科目群を参考にして、自己の興味・関心等に基づき一又は複数の総合選択科目群について履修する科目の選択を行うこととすること。
(1) 総合選択科目群の開設
 学校において総合選択科目群の種類を定めるに当たっては、生徒の多様な興味・関心等に応え幅広い進路選択が可能となるように、学級規模に応じできる限り多くの分野にわたって複数の総合選択科目群を開設すること。
(2) 総合選択科目群の種類の例
 総合選択科目群の種類としては、例えば、情報系列、伝統技術系列、工業管理系列、流通管理系列、国際協力系列、地域振興系列、海洋資源系列、生物生産系列、福祉サービス系列、芸術系列、生活文化系列、環境科学系列、体育・健康系列等の科目群が考えられるが、その種類及びその科目構成については地域や生徒の実態を考慮しつつ設置者及び学校が定めること。

 三 自由選択科目
 総合選択科目群としてまとめて開設する科目のほか、開設されている総合選択科目群の性格とは異なる科目を自由選択科目として必要に応じ開設すること。

V 授業形態、履修方法等について
(1) 表現力、コミュニケーション能力及び実践的能力等の育成を図るため、個別学習、グループ学習等の多様で弾力的な授業形態とすることが望ましいこと。
(2) 選択の幅を拡大し社会の第一線で活躍する人材に接する機会を確保するため、特に「産業社会と人間」や「課題研究」にあっては、非常勤の社会人講師による授業の積極的な実施に努めること。
(3) 教育課程の編成・実施を円滑に行うため、特に必要がある場合には、特定の学期又は期間に集中的に授業を実施するなど弾力的な履修方法等を工夫すること。
(4) 総合学科の教育課程は単位制によって編成することを原則とするためホームルーム活動の充実に留意し、生徒指導に支障が生じないよう配慮すること。





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