■ 教育改革プログラム 平成11年4月 大阪府教育委員会
教 育 改 革 プ ロ グ ラ ム
平 成 1 1 年 4 月
大 阪 府 教 育 委 員 会
目 次
はじめに
T 大阪の教育の現状と課題
1 社会の変化と子どもをめぐる状況
(1) 社会の変化
(2) 子どもをめぐる状況
(3) 保護者の子育て意識
2 学校教育の現状と課題
(1) 生徒数の動向を踏まえた学校園の現状と課題
@ 幼稚園等の現状と課題
A 小・中学校の現状と課題
B 府立高等学校の現状と課題
C 府立養護教育諸学校の現状と課題
(2) 学校教育活動の現状と課題
@ 早急に解決を図るべき教育課題
A 今後取組みを強化すべき教育課題
(3) 学校運営の現状と課題
@ 学校運営体制
A 学校と家庭・地域社会の連携
B 教員の年齢構成
3 家庭・地域社会の現状と課題
(1) 家庭の現状と課題
@ 核家族化の進展
A 家庭の教育力の低下
(2) 地域社会の現状と課題
@ 地域社会の連帯意識の低下
A 子どもの活動の減少
U 大阪の教育改革
1 学校教育の再構築
(1) 学校改革
@ 幼稚園等の充実
A 公立小・中学校の充実
B 府立高等学校の充実
C 養護教育諸学校、養護学級等の充実
D 多様な人材の活用と教職員の効果的配置
E 校種間の円滑な接続と連携の強化
(2) 教育内容と教育方法の改善
@ 個に応じた教育の推進
A 道徳教育の推進
B 人権教育の推進
C 国際理解教育の推進
D 科学的素養を育成する教育の推進
E 情報教育の推進
F 福祉教育の推進
G 環境教育の推進
H 心身の健康の保持増進
I 生徒指導上の諸課題への適切な対応
J 部活動等自主的活動の活性化
(3) 学校の自主性・自律性の確立
@ 学校運営体制の見直し
A 児童生徒や保護者・地域社会に開かれた学校運営の推進
(4) 教職員の資質向上と意識改革
@ 教職員採用・人事異動
A 教職員研修
B 管理職登用
2 総合的な教育力の再構築
(1) 教育コミュニティの形成
@ 「地域教育協議会(仮称)」の設置
A 地域における諸活動の活性化
(2) 家庭における教育・子育て機能の強化
V 教育改革プログラムの推進に当たって
(1) 学校の自主的な取組みに対する教育委員会の支援
(2) 市町村教育委員会に対する府教育委員会の支援
(3) 教育内容や指導方法の改善のための支援
@ 府教育センターにおけるカリキュラムセンター機能の整備
A 完全学校週5日制推進会議の設置
(4) 国等への要望
おわりに
は じ め に
今、教育は大きな曲がり角に立っている。
大阪においては、中学生による痛ましい殺傷事件が相次いで発生するなど少年非行は凶悪化、低年齢化の傾向にある。「普通の子」と言われる子どもが、突然「切れて」残忍な行為に走ることに、府民の多くが大きな衝撃を受けている。
学校教育においては、いじめや不登校、高等学校における中途退学が依然として深刻な状況にある中、小学校でいわゆる「学級崩壊」と呼ばれる授業不成立の現象が低学年にまで及ぶといった新たな教育課題が発生するなど、緊急に解決すべき多くの課題を抱えており、教育関係者はもとより社会全体が一体となってその解決に取り組むことが求められている。
さらに、国際化、科学技術や情報化の進展、少子高齢化、地球的規模での環境問題など社会の変化は、教育の分野にも大きな影響を与えている。21世紀の社会を担う子どもたちには、こうした変化にも十分対応できる力を養い、人権感覚や他人を思いやる心など豊かな人間性をはぐくむことが求められている。
このような教育をめぐる諸課題に対応していくためには、これまでの教育システムを大きく改革していくことが求められており、大阪府教育委員会においては、学校改革や教育内容の改善など学校教育の再構築と学校・家庭・地域社会の連携による総合的な教育力の再構築等を柱とした「教育改革プログラム」を策定した。
本プログラムは、平成10年9月に公表した「大阪府における教育改革の基本方向(案)」をもとに、府議会での論議や、延べ20回をこえる教育シンポジウム、教育懇談会、府民アンケート等を通じて寄せられた府民各界からの広範な意見を尊重するとともに、府学校教育審議会や中央教育審議会の答申、府社会教育委員会議の提言、完全学校週5日制の実施に向けた「新学習指導要領」等を踏まえ、府教育委員会、市町村教育委員会及び各学校が教育改革推進に向けて取り組む具体的方策を取りまとめたものである。
本プログラムの推進に当たっては、公教育に大きな役割を果たしている各私立学校の協力を求めることはもとより、市町村教育委員会や関係部局とも十分連携を図ることが重要である。
なお、本プログラムの計画期間は、平成11年度からの10年間とするが、今後の国の動向等をも踏まえながら、随時必要に応じて改訂することとする。
【I】 大阪の教育の現状と課題
1 社会の変化と子どもをめぐる状況
(1)社会の変化
戦後、わが国は世界にも例をみない経済発展を遂げ、今日の豊かな社会を実現した。同時に、わが国の教育は高い水準を維持しながら量的拡大を果たし、国民生活や文化の向上に大きく寄与してきた。しかし、国民の間に高学歴指向が高まる中、学(校)歴偏重の社会的風潮が助長され、受験競争の過熱化や偏差値偏重などの弊害が生じ、心の豊かさやゆとりの欠如などが問題とされている。
また、今日、国際化、科学技術や情報化の進展、少子高齢化等の社会の変化が様々な分野に大きな影響を与えている。とりわけ、科学技術や情報化の急速な進展は、経済活動のグローバル化をもたらし、環境・資源・エネルギーなど地球規模で考えなければならない問題が生じている。こうした時代においては、互いの国の文化と歴史・伝統を尊重し、認めあうといった国際理解・国際協力の精神と人権意識、幅広い視野と柔軟な思考力等が求められる。また、確実に到来する超高齢社会に備え、一人ひとりが自立しつつ、互いに助け合いながら生きがいを持って生きていくことができる力を養うことが求められる。
さらに地域社会においても、核家族化や都市化の進展にともない、住民の地域への愛着や連帯意識・隣人関係が希薄になる中で、家庭や地域社会の教育力の低下が懸念されている。
(2)子どもをめぐる状況
今日の子どもたちは、物質的な豊かさや便利さの中で、自由な発想や多様な生き方を身につけている反面、目標に向かってひたむきに努力する精神力や他者とのかかわりの中で我慢する忍耐力をややもすれば失いがちになっている。
また、集団生活における規範意識や倫理観が欠如し、基本的生活習慣が十分に身についていないなどの問題が生じている。子どもが自由に遊べる空間が減少したこと等に伴い、幼少期における自然体験や異年齢集団における交流も乏しくなっている。さらに、情報機器の発達に伴い、テレビゲーム等仮想現実上のひとり遊びが増加している。このような状況のもと、生命を大切にする心や自然への畏敬の念、美しいものへの感動といった感性が乏しくなり、人間関係を形成するための基礎となる自己表現力やコミュニケーション能力が不足することが懸念されている。
加えて、小学生の頃から夜遅くまで塾通いをしたり、受験勉強に追われるなど、生活と心のゆとりを失い、深刻なストレスを感じている子どもも多く、学校での学習や遊び、行事などが軽視されるといった状況が生じている。
(3)保護者の子育て意識
少子化や核家族化によって、保護者の子どもへの関わりや期待が過度なものとなり、過保護・過干渉等が生じる一方、子どもの意思のすべてを受け入れ、甘やかしや放任という状況も生まれている。こうしたことは、保護者自身が子育てを学ぶ機会が乏しく、孤立しがちになるため、過剰な情報に振り回されたり、子育て不安に陥り、子どもに対して心にゆとりなく接せざるを得ないことが背景にあると考えられる。また、「親による子どもの虐待」が社会問題になるなど、家庭が本来持つべき教育機能の低下が著しいと言われている。
平成11年1月に府教育委員会が開催した「幼児期からの心の教育を考える」シンポジウムにおいては、幼稚園や保育所、子育てサークルなどの関係者から、子どもの変化の背景にある保護者の意識や態度の変化を指摘する意見が多く出された。例えば、「子どもに衣服の着脱など生活の基本的なことがしつけられていない」「子どもの就寝時間など生活習慣や食事の栄養バランスなどに注意が払われていない」ことや、「授業参観で私語をする」「自分の子どもさえ良ければ、周囲に迷惑をかけてはばからない」といったことが指摘されている。
2 学校教育の現状と課題
(1)生徒数の動向を踏まえた学校園の現状と課題
近年、わが国の出生数は著しく減少しており、厚生省の統計によると、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に出産する子どもの数)は、昭和60年の1.76人から平成9年には1.39人、大阪府においても、1.69人から1.30人に減少している。
この結果、幼稚園や学校の規模が縮小し、それに伴って生じる集団生活を中心とした教育活動や学校運営上の諸課題に対応して、学校園の活性化と再編整備を図る必要に迫られている。以下、学校種別に概観すると、次の通りである。
@ 幼稚園等の現状と課題
公私立幼稚園・保育所に通う子どもの割合は、例えば5歳児で見ると、平成10年度、5歳児83,045人のうち、幼稚園児は57,900人、約70%で、ピーク時の昭和52年度の 130,058人の約45%となっており、少子化等に伴って園児数が減少している。一方、保育所の幼児は21,513人、約26%を占め、その割合は毎年わずかであるが上昇している。
幼稚園は幼児のための教育を行う学校であり、保育所は「保育に欠ける」乳幼児を保育する福祉施設であり、両者は法的には目的・機能を異にしている。しかし、就学前の子どもを育てる機関であることに変わりはない。今後、さらなる核家族化の進展や女性の社会参加の拡大等に伴い、幼児が家庭以外で過ごす時間の割合が高くなるものと予想され、幼稚園及び保育所における就学前教育を充実することが大きな課題となっている。
A 小・中学校の現状と課題
i)児童・生徒数の減少と縮小する学校規模
公立小学校の児童数は、平成10年度には488,362人で、ピーク時(昭和55年度)の913,768人の約53%、公立中学校の生徒数は、平成10年度252,093人でピーク時(昭和61年度)の443,087人の約57%となっている。
平成3年度に1学級あたりの児童・生徒数が45人から40人と学級編制基準が改められたが、児童・生徒数の減少が著しいため、学校規模は大幅に縮小している。
1校当たりの平均の学級数を見ると、ピーク時には小学校で25.5学級(970人)、中学校で25.0学級(978人)であったのが、平成10年度にはそれぞれ15.9学級(470人)、15.7学級(542人)となっている。
また、11学級以下の規模の学校の割合は、ピーク時に小学校で 7.8%(985校中77校)中学校で 5.2%(462校中24校)あったのが、平成10年度には小学校で16.6%(1,042校中 173校)、中学校で14.4%(466校中67校)となっている。
このような学校規模の縮小は、子ども同士や子どもと教職員との人間関係が密接になるといったメリットはあるものの、互いに切磋琢磨する機会が少なくなり、子どもに社会性が育ちにくいことや、学校行事の運営に一定の制約が加わること等の問題がある。
ii)養護学級や通常の学級に在籍する障害のある児童・生徒への対応
小・中学校の養護学級に在籍する児童・生徒数は、昭和57年度に10,318人とピークを迎えた。その後、減少傾向にあったが、平成7年度には前年度比で79人増の 6,427人となり、その後、再び漸増傾向となり、平成10年度には 6,682人となっている。
養護学級は、平成10年度、小学校 1,033校中 956校に 1,362学級、中学校 464校中 431校に 624学級と、小・中学校合わせて92.7%に設置されている。
また、平成10年度の養護学級の在籍児童・生徒を障害種別にみると、全体の約46%の3,062人が情緒障害学級に、約37%の 2,466人が知的障害学級に、約12%の 823人が肢体不自由学級に、約3%の 201人が病弱・身体虚弱学級に、約2%の 130人が難聴学級と弱視学級に在籍しているが、これらの学級の一部には、障害種別の異なる児童・生徒が混在している実態がある。
なお、肢体不自由学級に在籍する者のうち、全面介助を必要とする児童・生徒が約 320人で、肢体不自由学級の約39%を占め、部分介助を必要とする児童・生徒を加えると全体の約75%に及び、その状況は重度化している。
また、平成10年7月に、府学校教育審議会第3分科会が「通常の学級に在籍する障害等のある児童・生徒の状況」について調査したところによると、指導上配慮を要する児童・生徒が約 650人在籍していることが明らかになっている。このうち、約41%の児童・生徒は通級指導教室(通常の学級に在籍する児童・生徒が、障害等により一部の学習を他の教室で受ける制度)で指導を受けているが、残りの児童・生徒については、学級担任等により障害の状況等に配慮した指導に委ねられており、今後、児童・生徒一人ひとりに応じた適切な対応を図ることが課題となっている。
B 府立高等学校の現状と課題
i)減少する生徒数と縮小する学校規模
本府においては、昭和40年代後半から昭和60年代初めにかけての生徒急増期において、私立高等学校の協力を得て、公私協調のもと、昭和53年に大阪府公私立高等学校連絡協議会を設置し、公立中学校卒業者の公私受け入れ分担比率等を定めるとともに府立高等学校の新設、特別教室の普通教室への転用による増学級、学級定員の拡大などで、増加する公立中学校卒業者の受け入れを図ってきた。
その後、昭和62年度の 147,907人をピークに公立中学校卒業者数が減少に転じ、平成10年度には88,945人(ピーク時の60.1%)となった。この減少傾向は、今後もさらに続き、平成20年度には7万人を割り、ピーク時の50%を下回るものと予測される。
小規模校化がもたらす学校運営上の様々な課題への対応や施設等の有効活用という観点を踏まえ、府立高等学校の再編整備を推進することが大きな課題になっている。
ii)進学率96%のもとでの高等学校教育
公立中学校卒業者の高等学校への進学率(公私立の全日制・定時制・通信制の課程全体を通して)は年々高まってきたが、平成元年度以降は約96%程度で推移している。
このような状況において、高等学校へ進学してくる生徒の学力や進路希望は多様化している。生徒の中には、基礎的な学力や基本的な生活習慣が身についていない実態や、なんとなく進学したり、仕方なく学校を選択したなどの実態が見受けられる。
その結果、「進路変更」や「学業不適応」などの理由による中途退学者も増加しており、中学校の進路指導や高等学校における多様な生徒に対応した学習指導のあり方等が課題となっている。
卒業後の進路状況については、大学・短大等39.4%、専門学校等29.3%、就職20.0%等(平成10年3月卒業者)と多様なものとなっており、生徒一人ひとりの自己実現に資する進路指導が求められる。
iii)ニーズの高まる専門学科・総合学科
公立高等学校全日制の課程において、普通科に在籍する生徒の比率は、平成元年度の86.6%をピークに減少傾向にある一方、特色ある専門学科(国際教養科、理数科など)や総合学科に在籍する生徒の比率は徐々に高まっている。平成10年度の在籍生徒率は、普通科が78.6%、職業学科が16.0%、職業学科以外の専門学科が 3.8%、総合学科が 1.6%となっている。
志願倍率も、平成10年度普通科の1.15倍、職業学科の1.89倍に比べ、職業学科以外の専門学科は2.35倍、総合学科は2.18倍と高くなっており、また、これらの学科に学ぶ多くの生徒は、明確な目的意識を持って進学し、意欲的に学んでいる。今後、生徒の多様なニーズに対応して適切な学校選択がなされるよう、府立高等学校の特色づくりを一層推進することが大きな課題となっている。
iv)生徒実態が多様化する職業学科
職業学科を設置している府立全日制高等学校は 155校中21校であり、そのうち、職業学科のみ設置している専門高校は16校となっている。学科としては、工業に関する学科が12校でもっとも多く、ついで農業に関する学科が6校、以下、家庭に関する学科と看護に関する学科がそれぞれ1校、その他の学科が2校となっている。
卒業後の進路状況については、平成元年度には、就職した者が85.6%、大学進学者が3.1%、専門学校等進学者が 7.8%であったが、平成9年度には、就職した者が68.1%
に減少する一方、大学進学者が 8.3%に、専門学校等進学者が15.5%にそれぞれ増加している。
職業学科における中途退学率は、平成9年度には 6.4%(普通科 2.7%)となっており、今後、職業学科においては、生徒の多様な学力実態や進路希望等に対応した教育活動を学科の枠にとらわれず工夫することや、中学校における進路指導との連携の在り方の改善や地域社会・産業界等との連携の推進が課題となっている。また、社会の変化や技術革新に対応した職業教育が展開できるよう、施設・設備の整備が求められる。
v)生徒数の減少と役割が変化しつつある定時制の課程
府立高等学校の定時制の課程への志願状況は、ピーク時の昭和40年度には、募集人員5,560人に対し、志願者数は 8,567人(1.54倍)であったが、平成10年度には、学年制をとっている定時制の課程は、募集人員 2,520人に対し、志願者数が 1,816人(0.72倍)と大きく落ち込んでいる。一方、単位制をとっている課程は、募集人員 600人に対し、志願者数は 782人、志願倍率1.45倍となるなど、ニーズは高いものとなっている。
また、定時制の課程に学ぶ生徒の実態は多様化してきており、平成10年度の「公立高等学校(大阪市を除く)定時制の課程の生徒の生活実態調査」によると、第1学年における勤労青少年の割合は、決まった事業所や家事に従事する者が約20%、パート・アルバイトを含めて約50%で、年々その比率は減少している。
さらに、第1学年に在籍する者で、当年度中学校を卒業して定時制に入学した者が約60%、他校に在籍した経験のある者は約26%となっている。最終学年においては、他校を中途退学した経験のある者が、3年制課程で約40%、4年制課程で約28%在籍している。なお、このほか、聴講生として、平成10年度約 500名の府民が学んでいる。
このように定時制の課程は、勤労青少年の後期中等教育機関としての役割とともに、中途退学者や不登校の生徒などが再び学習したり、社会人の生涯学習の場としての機能も果たしており、こうした状況を踏まえ、定時制の課程のあり方を検討することが課題となっている。
vi)増加する障害のある生徒の入学
府立高等学校に在籍し、障害等により修学上配慮を必要とする生徒数は、平成元年度の 638人から、平成10年度には約2倍の 1,449人に増えている。障害のある生徒には、入学者選抜において、障害の種別や状況に応じて、別室受検、時間延長、検査用紙の拡大、点字による受検などのさまざまな受検上の配慮を行っている。
また、点訳教科書の整備などの学習指導や進路指導の充実とあわせ、施設・設備についても、エレベーターや障害者用トイレなどの改善を順次進めているが、学校生活を送るうえでの支援や配慮を一層充実することが課題となっている。
C 府立養護教育諸学校の現状と課題
i)養護学校高等部の生徒数の増加
養護教育諸学校の在籍者数のピークは、小学部が昭和48年度の 2,055人、中学部が昭和61年度の 1,708人、高等部(専攻科含む)が平成元年度の 3,651人である。その後、平成10年度には小学部 1,265人、中学部 1,162人、高等部 2,575人となり、それぞれ減少している。高等部は、中学部からの進学者に加えて中学校からも多数入学してくるため、高等部の在籍生徒数は中学部の2倍以上となっている。
また、知的障害の児童・生徒については、平成10年度、小学部 640人、中学部 700人、高等部 1,492人の合計 2,832人となっており、養護教育諸学校在籍児童・生徒の約 56%となっている。さらに、一部の知的障害養護学校では、在籍児童・生徒数が 200人を超える状況(平成4年12月府学校教育審議会答申における適正規模は 150〜200人)となっており、その解消が課題となっている。
ii)知的障害養護学校高等部に求められる職業教育等の充実
平成9年度の養護教育諸学校高等部卒業者 822人の進路状況は、施設に入通所する者がもっとも多く 443人で約54%、次いで就職する者が 175人で約21%となっている。
このうち知的障害の高等部卒業者の進路状況は、卒業生 549人のうち、作業所・福祉施設等への入通所が 333人(約61%)ともっとも多く、就職は99人(約18%)にとどまっている。このため、福祉・労働等の関係機関と連携した職業教育や進路指導・アフターケアを一層充実する必要がある。
iii)肢体不自由養護学校に求められる医療・福祉等との連携
府立養護教育諸学校長部会が平成10年度に実施した調査によると、肢体不自由養護学校の児童・生徒 859人のうち、摂食が困難で経管栄養を必要とする者が38人、痰の吸引を必要とする者が36人、気管切開を受け日常的な呼吸管理を必要とする者が 6人、排尿を促す導尿を必要とする者が6人、延べ86人が医療的ケアを必要としている。
このような状況の中で、現在、一部の児童・生徒については、主治医の指導に基づき、保護者や校医、養護教諭が中心となって医療的な対応をしているが、このような児童・生徒は、今後増加するものと予測されており、医療機関の指導と支援を得た対応が必要となっている。
(2)学校教育活動の現状と課題
本府における学校教育活動は、子どもの生活背景の理解を重視し、子どもに生活の展望を持たせる生徒指導、自主性や仲間づくりを大切にした児童・生徒会活動、学習に対する意欲・関心を高める授業改革、高等学校に進学する目的意識や生き方などを大切にした進路指導、同和教育をはじめとする様々な人権を尊重する態度の育成、幼稚園・保育所から小・中・高等学校までの連携、学校と地域社会との連携など、これまで様々な取組みが先駆的に実践されてきた。
しかし、これらの教育実践はまだまだ一部にとどまっており、画一的な授業や生徒指導が指摘されることも少なくなく、今後すべての学校で取り組まれるよう教育活動の改善を図ることが課題となっている。また、子どもをめぐる状況として、義務や責任に対する自覚が乏しいことや社会生活のルールの大切さが身についていないこと、個性や能力の伸長が十分でないことなどから、一部には「学校不信」や「教師不信」「公立学校離れ」も見受けられ、これらの課題を克服し、保護者や地域住民に信頼される学校づくりを進める必要がある。
今後、保護者や地域住民の期待に応え、学校の活性化を図るため、早急に解決すべき課題や取組みを強化しなければならない課題は以下のとおりである。
@ 早急に解決を図るべき教育課題
i)少年非行
大阪における少年非行の件数は、平成6年から5年連続して全国ワースト1となっている。刑法犯で逮捕補導された少年の数は、平成10年には約2万人で、少年人口(6〜19歳)1,000人当たり13.9人に及んでおり、特に凶悪事件は平成6年度以降急増し、この4年間で約6倍になっている(府警察本部「大阪の少年非行」平成10年版)。
さらに、「テレクラ」や「援助交際」という形で行われている売買春や性非行、覚醒剤等の薬物乱用の低年齢化、あるいは近年再増加傾向にあるといわれている中学校における校内暴力など、本府における少年の問題行動は憂慮すべき状況にある。
今日の少年非行の特徴は、一見社会に適応しているように見える「普通の子」が突然「切れる」といった現象にあり、それらの子どもの中には、他人と交わることが苦手で、自己の居場所のないまま、心理的に孤立している子どもが多いと指摘されている。
今後、このような課題の解決に向けて、学校のみで問題を抱え込むのではなく、保護者はもとより、地域における青少年の健全育成のために活動している様々な団体や警察などと連携を深めることにより、地域の総合的な教育力を高めることが重要な課題となっている。
ii)「学級崩壊」
小学校における、いわゆる「学級崩壊」といわれる現象が、高学年ばかりでなく低学年にも広がりつつある。「学級崩壊」は、児童が授業中に立ち歩いたり、机の上に乗ったり、私語をしたりして、授業に集中できず、注意しても従わないといった授業不成立の状況を指しており、経験豊富な教員でさえ対応できない状況等も一部には見られる。平成11年2月の府教育委員会の調査によると、授業の成立しない学級が生じているため市町村教育委員会に助言を求めた学校数及び学級数(大阪市を除く)は、 734校中52校(7%)、12,030学級中60学級(0.5%)となっている。
これらの現象の背景には、子どもが幼児期に基本的なしつけや社会のルールを身につけることなく小学校に入学してくることがあげられている。また、いわゆる「荒れる」子どもには、「自分だけを見てほしい」といった愛情独占型の子どもが多く、中には自己の意思を相手に正確に伝える表現力や人間関係を作っていくコミュニケーション能力が育っておらず、欲望を抑制することなく、即座に感情を爆発させてしまうケースも多く見られる。
また、こうした問題は学校において教員個人の能力や責任だけに帰する雰囲気があったり、教員一人が問題を抱え込んだりする傾向がある場合には表面化しにくく、このことがかえって問題を複雑かつ深刻なものとしている。
このため、学校においては、教員一人ひとりが子どもの変化に対応できる実践的な指導力を身につけることはもとより、学級の「壁」を越えて学校全体で取り組むことができるような柔軟なシステムをつくることが必要となっている。また、家庭における幼児期からの心の教育を充実するため、学校・地域社会が連携して保護者の子育てを支援することが求められる。
iii)いじめ・不登校
大阪における「いじめ」の発生件数は、平成6年度以降漸減しているものの、平成9年度には、小学校で 323件、中学校で 414件(文部省「児童・生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」)発生し、依然として深刻な状況にある。また、いじめ発生状況の特徴は、小学校では、学年が上がるにつれて増加し、5・6年生の高学年が小学校におけるいじめ件数の約半数を占める一方、中学校では、低学年ほど発生率が高く、1年生が中学校におけるいじめ件数の約半数近くを占めていることにある。
不登校の児童・生徒数(年間30日以上欠席)は、平成7年度に減少したが、その後再び増加傾向にあり、平成9年度には小学校で 1,220人(平成7年度比 372人増)、中学校で 4,952人(同 1,010人増)となっている。
このため、いじめ・不登校への対応として、「スクールカウンセラー」や「心の教室相談員」、「ふれ愛フレンド」の配置や、各市町に設けられている「適応指導教室」との連携による支援など様々な取組みを行っているが、十分な成果を上げるには至っていない。
今後さらに、教職員一人ひとりがカウンセリング・マインドを養うことはもとより、「スクールカウンセラー」の拡充や関係機関との連携により、未然防止や発生時の相談・指導体制の整備を図ることが課題となっている。
iv)中途退学
全日制の府立高等学校における中途退学は、平成8年度から再び増加し、平成9年度には在籍生徒数の約3%にあたる約 4,358人が中途退学している。その理由は、「進路変更」が約43%、「学校生活・学業不適応」が約35%となっており、両者で約8割近くを占めている。このうち「学校生活・学業不適応」の内訳をみると「もともと高校生活に熱意がない」が約49%、「授業に興味がわかない」が約20%、「人間関係がうまく保てない」が約13%、「学校の雰囲気があわない」が約12%等となっている。このことから、中途退学の背景には、目的意識を持たない安易な学校選択や基礎学力・基本的生活習慣の不足、入学後における学校への不適応といった問題があると考えられる。
このため、目的意識をもって高校生活を送ることができるよう、生徒の多様なニーズに応える特色づくりの推進や、入学直後の定着指導の充実に努めるとともに、中学校における高等学校と連携した進路指導の改善などの取組みの強化が課題となっている。
A 今後取組みを強化すべき教育課題
21世紀を生きる子どもたちには、個性や創造力を伸ばすとともに、国際化、科学技術や情報化の進展、少子高齢化、さらには環境問題など社会の変化に対応できる力をはぐくむ教育を積極的に推進することが必要となっている。
i)国際化への対応
国際交流が進展し、国際的な相互依存関係がますます深まる中で、子どもたちに、自国の文化と歴史・伝統に対する理解や愛情を深めるとともに、諸外国の多様な文化や価値観を尊重し、異なる文化を持つ人々と交流を深めることが求められる。
本府においては、すでに国際教養科の設置、中・高等学校への外国語指導助手(AET)等の配置、海外修学旅行のモデル実施や、私立高等学校と協力したカリフォルニア州高等学校生徒等との相互交流、さらには、海外からの帰国児童・生徒の受入れの促進や新たに渡日した児童・生徒への日本語指導などの適応指導の充実等に努めてきた。
今後、国際化が一層進展する中で、子どもたちが国際社会の中で共に生きることができる資質や能力をはぐくみ、コミュニケーション能力を高める教育を一層推進することが重要な課題となっている。
また、在日韓国・朝鮮人児童・生徒をはじめとするすべての外国籍の児童・生徒が、アイデンティティをもって生きることのできる環境の醸成を図ることや、中国帰国児童・生徒や増加しつつある外国籍の児童・生徒に対する日本語習得など、学習指導の充実を図ることが新たな課題となっている。
ii)科学技術や情報化の進展への対応
科学技術の進展が著しい一方、近年、子どもの「科学技術離れ」や「理科離れ」の傾向が顕著であると危惧されている。今後、児童・生徒に体験活動等を通して、自然や科学的事象に対する興味や関心をはぐくみ、科学的素養と創造的能力を養うことが重要な課題となっている。
また、情報化がますます進展する中で、児童・生徒に情報や情報機器を主体的に選択・活用し、情報を主体的に発信する基礎的な資質や能力を養うことが必要となっている。
このような状況のもとで、本府においては、ものづくりの伝統を持つ大阪の特長を活かし、これまで経済界や各地域の企業等と連携し、授業に民間の技術者を招いたり、生徒が工場等を訪問して生産活動の実情を学ぶなど、直接体験を重視した学習等の充実に努めてきた。
また、高度情報通信社会に対応した教育を推進するため、本府においては、府教育センターを中心とした教育情報ネットワークの整備・充実に努めるとともに、各学校における情報機器の整備を順次進めてきた。
今後、情報化の一層の進展に適切に対応し、民間人の積極的な活用を含め、情報教育を担う人材を確保し、インターネット等の情報システムを活用した多様な教育活動を推進することが求められる。
さらに、子どもに対する有害情報の無秩序な発信、仮想体験の増加による人間関係の希薄化や実体験の不足、心身の健康への影響など、情報化が子どもに与える様々な影響への対応や情報発信の適切な方法など情報モラルの育成も課題となっている。
iii)高齢社会への対応
本府においては、65歳以上の高齢者人口が、平成9年度約 105万人(11.9%)、14歳までの年少人口は約 132万人(15.0%)となっているが、数年後には高齢者人口が年少人口を上回ると見込まれており、平成37(2025)年には4人に1人が高齢者になるなど、本格的な超高齢社会の到来が予測されている。
府民一人ひとりが自己実現を図り、生きがいを持って生きていくことのできる社会の実現を目指し、すべての児童・生徒に介護や福祉などの問題に対する理解や認識を深めることが必要である。また、核家族化が進行する中で、子どもが「老い」や「死」を身近に経験することが少なくなっており、高齢者と直接ふれあう体験などを通じ、生活の知恵や生き方を高齢者から学び、生の尊厳や思いやりの気持ちをはぐくむ体験的な教育を充実することが必要である。
このため、小・中学校においては、社会福祉協議会と連携したボランティア推進校の指定等、高等学校においては、「福祉実習」や「老人介護」など福祉関連の教科・科目の新設また福祉系列を持つ総合学科の設置等、教育活動の充実を図ってきた。
今後、学校が福祉施設と連携を図り、子どもが将来、地域福祉やボランティア活動等に積極的に参画するなど、超高齢社会の担い手としての自覚を養い、生涯にわたって学び続ける態度をはぐくむ教育を推進することが重要な課題となっている。
iv)環境問題への対応
科学技術の進歩と経済の発展は、文化的で豊かな生活をもたらしてきたが、一方で、騒音や廃棄物など都市・生活型公害や自然環境の悪化を引き起こし、その結果、地球温暖化や酸性雨問題など、地球規模の環境問題が生じている。
環境教育は、その対象が身近な問題から地球規模の問題までの広がりを持つものであり、取組みに当たっては、環境や自然と人間との関わりについて学び、環境の保全やよりよい環境の創造を具体的に実践する態度を身につけるといった視点が重要である。
これまで、各学校においては授業をはじめ部活動などを通じ、子どもに身近なところで起きている事象を具体的な課題として取り上げ、環境教育に取り組んできたところであるが、まだ一部の教科や部活動の取組みにとどまっており、学校全体への広がりが求められている。
今後、調査や観察などを通じ、自然を大切にする態度を養い、省資源や廃棄物減量化、リサイクル活動等身近な生活の中にある事象に着目し、環境の保全やよりよい環境の創造等の課題に主体的に関わる資質や能力を育成することが重要となっている。
(3)学校運営の現状と課題
子どもと家庭をめぐる状況が著しく変化する中で、学校は様々な教育課題に対して機敏かつ的確に対応し、学習指導・生徒指導など教育活動全般にわたって工夫を凝らし、一人ひとりの子どもの状況に応じたきめ細かい取組みを行い、子どもの個性を伸ばす教育を進めることが重要である。
このため、学校においては、校長を中心として、すべての教職員がその職務と責任を十分に自覚し、自主的・自律的な学校運営と、家庭や地域社会との連携により、地域に開かれた学校づくりを推進することが求められる。
@ 学校運営体制
学校には、校務をつかさどり所属職員を監督する校長、校長を補佐する教頭、さらに、校長の監督を受けそれぞれの職務に係る事項について教職員間の連絡調整及び関係教職員に対する指導・助言に当たる主任が置かれている。
また、学校運営に関する校長の方針の周知を図り、様々な教育課題や子どもの状況等について情報交換を行うなど、教職員間の意思疎通を図るため、職員会議等が置かれることが通例となっている。
しかしながら、現状では、学校においては、校長・教頭を除いた教職員は横並びとなっており、必ずしも、教育諸課題に機敏に対応し、自主的・自律的に教育活動を推進するような教職員組織や運営体制となっていない状況がある。今後、各学校が、学校運営における機動性と透明性を確保できるよう、組織体制の充実を図ることが重要な課題となっている。
A 学校と家庭・地域社会の連携
学校と家庭・地域社会の連携については、これまで、グラウンドや体育館など施設の開放、地域住民のための公開授業などにとどまっており、保護者や地域住民から見た学校は閉鎖的で、どのような教育方針で教育活動を展開しているのかが分からないと指摘されている。
学校が家庭や地域社会の信頼に応え、地域や子どもの状況を踏まえ、創意工夫を凝らした教育活動を展開するためには、学校の教育目標や教育活動の実施状況を明らかにするなど、保護者や地域住民に幅広く積極的な情報提供や働きかけを行い、学校を開かれたものとすることが大切である。
また、学校には、保護者や地域社会の意見を学校運営に反映し、教育活動の改善に活かすことや、保護者・地域住民の理解と協力を得て教育活動を展開することが求められる。
PTAは、学校と家庭・地域社会の連携により、教職員と保護者が協力し、児童・生徒の健全な成長を図ることを目的とする団体である。しかし、PTAの中には、運営が役員や担当教員のみに委ねられたり、活動が保護者の趣味・レクリエ−ションにかたよる傾向も見られるなど、PTA活動が必ずしも十分機能しているとは言えない実態もある。
今後、保護者と教職員一人ひとりが、PTA本来の活動に積極的に参画し、会員相互の連携・協力を深めることにより、PTA活動の活性化を図る必要がある。
B 教員の年齢構成
近年の児童・生徒数の減少に伴う教員定数の減少により、教員の新規採用数が減少してきたことから、例えば、平成10年度における小学校教員の年齢構成を見ると、平均年齢が45.1歳となっており、40歳代が約63%を占める一方、20歳代が約6%となるなど教員の高年齢化と年齢構成の不均衡が進行している。
豊かな経験を持つ教員は、円滑な学校運営を進める上で大きな役割を果たしているが、このような状況がさらに進めば、経験や年齢等に応じた適切な役割分担が果たせなくなるなど、部活動や宿泊行事などをはじめ学校教育活動全般にわたっての影響が懸念されるところであり、学校の活性化という観点にたって教員の年齢構成の平準化を図っていくことが課題となっている。
3 家庭・地域社会の現状と課題
(1)家庭の現状と課題
家庭における教育は、乳幼児期の親子の絆の形成に始まる家族とのふれあいを通じ、基礎的な資質や能力に関わるすべての教育の出発点である。
しかし、近年の都市化、核家族化等に伴う地域の人間関係の希薄化等により、子育ての知恵を得る機会が乏しくなっており、家庭教育に対する親の自覚の不足、親の過保護・過干渉、放任などが見られ、家庭の教育力の向上を図ることが大きな課題となっている。
@ 核家族化の進展
大阪府において、18歳未満の子どもが核家族世帯で過ごしている割合は、昭和45年の77.5%から平成7年には84.1%に増加し、同年の全国平均71.8%に比べ極めて高いものとなっている。また一方、3世代世帯の割合は、昭和45年の17.4%から平成7年には 13.2%に減少している(大阪府企画調整部統計課「大阪府の人口動向」)。
本府における15歳未満の子どもの割合は、昭和45年には府民全体の23.9%であったが、平成7年には15.0%に減少しており、各世帯における少子化傾向は一段と進んでいる(同「大阪府の人口動向」)。
核家族化の進行に伴い、祖父母世代からの子育ての経験や知恵の伝承が困難になっている。また、他人の家庭に干渉しない風潮等のもとで、身近なところで子育ての相談や支援を得る機会が減少する一方、多様な子育てに関する情報が氾濫しており、このような状況のもとで、親の子育ての悩みや不安は増加している。
A 家庭の教育力の低下
近年、親の意識や行動にも様々な変化が現れている。平成5年に府民情報室が行った「第70回府政に関する世論調査」によると、「10年前に比べて家庭で寝食をともにしたり、団らんを楽しんだりしなくなってきた」と答えた人は約50%あり、家族が関わり合う場面やコミュニケーションが少なくなってきている様子が伺える。日本教育会大阪府支部が幼稚園5歳児の保護者に対して行った調査結果をみても、「できるだけ家族そろって食事をするよう心がけている」人は、昭和56年の95%から平成5年には74%に減少している。
また、学校で教えて欲しいと親が考えていることは、「善悪の区別、言葉遣い、挨拶」等、家庭で行うべき事柄が上位に挙げられており(総務庁青少年対策本部「青少年白書」平成5年度版)、家庭の教育を、学校や幼稚園・保育所などの教育機関に依存する傾向も伺える。
このように家庭を取り巻く様々な変化により、家庭の教育力が低下する一方で、子どもに対する過保護・過干渉、放任などといった状況が生じている。平成10年12月、府民を対象に実施した「教育改革に関するアンケート調査」において、「最近の子どもの様々な課題に対応する」ために、「幼児期における家庭のしつけ」が最も大切であると答えた人は54.6%を占めている。
今後、学校や地域社会が連携して家庭教育を支援することにより、家庭の教育力の向上を図ることが重要な課題となっている。
(2)地域社会の現状と課題
子どもが、地域社会において、自らの興味・関心や考えに基づき、自主的に異なる世代や年齢の人々とふれあい、多様な生活体験や自然体験を積み重ねることは、豊かな人間性をはぐくむうえで、大きな意義を持っている。しかし、現実には、地域社会での活動を通しての子どもの生活体験や自然体験は著しく不足しており、さらに、地域社会における人間関係の希薄化、モラルの低下など、地域社会の教育力は低下している。
@ 地域社会の連帯意識の低下
国勢調査によると、大阪府の人口は、昭和35年には 500万人を超え、昭和50年には 800万人を超えた。この間、就労を目的として若年層を中心に多数の人々が大阪に流入し、急激な人口増加がもたらされ、郊外にまで都市化が進行した。その結果、自然環境や遊び場が減少し、共同体意識が希薄になるなど地域社会は大きく変容した。
また、人々の地域社会に対する意識も大きく変化しており、「国民生活白書」(平成5年度版の経済企画庁編)によると、「隣近所との望ましいつき合い」として「あいさつ程度・あまり堅苦しくなく話し合えるようなつき合い」と答えた人は、昭和48年の 64.9%から昭和63年の72.6%へと増加するなど、個人生活において干渉を避ける傾向が強くなっている。
府民を対象に実施した調査によると、「最近1年間で、住んでいる地域での活動や行事に参加した」状況を見ると、「特に地域での活動はしていない」人は41%となっている(平成10年「青少年ニーズ調査」大阪府青年政策会議)。また、府や市町村が実施している防災訓練に「参加したことがない」と答えた人が78.9%を占めるなど(平成7年「第73回府政に関する世論調査」府民情報室)、地縁的人間関係の希薄化や地域活動の衰退が進んでいる状況が伺える。
他方、生涯学習への関心の高まり等を背景として、地域においては同じ目的や興味・関心に応じて結びつく目的指向的な活動が増加しつつあり、今後、これらの多様な活動が互いに連携を深めるなどにより、地域社会の教育力の向上を図ることが重要な課題となっている。
A 子どもの活動の減少
子どもの活動において、スポーツやキャンプ、ボランティアといった目的指向的な活動の人気が高くなっており、一方、地縁的活動である「こども会」への加入の割合は、昭和56年の56%をピークに減少傾向に転じ、平成10年には32%となっている(平成10年度「大阪府こども会データーブック」)。また、府内の中学生を対象に実施した調査によると、学校の部活動以外のサークルやクラブなどに「特に入っていない」生徒の割合は78%と圧倒的に多い状況にある(平成10年「青少年ニーズ調査」)。
さらに「最近の子どもたちの生活体験や遊び体験など」については、「不足している」と答えた人は府民の81%あり、そのうち、「異年齢世代とふれあう経験」「仲間との冒険やいたずら経験」「動植物とのふれあい経験」などの必要性を指摘した人は、40%を超えている(平成6年「大阪府福祉部児童福祉課資料」)。
本来、子どもは地域社会における遊びや異年齢集団との交流、さらには手伝いなどの労働体験や地域の人々とのふれあいを通じ、他者を思いやる気持ちやコミュニケーション等を身につけたり、自分らしさを発見していくものであり、多様な人々との交流を生み出す地域社会の役割が一層重要となっている。
このため、地域で青少年の育成に関わってきた諸団体に加え、スポーツや文化、子育てのグループなどの目的指向的な新たな団体や地域の企業等と学校・家庭がそれぞれの役割を果たしつつ相互に協力し、地域社会の教育力の向上を図ることが重要な課題となっている。
【U】大阪の教育改革
21世紀を展望し、大阪の教育の現状と課題や社会の変化、完全学校週5日制等を踏まえ、大阪の伝統を活かし元気で独創的な学校と教育を創造するため、憲法・教育基本法をはじめ関係諸法令に基づき、以下の点を重視した人づくりを目指して教育改革を推進する。
○ 社会の一員としての自覚と規範意識を身につける
○ 基礎・基本の上に、自ら考え、判断し、行動する力を養う
○ 進取の精神とたくましく生きるための健康・体力を養う
○ 生命と人権を尊重し、他者を思いやる豊かな人間性をはぐくむ
○ 自然や美への感性を磨き、個性と創造力をはぐくむ
○ 郷土への誇りをもち、世界に目を向けた生き方を養う
教育改革の推進に当たっては、過度の受験競争を緩和するなど子どもが「ゆとり」の中で生き生きと学び生活できるよう、社会全体が一丸となって取り組むことが重要である。このような観点から、学校教育の再構築と家庭・地域社会の総合的な教育力の再構築を図ることとする。
1 学校教育の再構築
(1)学校改革
児童・生徒一人ひとりの個性や創造的能力、豊かな人間性をはぐくみ、学(校)歴にとらわれない生き方が可能となるよう、幼児期からの教育の充実を図り、多様な学習ニーズと幅広い進路選択に対応した特色ある学校づくりを進める。また、各学校における教育をより効果的に推進するため、各学校間の連携を強め、幼児教育から中等教育までの一貫性を図る。
さらに、それぞれの学校にすべての機能を整えて自己完結するという考え方ではなく、市町村が有する施設・設備・人材等はもとより、地域社会や民間の資源等、学校外の協力を得て、学校教育を推進する体制を整備する。
@ 幼稚園等の充実
家庭の教育力の低下や地域の子育て支援機能の弱体化が進行している状況のもと、幼稚園・保育所の果たすべき役割が一層大きくなっていることを踏まえ、幼児一人ひとりの個性に応じた指導方法の工夫改善を図るなど教育・保育機能の充実に努める。また、幼稚園・保育所が地域における幼児教育や子育てに対する支援センターとしての機能を持つよう条件整備を図る。
[具体的取組み]
a)希望するすべての3〜5歳児に幼稚園教育の機会が与えられるよう、受け入れ体制の整備を推進するため、大阪府幼稚園教育振興計画を策定するとともに、市町村における第3次幼稚園教育振興計画の策定を促進する
b)幼児期から集団生活に必要な社会性や善悪の判断力を養うなど、生涯にわたる人間形成の基礎を培うため、関係部局と連携して幼児教育指導事例集を作成し、すべての幼稚園・保育所における活用を促進する
c)幼稚園・保育所が幼児教育センターや子育て支援センター的な役割を担うため、地域の幼児とその保護者に対し、子育て交流の場や機会を提供する施設開放事業等を促進する
A 公立小・中学校の充実
公立小・中学校において、子どもに創造的能力を養い、豊かな人間性をはぐくむため、地域や子どもの実態に即した教育を推進することが求められる。このため、新教育課程を踏まえ創意工夫を凝らした魅力ある教育活動を展開し、地域の人的・物的資源を教育活動に活用することにより開かれた学校づくりを推進する。さらに、少子化の進行に伴う学校の小規模化に対応した学校活性化方策を具体化し、推進体制を整備する。
i)魅力ある教育活動の展開
自ら学び自ら考える力を育てる教育を充実するため、新学習指導要領の実施に伴う「総合的な学習の時間」等を通じ、子どもの実態の変化に対応した特色ある教育活動を展開する。また、いわゆる「学級崩壊」や不登校など諸課題を解決するため、地域の人材や諸施設を活用した教育活動を積極的に推進するなど指導体制や指導方法の工夫改善を図る。
[具体的取組み]
ア)自ら学び自ら考える力を育てる特色ある教育活動の推進
a)各学校において、独自の教育活動の時間を設定するなど、教科や学校行事、時間割等について教育課程の創意工夫を凝らす
b)「総合的な学習の時間」等を実践するモデル校を指定するなどの取組みを進め、地域の実態や学校の特色に対応した教育課題を設定し、クラス・学年や学校全体で横断的・総合的に取り組む学習活動の充実を図る
c)中学校において、生徒自らが興味・関心に基づいて選択することができる多様な学習コースを設定し、選択学習の幅の拡大を図る
d)自然体験・ボランティア体験など直接体験を重視した学習活動や、グループ討議・調べ学習など児童・生徒が自ら課題を見つけ、問題解決をめざす学習活動を拡充する
e)自己の将来の進路を考え、働くことの意義・意欲等を実体験を通じて身につけるため、行政諸機関、地域の事業所や企業、福祉施設等の協力を得て、中学校における職場体験学習を拡充する
イ)指導体制と指導方法の工夫改善
a)小学校において、学級担任制の良さを活かしつつ、個に応じたきめ細かい指導を行うため、学級間連携、学年単位や複数学年合同の教育活動等を拡充する。また、複数の教員が協力して指導するティーム・ティーチング、教員間で専門性を活かし合う交換授業や合同授業を行うなど、学級担任制の弾力化を推進する
b)各教員が児童・生徒の興味・関心を引き起こす魅力ある授業を展開できるよう、調査、報告、討論等多様な学習活動を取り入れることや、情報機器を活用するなど、指導方法の工夫改善を図る
c)個に応じた授業や芸術・スポーツ活動等を効果的に推進するため、中学校区内の小・中学校や隣接中学校等において、複数校が合同で教育活動を企画・運営し、交流を深めるなど学校間連携を拡充する
ウ)地域の施設等を活用した教育活動の推進
a)子どもに多様な経験を与えるため、地域の協力を得て、伝統産業や地場産業、農業など、ものづくりや生産活動等を体験する学習機会を拡充する
b)学校外の教育活動を積極的に推進するため、公民館や図書館、博物館、美術館など、様々な公共施設や民間施設等を活用し、児童・生徒が自ら調べる学習機会を拡充する
ii)小規模化に対応した学校活性化の促進
少子化のもとで小・中学校の小規模化が進行していることを踏まえ、教育効果の観点から見た望ましい学校規模や通学区域の弾力化について検討するとともに、余裕教室等の有効活用を促進する。
[具体的取組み]
ア)小規模校の活性化と再編整備の促進
府学校教育審議会答申(平成10年5月)において、学校規模については少なくとも小学校は1学年2学級(学校全体で12学級)、中学校は1学年4学級(同12学級)程度が望ましいとされていることを踏まえ、市町村教育委員会において、公立小・中学校の学校規模のあり方を含め活性化方策について検討する場を設置し、地域の実情を踏まえた小規模校の活性化と再編整備を促進する
イ)余裕教室の活用の促進
a)児童・生徒と地域社会の多様な人々とのふれあいや交流活動を通じ、学校教育を一層活性化する観点から、社会教育施設や福祉施設を設置するなど、余裕教室の有効活用を促進する
b)地域における教育コミュニティづくりを目指す拠点として、PTAルームや「地域教育協議会(仮称)」等への余裕教室の活用を促進する
ウ)通学区域の弾力化の検討
各市町村教育委員会において、通学区域の弾力化について検討するとともに、不登校など課題を抱えた児童・生徒の通学区域について柔軟な対応を図ることを促進する
B 府立高等学校の充実
中学校卒業者のほとんどが高等学校に進学する中で、府立の高等学校が、多様な学習ニーズに応え、地域に根ざして次代の大阪を担う人材を育成するという使命は、ますます大きなものとなっている。このような観点を踏まえ、今後の府立高等学校の改革を進める。
i)特色づくりの推進
生徒一人ひとりの興味・関心、能力・適性、進路希望等に対応し、多様な学習と幅広い進路選択ができるよう、府立高等学校において特色づくりを推進する。さらに、海外から帰国した生徒や高等学校に再チャレンジしようとする生徒の受入れ、社会人のリカレント教育等、国際化や生涯学習社会への移行に対応した取組みを一層充実する。
[具体的取組み]
ア)総合学科の拡充
普通科目と専門科目にわたる多様な科目を開設する総合学科を、現状の3校から各通学区域に1校程度配置できるよう拡充する。その際、大阪の地域特性を生かした「国際理解」や「芸術文化」、現代社会における人間の心理や行動を学ぶ「人間科学」、新しい時代に対応した「環境」「情報」「福祉」など、特色のある系列を持つ総合学科を地域的にバランスよく配置する
イ)全日制単位制高校の設置
a)学年による教育課程の区分を設けず、所定の単位を修得すれば卒業できるシステムを持ち、生徒自らが主体的に選択した学習計画に基づいて学ぶことができる全日制単位制高校を複数校設置する
b)全日制単位制高校等の設置と併せて定時制・通信制の課程の適正配置のあり方について検討する
ウ)新たな専門高校の設置
国際理解教育と情報教育を総合的に学ぶ国際情報高校、他の学校も利用できる先端的で高度な機器や装置を備えた総合先端技術高校などの新しいタイプの専門高校を設置する
エ)普通科の特色づくりの推進
a)従来の普通科目を主体としながら、情報、福祉、国際理解、芸術等の専門科目を幅広く選択できる「総合選択制」を導入した学校を各通学区域に複数校整備する。その際、それらの専門科目を学年の枠を越えて選択できるよう、教育課程の弾力的な運用に努める
b)音楽、体育、情報処理等のコースについて、さらに専門性を高める学習や資格取得を目指した学習ができるよう、専門学科に準じる程度に専門科目を拡充する
c)すべての普通科において、地域の実情や生徒の実態に応じて、それぞれのスクールカラーが明確になるよう、教育課程の一層の改善を図るとともに、教育活動に創意工夫を凝らし特色づくりを推進する
オ)職業学科の特色づくりの推進
a)職業学科を設置する専門高校の入学者選抜において、機械科、電気科といった小学科ごとではなく、工業科といった大学科で選抜し、第2学年から小学科を選択させる「総合募集」を拡大する
b)職業学科において、資格取得や大学進学に対応した新たなコースを設けるなど、教育課程の工夫改善に努める。また、それぞれの小学科において選択科目数を増やすとともに、小学科の枠を越えて学ぶことができるよう選択幅の拡大を図る
c)生徒が先端技術や企業の実態に触れ、豊かな職業観や勤労観をはぐくむことができるよう、産業界との連携を図り、専門技術者の招へいを拡充する。また、職業教育の担当教員が専門知識・技術の向上を図るため、企業派遣研修を充実する
d)企業等における職場体験を通じて、生徒に自己の適性や将来について考えを深めさせ、豊かな職業観や職業選択能力をはぐくむため、「インターンシップ(就業体験)制度」の活用を促進する
e)中学生の高等学校における体験学習の機会の拡大を図るとともに、地域の行事等に積極的に参加することなどにより、職業学科に対する中学生をはじめとした府民の理解を深める。また、地域社会における生涯学習の充実のため、施設・設備や教員の専門的知識・技能等を積極的に提供する
f)アジアをはじめとする海外の高校生との技術交流など、国際化に対応した取組みを拡大する
カ)中高一貫教育の整備方向の検討
中高一貫教育のあり方については、市町村教育委員会や小・中・高等学校等の代表者からなる大阪府中高一貫教育研究会議において、プロジェクトチームを設けて実践的な研究を推進し、平成11年度末までに一定の結論を得て、早期に方向性を明らかにする
ii)新たな教育システムの導入
地域の実情や生徒の実態に応じて、教育効果を一層高める観点から、学期の区分や授業時間の運用を弾力化し、学校外の学習の機会を拡大する等の新たな教育システムを導入する。
[具体的取組み]
ア)二期制の拡充
1学年を4月から9月までの前期と10月から3月までの後期に分け、学期による区切りを少なくすることにより、多様な履修形態が可能となるよう二期制の導入を拡充する。あわせて、各期ごとに単位認定を行うなど、単位の修得について一層の弾力化を図る
イ)授業時間の弾力的運用
50分を標準としている授業について、ロングタイム授業やショートタイム授業を導入するなど、教科・科目の特質や教育内容等に応じて授業時間の工夫を図る
ウ)教科・学年の枠を越えた学習の導入
「産業社会と人間」「総合的な学習の時間」「環境」「国際理解」等の教科の枠を越えた横断的・総合的な学習の導入を進めるとともに、学年の枠を越えて学ぶことができるよう、教育課程の工夫改善を図る
エ)転編入制度の弾力化等の推進
中途退学の増加等に対応し、個に応じた教育を展開するため、学校の成績判定に係る内規や転科制度の弾力化を推進する。あわせて、中途退学者が高等学校へ再チャレンジできるよう編入学制度の弾力化を進める
オ)ハブ高校の創設など学校間連携の推進
a)専門高校や総合学科、スクールカウンセラーの配置校など特色ある教育活動を重点的に進める学校をハブ高校(拠点校)として、近接した学校との交流を推進する
b)生徒の選択学習の機会を拡大し、教育課程の一層の多様化を図るため、在籍校以外で開設されている科目を学ぶことができるよう学校間連携を推進する。また、授業以外の学校行事等においても、他校と合同での取組みを工夫する
カ)学校外における学習機会の充実
a)生徒の個性や能力の伸長、学習への動機づけ、資格取得等に資するため、大学や専修学校等における学習、ボランティア活動等の社会貢献活動への参加、技能審査の受験などを奨励し、その成果を単位として認定する制度の活用を推進する
b)生徒が自己の適性や将来について考え、豊かな職業観や職業選択能力を身につけることができるよう、企業等における体験学習を進める
iii)全日制府立高等学校の特色づくり・再編整備の実施
生徒減少期を教育環境・教育条件など教育の質的向上を図る好機と捉え、府立高等学校の特色づくりとあわせて適正な配置の観点から再編整備を推進する。
[具体的取組み]
ア)特色づくり・再編整備計画
既存の学校の改編や、複数の学校それぞれの良さを発展的に継承する形で統合すること等により、以下のとおり特色づくりと合わせた再編整備を推進する
学科等
年度 普通科 総合学科 全日制単
位制高校 専門高校 計
普通科 専門学科併置・
総合選択制等
平成10 117校 19校 3校 − 16校 155校
↓(特色づくり・再編整備の実施)
平成20 76校 29校 9校 4校 17校 135校
(注1) 現行の学級定員(40名)、計画進学率(92.3%)、公私分担比率(7:3)を前提とし、学校規模を普通科の単独校については1学年8学級(320名)、特色のある学科等については1学年6〜7学級(240〜280名)として試算した。
(注2) 学校数の計には、単位制による定時制・通信制課程の高校(1校)は含まない。
(注3) 専門高校には職業学科を設置した専門高校を含む。
イ)特色づくり・再編整備計画の推進
a)平成11年度から平成20年度までの10年間を3期に区分し、計画的に再編整備を進める
第 1 期 第 2 期 第 3 期
平成11年度〜平成14年度 平成15年度〜平成17年度 平成18年度〜平成20年度
b)府教育委員会に設置した高校改革推進室において、再編対象地域・対象校を選定し、具体的な実施計画を策定する
ウ)特色づくり・再編整備計画の見直し
今後、公立中学校卒業者数や学級定員、計画進学率、公私分担比率等の前提条件に変動が生じた場合には、必要の都度、見直しを図る
エ)生徒受入れに関する条件整備
a)入学者選抜方法については、個々の学校の特色や実情に即したものとなるよう工夫改善に努める
b)計画進学率のあり方について検討し、平成14年度までに結論を得る
c)通学区域と学校選択のあり方について検討する
C 養護教育諸学校、養護学級等の充実
障害者が社会の一員として、障害のない人と同等に生活し活動する社会を目指す「ノーマライゼーション」の理念と、障害者がすべてのライフステージにおいて障害の状況等に応じた適切な支援を受け、自己選択・自己決定に基づいて、一人ひとりの自立の可能性を追求する「リハビリテーション」の理念の実現が求められる。
このため、養護教育諸学校をはじめ小・中・高等学校における養護教育の充実を図るとともに、養護教育諸学校に小・中・高等学校等の養護教育に対する支援センター的な機能を付加する。
i)府立養護教育諸学校における教育の充実
府立養護教育諸学校において、在籍する児童・生徒等の障害の重度・重複化、多様化に対応し、教育の内容や方法を一層充実する。
[具体的取組み]
ア)個別指導計画等の推進
児童・生徒一人ひとりの障害の状況等に応じた指導を進めるため、保護者等の理解を得ながら、個別指導計画の作成を推進する。このため、府教育センターを中心に、保護者、医師等の協力を得て指導事例集を作成する
イ)肢体不自由養護学校への知的障害児の受入れの段階的な推進
肢体不自由と知的障害の障害種別ごとに設置している養護学校について、児童・生徒の障害の重複化に適切に対応できるよう、総合的な養護学校への移行を目指す。当面、これまでの教育成果を踏まえ、施設・設備等の条件整備を行い、肢体不自由養護学校への知的障害児の受け入れを段階的に推進する
ii)進路指導と職業教育の充実
府立養護教育諸学校等において、障害の多様化等に即した適切な進路指導や卒業後の社会自立の一層の充実を図る。
[具体的取組み]
ア)進路指導・アフターケア推進委員会の機能の充実
障害の多様化を踏まえ、児童・生徒の社会自立を促進するため、福祉・労働等の関係機関と連携して、進路指導・アフターケア推進委員会における就労の促進や職場定着等の支援機能を拡充する
イ)新たな職域開拓方策等の検討
企業・作業所の関係者等の幅広い参加を得て、詳細な進路実態調査を実施し、新たな職域開拓方策等を検討する
ウ)新たな職業コースの設置
養護教育諸学校高等部において、保護者、企業及び関係諸機関等の協力を得て、情報や流通サービス等の新たな職業コースの設置について検討を進める
iii)小・中・高等学校における養護教育の充実
小・中・高等学校に在籍する障害のある児童・生徒一人ひとりの状況に応じた適切な教育の充実を図るとともに、交流教育を推進する。
[具体的取組み]
ア)小・中学校の養護学級における教育の充実
a)児童・生徒一人ひとりの障害の状況等に応じた適切な指導を行うため、養護教育諸学校における個別指導計画に関する取組みを参考にするなど、養護学級における指導内容・方法の一層の工夫改善を図る
b)学校全体としての協力体制のもとに教育活動を推進するとともに、担当教員の指導力の向上や障害児理解を深めるため、養護教育諸学校の専門的な機能を活用した研修等を充実する
c)児童・生徒の障害の種別に応じたきめ細かな教育を充実するため、障害種別ごとの養護学級の設置を拡充する
イ)「学習障害」等の特別な教育ニーズに対する調査研究等の推進
通常の学級に在籍する「学習障害」等の特別な教育ニーズのある児童・生徒について、大学、教育研究機関等と連携した研究モデル校を設置するなど、指導方法等の調査研究を推進する
ウ)養護教育諸学校の分教室の設置等の推進
府立高等学校に養護教育諸学校の分教室を設置することなどにより、高等学校の生徒との交流教育を推進するとともに、高等学校に在籍する障害のある生徒に対する教育方法等の支援を行う
iv)関係機関等と連携した養護教育の充実
児童・生徒一人ひとりの障害に応じた医療的ケアをはじめ様々なニーズに対応して、福祉や医療等の関係機関等と連携し、養護教育の充実を図る。
[具体的取組み]
ア)医療的ケア対策の充実
日常的に医療的ケアを必要とする児童・生徒の教育の充実を図るため、教育上必要な医療的ケアのガイドライン(参考基準)等を策定する
イ)リハビリテーション機能の充実
「学校支援人材バンク」の活用などにより、理学療法士や作業療法士等、リハビリテーションや医療的ケアなどの専門知識や指導技術を持つ人材の学校教育活動への参画を積極的に進める
ウ)心身症等の児童・生徒に対する教育のあり方の検討
小・中学校等において心身症等の心の問題を抱える児童・生徒に対する指導方法等に関する調査研究を行い、教育諸条件の整備を進める
エ)地域の関係諸機関との連携の強化
障害のある児童・生徒や保護者、教職員を支援するため、子ども家庭センターや保健所など地域の関係諸機関等と連携して、府内の各ブロックに、就学相談や教育相談等に関する情報を収集・提供するネットワークを構築するとともに、コーディネーターを育成・配置する
D 多様な人材の活用と教職員の効果的配置
各学校がそれぞれの抱える教育課題に対応して、迅速かつ的確な取組みを進めるため、教職員の効果的な配置と様々な指導体制の工夫を図ることはもとより、学校外の社会人の積極的な協力を求める。
i)多様な人材の活用
児童・生徒が授業や部活動において、優れた知識や技能を有する専門家など社会人との出会いを通じ感動を体験し将来の夢をはぐくむとともに、開かれた学校づくりの推進と教員の意識改革を図る観点から、学校における社会人活用を拡充する。また、このような学校での取組みを支援するため、本府において、社会の様々な分野で活躍している人々の協力を得て「学校支援人材バンク」を設置し、学校での活用を図る。
[具体的取組み]
ア)社会人を活用した学校教育活動の展開
a)児童・生徒の興味・関心に応じた魅力ある授業を展開するため、学校外の多様な人材を効果的に活用する
b)部活動の活性化を図るため、スポーツ・芸術分野等の人材を指導者として積極的に活用する
c)異文化交流や生きた外国語を学ぶ教育活動の場に、外国人留学生の積極的な活用を図る
d)各学校において地域の団体や企業等の協力を得て、独自の人材リストを作成し、教育活動への多様な人材の活用の促進を図る
イ)「学校支援人材バンク」の設置
a)各学校での社会人活用を促進するため、府教育委員会において関係部局と連携し、広域的な観点から公的諸団体等の協力を得て、様々な分野にわたる「学校支援人材バンク」を設置し、継続的にその充実を図る
b)各学校が「学校支援人材バンク」を円滑に活用できるよう、情報提供システムの整備を図る
c)市町村教育委員会の人材バンクとの連携を進め、相互のバンク機能の充実を図る
ii)教職員の効果的な配置
教職員配置については、今後の児童・生徒数の動向を踏まえながら、本府独自の教育課題に適切に対応するため、国の標準法定数に加えて措置している府単独加配教員について、そのあり方を抜本的に再構築するなど、効果的な配置を進める。
[具体的取組み]
a)生徒指導などの教育課題への対応については、個々の学校における教職員が一体となって、それぞれの実情に即しながら行うことを基本とした上で、必要に応じ加配教員を重点的・機動的に配置する
b)個に応じた多様な教育を展開し、魅力ある授業づくりのための新たな教員加配制度を創設する
c)養護教諭が保健の授業を担当するなど、学校における様々な職種の専門的知識や能力を学校教育に活用する
d)小学校、中学校、高等学校及び養護教育諸学校など異なる校種間での連携を進めるため、人事交流などを推進する
E 校種間の円滑な接続と連携の強化
学校教育をより効果的に推進するためには、幼児教育から中等教育までの教育の一貫性が求められており、幼稚園、保育所、小学校、中学校、高等学校それぞれの校種間の連携を強化するとともに、養護教育諸学校との交流を深め、相互支援を充実する。
i)幼稚園と保育所の連携
幼児期において、社会の一員として生きるための社会性、道徳性の基礎を培うため、幼稚園と保育所の連携を強化し、小学校就学前の教育内容の充実と整合性を図る。
[具体的取組み]
a)幼児の心の教育の充実を図るため、幼稚園と保育所の連携を促進する観点から府が新たに作成した「幼児教育指導事例集」の活用を促進する
b)善悪の判断や集団生活における社会性を培い、小学校生活へスムーズに移行できるよう、幼稚園と保育所の教育・保育内容を充実し整合性を図るため、幼稚園と保育所の交流会や合同研修等を充実する
ii)幼稚園・保育所と小学校間の連携
子どもの基本的生活習慣や社会性について、指導の連続性を確保するため、幼稚園・保育所と小学校との連携を強化する。
[具体的取組み]
a)幼稚園・保育所における遊びや集団活動が、小学校低学年における生活科や特別活動等の様々な教育活動に引き継がれるよう、教職員による合同連絡会を定期的に開催する
b)児童が安心して小学校に入学し安定した学校生活を始めることのできるよう、幼児や保護者に対する小学校体験入学や学校行事等への参加機会を拡充する
c)幼稚園や保育所の教育・保育内容の充実・改善に役立てるため、小学校に進学した児童の課題についての交流や研修の機会を拡充する
iii)小学校と中学校の連携
児童が夢と希望をもって中学校に進学できるよう、各教科や領域について系統的な指導体制を確保し、教育内容の充実を図るなど、小学校と中学校の連携を強化する。
[具体的取組み]
a)児童の学習におけるつまづきをなくし、基礎的な学力を確実に身につけることを目指した系統的な学習指導を行うため、小・中学校の教員による交換授業や小・中学生が一体となった合同授業などを実施する
b)小学生が中学生活を直接体験できるよう、中学校での体験授業や部活動に参加する機会を拡充するほか、体育祭や文化祭、児童会・生徒会活動等における相互交流を促進する
c)地域における非行防止、青少年健全育成の活動を支援する観点から、中学校区を単位とし、幼稚園・保育所を含め校区内の小学校と中学校の教職員等関係者による連絡会を定期的に開催する
iv)中学校と高等学校の連携
生徒が将来に対する目的意識を持ち、生き方を考え、自らの意志と責任で進路を選択する能力を身につけ、真に「進学したい学校」を選択できるよう、中学校と高等学校の連携を強化し、その接続を円滑なものとする。
[具体的取組み]
a)中学生や保護者に対して十分な進路情報を提供し、進路指導の充実を図るとともに、中途退学など生徒指導にかかる諸課題について高等学校と中学校とが相互に協力して解決を図るため、各学区ごとの中高連絡会を充実する
b)中学生が明確な目的意識や希望をもって高等学校に進学できるよう、高等学校への体験入学や部活動体験入部の機会を拡充するほか、体育祭、文化祭等の学校行事等を通じた相互交流や合同部活動の実施などの取組みを拡充する
c)教育内容の連続性を確保し、教科指導の内容・方法の充実を図るため、高等学校と中学校が相互に公開授業を実施するなど、教職員による研修交流を深める
v)養護教育諸学校と幼稚園、小・中・高等学校との連携
障害のある幼児・児童・生徒や保護者等のニーズに対応したきめ細かな教育を推進するため、養護教育諸学校が幼稚園、小・中・高等学校に対し、専門性を活かした多様な支援を行うとともに、交流教育を一層推進するなど連携を強化する。
[具体的取組み]
ア)障害のある子どもや保護者等に対する支援の充実
a)府及び市町村の障害児就学指導委員会において新たに教育相談機能を拡充するなど、組織・運営のあり方を改善し、障害のある子どもや保護者等の支援体制を強化する
b)養護教育諸学校等における就学前の障害のある幼児に対する教育相談体制を充実する
イ)幼稚園及び小・中・高等学校に対する支援機能の充実
a)養護教育諸学校が専門性や特色を生かし、養護教育に関する支援センター的役割を果たすため、幼稚園、小・中・高等学校に対して教材や指導方法等の情報を提供するとともに、教員等による巡回指導や巡回教育相談等を推進する
b)幼稚園、小・中・高等学校教員の養護教育に関する資質向上を図るため、養護教育諸学校において合同研修や公開授業等を推進する
ウ)交流教育の推進
a)障害児(者)と障害のない者が、地域で共に学び共に育つために、養護教育諸学校の児童・生徒と居住地の小・中学校等の児童・生徒との交流を促進する
b)養護教育諸学校の児童・生徒等と地域住民との交流を深めるため、積極的に学校施設を開放する
(2)教育内容と教育方法の改善
児童・生徒が学校において、集団生活を通して、生き生きと学び、自己の存在感や自己実現の喜びを実感し、国際化、情報化等の社会変化に的確に対応できる力を身につけることができるよう、教育内容と教育方法の工夫改善を進める。
その際、教育内容については、厳選して基礎基本の確実な定着を図り、教科・科目の領域を越えた総合的な学習を充実することなどにより、知識偏重の学習から考える力を重視した学習への転換を図る。
また、教育方法については、個に応じたきめ細かな指導方法や体験学習、発達段階に応じた選択機会の拡大などにより、子どもの学習に対する成就感を育てるとともに、個性を伸ばすことができるよう工夫に努める。
@ 個に応じた教育の推進
子ども一人ひとりを大切にし、個性を伸ばす教育を充実するため、指導方法と評価方法の工夫改善に努める。
[具体的取組み]
ア)分かりやすく楽しい授業をめざした指導方法の工夫改善
a)体験学習、課題研究、ディベート、学校図書館の活用等、多様な学習形態を導入することにより、児童・生徒の興味・関心に応じた指導方法の工夫改善を図る
b)複数の教員が協力して指導に当たるティーム・ティーチング等、指導体制の充実とあわせて、個別指導やグループ指導の一層の工夫改善を図る
イ)主体的に学び生きる力を育てる学習の充実
a)「総合的な学習の時間」等を活用し、国際理解、情報、福祉・健康、環境、人権など教科の枠を越えた横断的・総合的な学習を推進する
b)中学校・高等学校において、生徒の興味・関心等に対応し、多様な選択教科・科目を設け、選択学習の機会を拡大する
c)自ら学び自ら考える力を育成する場として学校図書館を活用するため、図書館教育の研究モデル校を拡充するほか、学校図書館の学習情報センタ−としての機能の向上を図るため、司書教諭の養成と情報ネットワ−クの整備に努める
ウ)個性を伸長する評価方法の工夫
一人ひとりの子どもの長所や進歩の状況、学習の過程を重視し、子どもを励まし個性を伸ばす評価システムの研究開発を進める
A 道徳教育の推進
生命に対する畏敬の念や他人を思いやる心、感動する心などの豊かな人間性と社会生活に必要なルールや善悪の判断などの道徳性等を育成するため、家庭や地域社会と連携を図り、すべての教育活動を通じた道徳教育を推進する。
[具体的取組み]
ア)「道徳の時間」の充実
a)「自分自身に関すること」「他の人とのかかわり」「自然や崇高なものとのかかわり」「集団や社会とのかかわり」などについて、各学校において、児童・生徒の発達段階を踏まえた全体計画、年間指導計画を作成し、系統的・継続的な道徳教育を推進する
b)道徳教育の要である「道徳の時間」の指導を充実するため、児童・生徒にとって身近で分かりやすい教材集や、教員のための指導資料集を新たに作成し、すべての学校での活用を促進する
c)教職員の意識改革を図り、道徳教育を推進する指導力を高めるため、研修を充実するとともに、すべての教育活動を通じて指導する体制を確立する
イ)実践活動を通じた道徳教育の推進
a)児童・生徒の道徳的実践力を養うため、自然体験活動やボランティア活動などの社会体験活動を拡充する
b)PTAや地域の人々の協力のもと、学校と地域社会とが一体となって道徳教育を推進するモデル地域を指定し、地域ネットワークを構築するなど推進体制を確立する
B 人権教育の推進
国際的な人権尊重の潮流を踏まえ、人権及び人権問題に関する正しい理解を深め、自らの問題として考え判断し、社会の構成員としての責任を自覚し行動する豊かな人権感覚を持った人間の育成を目指すとともに、すべての人々の自立と自己実現を図る教育の充実が求められる。このため、あらゆる教育活動を通じて「人権教育基本方針」及び「人権教育推進プラン」に基づく人権教育を推進する。
[具体的取組み]
ア)学校教育における人権教育の推進
a)子どもに豊かな人権感覚をはぐくむため、各学校において人権教育推進計画を作成し、発達段階に即した体系的な人権教育を推進する
b)教職員一人ひとりが豊かな人権意識・感覚を持って教育活動を展開できるよう、人権教育研修を充実する
c)あらゆる教育活動を通じて人権教育を推進するため、学校の運営体制を確立する。また、子どもの自発的な学習意欲を促す指導内容・方法の工夫改善を図る
イ)学校・家庭・地域社会の連携による人権教育の推進
地域社会全体で人権教育を推進するため、幅広い経験や能力を持った社会人を学校に招へいする等、開かれた学校づくりを進めるとともに、学校・家庭・地域社会が連携して継続的に子どもにかかわるネットワークづくりを進める
ウ)社会教育における人権教育の推進
a)市町村と連携して、図書館、公民館、青少年教育施設等の地域の様々な教育資源を活用し、人権及び人権問題について府民の正しい理解を深めるための学習機会を充実する
b)府民の自主的学習を促進するため、教材や学習プログラムの開発を進めるとともに、指導者の養成に努める
C 国際理解教育の推進
国際化が進展する中にあって、幼児期から自国の歴史や文化・伝統に誇りや愛情を持ち、諸外国の異なる文化や習慣等について理解を深め、互いに違いを尊重し共に生きていく資質や能力を育成するとともに、国際社会において自分の考えや意思を表現できる基礎的な力を育成する。
[具体的取組み]
ア)コミュニケーション能力の育成と異文化理解の促進
a)自分の考えや意見を述べ、相互理解を深めるためのコミュニケーション能力を育成するため、英語指導助手(AET)や海外留学生ボランティア等の活用を拡充する
b)海外から帰国した児童・生徒や、大阪在住の外国人児童・生徒の特性を伸ばすため、指導内容・方法等の工夫改善を図るとともに、その経験を活かし、すべての児童・生徒が共に学び、異文化・異言語を理解する教育を充実する
c)各学校における国際理解教育を推進するため、海外の日本人学校などへの派遣経験を持つ教員を推進者として位置づけ、教材の作成や教育プログラムを開発し、活用を促進する
イ)海外の児童・生徒との交流機会の拡充
a)異文化に直接ふれることにより理解を深めるため、高等学校における海外修学旅行を奨励するとともに、海外の学校との友好交流提携を推進する
b)情報通信ネットワーク等の活用により、教科学習や部活動などを通じ、海外の学校や児童・生徒との交流機会を拡充する
c)府や市町村における海外友好都市との文化・スポーツ交流事業等に、児童・生徒を積極的に参加させ、諸外国の文化や言語を学ぶ機会を拡充する
ウ)在日外国人教育の充実
a)外国人児童・生徒が自らの誇りや自覚を高めることができるよう、授業や特別活動等における指導内容・指導方法等を工夫改善し、それぞれの文化等に触れ親しむ機会を拡充する。すべての児童・生徒に、文化の違いを互いに尊重し共に生きる力をはぐくむ教育を推進する
b)すべての児童・生徒に対し、「在日韓国・朝鮮人問題に関する指導の指針」に基づく教育を推進する
c)新たに渡日した児童・生徒に対する日本語指導など適応指導を充実するとともに、これらの児童・生徒から異なる国の風土や文化について学ぶ機会を拡充する
D 科学的素養を育成する教育の推進
児童・生徒に、より確かな科学的素養と創造性豊かな力をはぐくむため、自然に対する興味・関心や科学技術の楽しさ・すばらしさに触れる直接体験の機会を拡充する。
[具体的取組み]
ア)科学的な体験学習の拡充
a)児童・生徒自らが主体的に探求する力を育てるため、理科や「総合的な学習の時間」において、野外観察や身近な素材を活かした調査・観察・実験等の科学的な体験活動を拡充する
b)理科教育推進地域を指定し、小・中・高等学校と地域とが連携して地域の自然や産業の特徴を活かした科学技術教育の実践研究を進める
イ)学校外の教育資源の活用の促進
a)最先端の科学技術に関する児童・生徒の興味・関心を高めるために、大学や民間の研究機関等の協力を得て、施設見学や公開講座に参加する機会を拡充する。あわせて研究者を講師として招へいし、理科教育を充実する
b)「府立少年自然の家」等の施設を活用し、児童・生徒のための自然科学教室や星座観察会など科学に関する学習機会を拡充する
c)観察・実験に関する教員の指導力の向上を図るため、大学や研究機関等の協力を得て研修を充実する
E 情報教育の推進
高度情報社会に生きる児童・生徒が、情報や情報機器を主体的に選択し活用するとともに、情報を積極的に発信することができる基礎的な資質や能力を養い、あわせてプライバシーの保護等、基本的ルールを身につけさせ、情報モラルの育成に努める。
[具体的取組み]
ア)学校の情報環境の整備
a)府教育センターを中心として、小・中・高等学校、養護教育諸学校等を結ぶ「大阪府教育情報ネットワーク」を充実する
b)教育用ソフトウェアの開発と府教育センターの情報ライブラリーの充実を図る
c)学校図書館において、情報に関する図書・資料の充実とあわせ、様々なソフトウェアや情報機器の整備を進め、学校における学習情報センターとしての機能を充実する
イ)インターネット等の情報システムを活用した教育活動の工夫
a)情報教育の充実を図るための実践資料集「授業にインターネットを」等を積極的に活用し、国内外の学校との間で情報交換・合同授業を推進する
b)国内外の博物館、美術館、図書館、大学等との情報ネットワークを構築し、それぞれの専門家の協力を得た遠隔授業を推進する
ウ)情報教育推進のための人材育成
a)各学校の情報化を推進するために、府教育センターにおいてネットワークやマルチメディアの専門的知識や技術を持つコーディネーターを養成する
b)世界各国のホームページ等を通じて、様々なデータを収集して授業に利用するなど、情報機器を活用した授業方法を開発するとともに、情報機器活用のための教職員研修を充実する
エ)情報モラルの育成
a)情報に対する責任や情報の重要性について、児童・生徒に理解を深めさせるため、プライバシーの保護や著作権に対する正しい認識等に関する情報モラルを育成する
b)児童・生徒が誤った情報や有害な情報に惑わされることなく必要な情報を自ら取捨選択し、社会的なルールやマナーを尊重して情報発信できる能力を育成する
F 福祉教育の推進
社会生活の中で人々が共に支えあい、一人ひとりが生きる喜びを味わうことができるよう、他人を思いやる心や社会に貢献する意義の認識、実践する態度を養う教育を推進する。
[具体的取組み]
ア)福祉マインドを養う教育の充実
「総合的な学習の時間」をはじめすべての教育活動において、福祉に関する学習を展開し、豊かな福祉マインドの養成に努める。その際、アイマスク体験や車イス体験などの体験学習の機会を拡充する
イ)実践する力を養う教育の充実
a)高齢者や障害者に対する理解を深め支援する態度を養うため、福祉施設での実習や、学校行事を通じた地域老人クラブ等との交流の機会を拡充する
b)福祉活動を推進するモデル校における実践活動の事例集を、各学校において活用し、児童・生徒のボランティア活動への取組みを拡大する
ウ)福祉教育の教材等の充実
a)福祉理解の教育や実践する力を養う教育を推進するため、具体的な実践事例を取り入れた教材集「福祉教育指導資料集−ぬくもり−」を充実し活用を促進する
b)福祉の制度や実践例を集めた教員用「福祉教育の手引き」等を充実し活用を促進する
G 環境教育の推進
児童・生徒が様々な体験活動を通して、自然に対する豊かな感性や環境に対する関心等を培い、自然や環境と人間とのかかわり、とりわけ日常生活とのかかわり等について理解を深めるとともに、環境の保全やよりよい環境の創造のため主体的に実践する態度を育成する。
[具体的取組み]
ア)自然や環境に対する関心を培う教育の充実
a)学校行事に野外での自然観察等を積極的に取り入れるなど、自然の豊かさや美しさに感動し、自然を大切にしようとする心を育てる自然体験活動を充実する
b)児童・生徒が主体的に環境問題の学習に取り組む態度を養うため、環境保全に取り組む社会人の協力を得て、指導内容・方法の工夫改善を図る
イ)環境と生活との関わりを理解する教育の充実
a)児童・生徒が日常生活において主体的に節電や節水、ゴミ減量化、リサイクル活動など、環境に配慮した取組みを実践するため、府が作成した教材集「エコパル探検隊−環境に優しい学校生活推進の手引き−」や「地球はみんなの運動場」、指導の手引き「環境にやさしい暮らしと社会を求めて」等を活用し、環境教育を推進する
b)児童・生徒がインターネット等の情報通信ネットワークを活用し、地球規模での環境観測や世界的な環境データの収集・活用の促進を図り、地球環境問題に対する理解と関心を深めさせる
c)府教育センターにおいて、関係機関の協力を得ながら、ごみ問題など身近な都市・生活型公害から、地球温暖化など地球規模の環境問題まで、児童・生徒の関心を高めるためのプログラム・教材を開発する
ウ)よりよい環境づくりを実践する教育の充実
a)リサイクル型社会への転換や、地球環境の保全に貢献するという認識を深めるため、リサイクル関連企業や環境事業所等での職場体験学習を拡充する
b)自らの環境は自ら守るという態度を養うため、PTAや市民団体、環境事業所等の協力を得て行う「環境フェスタ」「校区クリーン作戦」などの環境保全活動への参加を促進する
H 心身の健康の保持増進
人生をよりよく生きていくため、児童・生徒に自らの健康や体力に対する理解や認識を深めさせるとともに、健全な態度や行動を身につけさせる教育の充実を図る。
[具体的取組み]
ア)心の健康の充実
a)児童・生徒の心身両面にわたる健康相談、とりわけ心の健康相談に適切に応えられるよう、養護教諭を中心とした校内相談体制と相談しやすい環境を整備する
b)心の教育を充実させるため、府の教育施設等を活用した、長期に自然体験学習を行うプログラムを開発する
イ)身体の健康づくりの推進
a)性教育・エイズ教育を効果的に推進し、児童・生徒に正しい認識を身につけさせるため、各学校で関係機関と連携を図りながら指導体制を確立する
b)結核など感染症の予防と発生時における迅速かつ的確な対応のため、健康に関する「危機管理マニュアル」を作成し、各学校における活用を促進する
c)子どもの基礎的な体力を培うとともに、生涯にわたって運動に親しむ態度を身につけさせるため、発育段階に応じた「体力づくり事例集」を作成し、各学校における活用を促進する
d)児童・生徒に健康によい食事の摂り方や望ましい食生活について理解を深めさせるため、学校栄養職員等の専門性を活かし、「食」に関する指導の充実を図る
I 生徒指導上の諸課題への適切な対応
いじめ・不登校、校内暴力、少年非行など生徒指導上の諸課題に対応するため、学校が一体となって取り組む生徒指導体制を充実するとともに、子ども家庭センターや警察等、関係諸機関との連携を一層強化し、未然防止策、相談体制、早期の解決方策を充実する。
[具体的取組み]
ア)未然防止策の充実
a)生徒の問題行動の発生を未然に防止するため、各学校において、スクールカウンセラーなど学校外の人材の協力も得ながら子どもの変化を早期に発見し、養護教諭を含め教職員が一体となって、学校全体で対応できる取組みを強化する
b)児童・生徒や保護者からの相談にあたって、受容的な立場から支援・援助ができるよう、教職員のカウンセリング技能を高める研修を充実する
c)子ども家庭センターや警察をはじめ地域の青少年関係団体等と学校が連携する健全育成推進モデル地域を指定し、子どもの問題行動を未然に防ぐ取組みを充実する
d)各小・中・高等学校において、児童・生徒の犯罪に対する認識を深めさせるため、警察と連携して「犯罪防止教室」や「薬物乱用防止教室」等を拡充する
イ)相談体制等の充実
a)児童・生徒の悩みや不安等を的確に受け止め、適切に支援し早期に解決するため、「スクールカウンセラー」や「心の教室相談員」等を拡充するなど、学校における教育相談体制を整備する。また、府教育センターの「すこやか教育相談」や、各教育振興センターの「ふれ愛ホットライン」等の相談窓口を拡充する
b)教職員による児童・生徒に対するセクシュアル・ハラスメントや体罰等を防止するため、校内体制を確立するとともに、児童・生徒や保護者が気軽に相談できるよう、校内の相談機能や学校外の相談窓口を充実し、周知を図る
c)セクシュアル・ハラスメントの防止について、教職員の共通理解を図るため、府教育委員会が策定した「教職員による児童・生徒に対するセクシュアル・ハラスメント防止のために」「職場におけるセクシュアル・ハラスメントの防止及び対応に関する指針」に沿った研修を充実する
ウ)早期の解決方策の充実
a)少年犯罪防止や薬物乱用防止のためのモデル地域を指定し、学校と子ども家庭センターや警察等の関係諸機関とが、相互に連携を図りながら一体となって早期に解決する体制を充実する
b)不登校児童・生徒の早期就学を図るため、府が実施する不登校児童・生徒を対象とした「サマースクール(交流とふれあいの体験合宿)」等の取組みを充実する。あわせて、市町村における適応指導教室の拡充や、各学校の保健室やカウンセリングルームの活用等により、学校復帰のための環境を整備する
J 部活動等自主的活動の活性化
社会生活を営むうえで大切な主体性、協調性、責任感、連帯感などを育成するとともに、文化的素養や豊かな情操、スポーツに親しむ態度などを養うため、部活動等自主的活動のより一層の活性化を図る。
[具体的取組み]
a)複数校の連携による合同部活動を推進し、合同の部による公式大会・行事への参加が可能となるよう条件を整備するため、関係諸団体に働きかける
b)部活動の活性化を図るため、外部指導者の積極的活用や部顧問に対する各種研修の充実により、指導力の向上を図る
c)地域スポ−ツの一層の振興を図るため、学校と地域クラブや民間クラブなどの関係団体との連携を強化する
d)児童・生徒の自主性・主体性を尊重し、活動日や時間を弾力的に設定するほか、複数の部活動に参加できるよう、シーズン制、複数種目制などの導入を促進する
(3)学校の自主性・自律性の確立
家庭や地域のニーズを踏まえ、当面する教育諸課題や社会の変化に機敏に対応するため、学校が自主的・自律的に一人ひとりの子どもの状況に応じたきめ細かい特色ある教育活動を展開できるよう学校運営体制の整備・充実を図る。
@ 学校運営体制の見直し
各学校において、校長がリーダーシップを発揮し、学校経営方針と個別課題についての推進計画を明らかにし、教職員が一致協力して教育活動に取り組むことができるよう運営体制を改善する。
[具体的取組み]
ア)校内組織の充実
a)校長の職務の円滑な執行に資するよう、職員会議の位置づけを明確にするとともに、教職員の職務分担を定める校務分掌や各種委員会のあり方を見直し、学校運営をより効率的に行う体制を確立する
b)各学校において重点的に取り組むべき課題と目標を設定し、課題毎に横断的な委員会を設置するなど、その達成について自己評価を行う体制を確立する
イ)学校事務・業務の効率化
a)学校の事務・業務の効率化を図るため、調査統計の精選やコンピュータ処理、書類の電子化等を推進する
b)学校における様々な職種がより専門性を高め、能力を発揮できるよう、学校事務の共同実施等に係る実践協力モデル校を指定するなどにより、事務執行体制について研究する
A 児童生徒や保護者・地域社会に開かれた学校運営の推進
学校が地域住民の信頼に応え、家庭や地域と連携して教育活動を展開するため、学校運営の透明性を確保するとともに、学校が保護者や地域住民の意向を把握し、その協力を得て学校運営を行う体制を整備する。
[具体的取組み]
ア)学校に係る情報の積極的な開示
各学校が説明責任を果たし、保護者等の協力を得て教育活動を展開するため、教育方針・教育計画や学校が抱える諸課題等について、積極的な情報の開示に努めるとともに、地域に開かれた学校づくりを推進するため、保護者等に対し継続的な授業公開(参観)を推進する
イ)「学校教育自己診断」の全校実施
学校教育活動が児童・生徒や保護者のニーズに対応しているか、学校自らが診断票に基づいて点検するため、校長、教職員、児童・生徒、保護者を対象とした「学校教育自己診断」について、全校実施を目指す
ウ)「学校協議会(仮称)」設置に向けたモデル校の指定
学校が主体性をもって、保護者や地域住民の意向を的確に把握した学校運営を行うため、校長の諮問に応じて保護者や地域住民が参加し、意見交換を行う「学校協議会(仮称)」について、モデル校を指定し、研究を行う
エ)PTA活動の活性化
a)PTA活動への保護者と教職員の積極的な参画を進めるため、両者を対象にPTA活動に関する研修の拡充を図る
b)保護者と教職員とが、子どもの教育について相互に意見を交換する機会を充実するため、余裕教室等を活用してPTA活動の場を提供するとともに、活動時間に配慮するなどPTA活動の活性化に向けた環境づくりを推進する
c)地域の教育環境の改善に向けた取組みを促進するため、PTA相互間や地域の諸機関等との連携・交流事業を強化する
(4)教職員の資質向上と意識改革
学校において特色ある教育活動を展開するためには、校長のリーダーシップの発揮とともに、教職員の資質向上と意識改革を図ることが重要である。
とりわけ児童・生徒と直接かかわる教職員は、子どもの心身の発達や人格形成に大きな影響を及ぼすことから、教科等に対する専門的能力や実践的指導力のみならず、教育者としての使命感や児童・生徒に対する教育的愛情、豊かな人権感覚などが求められる。
このような観点から教職員の採用・人事異動、研修及び管理職の登用などについて工夫改善に努める。
@ 教職員採用・人事異動
教科等の専門的能力や児童・生徒に対する実践的な指導力はもとより、カウンセリングマインドなど、幅広い識見と情熱を備えた人材の確保に向けて、教員採用選考における選考方法等のさらなる工夫改善に努める。
また、教員の経験を豊かにし資質の向上を図るとともに各学校における教員構成の適正化を図るため、計画的な人事異動を推進する。あわせて特色ある学校づくりを推進するため、各学校の状況に応じ、適材を適所に配置することに努める。
[具体的取組み]
a)教員としての専門的能力や実践的指導力を重視する観点から、筆記試験や実技試験における選考方法や評価のあり方についてなお一層工夫する
b)人物評価を重視する観点から、教員採用の面接試験に際して、臨床心理士等の専門家をアドバイザーとして登用するなど、幅広い視点に立った面接方法の工夫改善を図る
c)学校の活性化を図るため、教員の年齢構成の平準化を図るなど、長期的な観点から計画的な教員採用を進める
d)特色ある学校づくりや新しい教育課程に対応し、学校が求める人材を配置できるよう、個々の教員について、自己申告に基づき、専門の教科・科目だけでなく得意分野や技能等についてのデータバンクの整備に努める
e)学校間連携が円滑に推進されるよう、必要に応じ、複数校を兼務させるなどの方策を講じる
f)教職員の能力開発や勤務意欲の向上を図るため、個人の能力や業績を的確に評価して、人事や給与に反映させる制度について検討を進める
A 教職員研修
社会の変化や様々な教育諸課題に対応し、教職員の資質の向上を図るため、教職経験に応じた研修を充実するなど、体系的かつ重点的な研修の整備に努める。
[具体的取組み]
a)教員の社会的視野を広げ、変化に対応した教育活動を展開できる資質を養うため、民間企業や社会福祉施設等における体験研修を拡充する
b)教職経験に応じた能力の育成を図るため、現行の初任者と教職経験5年(もしくは6年)目の教員全員を対象とする研修に加えて、教職経験年数別研修の機会を拡充する
c)管理職が民間の経営理念や経営感覚を身につけ学校経営能力を高めるため、管理職研修における民間企業での体験研修を拡充する
d)教員の教科等の専門性を高め、新しい教育手法を身につけるため、教員養成系大学との交流を拡充する
e)教育指導に悩みを持ち、自信を失いつつある教員に対して支援をするための研修システムの確立を図る
f)教員が自発的に長期にわたって研修するための無給休業制度を創設する
g)学校における様々な職種の専門性をより高めるため職種別の研修の充実を図る
B 管理職登用
管理職としての高い識見や人格をはじめ、学校経営に関する理念やリーダーシップ、行動力を備えた人材を確保・育成するため、管理職登用の工夫改善を図る。
[具体的取組み]
a)管理職にふさわしい資質、能力や意欲を備えた人材を確保するため、人物評価を重視して、面接など選考方法の工夫改善を図る。あわせて幅広い年齢層からの登用を進める
b)女性教員からの管理職登用を一層推進するため、管理職総数に占める割合を当面20%を目標とする。また、女性教員に教務主任など学校運営上重要な役割を積極的に経験させることなどにより管理職にふさわしい人材の計画的育成に努める
c)管理職登用予定者等の学校経営能力の育成のため、任用前研修の充実を図る
2 総合的な教育力の再構築
(1)教育コミュニティの形成
地域社会の連帯意識の希薄化や大人社会のモラルの低下、有害情報の氾濫等、地域社会における教育機能が低下しているもとで、子どもの健全育成に地域社会あげて取り組むことが重要である。
このため、地域社会の共有財産である学校を核とし、様々な人が共に子どもの教育のために力を出し合う「協働」の関係によって継続的に子どもに係わるシステムをつくり、地域で展開されている様々な活動の活性化やネットワーク化を進めることなどにより、地域社会の中で子どもを育てる教育コミュニティの形成を図る。
@ 「地域教育協議会(仮称)」の設置
教育コミュニティづくりを推進するため、中学校区単位にPTAを核として、子ども会、青少年指導員会、自治会等の関係者によって構成される「地域教育協議会(仮称)」の設置を促進する。
[具体的取組み]
ア)協議会活動の推進役となる人材の発掘と養成
地域社会における幅広い経験や青少年の育成に熱意を持つ人を発掘し、「地域教育協議会(仮称)」の推進役として起用する。協議会が実施する様々な活動においても地域の人材をボランティアとして積極的に活用するとともに、学校の施設や人材などを十分に活用する
イ)協議会の拠点の確保
学校の余裕教室等を活用して、「地域教育協議会(仮称)」の事務局を設置するとともに、地域社会の学習グループや子育てグループが気軽に交流し、子どもの育成について語り合う場を確保する
ウ)協議会による諸活動
a)子どもが地域の様々な家庭にホームステイする活動を展開するなど、地域社会で多様な人間関係をつくる機会を拡充する
b)障害のある子どもと障害のない子どもが、共に地域で活動し交流する機会を拡充する
c)子どもを対象とした勤労・ものづくり体験や社会参加活動、ボランティア活動に、地域の大人たちが積極的に関わることにより、地域の子どもは地域が一体となって育てるという機運の醸成を図る
d)家庭教育・子育てに関する相談機関や学習機会等についての情報、週末や夏休み等に子どもたちが活動できる機会や場の情報の収集・提供に努める
e)少年犯罪防止や薬物乱用防止等を目指した学校や関係諸機関で構成される地域のネットワークに積極的に参画する
A 地域における諸活動の活性化
地域社会において展開されている文化・スポーツ、福祉・ボランティアなど多様な活動を活性化し、地域の人間関係を築くことによって、健全育成への取組みに対する理解と協力を求め、教育コミュニティづくりを促進する。
[具体的取組み]
a)公民館等の社会教育施設の一層の活用を図り、地域の諸活動の活性化に努める
b)様々な活動をしている地域社会の団体・サークルに対して、「地域教育協議会(仮称)」の取組みや、地域の子どもを取り巻く教育諸課題等について情報提供を行う
(2)家庭における教育・子育て機能の強化
家庭は、しつけをはじめとして、社会的善悪を判断する力や基本的生活習慣など様々な基本的資質を育成する重要な場である。
家庭の教育力の向上を図るため、関係諸機関が連携し様々な機会を通して啓発活動に努めるとともに、保護者間の交流を図り、家庭教育や子育てを支援する。
i)家庭における教育・子育てのあり方についての啓発活動の強化
子どもに対する基本的しつけや他人に対する思いやりなど、家庭が本来果たすべき役割について、保護者が十分認識を深めるよう啓発する。
[具体的取組み]
a)市町村の公民館等で実施されている家庭教育学級や子育てグループの学習会、PTA研修の機会等を通じて「家庭教育手帳」「家庭教育ノート」を活用し、子育てのあり方について啓発する
b)将来、親となる青年男女に、成人式等の機会を通じて、子育ての意義や楽しさについて啓発する
c)社会教育テレビ番組「現代を生きる」や文部省作成の「家庭教育ビデオ」等を活用して、家庭教育や子育てに関する啓発活動を拡充する
ii)家庭教育・子育てに関する相談・支援体制の整備・充実
少子化、核家族化が進む中で、子育てに不安を感じたり、孤立している保護者、また自分の生き方や家族・友人関係等で悩んでいる子どもを支援するため、福祉・保健等の関係機関と連携して、相談・支援体制の整備を図る。
[具体的取組み]
a)府教育センターの「すこやか教育相談」における家庭教育・子育てに関する相談体制を充実する
b)福祉等の関係機関と連携しながら、家庭教育・子育てや子どもの悩みに応える「24時間子育てホットライン」を開設する
c)親・子ども同士のふれあいや交流を通じて、子育てに関する自主的な学習グループを育成するとともに、そのネットワークづくりを促進する
d)乳幼児を持つ保護者等が、家庭教育・子育てに関して気軽に相談し交流できるよう、幼稚園・保育所における地域の幼児教育センターや子育て支援センター的機能の充実を図る
【V】教育改革プログラムの推進に当たって
本プログラムの推進に当たっては、学校の自主的な取組みを支援するため、学校に対する教育委員会の機能を見直し、学校支援システムの整備を図ることが必要である。また地方分権の進む中、住民本位のより地域に根ざした教育行政が展開できるよう、府教育委員会と市町村教育委員会との適切な役割分担と連携協力を推進するとともに、市町村教育委員会において地域の特性を活かして独自に教育改革プログラムを策定し、教育改革を進めることが必要である。
さらに、本プログラムを実効性あるものとするためには、国をはじめ関係諸団体と緊密な連携を図り、その理解と支援を求め、教育改革の輪を広げていくことが必要である。
(1)学校の自主的な取組みに対する教育委員会の支援
校長を中心とした学校の自主的・自律的な運営を確保する観点から、学校裁量権限の拡大を図る。
[具体的取組み]
a)各学校における特色づくりを推進するため、予算の弾力的執行ができるよう校長の権限を拡大する
b)校長がリーダーシップを発揮し、特色づくりをはじめ教育改革を積極的に推進するため、校長の具申を最大限尊重しながら人事配置を行うなど、校内の組織体制づくりを支援する
c)学校の管理運営の責任を明確にするとともに、適正な事務処理を確保するため学校管理運営規則等、諸規定の整備を行う
d)各学校に対する指示・命令事項の簡素化を図るなど、教育委員会の関与のあり方を見直す
(2)市町村教育委員会に対する府教育委員会の支援
市町村において、より地域に根ざした教育行政が展開できるよう、市町村教育委員会の権限の強化と機能の充実を図る。
[具体的取組み]
a)市町村教育委員会に対する指導等の窓口となっている教育振興センターの役割・機能について見直しを図り、地域の実情を踏まえた総合的な支援体制を充実する
b)市町村教育委員会との情報ネットワークを整備し、双方向の情報交換機能を充実する
c)市町村教育委員会に対する指導・助言事項の簡素化を図るなど、府教育委員会の関与のあり方を見直す
(3)教育内容や指導方法の改善のための支援
各学校において様々な教育課題や新学習指導要領に対応して、特色ある教育活動を展開できるよう、教育内容や指導方法の工夫改善について支援を強化する。また、完全学校週5日制の実施に対応して、地域における教育コミュニティの形成や学校における特色ある教育課程の編成に対する支援を充実する。
@ 府教育センターにおけるカリキュラムセンター機能の整備
新学習指導要領のもとで、各学校が創意工夫を活かした特色ある教育課程を編成することができるよう、府教育センターを中心にカリキュラムに関する研究を深め、各学校に情報を提供するとともに、教育課程の編成等に関する助言・支援を行う。
[具体的取組み]
a)教育課程全般に関する研究を行い、教育課程の編成及び教育内容・指導方法についての助言・支援を行う
b)完全学校週5日制のもとで、基礎・基本の確実な定着を図り、個性を生かす教育を充実することなどを目指す新学習指導要領の趣旨について周知する
c)「総合的な学習の時間」に関する研究チームを設置し、指導のためのプログラム作成と教材の開発・収集・提供を行うとともに、研修体制を充実する
d)高等学校の新教科「情報」「福祉」の免許取得認定講習を実施するとともに、研修体制を充実する
A 完全学校週5日制推進会議の設置
完全学校週5日制の円滑な導入を図るため、学識者・市町村教育委員会・関係団体・関係部局で構成する学校完全週5日制推進会議を設置し、諸課題について調査、研究、協議を行う。
[具体的取組み]
a)「地域教育協議会(仮称)」と連携して地域における教育コミュニティの形成に向けた方策を取りまとめる
b)完全学校週5日制推進モデル校における実践の成果と課題を分析し、府教育センターと連携のもと、新学習指導要領に基づく特色ある教育課程の研究開発を推進する
(4)国等への要望
本プログラムの実現を目指し、府教育委員会をはじめ、各市町村教育委員会、学校が、関係部局・関係機関等との連携を図りながら、着実にその実施に取り組むことはもとより、国をはじめ大学や企業、私学等あらゆる方面に教育改革のための協力を求めることとする。
ア)国への要望
a)次期教職員配置改善計画を早期に策定するとともに、策定に当たっては、教員の年齢構成の平準化を図るための措置や少人数によるきめ細かな教育活動、地域の教育課題に対応できる教職員配置を盛り込むこと
b)情報教育や理科教育、産業教育などに係る教育条件の整備のための物的支援の充実及び義務教育費国庫負担金や地方交付税など財政支援の充実等を図ること
イ)大学への要望
a)過度な受験競争の緩和を図るとともに、高等学校における特色づくりの成果が活かされるよう、大学における入学者選抜方法や高等学校と大学との接続のあり方についての改善を促進すること
b)新学習指導要領の実施に対応して、大学における入試問題の内容の改善を促進すること
ウ)企業への要望
a)企業においては、学(校)歴に基づかない採用をさらに推進すること
b)民間企業が所有する施設や人材などを学校教育に活用できるよう配慮すること
c)保護者、とりわけ父親が家庭教育や地域におけるボランティア活動等に積極的に参加できるよう、環境づくりを推進すること
エ)私学への要望
建学の精神を尊重しつつ、公教育の重要な一翼を担う観点から、過度な受験競争の是正や完全学校週5日制の実施をはじめとする今日の教育改革の趣旨を活かした様々な取組みを推進すること
お わ り に
大阪府教育委員会においては、大阪の教育の現状を踏まえ、社会の変化に対応して教育改革を推進するに当たり、子どもにとって魅力ある学校づくり、自主的・自律的な学校運営体制の確立、学校と家庭・地域社会が一体となった教育コミュニティーの形成等を中心に、本プログラムを取りまとめたところである。
今後、緊急に実施すべき事項については、直ちにその具体化を図るとともに、中長期的な視点をもって取り組むべき事項については、早期に実施計画等を策定していく。また、今後の検討課題として位置づけた事項についても、可能な限り速やかにその方向性を明らかにする。
本プログラムの具体化に当たっては、各施策の厳しい選択と、多様な手法の活用など効率的な事業運営に努め、あわせて、その効果を不断に検証するための行政評価システムの導入を図り、必要に応じて事業の見直しを行う。
また、今日の厳しい財政状況の下、本プログラムの推進にともない、必要となる学校の教育環境・教育諸条件の充実に要する経費については、府と市町村との役割分担を明確にしつつ、関係部局と協議を行う。府立高等学校の特色づくりなど、教育条件の維持向上に要する財源確保については、公的な負担と保護者負担のあり方について、関係部局と連携を図りながら検討を進める。
なお、本プログラムを着実に進め、大阪の教育を改革するためには、府民の理解と協力を求めることが不可欠である。このため様々な機会を通じ、本プログラムの周知を図ることはもとより、改革の実施状況について適宜、積極的な情報開示に努めるものとする。
教育改革プログラムに対するご意見はこちらへ ( kyoisomu@office.pref.osaka.jp )
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