■ 「強制連行」「強制労働」という表現に関する質問に対する答弁書 2021年4年27月 内閣総理大臣菅義偉

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「従軍慰安婦」等の表現に関する質問主意書
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提出者 馬場伸幸
令和3年4月16日提出 質問第97号


 「従軍慰安婦」等の表現に関する問題の解決は、重大かつ喫緊の課題である。
 平成四年の政府調査等では、慰安婦に関して軍や官憲による強制連行を直接示す資料は見つかっていないにもかかわらず、これまで「従軍慰安婦」の用語は、千田夏光氏の著書(昭和四十八年)以降世の中で広く使われており、その結果、あたかも女性たちが強制的に連行され、軍の一部に位置付けられていたとの誤った理解を日本国内のみならず国際的にも与えてしまっているとの問題があり、今後、政府としてこの用語を用いることは適切ではないと考える。その意味で、本年二月八日の衆議院予算委員会で加藤官房長官が「近年、政府においては、慰安婦という用語を用いており、従軍慰安婦という用語は用いておりません」と答弁されたことは高く評価する。
 また「いわゆる従軍慰安婦」の用語も、平成五年八月四日の河野官房長官談話をはじめ広く使われている。菅内閣が同談話を継承して、そこで表現されているお詫びと反省の気持ちを引き継ぐことは十分理解するので、同談話そのものを見直すことは求めないが、「従軍慰安婦」の前に「いわゆる」を冠することは、先ほど述べた誤った理解を正すことにはならず、むしろ間違った印象を更に広めてしまう懸念があり適切ではないので、今後この用語を政府として用いることは適切でないと考える。
 以上を踏まえ、次の事項について質問する。

一 政府として、平成五年八月四日の河野官房長官を継承するのか、改めて政府の基本的立場を示されたい。
二 政府はなぜ平成五年八月四日の河野官房長官談話において、「従軍慰安婦」という用語を使用したか。
三 「従軍慰安婦」という用語に、軍より「強制連行」されたかのようなイメージが染みついてしまっていると考えるが、近年、政府としてこのような「従軍慰安婦」という用語を使用していない理由は如何。
四 今後、政府として、「従軍慰安婦」や「いわゆる従軍慰安婦」との表現を用いることは、不適切であると考えるが、政府の見解は如何。従軍慰安婦という用語を使用しない場合であっても、例えば、軍や軍からの要請を受けた業者との関係を明らかにせずに、単に女性たちが「慰安婦として従軍させられた」といった表現を用いる等、「従軍」と「慰安婦」を組み合わせた表現を使用することも不適切であると考えるが、政府の見解は如何。

 右質問する。



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「従軍慰安婦」等の表現に関する質問に対する答弁書
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内閣総理大臣 菅 義偉
令和3年4月27日 内閣衆質204第97号


一について

 政府の基本的立場は、平成五年八月四日の内閣官房長官談話(以下「談話」という。)を継承しているというものである。

二から四までについて

 平成四年七月六日及び平成五年八月四日の二度にわたり公表された政府による慰安婦問題に関する調査において、調査対象としたその当時の公文書等の資料の中には、「慰安婦」又は「特殊慰安婦」との用語は用いられているものの、「従軍慰安婦」という用語は用いられていないことが確認されている。もっとも、談話発表当時は、「従軍慰安婦」という用語が広く社会一般に用いられている状況にあったことから、談話においては、「いわゆる」という言葉を付した表現が使用されたものと認識している。
 その上で、政府としては、慰安婦が御指摘の「軍より「強制連行」された」という見方が広く流布された原因は、吉田清治氏(故人)が、昭和五十八年に「日本軍の命令で、韓国の済州島において、大勢の女性狩りをした」旨の虚偽の事実を発表し、当該虚偽の事実が、大手新聞社により、事実であるかのように大きく報道されたことにあると考えているところ、その後、当該新聞社は、平成二十六年に「「従軍慰安婦」用語メモを訂正」し、「『主として朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した』という表現は誤り」であって、「吉田清治氏の証言は虚偽だと判断した」こと等を発表し、当該報道に係る事実関係の誤りを認めたものと承知している。
 このような経緯を踏まえ、政府としては、「従軍慰安婦」という用語を用いることは誤解を招くおそれがあることから、「従軍慰安婦」又は「いわゆる従軍慰安婦」ではなく、単に「慰安婦」という用語を用いることが適切であると考えており、近年、これを用いているところである。また、御指摘のように「従軍」と「慰安婦」の用語を組み合わせて用いるなど、同様の誤解を招き得る表現についても使用していないところである。引き続き、政府としては、国際社会において、客観的事実に基づく正しい歴史認識が形成され、我が国の基本的立場や取組に対して正当な評価を受けるべく、これまで以上に対外発信を強化していく考えである。



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「強制連行」「強制労働」という表現に関する質問主意書
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提出者  馬場伸幸
令和3年4月16日提出 質問第98号


 「強制連行」「強制労働」等の表現に関する問題は緊急を要すると考える。
 したがって、次の事項について質問する。

一 昨年六月、一般公開された「産業遺産情報センター」においては、朝鮮半島から来て長崎県・端島(軍艦島)の炭鉱で労働者として働いていた人々やその家族の証言が展示されている。その中には、在日韓国人二世の元島民が「周囲の人とか、いろいろな方からかわいがられたことはあるけど、指さされ「あれは朝鮮人ぞ」とか、そういうことは、まったく聞いたことがないですね。」といった証言もある。
 1 終戦前に朝鮮半島から労働者として本土に来た人々には、自らの意志で渡航を決めた人もいるし、渡航に至る形態で見ても、募集に応じた人、官斡旋で来た人、徴用された人など、様々な経緯を辿って来た人がいるにもかかわらず、これらの人々を一括して「強制連行された」とか「強制的に連行された」と呼んでいたり、同様の趣旨で「連行された」と呼んでいたりする向きもある。そもそも「連行」とは、主要な国語辞典において、「犯人を連行する」というような形で使用される語として書かれており、例えば、岩波国語辞典(第八版、岩波書店)では「人を引っ張るようにしてつれていくこと。」、大辞泉(第二版、小学館)では「本人の意思にかかわらず、連れて行くこと。特に、警察官が犯人・容疑者などを警察署へ連れて行くこと。」とされていたり、また法令においては、例えば警察官職務執行法における「連行」という言葉は、相手の意に反し、有形力を用いて警察署などに同行させる行為などを指して使われていたりするなど、一般的には極めて強い意味合いのある言葉と言える。こうした表現を用いることは不適切きわまりないと考えるが、政府の考えを問う。
 2 また、国民徴用令に基づいて徴用された朝鮮半島出身者がいたことは事実であるが、当時日本人も同様に徴用されたのであり、徴用と「強制連行」を混同するのはおかしいと考える。政府は、過去に「強制連行について、「その意味するところについて確立された考え方があるとは承知していない」旨の答弁書を閣議決定しているとおり、「強制連行」について確立した定義は存在しない。徴用については、国民徴用令に出頭手続き等が規定された「徴用」というれっきとした法律用語があるのであるから、「強制連行」や「連行」との誤った用語を用いるべきではなく、「徴用」を用いるべきであると思うが、政府の考えを問う。
二 戦時中に朝鮮半島から多くの人々が労働者として「募集」「官斡旋」「徴用」により本土に連れてこられ、強制労働させられたとの見解があるが、政府の考えを問う。

 右質問する。



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「強制連行」「強制労働」という表現に関する質問に対する答弁書
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内閣総理大臣 菅 義偉
令和3年4月27日 内閣衆質204第98号


一について

 御指摘のように朝鮮半島から内地に移入した人々の移入の経緯は様々であり、これらの人々について、「強制連行された」若しくは「強制的に連行された」又は「連行された」と一括りに表現することは、適切ではないと考えている。
 また、旧国家総動員法(昭和十三年法律第五十五号)第四条の規定に基づく国民徴用令(昭和十四年勅令第四百五十一号)により徴用された朝鮮半島からの労働者の移入については、これらの法令により実施されたものであることが明確になるよう、「強制連行」又は「連行」ではなく「徴用」を用いることが適切であると考えている。

二について

 強制労働ニ関スル条約(昭和七年条約第十号)第二条において、「強制労働」については、「本条約ニ於テ「強制労働」ト称スルハ或者ガ処罰ノ脅威ノ下ニ強要セラレ且右ノ者ガ自ラ任意ニ申出デタルニ非ザル一切ノ労務ヲ謂フ」と規定されており、また、「緊急ノ場合即チ戦争ノ場合・・・ニ於テ強要セラルル労務」を包含しないものとされていることから、いずれにせよ、御指摘のような「募集」、「官斡旋」及び「徴用」による労務については、いずれも同条約上の「強制労働」には該当しないものと考えており、これらを「強制労働」と表現することは、適切ではないと考えている。





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