● 成年年齢引下げ等を見据えた環境整備について(通知) 平成30年7月23日 30文科生第315号



30文科生第315号 平成30年7月23日
各都道府県教育委員会教育長、各都道府県知事、各指定都市教育委員会教育長、各国公私立大学長、各国公私立高等専門学校長、構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた地方公共団体の長、厚生労働省医政局長、厚生労働省社会・援護局長 宛
文部科学省生涯学習政策局長(常盤豊)、文部科学省初等中等教育局長(橋道和)文部科学省高等教育局長(義本博司)


    成年年齢引下げ等を見据えた環境整備について(通知)


 第196回国会において、民法の一部を改正する法律(平成30年法律第59号)(以下「改正法」という。)が成立し、平成30年6月20日に公布されました。改正法は平成34年4月1日から施行されます。

 改正法により、民法が定める成年年齢が20歳から18歳に引き下げられます。このことにより、一人で有効な契約をすることができる年齢や、親権に服することがなくなる年齢が20歳から18歳に引き下げられることになります。また、改正法により、女性の婚姻開始年齢が16歳から18歳に引き上げられ、婚姻開始年齢が男女とも18歳に統一されます。

 具体的には、平成14年4月2日から平成16年4月1日の間に生まれた者は、施行日である平成34年4月1日に、それぞれ満18歳、満19歳で成人となります。また、平成16年4月2日以降に生まれた者は、施行日以降、満18歳で成人となります。特に、平成16年4月2日以降に生まれた者で平成32年度以降に高等学校及び高等専門学校等に入学等した者については、在学中に成人となります。

 成年年齢引下げに当たっては、消費者被害を防止する施策などの環境整備が必要であることから、政府においては「成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議」(以下、「連絡会議」という。)を開催しているところですが、今後も引き続き、改正法の施行に向けた環境整備の推進が必要です。

 ついては、成年年齢引下げを見据えた環境整備についての留意事項等を、下記のとおり取りまとめましたので、各職におかれては、十分に御了知の上、適切に対処下さるよう御配意願います。

 なお、成年年齢に達した生徒及び学生(以下、「生徒等」という。)に係る在学中の手続等に当たり留意すべき事項については、関係団体との意見交換も踏まえ、必要に応じて情報提供を行っていくこととしています。

 また、成人式については、各市町村が地域の実情に応じて企画・実施していただくものですが、成年年齢引下げに伴い、各市町村が成人式の対象年齢の引下げを行う場合、開催時期によっては高校生の大学進学準備等との関連で考慮すべき事項が出てくることも考えられることから、今後、連絡会議等において地方公共団体等の関係者との意見交換を行い、必要な情報を発信するなど、関係府省庁が連携して取り組んでいくこととしています。

 さらに、このことについて、都道府県教育委員会におかれては、所管の学校(専修学校及び各種学校を含む。以下同じ。)及び域内の市区町村教育委員会に対し、各指定都市教育委員会におかれては、所管の学校に対し、都道府県知事及び構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた地方公共団体の長におかれては所轄の学校及び学校法人等に対し、各国立大学長におかれては、その管下の学校に対し、厚生労働省医政局長及び社会・援護局長におかれては、所管の専修学校に対し、御周知くださるようお願いします。

 なお、改正法の概要等については別添及び参考のとおりです。


                    記


1 消費者教育の推進について 

 改正法が施行される平成34年度より、満18歳で成人となった者は契約の主体となる。一方、現在20歳未満まで認められている、保護者の同意を得ずに締結した契約の取消についても18歳未満までとなる。これを踏まえ、自主的かつ合理的に社会の一員として行動する自立した消費者の育成のため、実践的な消費者教育の実施を推進する必要がある。さらに、若年者の消費者被害の防止・救済のためにも、消費者教育の充実を図る必要がある。
 このことを受け、消費者庁、文部科学省、法務省、金融庁の関係4省庁が連携し、平成30年度から平成32年度までの3年間を集中強化期間とする「若年者への消費者教育の推進に関するアクションプログラム」(以下「アクションプログラム」という。)を平成30年2月20日に決定したところである。
 若年者への消費者教育の推進にあたっては、アクションプログラムの趣旨を踏まえ、消費者担当部局や消費生活センターを始めとする関係部局等との連携・協働により、以下の事項を踏まえながら実践的に取り組むことが重要である。

(1)高等学校等における消費者教育の推進等
ア 消費者基本法(平成16年制定)や消費者基本計画(平成17年決定)を踏まえ、現行の学習指導要領(平成20年、21年改訂)においては、消費者教育に関する内容が充実されていることから、その趣旨を理解し、引き続き学習指導要領に基づき、適切に消費者教育を実施すること。
イ アクションプログラムでは、平成32年度に全国の高等学校等において消費者庁作成の消費者教育教材「社会への扉」を活用した授業が行われることを目指しており、消費者教育の実施に当たり、本教材の積極的な活用が期待されること。
ウ 消費者教育の実施に当たっては、消費生活相談員や弁護士等の実務経験者等を外部講師として活用することも効果的な手法の一つと考えられること。その際、消費者庁において育成・配置に取り組んでいる消費者教育コーディネーターを活用することで円滑に外部講師との調整を行うことが出来るため、これを有効に活用することが望ましいこと。
エ 日常生活の中で実践できる能力を育み、自ら考え自ら行動する自立した消費者を育成するためには、教師の指導力の向上を図ることが重要であることから、公民科及び家庭科をはじめとした教員の養成課程、免許状更新講習、教員研修において、消費者教育に関する内容を積極的に取り入れるよう努めること。
オ 消費者被害に遭った生徒から相談を受けた場合は、消費生活センター等の外部の専門機関に相談することを促すなど、適切に対応することが望ましいこと。また、専門機関との緊密な連携が可能となるよう、日頃から協力関係を構築しておくことが望ましいこと。

(2)大学等における消費者教育の推進
「大学等及び社会教育における消費者教育の指針」(平成23年3月30日消費者教育推進委員会決定、平成30年7月10日改訂)を参考として、消費生活センター等との連携により、学生に対する消費者被害防止に関する啓発活動や相談対応、講義等における消費者教育に一層積極的に取り組むことが必要であること。


2 生徒指導・学生指導について

 生徒指導・学生指導については、在学中に生徒等が成年年齢に達することも踏まえ、小学校段階から児童生徒学生自らが現在及び将来における自己実現を図っていくための自己指導能力等を育成することがより重要となると考えられることから、学校の教育活動全体を通じ、その一層の充実を図っていくことが望ましいこと。
 また、生徒指導・学生指導の効果を高めていくためには、学校における取組を充実させるとともに、学校と家庭とが一致協力した体制を築き、連携を促進することが重要であることから、各学校においては、当該生徒等が成年年齢に達したか否かに関わらず、引き続き、父母等と連携しながら生徒指導・学生指導を行うことが必要であること。


3 若年者の自立支援に係る取組について

 文部科学省では、若者の自立支援に関する取組として、発達段階に応じた体系的なキャリア教育の推進、スクールカウンセラー等の配置促進による教育相談体制の充実、子供の自立心の育成などに重要な役割を担う家庭教育支援の充実、主権者教育や法教育の充実等を進めており、引き続き、関係省庁とも連携しつつ、若者の自立に向けた教育の推進に努めていくこととしている。各教育委員会や関係部局等においても、引き続き、関係機関と協力して、これらをはじめとした若年者の自立支援に係る取組を推進するよう努めること。


(別添・参考)

別添1 民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)概要(※法務省ホームページ)
    http://www.moj.go.jp/content/001261082.pdf
別添2 成年年齢の引下げに伴う年齢要件の変更について(※法務省ホームページ)
    http://www.moj.go.jp/content/001261083.pdf
別添3 平成30年6月20日 官報(号外第132号) 民法の一部を改正する法律 (五九)
別添4 民法の一部を改正する法律案新旧対照条文(※法務省ホーム)

参考1 成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議(※法務省ホームページ)
参考2 「若年者への消費者教育の推進に関するアクションプログラム」(平成30年2月20日若年者への消費者教育の推進に関する4省庁関係局長連絡会議決定。平成30年7月12日改定。)(※消費者庁ホームページ)
参考3 消費者教育教材「社会への扉」及び徳島県における活用事例集(※消費者庁ホームページ)
参考4 消費者教育の推進について(※文部科学省ホームページ)




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