● 学校安全のための方策の再点検等について 平成17年3月31日 安全・安心な学校づくりのための文部科学省プロジェクトチーム第一次報告

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    学校安全のための方策の再点検等について
−安全・安心な学校づくりのための文部科学省プロジェクトチーム第一次報告−

平成17年3月31日


 平成17年2月14日に発生した寝屋川市立中央小学校の事件を受け、文部科学省では、安全・安心な学校づくりを行うための対応方策について検討するため、「安全・安心な学校づくりのための文部科学省プロジェクトチーム」を設置し、学校安全のための方策の再点検等について検討を進めてきたが、これまでの検討の結果を「学校安全のための方策の再点検等について−安全・安心な学校づくりのための文部科学省プロジェクトチーム第一次報告−」として取りまとめた。

 各学校や設置者においては、これまでに文部科学省が示している「学校への不審者侵入時の危機管理マニュアル」(平成14年12月)や「学校施設整備指針」(平成15年8月)、「学校安全緊急アピール」(平成16年1月)、「学校の安全確保のための施策等について」(平成17年2月18日 16文科ス第396号)などに加え、本報告を参考にしながら、それぞれの学校安全のための方策等について再点検し、独自の「危機管理マニュアル」の作成・改善や、警察との一層の連携の推進など、実効性のある安全管理の取組を積極的かつ継続的に推進していくことが望まれる。


I .各学校の安全対策の再点検のポイント

1.学校への不審者侵入防止のための3段階のチェック体制の確立

1−@ 学校の敷地内への不審者の侵入防止

○ 門・塀で囲まれている学校については、出入口は限定し、登下校時以外は原則として門は施錠しておく必要がある。また、出入口等を中心に警備員を配置する学校もあるが、そうでない場合であっても、門を開けている間は、少なくとも、教職員やボランティアが立ち会い、子どもの安全を見守るようにすることが望まれる。

・登校時:
 出入口を限定して門を開放する。現在でも、登校時間中に教職員や地域のボランティアが門や通学路の要所等に立って子どもの見守り活動を行っている学校が多いと思われるが、こうした取組を一層進めることが重要である。
・授業中、昼休みや休憩時間等:
 原則として門は施錠しておく必要がある。
・下校時:
 出入口を限定して門を開放する。登校時間と比べて下校時間は長時間にわたる場合が多いが、門を開放している時間帯は、交代制にするなどして個人にかかる負担を軽減しながら地域のボランティアの協力を得ることや、警備員を置くことなどにより、門において子どもの安全を見守ることが望まれる。

○ 門におけるハード面の対策としては、来校者の確認のためのインターホン、侵入監視のためのセンサーや防犯カメラ、遠隔操作による開閉が可能な電気錠等の防犯設備の設置等について、学校や地域の状況に応じ検討することが望まれる。

○ 防犯カメラを設置している学校については、特に登下校時など門が開放されている時間帯については、地域のボランティアの協力も得つつ、交代制にするなどして個人にかかる負担を軽減しながら、モニターを意識的にチェックする体制づくりをすることが重要である(門における子どもの見守りと防犯カメラによる二重のチェック)。
 また、モニターを各学校でチェックするとともに、教育委員会等に各学校のモニターの画像を集約して、二重にチェックすることも有効である。
 学校や地域の状況に応じて、このような工夫や検討をすることが望まれる。

1−A 学校の敷地内での不審者の発見・排除

○ 門から校舎への入口(受付)までの動線を明確にし、初めて来校する者にも分かるよう、案内の看板を門の周辺等に示しておくことが重要である。
 動線は職員室等から見通しがよく、また、児童生徒が活動するスペースと峻(しゅん)別して設定するよう工夫すべきである。

○ 不審者を早期に発見し、校舎内に入れないという観点から、教職員、地域のボランティア、警備員等により、授業中や昼休み、休憩時間等における屋外運動場など敷地内の巡回を行うことが重要である。

1−B 校舎内への不審者の侵入防止

○ 正規の来校者も含め、原則としてすべての来校者の対応を受付に集中することが望まれる。このため、学校の状況に応じて、案内の看板の設置、地域のボランティアによる誘導、非常時の避難に配慮しつつ校舎の必要のない出入口の閉鎖などを行うことが有効である。

○ 受付では、教職員や地域のボランティア等が応対して来校者をチェックすることが必要である。また、受付後に識別が可能なように、受付の担当者が来校者を確認しリボンや名札等を着用させるようにすることも重要である。

○ 学校関係者が来校者と応接できるスペースを受付の近くに設け、原則として来校者に対しては応接スペースで対応するようにすべきである。
 特に、来校理由がはっきりしない来校者に対しては、応接スペースにおいて複数の学校関係者で対応する必要がある。

○ 職員室等については、来校者の動線や屋外運動場を見渡すことができ、不審者侵入時にも即応できるような位置に配置することが重要である。

2.学校への不審者の侵入に備えた取組

2−@ 安全を守るための器具の備え

○ 学校への不審者の侵入などの緊急時に、安全を守るための器具を備えておくことが望ましい。そのための器具としては、さすまた、盾、催涙スプレー、ネット、杖などは効果的であると考えられる。
 なお、こうした器具については、子どもが使用するなど防御以外の目的に使用されることがないよう、管理の徹底を図る必要がある。また、警察官等の協力を得て、万一の場合に適切に使用できるようにしておく必要がある。

2−A 身を守るために必要な訓練の実施

○ 学校への不審者侵入などの緊急事態が発生した場合、迅速に110番(119番)通報や教育委員会等への連絡が行えるよう、通報や緊急連絡の仕方を訓練しておく必要がある。学校に警察との連絡システムがある場合には、使用方法についても十分理解しておく必要がある。

○ 110番通報の後、警察官が到着するまでの間、教職員自身の安全を守りつつ、不審者を子どもに近づけないようにすることができるよう、防犯訓練等において警察官等の協力を得て、身を守る訓練を行っておくことが望ましい。

3.学校、家庭、地域が連携した安全・安心な学校づくり

○ 安全・安心な学校づくりのためには、学校関係者の努力に加え、地域社会の協力の下、地域ぐるみで学校安全の取組を推進することが重要である。
 学校内外で腕章等を身に付けて警備に当たるボランティアがいるという状況は、門等の出入口の管理とともに、犯罪を犯そうとする者に対する心理的な抑制という点で効果的である。
 そのため、文部科学省において平成17年度から開始する「地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業」を活用しながら、取組を推進していくことも有効である。

○ 特に、通学路の安全対策として、登下校時に、地域のボランティアなどの協力を得て、学校内外でのパトロールを強化するなど、子どもを見守る体制を地域の実情に応じて一層充実することは極めて重要である。

○ 地域や保護者の方々などにボランティアとして協力を得る場合には、巡回を行うに当たってのポイントや不審者に直面した場合の対応方法などについて十分に学んでおくことができるよう、今後、警察官や警察官OBなどの協力を得ながら、ボランティアの養成・研修を行う必要がある。
 その際、「地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業」において行う講習会を活用し、学校安全のボランティアの養成・研修を積極的に推進することも有効である。
 また、ボランティアの方々の参加を得る場合には、保険等にも十分配慮しておく必要がある。

4.「地域に開かれた学校づくり」と学校安全

 これまで述べてきたような学校の安全のための取組は、「地域に開かれた学校づくり」という考え方と相反するものではない。むしろ、一定のルールに従って学校に集まる多くの人々により学校の安全が守られていくことになる。
 これから求められるルールとして、地域の人々が来校する場合、あらかじめ用件を電話等で学校に伝え、来校の予約をしておくことなどが必要であろう。また、各学校も来校のルールについて、学校の門に掲示したり、学校便りや自治体の広報誌を活用したりすることにより、地域の方々に周知しておくことも望まれる。
 ルールに従って、地域の多くの人々が学校を訪れ、学校の様々な活動への協力を得ることにより、学校が活性化されることとなる。同時に、多くの人の目で子どもの安全が見守られることにより、学校の安全性を高めることができる。
 「地域に開かれた学校づくり」の推進に当たっては学校の安全確保が絶対条件である。学校や地域の学校安全に関する意識を高め、学校や地域の状況に応じた取組を継続的に推進しながら、地域と連携しつつ「地域に開かれた学校づくり」を進めることが重要である。


II .学校と警察の一層の連携の推進

II−@ 学校と警察との連携例

 「安全・安心な学校づくり」のためには、警察との連携を一層密にしながら取組を推進していくことが不可欠である。
 具体的には、以下のような事柄について取り組むことが重要と考えられる。

1.学校と地元警察署、教育委員会等と警察との間で十分な意見交換ができる場の整備

 学校と地元の警察署あるいは学校の設置者である教育委員会等(以下「教育委員会等」という。)と警察との間で、学校の安全管理対策や学校をめぐる防犯・警備などの面で密接な意思疎通を図るため、関係者間で協議会を設置したり、定期的に意思疎通の会合を開くなどの取組を進めていくことが必要である。
 その際には、現在、各地で青少年の非行防止のための活動のほか、犯罪被害から青少年を守るための活動についても取組が進められている学校警察連絡協議会の機能の一層の充実を図ることも効果的と考えられる。

2.学校の実情に応じたパトロールの強化

 今後、学校や教育委員会等から要請があった場合には、それぞれの状況に応じ、協議の上、警察によるパトロールの強化を図ることが望まれる。
 この場合、パトロールが強化されることを広く周知するとともに、学校周辺においても、それが分かるような表示をすることは、犯罪を犯そうとする者に対する心理的な抑制という点で効果的である。

3.学校と警察が連携した実践的・効果的な防犯訓練・防犯教室の実施

 万一の事態に備えるためには、学校において、実践的・効果的な防犯訓練・防犯教室等を実施することが不可欠であり、その実施において警察の協力を得ることは重要である。
 また、今後の防犯訓練・防犯教室の内容については、児童生徒の避難の円滑な実施のみならず、学校に備え付けられている防御用の器具・装置の使用方法の説明や訓練、万一不審者に遭遇した場合に、警察が到着するまでの間、教職員が自らの身を守るための訓練等についても盛り込むことが望まれる。

4.警察官や警察官OBの協力を得た学校の施設や防犯設備、マニュアル等の学校安全体制の再点検の実施

 実地の防犯対策に当たる警察官や警察官OBの協力を得て、学校の施設設備、備品の状況やマニュアルの内容等について再点検し、改善していくことは有効である。
 また、ボランティアの養成・研修に当たって、警察官や警察官OB等の協力を得ることも重要である。

5.学校と警察との間の非常時における通報体制の整備と通報訓練等の実施

 警察との間で直通の緊急連絡システムを整備することや、学校独自の「危機管理マニュアル」等において万一の場合の通報の在り方等を盛り込んでおくことは重要である。
 また、警察と学校、教育委員会等が連携し、通報システムの整備やそれを活用した訓練等を実施しておくことは万一の場合に備えての取組として有効である。

6.地域内での不審者情報や事件の情報の共有化

 今後の地域での不審者や事件等に関する情報の収集・提供システムの整備に当たっては、地元の警察の協力を得て進めていくことが必要と考えられる。


II−A 文部科学省と警察庁の連携による取組の推進

○ 平成17年度においては、文部科学省と警察庁とが連携し、教育委員会や学校と地元の警察との連携のもと、地域のボランティアが学校や公民館等を拠点として学校内外の安全体制の確保のための取組(「地域・学校安全安心プロジェクト」(仮称))を実施する方向で両省庁が合意した。

○ 基本的には、警察庁の「地域安全安心ステーション事業」と文部科学省の「地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業」とを連携して実施する方向であり、地域のボランティアの養成・研修や防犯の専門家による指導・助言だけでなく、防犯パトロール用品の整備や防犯情報の収集・提供、防犯情報の共有システムの整備、通学安全マップの作成などにおける支援、日常的な地元警察署からの支援等についても実施する予定である。

○ 今後、文部科学省と警察庁とで細部を詰め、近日中に別途公表する予定であり、その際にはこのようなスキームの活用が望まれる。


III .今後の検討

○ 本報告においては、各学校や設置者において再点検が必要な事項を中心に取りまとめを行ったが、本プロジェクトチームにおいては、今後とも、情報収集等に努めながら、各地方や学校の事例の分析を進め、警察庁とも協議しながら、効果的な学校安全の在り方について、引き続き検討することとしている。


IV .その他関連事項

○ 今後は、不登校やひきこもり傾向の子どもに対する対策等についても、関係省庁と連携しながら、これまでの取組の一層の充実を図ることが重要であり、文部科学省と関係省庁との検討会、関連調査、専門家による調査研究などの実施についても検討することが必要である。

○ また、子どもの情動等については、「情動の科学的解明と教育等への応用に関する検討会」(座長:有馬朗人科学技術振興財団会長)において、関連した研究促進方策、専門的な人材育成の在り方、又は教育現場等への応用の在り方などについて検討しているところであり、本年夏ごろを目途として検討成果を得ることとしている。


文部科学省と警察庁の今後の連携のための取組
(「地域・学校安全安心プロジェクト」(仮称))【イメージ図】 略


(スポーツ・青少年局学校健康教育課)



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