◆200612KHK228A3L0710A
TITLE:  教育基本法[新旧対照表]
AUTHOR: (資料)
SOURCE: 大阪教法研ニュース 第228号(2006年12月)
WORDS:  全40字×710行


教育基本法 [新旧対照表]


旧 教育基本法
(1947年3月31日 法律第25号)
新 教育基本法
(2006年12月22日 法律第120号)
 朕は、枢密顧問の諮詢を経て、帝国議会の協賛を経た教育基本法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。   教育基本法(昭和22年法律第25号)の全部を改正する。

目次
前文
第1章 教育の目的及び理念(第1条―第4条)
第2章 教育の実施に関する基本(第5条―第15条)
第3章 教育行政(第16条・第17条)
第4章 法令の制定(第18条)
附則
 前文 

  われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。
  われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。
  ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する。


  我々日本国民は、たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。
  我々は、この理想を実現するため、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。
  ここに、我々は、日本国憲法の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を制定する。
 教育の目的 

第1条(教育の目的)
  教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
第1章 教育の目的及び理念

(教育の目的)
第1条 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

 教育の方針 

第2条(教育の方針)
 教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によつて、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない。
(教育の目標)
第2条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
  一 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
  二 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
  三 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
  四 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
  五 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
 生涯学習の理念 

(生涯学習の理念)
第3条 国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。
 教育の機会均等 

第3条(教育の機会均等)
  すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであつて、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によつて、教育上差別されない。

A 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によつて修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない。
(教育の機会均等)
第4条 すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。

2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。

3 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。
 義務教育 

第4条(義務教育)
  国民は、その保護する子女に、九年の普通教育を受けさせる義務を負う。

A 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料は、これを徴収しない。
第2章 教育の実施に関する基本

(義務教育)
第5条 国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。

2 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。

3 国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。

4 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。
 男女共学 

第5条(男女共学)
  男女は、互に敬重し、協力し合わなければならないものであつて、教育上男女の共学は、認められなければならない。
(全部削除)
 学校教育 

第6条(学校教育)
  法律に定める学校は、公の性質をもつものであつて、国又は地方公共団体の外、法律に定める法人のみが、これを設置することができる。

A 法律に定める学校の教員は、全体の奉仕者であつて、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。
(学校教育)
第6条 法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる。

2 前項の学校においては、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない。
 大学 

(大学)
第7条 大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。

2 大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。
 私立学校 

(私立学校)
第8条 私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。
 教員 

(再掲) 第6条
A 法律に定める学校の教員は、全体の奉仕者であつて、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。
(教員)
第9条 法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。

2 前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。
 家庭教育 

(家庭教育)
第10条 父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。

2 国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。
 幼児期の教育 

(幼児期の教育)
第11条 幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない。
 社会教育 

第7条(社会教育)
  家庭教育及び勤労の場所その他社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によつて奨励されなければならない。

A 国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館等の施設の設置、学校の施設の利用その他適当な方法によつて教育の目的の実現に努めなければならない。
(社会教育)
第12条 個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。

2 国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない。
 学校、家庭及び地域住民  
 等の相互の連携協力
(学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力)
第13条 学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする。
 政治教育 

第8条(政治教育)
  良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。

A 法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。
(政治教育)
第14条 良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。

2 法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。
 宗教教育 

第9条(宗教教育)
  宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない。

A 国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。
(宗教教育)
第15条 宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。

2 国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。
 教育行政 

第10条(教育行政)
  教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。

A 教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。
第3章 教育行政

(教育行政)
第16条 教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。

2 国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。

3 地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るため、その実情に応じた教育に関する施策を策定し、実施しなければならない。

4 国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない。
 教育振興基本計画 

(教育振興基本計画)
第17条 政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。

2 地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。
 補則 

第11条(補則)
  この法律に掲げる諸条項を実施するために必要がある場合には、適当な法令が制定されなければならない。
第4章 法令の制定

第18条 この法律に規定する諸条項を実施するため、必要な法令が制定されなければならない。
附則
  この法律は、公布の日から、これを施行する。
附則

(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。

(社会教育法等の一部改正)
2 次に掲げる法律の規定中「教育基本法(昭和22年法律第25号)」を「教育基本法(平成18年法律第120号)」に改める。
一 社会教育法(昭和24年法律第207号)第1条
二 産業教育振興法(昭和26年法律第228号)第1条
三 理科教育振興法(昭和28年法律第186号)第1条
四 高等学校の定時制教育及び通信教育振興法(昭和28年法律第238号)第1条
五 義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法(昭和29年法律第157号)第1条
六 国立大学法人法(平成15年法律第112号)第37条第1項
七 独立行政法人国立高等専門学校機構法(平成15年法律第113号)第16条

(放送大学学園法及び構造改革特別区域法の一部改正)
3 次に掲げる法律の規定中「教育基本法(昭和22年法律第25号)第9条第2項」を「教育基本法(平成18年法律第120号)第15条第2項」に改める。
一 放送大学学園法(平成14年法律第156号)第18条
二 構造改革特別区域法(平成14年法律第189号)第20条第17項



○ 提案理由

  我が国の教育をめぐる諸情勢の変化にかんがみ、時代の要請にこたえる我が国の教育の基本を確立するため、教育基本法の全部を改正し、教育の目的及び理念並びに教育の実施に関する基本となる事項を定めるとともに、国及び地方公共団体の責務を明らかにし、教育振興基本計画の策定について定める等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。



○ 施行通知

18文科総第170号
平成18年12月22日

各都道府県・指定都市教育委員会 殿
各都道府県知事 殿
各国公私立大学長 殿
各国公私立高等専門学校長 殿
各大学共同利用機関法人機構長 殿
各文部科学省施設等機関の長 殿
各文部科学省特別の機関の長 殿
各文部科学省独立行政法人の長 殿
日本私立学校振興・共済事業団理事長 殿
公立学校共済組合理事長 殿

教育基本法の施行について(通知)

文部科学事務次官
結城 章夫

 先の第165回国会(臨時会)において成立した教育基本法が、別添1(略)のとおり、平成18年12月22日、平成18年法律第120号として公布、施行されました。これに伴い、「教育基本法の施行に伴う関係政令の整理に関する政令」が平成18年政令第395号(別添2(略))として、「教育基本法の施行に伴い、中学校学習指導要領等の一部を改正する件」(別添3(略))が平成18年文部科学省告示第152号として、それぞれ公布、施行されました。
  また、12月15日の本法の成立を受け、内閣総理大臣及び文部科学大臣の談話( 別紙1及び別紙2)が発表されましたので、あわせて添付いたします。
  本法は、昭和22年に制定された教育基本法(昭和22年法律第25号。以下「旧法」という。)の全部を改正し、教育の目的及び理念並びに教育の実施に関する基本を定めるとともに、国及び地方公共団体の責務を明らかにするものであり、改正の趣旨は、文部科学大臣の談話(別紙2)にあるとおりです。
 本法の概要、各条の趣旨及び内容等は、下記のとおりですので、十分に御了知の上、都道府県教育委員会及び都道府県知事にあっては、域内の市町村教育委員会、所管又は所轄の学校その他の教育機関等に対して、国立大学長にあっては、その管下の学校に対し、周知方よろしくお願いいたします。

第1  法律の概要
 特に前文を設け、本法制定の趣旨等を明らかにしたこと。
 教育の目的及び目標について、旧法にも規定されている「人格の完成」等に加え、「公共の精神」や「伝統と文化の尊重」など、今日重要と考えられる事柄を新たに規定したこと。また、教育に関する基本的な理念として、生涯学習社会の実現と教育の機会均等を規定したこと。(第1章(第1条から第4条まで)関係)
 教育の実施に関する基本について定めることとし、旧法にも規定されている義務教育、学校教育及び社会教育等に加え、大学、私立学校、家庭教育、幼児期の教育並びに学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力について新たに規定したこと。(第2章(第5条から第15条まで)関係)
 教育行政における国と地方公共団体の役割分担、教育振興基本計画の策定等について規定したこと。(第3章(第16条及び第17条)関係)
 この法律に規定する諸条項を実施するため、必要な法令が制定されなければならない旨を規定したこと。(第4章(第18条)関係)

第2  前文及び各条の趣旨及び内容
 前文
  本法制定の趣旨等を明らかにするため、旧法と同様に前文を置き、教育において、個人の尊厳を重んじるべきことなどを引き続き規定する一方、新たに、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期することや、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進することを規定したこと。

 教育の目的(第1条関係)
(1) 趣旨
  教育の根本的な目的について、旧法第1条に引き続き規定したこと。

(2) 内容
 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならないこと。

 教育の目標(第2条関係)
(1) 趣旨
  教育の目的を実現するため、今日重要と考えられる具体的な事柄を、下記の五つに整理し、規定したこと。
  なお、教育の目的を実現するに当たっての重要な配慮事項として、学問の自由の尊重を旧法に引き続き規定したこと。また、旧法第5条の男女共学については、その趣旨が定着したことから規定していないが、同条にいう男女の敬重等については、下記Bにおいて、「男女の平等」及び「自他の敬愛と協力」を規定したこと。

(2) 内容
 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとすること。
@  幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
A  個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
B  正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
C  生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
D  伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。

 生涯学習の理念(第3条関係)
(1) 趣旨
  科学技術の進歩や社会構造の変化、高齢化の進展や自由時間の増大などに伴って重要となっている生涯学習の理念について、新たに規定したこと。

(2) 内容
 国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならないこと。

 教育の機会均等(第4条関係)
(1) 趣旨
  教育における差別の禁止や国及び地方公共団体による奨学の措置について、旧法第3条に引き続き規定するとともに、障害のある者に対する支援について新たに規定したこと。

(2) 内容
@  すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されないこと。
A  国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならないこと。
B  国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならないこと。

 義務教育(第5条関係)
(1) 趣旨
  保護する子に教育を受けさせる保護者の義務及び義務教育の無償について、旧法第4条に引き続き規定するとともに、義務教育の目的や、国及び地方公共団体の役割と責任について、新たに規定したこと。
  旧法第4条において「9年」と規定していた義務教育の期間については、時代の要請に応じて柔軟に対応することができるよう、別に法律で定めることとしたこと。なお、学校教育法(昭和22年法律第26号)第22条及び第39条により、義務教育の期間は9年とされている。

(2) 内容
@  国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負うこと。
A  義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとすること。
B  国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負うこと。
C  国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しないこと。

 学校教育(第6条関係)
(1) 趣旨
  学校の設置者について、旧法第6条第1項に引き続き規定するとともに、学校教育の基本的な役割や、学校教育において、規律を守ることや真摯に学習に取り組む意欲を高めることが重要である旨について、新たに規定したこと。

(2) 内容
@  法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができること。
A  法律に定める学校においては、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならないこと。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならないこと。

 大学(第7条関係)
(1) 趣旨
  知識基盤社会における大学の役割の重要性や、大学の固有の特性にかんがみ、大学の基本的な役割等について、新たに規定したこと。

(2) 内容
@  大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとすること。
A  大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならないこと。

 私立学校(第8条関係)
(1) 趣旨
  私立学校の果たす役割の重要性にかんがみ、その振興等について、新たに規定したこと。

(2) 内容
 私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならないこと。

10  教員(第9条関係)
(1) 趣旨
  教員の使命や職責、待遇の適正等について、旧法第6条第2項に引き続き規定するとともに、教員の養成と研修の充実等について新たに規定し、独立した条としたこと。

(2) 内容
@  法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならないこと。
A  法律で定める学校の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならないこと。

11  家庭教育(第10条関係)
(1) 趣旨
  すべての教育の出発点である家庭教育の重要性にかんがみ、その役割や支援等について、新たに規定したこと。

(2) 内容
@  父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとすること。
A  国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならないこと。

12  幼児期の教育(第11条関係)
(1) 趣旨
  幼児期の教育の重要性にかんがみ、その振興等について、新たに規定したこと。

(2) 内容
 幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならないこと。

13  社会教育(第12条関係)
(1) 趣旨
  社会教育の振興等について、旧法第7条に引き続き規定したこと。

(2) 内容
@  個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならないこと。
A  国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならないこと。

14  学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力(第13条関係)
(1) 趣旨
  教育の目的を実現する上で、学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力が重要であることにかんがみ、新たに規定したこと。

(2) 内容
 学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとすること。

15  政治教育(第14条関係)
(1) 趣旨
  政治教育について、旧法第8条に引き続き規定したこと。

(2) 内容
@  良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならないこと。
A  法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならないこと。

16  宗教教育(第15条関係)
(1) 趣旨
  宗教教育について、旧法第9条に引き続き規定するとともに、宗教の役割を客観的に学ぶことの重要性にかんがみ、宗教に関する一般的な教養を教育上尊重すべきことについて、新たに規定したこと。

(2) 内容
@  宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならないこと。
A  国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならないこと。

17  教育行政(第16条関係)
(1) 趣旨
  教育が不当な支配に服してはならない旨を旧法第10条に引き続き規定するとともに、教育がこの法律及び他の法律の定めるところにより行われるべき旨について、新たに規定したこと。
  また、教育行政について、公正かつ適正に行われなければならない旨、国及び地方公共団体のそれぞれの役割分担と責任及び財政上の措置について、新たに規定したこと。

(2) 内容
@  教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならないこと。
A  国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならないこと。
B  地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るため、その実情に応じた教育に関する施策を策定し、実施しなければならないこと。
C  国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならないこと。

18  教育振興基本計画(第17条関係)
(1) 趣旨
  本法に規定された教育の目的や理念等を具体化するためには、教育の振興に関する施策を総合的、体系的に位置付け、実施することが必要であることにかんがみ、教育振興基本計画について、新たに規定したこと。

(2) 内容
@  政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならないこと。
A  地方公共団体は、政府の定める計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならないこと。

19  法令の制定(第18条関係)
 この法律に規定する諸条項を実施するため、必要な法令が制定されなければならないこと。

第3  施行期日(附則第1項関係)
  この法律は、公布の日から施行すること。

第4  その他(附則第2項、第3項等関係)
 関係する法律、政令及び告示について所要の規定の整理を行ったこと。





別紙1

教育基本法改正法成立を受けての内閣総理大臣の談話

平成十八年十二月十五日

 本日、教育基本法改正法が成立いたしました。
  教育基本法の改正については、平成十二年の教育改革国民会議の報告以来、国民的な重要課題として取り組んでまいりましたが、今般この法律が成立したことは、誠に意義深いものがあり、ここに至るまでの関係者の御努力、国会の御審議に感謝申し上げます。
  昭和二十二年に制定された教育基本法のもとで、戦後の教育は、国民の教育水準を向上させ、戦後の社会経済の発展を支えてまいりました。一方で、制定以来既に半世紀以上が経過し、我が国をめぐる状況は大きく変化し、教育においても、様々な問題が生じております。このため、この度の教育基本法改正法では、これまでの教育基本法の普遍的な理念は大切にしながら、道徳心、自律心、公共の精神など、まさに今求められている教育の理念などについて規定しています。
  この改正は、将来に向かって、新しい時代の教育の基本理念を明示する歴史的意義を有するものであります。本日成立した教育基本法の精神にのっとり、個人の多様な可能性を開花させ、志ある国民が育ち、品格ある美しい国・日本をつくることができるよう、教育再生を推し進めます。学校、家庭、地域社会における幅広い取組を通じ、国民各層の御意見を伺いながら、全力で進めてまいる決意です。
 国民各位におかれましても、今回の改正の意義について御理解を深めていただき、引き続き、御協力賜りますようお願いする次第であります。





別紙2

教育基本法改正法成立を受けての文部科学大臣談話

平成18年12月15日

  本日、教育基本法改正法が成立し、我が国の教育改革は新たな第一歩を踏み出しました。関係各位のこれまでのご尽力に対し感謝します。

  個人の価値を尊重しつつ、その能力を伸ばし、志ある国民を育て、品性ある国民による品格ある国家・社会をつくるために、教育が重要であることはいつの時代も変わりありません。

  昭和22年に制定された前教育基本法のもとで我が国の教育は充実発展し、豊かな経済社会や安心な生活を実現する原動力となるなど、多くの成果をあげてきました。しかし、制定から半世紀以上が経過し、科学技術の進歩、情報化、国際化、少子高齢化、家族のあり方など、我が国教育をめぐる状況が大きく変化し、様々な課題が生じています。

  このため、今回の改正法は、これまでの教育基本法が掲げてきた普遍的な理念を継承しつつ、公共の精神等、日本人が持っていた「規範意識」を大切に、それらを醸成してきた伝統と文化の尊重など、教育の目標として今日特に重要と考えられる事柄を新たに定めています。

  私は、教育基本法改正法の成立を受けて、国民の皆様や教育関係者に、その趣旨についての理解を深めて頂くとともに、教育基本法改正法の精神を様々な教育上の課題の解決に結びつけていくため、関係法令の改正や教育振興基本計画の策定などの具体的な取り組みを着実に進めてまいりたいと考えております。

  これらの取り組みを通じて、国民の皆様の共通の理解を得ながら、学校・家庭・地域社会が一体となって教育改革を推進していくためにも、教育関係者、保護者の皆様をはじめ、国民各界各層の皆様のご協力を切にお願いします。




Copyright© 執筆者,大阪教育法研究会