■ 修身科・国史科・地理科の中止についての指令 昭和20年12月31日 連合国軍最高司令官総司令部



昭和二十年十二月三十一日

修身科・国史科・地理科の中止についての指令


1 政府が国家神道とその教えを護ってやり助けてやるのをやめさせる昭和二十年十二月十五日付の根本的な指令に従い、また、日本政府が教育を軍国主義の考えと極端な国家主義の考えをひろめるのに利用し、それらの考えを二三の教科書に織り込み生徒に押しつけたので、
次のように指令する。
a 文部省が発行し検定した修身・国史・地理の教科書と教師用参考書を用いる官公私立学校などすべての教育機関においては、これら修身・国史・地理の課程は、すべて今すぐ中止せよ。そしてマッカーサー司令部から許されるまでは、再び始めてはならない。
b 文部省は、修身・国史・地理の教授法を示している法令・規程・訓令を、すべて今すぐ中止せよ。
c 文部省は、この覚書の別表Aの手続によって処分するために、1のaに関係のあるすべての教育機関と課程において用いる教科書と教師用参考書を取り集めよ。
d 文部省は、この覚書の別表Bの手続によって、中止された課程の代行計画を作って、マッカーサー司令部に出さなければならない。この計画は、マッカーサー司令部から中止された課程を再び始めてもよいと言われるまでは、続けてもよろしい。
e 文部省は、この覚書の別表Cの手続によって、修身・国史・地理の教科書を書き直す計画を作って、マッカーサー司令部に出さなければならない。

2 この指令のそれぞれの条項に関係のある日本政府の官吏と雇傭員、公私立学校の教員と職員はすべて、この指令の字句も精神も、一人一人責任をもって守らなければならない。


別表A
教科書と教師用参考書を取り集める手続

 文部省は、すべての教育機関と課程において用いるために発行し検定した修身・国史・地理のすべての教科書と教師用参考書を、取り集めなければならない。
 東京・京都・大阪・神戸の地区においては、できるだけ急いで取り集めなければならない。そして、どんなことがあっても、昭和二十一年度の新学期が始まるまでには、取り集めてしまわなければならない。そのときに、取り集めた部数・重量・場所の報告書を、マッカーサー司令部に出さなければならない。
 その他の地域における教科書と教師用参考書の取り集めについては、昭和二十一年四月一日にくわしい報告書をマッカーサー司令部に出さなければならない。この計画には、府県に出した命令・この覚書の引用・取り集めについてのくわしい注意・部数・重量・これらの教材を紙に造りかえるために一定のパルプ工場まで運ぶ方法などを入れることにする。


別表B
代行計画を出すについての案

 文部省は、中止された課程の代行計画の案を作って、できるだけ早くマッカーサー司令部に出さなければならない。この計画は、マッカーサー司令部から中止された課程を再び始めてもよいと言われるまでは、続けてもよろしい。
 この計画は、社会・経済・政治の根本的な真相を、生徒の世界と生活に結びつけて示すことを目的とする。
 これらの真相は、マッカーサー司令部から与えられた資料も用いて、教室内で論じ合う方法によって考えよ。そして、できるだけ時事問題と結びつけよ。
 文部省は、この計画の目的、自由な考え方を養う論じ合いの方法、それに用いる主な題目、新聞・ラジオ・その他の資料などを書いた教師用参考書を出さなければならない。


別表C
書き直しの計画を出す手続

 文部省は、修身・国史・地理の課程に用いる教科書と教師用参考書を書き直す計画を作って、できるだけ早くマッカーサー司令部に出し、その許しを受けなければならない。
 この計画は、昭和二十一年度の新学期から用いる一時的教材を整えることを目的とせよ。この計画に入れなければならない事項は、教材を整える人員、適当な題目を選ぶこと、英語に直すこと、マッカーサー司令部と相談してその許しを受けること、教材を印刷して配ること。




Copyright© 執筆者,大阪教育法研究会