■ 成人教育の発展に関する勧告 1976年11月26日 第34回ユネスコ総会採択
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成人教育の発展に関する勧告
(Rec0mmendation on the Development of Adult Education)
1976年11月26日 第34回ユネスコ総会採択
国際連合教育科学文化機関の総会は、1976年10月26日から11月30日までナイロビにおいてその第19会期として会合し、
すべての者の教育への権利ならびに文化的、芸術的および科学的な生活に自由に参加する権利を保障しかつ明記した世界人権宣言第26条および第27条で規定されている諸原則ならびに経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第13条および第15条で規定されている諸原則を想起し、
教育が、民主主義、特権の廃止ならびに自治、責任および対話の理念の社会全体における促進と切り離すことができないことを考慮し、
成人の教育へのアクセスは、生涯教育との関連で教育への権利の基本的な側面であり、かつ、政治的、文化的、芸術的および科学的な生活に参加する権利の行使を容易にするものであることを考慮し、
とくに急速な科学的、技術的、経済的および社会的変化にかんがみ、人格の全面的な発達のために教育が世界的な規模でかつ生涯にわたる過程として考えられなければならないことを考慮し、
成人教育の発展は、生涯教育との関連で青年と成人との間および異なる社会集団の間で教育資源のいっそう合理的かつ衡平な配分を実現するための手段として、また、世代間の理解の改善およびその間の協力をいっそう効果的にすることを確保しならびに社会集団の間および男女の間の政治的、社会的および経済的平等をいっそう増進するための手段として必要であることを考慮し、
成人教育は、生涯教育の不可分の一部として、経済的および文化的発展、社会的進歩、世界平和ならびに教育制度の発展に決定的に貢献しうることを確信し、
成人教育において得られる経験が、教育方法の刷新および教育制度全体の改革に不断に貢献するものであることを考慮し、
識字が政治的および経済的発展、科学技術の進歩ならびに社会的および文化的変化における決定的な要因であることが世界的に認識されており、したがって、その促進があらゆる成人教育計画の不可分の一部をなすべきであることを考慮し、
この目的の達成には、成人の協力によってその目的および内容が定められている多様な形態の教育活動のうち、成人が自己の必要に最も良く応じ、かつ自己の関心に最も直接的に関連する形態のものを選択しうる状況が創造されることが必要であることを再確認し、
世界における訓練および教育の方法が多様であること、ならびに教育制度が未発達である国または国民の要求に十分に対応していない国における固有の特別な問題に留意し、
第2回および第3回世界成人教育会議(1960年モントリオール、1972年東京)ならびに、関連項目に関する限り、国際婦人年世界会議(1975年メキシコ)の結論、宣言および勧告を実現するため、
国際公教育会議が各国の文部大臣に向けて出した女性の教育へのアクセスに関する勧告(1952年勧告第34号)、農山漁村地域における教育施設に関する勧告(1958年勧告第47号)ならびに識字教育と成人教育に関する勧告(1965年勧告第58号)、ペルセポリスにおける国際識字シンポジウム(1975年)において採択された宣言、ならびにユネスコ総会第18会期(1974年)において採択された国際理解、国際協力および国際平和のための教育ならびに人権および基本的自由についての教育に関する勧告に定める諸原則の実施についていっそう貢献することを希望し、
ユネスコ総会第18会期(1974年)において採択された技術教育および職業教育に関する改正勧告の規定ならびにすべての人が自由かつ民主的な文化へのアクセスおよび社会の文化的生活に積極的に参加する機会を得ることを確保するための措置に関する国際文書が採択されることを目的として同総会において採択された決議3・426の規定に留意し、
さらに、国際労働総会が、成人教育の種々の側面に関するいくつかの文書、とくに、職業指導に関する勧告(1949年)、農業における職業訓練に関する勧告(1956年)、有給教育休暇に関する条約および勧告(1974年)ならびに人的資源の開発に関する条約および勧告(1975年)を採択したことに留意し、
ユネスコ総会第18会期において成人教育を加盟国に対する勧告の主題とすべきことを決定して、
1976年11月26日にこの勧告を採択する。
総会は、加盟国が、この勧告に定める諸原則の実施に必要な立法その他のすべての措置を各国の憲法上の慣行に従ってとることにより、次の諸規定を適用することを勧告する。
総会は、加盟国が、成人教育について責任を負う当局、部局および団体、また、成人のための教育事業を行っている種々の組織ならびに労働組合、協会、企業その他の関係団体に対しこの勧告について注意を喚起することを勧告する。
総会は、加盟国が、この勧告を実施するためにとった措置について、総会が定める時期におよび様式で総会に報告することを勧告する。
定 義
1 この勧告において、
「成人教育」という用語は、内容、段階および方法がいかなるものであろうとも、正規なものあるいはその他のものであろうとも、学校、大学ならびに見習い期間における当初の教育を延長するにしろ代替させるにしろ、組織された教育過程の全体を意味する。この過程は、自己の所属する社会によって成人とみなされる人々が、その能力を発達させ、知識を豊かにし、技術的もしくは専門的な資格を向上させ、あるいはそれらを新しい方向に転換させ、さらに全面的な人格の発達および均衡がとれかつ独立した社会的、経済的、文化的発展への参加という二重の展望において彼らの態度ないし行動についての変化を生じさせるものである。
成人教育は、しかしながら、それ自体で完全なものとみなされてはならない。成人教育は、生涯教育・生涯学習の全体的な体系の一区分であり、不可欠な部分である。
「生涯教育・生涯学習」という用語は、現行教育制度の再構成と教育制度の外にある教育的可能性全体の発展とを目的とする包括的な体系を意味する。
そのような体系の中では、男性と女性は、自己の思想と行動との間の継続的な相互作用を通して、自己教育の主体となる。
教育と学習は、就学期間に限定されることなく、全生涯にわたり、あらゆる技術と知識の分野を含み、可能なあらゆる手段を活用し、人格の全面的な発達のための機会をあらゆる人々に与えるべきである。
子ども、青年およびあらゆる年代の成人がその生活の中でかかわる教育上および学習上の過程は、その形態はどうであれ、全体として考慮されるべきである。
目的および戦略
2 一般的にいえば、成人教育の目的は、以下のことに貢献すべきである。
(a) 平和、国際理解および協力のための事業を促進すること
(b) 主要な今日的問題および社会変化についての批判的な理解と、社会的正義を達成するために社会の進歩に積極的な役割を果たす能力を発達させること
(c) 人々と彼らの物理的、文化的環境との間の関係についての高まってきた認識を促進すること、および環境の改善への欲求と共通の遺産であり公共の財産である自然の尊重および保護への欲求とを育成すること
(d) 国家的および国際的局面の両方で、慣習および文化の多様性に対する理解と尊重を創り出すこと
(e) 家族、地方、国家、地域および国際的な水準における多様な形態のコミュニケーションおよび連帯についての高まってきた認識を促進し、多様な形態のコミュニケーションおよび連帯を実行すること
(f) 個人的に、あるいは集団で、あるいはこの目的のために特別に設立された教育施設における組織的研究のいずれかで、人格の全面的な成熟の助けとなる新しい知識、資質、態度あるいは行動形態を習得するための才能を発達させること
(g) 男女に発達した技術教育および職業教育を与え、かつ個人的にあるいは集団の中で、新しい物的財産および新しい精神的もしくは美的な価値を創造する能力を発達させることによって、個々人が自覚的かつ効果的に労働生活に入ることを確保すること
(h) 子どもの養育に関連した問題を適切に把握する能力を発達させること
(i) 余暇を創造的に活用する才能、および何らかの必要なもしくは要求される知識を習得する才能を発達させること
(j) マスコミ、とくにラジオ、テレビ、映画およびプレスを活用する際、および社会によって今日の男女に届けられる多様なメッセージを解釈する際の必要な識別力を発達させること
(k) 学習することを学ぶ才能を発達させること
3 成人教育は、以下の原則に基づくべきである。
(a) 成人教育は、参加者のニーズを基礎とし、成人教育の発展における彼らのさまざまな経験を活用しなければならない。教育上最も恵まれていない集団が、集団的な発達の展望の中で最優先権が与えられるべきである。
(b) 成人教育は、あらゆる人間が個人の発達の水準ならびにその社会的活動の関連で、彼らの生涯を通して進歩する能力と決意(determination)に依拠すべきである。
(c) 成人教育は、読書についての関心を喚起し、かつ文化的な願望を発達させるべきである。
(d) 成人教育は、成人学習者の関心を刺激しかつ持続し、彼らの経験に訴え、彼らの自立を強化し、彼らが関係する教育過程のあらゆる段階に積極的な参加を得るべきである。
(e) 成人教育は、日常の生活と労働の現実の条件に適合し、成人学習者の個人的特質すなわち彼らの年齢、家族、社会上、職業上もしくは住居上の背景、およびこれらの相互関連の状態を考慮すべきである。
(f) 成人教育は、ニーズの決定、カリキュラムの開発、プログラムの実施や評価を含むあらゆる段階の学習課程での決定行為に、個々の成人、集団、地域社会の参加を追求すべきである。また、成人教育は、成人の労働環境やその生活の変革を目的として教育活動を計画すべきである。
(g) 成人教育は、成人学習者が所属する国および社会それ自体の社会的、文化的、経済的、制度的要因を考慮して、柔軟に組織され、運用されるべきである。
(h) 成人教育は、地域社会全体の経済的、社会的発展に貢献すべきである。
(i) 成人教育は、成人が自己の日常の問題を解決するために設立した集団的な組織を教育過程の不可欠な部分として承認すべきである。
(j) 成人教育は、すべての成人が、自己の生活経験によって、自己の参加する教育過程において学習者と教師の両方の役割を演ずることができる文化の媒介者である、ということを承認すべきである。
4 加盟国は、以下のことをすべきである。
(a) 成人教育が、自国の教育制度の必要かつ固有の構成要素であり、自国の社会的、文化的、経済的発展の政策における永続的な要素であることを承認すること。それゆえ、加盟国は、性、人種、出身地、年齢、社会的地位、意見、信条あるいは以前の教育水準を根拠とする制約をおかずに、あらゆる範疇の成人のニーズと欲求に見合う機構の創造およびプログラムの作成と実施および教育方法の適用を促進すべきである。
(b) 成人教育が、一定の状況においてあるいは特定の期間において、補完的な役割を果たしうるけれども、成人教育の完全な成功のための先行条件である適切な青少年の教育(youth education)の代替物を意図するものではないことを承認すること。
(c) 女性が成人教育から隔離されている状態を解消する際に、従来男性に留保されていた活動あるいは責任につながる資格を得るための訓練を与える活動を含む成人教育活動の全範囲に平等にアクセスし、かつ完全に参加することを確保する方向で努力すること。
(d) 次のような人々による成人教育および地域社会発展のプログラムへの参加を促進するための措置をとること。それらの人々とは、都市部生活者であれ農村部生活者であれ、定住民であれ移住生活者であれ、最も恵まれない集団の人々、とりわけ文盲の人々、十分な水準の普通教育あるいは資格を獲得できていない青少年、移住労働者や難民、失業者、種族上の少数者、身体的もしくは精神的障害をわずらっている人々、社会的適応の困難を経験している人々、および拘禁刑に服している人々、である。この関連で、加盟国は社会集団間のより公平な関係を育成することをめざした教育上の戦略の探究に参加すべきである。
5 各教育制度における成人教育の位置は以下のことを達成するために定められるべきである。
(a) 当初の教育と訓練へアクセスする際の主要な不平等、とりわけ年齢、性、社会的地位、社会的出身もしくは出身地に基づく不平等を是正すること
(b) 生涯教育・生涯学習のための科学的な根拠を確保し、ならびに人々が自己の生活を教育と労働とに割り振る方法におけるより大きな柔軟性を保証すること、とりわけ、全生涯を通して教育と労働の期間を交互に繰り返すようにし、かつ継続的な教育を労働自体の活動の中に統合するよう助長すること
(c) 成人の多様な経験のもつ現実のもしくは潜在的な教育価値を承認し、さらに開発すること
(d) ある型もしくはある水準の教育から他の型もしくは水準の教育へ容易に移ること
(e) 教育制度とそれをとりまく社会的、文化的、経済的環境とをより密接に相互関連させること
(f) 教育費を、社会的、文化的、経済的な発展に貢献するという観点から、より効率的にすること
6 いかなる発展計画の企画と実行においても、読み書き能力を含む成人教育の構成要素の必要性を考慮すべきである。
7 成人教育政策の目的と目標は、国家発展計画に組み入れられるべきである。すなわち、その目的と目標は、教育政策および社会的、文化的、経済的発展政策の全目標に関連して定められるべきである。
成人教育およびとくに学校教育、高等教育および当初の職業訓練のような他の形態の教育は、生涯教育・生涯学習という主義(tenets)に従って、同等であるが区別された教育制度における等しく不可欠な構成要素として把握され、組織されるべきである。
8 公当局、教育に従事する機関もしくは団体、任意の団体、労働者ならびに雇用者組織、および成人教育に直接参加する人々が上記の目標をさらに明確にし実行に移す仕事を協力して行うように奨励する措置がとられるべきである。
成人教育の内容
9 成人教育の活動は、生涯教育・生涯学習の一部分をなすとみなされているが、理論上の境界線を有していない。それゆえに、その活動は、発展、地域社会の生活への参加及び個人の自己実現という明確なニーズによって創り出される具体的な状況に適合すべきである。すなわち、その活動は、生活のあらゆる側面と知識のあらゆる分野に及び、人々の到達水準がいかなるものであろうとも、あらゆる人々を対象とする。成人教育活動の内容を定める際に、教育上最も恵まれない集団の明確なニーズを優先すべきである。
10 市民教育、政治教育、労働組合教育および協同組合教育の活動は、あらゆる水準の意思決定過程で社会的な問題の処理に効果的に参加することによって、独自のかつ批判的な判断力を発展させること、および生活条件および労働条件に影響を与える変化に対処するために各自が必要とする能力を身につけ、もしくは高めることをとくに目的とすべきである。
11 技術教育および職業教育活動は、特別な状況における短期的な解決の達成をめざすアプローチを除外しないが、一般原則として、職業のその後の変化に対応するのに十分幅の広い資格の習得、および労働生活上の問題の批判的な理解力の習得に重点をおくべきである。普通教育および市民教育と技術教育および職業教育とを統合することが必要である。
12 文化の発展および芸術的創造を促進するための活動は、現存の文化的および芸術的な価値や作品の正しい評価力を促進し、同時に、各個人もしくは集団に内在する表現能力を発揮させることによって新しい価値および新しい作品の創造の促進を目的とすべきである。
13 成人教育への参加は、性、人種、出身地、文化、年齢、社会的地位、経験、信条および以前の教育水準を根拠として制限されてはならない。
14 女性に関して、成人教育活動は、女性が自己決定を達成し集団的な勢力として社会生活に貢献できることをめざす今日の社会運動全体に可能な限り統合されるべきである。したがって、その活動は、とくに以下のような一定の側面に焦点をあてるべきである。
(a) 各社会において、男女平等の条件を確立すること
(b) 男女が責任を果たすあらゆる分野において、社会が男女にあらかじめ決めつけた型から彼らを解放すること
(c) 完全な個人として女性が存在するための必要条件である市民的、職業的、心理的、文化的および経済的自立
(d) 国境を越えて連帯を高めるために、多様な社会における女性の地位および女性運動についての知識
15 農村部に住む定住者あるいは遊牧民に関して、成人教育活動は、とくに次のことをめざすべきである。
(a) それらの人々が、自分自身の価値の放棄を強制されることなしに、生活水準を改善するような個人的もしくは共同での組織化の技術的手続および方法を活用できること
(b) 個人もしくは集団の孤立を終らせること
(c) 農村地域の極端な過疎を防ぐためになされる努力にもかかわらず、農業を捨てざるをえない個人もしくは集団に、農村の環境にとどまりながら新しい職業活動に従事すること、あるいは新しい生活方法のためにこの環境を捨てることのいずれかを準備すること
16 文盲のままでいるか、あるいは財源の乏しさ、限られた教育もしくは地域社会の生活への制限された参加のために社会への適応に困難を経験しているような人々もしくは集団に関して、成人教育活動は次のことをめざすべきである。すなわち、彼らが基礎的な知識(読み、書き、計算、自然現象および社会現象の基本的な理解)を習得することができるようになるのみならず、彼らが生産労働に従事すること、衛生、健康、家族の営みおよび子育てに関する問題の自覚と把握力を促進すること、および彼らの自治を高め、地域社会の生活への参加を増進することがより容易になるようにする。
17 十分な水準の普通教育もしくは資格をいまだ習得することができていない青少年に関して、成人教育活動は、とくに社会の問題を理解し、社会的な責任を担える能力を発達させ、さらに職業活動の遂行に必要な職業訓練および普通教育を利用可能ならしめるために、彼らが補足的な普通教育を習得できるようにすべきである。
18 学業証明書もしくは職業適性証明書によって正式に証明される教育上もしくは職業上の資格で、社会的あるいは経済的理由のため以前には取得できなかった資格を取得したいと人々が願う場合、成人教育は、彼らにそれらの証明書の授与に必要な訓練を受けることができるようにすべきである。
19 身体的もしくは精神的に障害のある人々に関して、成人教育活動は、その障害の結果として損なわれあるいは失ってしまった身体的もしくは精神的能力を回復しあるいは埋め合わせること、および、知識と技術、そして必要な場合には、社会生活のためおよび障害に見合った職業活動の遂行のために必要とされる専門的な資格を彼らが取得できるようになることをとくにめざすべきである。
20 移民労働者、難民および種族上の少数者に関して、成人教育活動はとくに以下のことをすべきである。
(a) 受入れ国の社会に一時的もしくは永久的に同化するため、そして適切な場合には、出身国の社会に再同化するために必要とされる言語上の知識および一般的知識ならびに技術的もしくは専門的資格を彼らに取得させること
(b) 自己の出身国の文化、今日の発展および社会変化と接触を保てるようにすること
21 教育を受けた者を含む失業者に関して、成人教育活動は、彼らが職を見つけもしくは再就職しうるように自己の技術的もしくは専門的資格を応用しもしくは修正すること、そして自己の社会経済的状況に対する批判的な理解力を増進することをめざすべきである。
22 種族上の少数者に関して、成人教育活動は、彼らが自己を自由に表現し、母語で自己および自己の子どもを教育し、自己の文化を発展させ、そして母語以外の言語を学ぶことができるようにすべきである。
23 高齢者に関して、成人教育活動はとくに以下のことをめざすべきである。
(a) あらゆる高齢者に対し今日の問題および若い世代についてのよりよい理解力を与えること
(b) 余暇のすごし方の技術(skills)を習得し、健康を増進しおよび人生に高い意義を見出すことを助長すること
(c) 労働生活を離れようとしている人々の利益のために、退職した人々の直面する問題およびそのような問題に対処する方法についての基礎知識を提供すること
(d) 労働生活を離れた人々が自己の身体的、知的能力を保ち、引き続き地域社会の生活に参加し、さらにまた労働生活中には接しえなかった知識の分野もしくは活動の型にアクセスすることができること
方法、手段、研究および評価
24 成人教育の方法は以下のことを考慮すべきである。
(a) 成人に特別に影響を与える参加および学習を誘発するものならびにその障害物
(b) 家族、社会および職業における責任の遂行の際に成人によって得られた経験
(c) 成人ゆえに生じる家族、社会、もしくは職業における義務、およびその結果生じる疲労と注意力の減退
(d) 成人が自己の学習に責任を負う能力
(e) 活用しうる教育職員の文化的・教育学的水準
(f) 学習過程の心理学上の特性
(g) 認識できる関心の存在と特性
(h) 余暇の利用
25 成人教育活動は、通常、定められた目標と同様に、確認されたニーズ、問題、要求および資源を基礎として計画され実施されるべきである。それらの活動の影響は、評価され、所与の条件に最も適切である成人教育を追求する活動のすべてによって強化されるべきである。
26 社会的もしくは地理的単位全体を対象とし、地域社会の中での集団の進歩および社会進歩の前進のためにその単位全体に内在するエネルギーをすべて動員する成人教育活動がとくに強調されるべきである。
27 できる限り広範な参加を奨励するために、地方に基礎をおく成人教育に以下のような方法を加えることが、いくつかの場合では適切であろう。
(a) 通信教育講座およびラジオもしくはテレビ放送のような遠隔の教授プログラム。このようなプログラムを受ける意図のある人々は、共同視聴もしくは共同学習のために集団を作ることが要請される(このような集団は適切な教育学上の援助を受けるべきである)
(b) 移動車によって行われるプログラム
(c) 自己教授のプログラム
(d) 研究サークル
(e) 教師、学生およびその他地域社会の構成員による自発的な活動の活用
公共の文化機関(図書館、博物館、レコードライブラリー、ビデオカセットライブラリー)が成人学習者の自由な使用を可能にするさまざまなサービスは、成人教育専門の新しい型の機関とともに、系統的な基礎をもって発展させられるべきである。
28 成人教育のプログラムへの参加は自発的な事柄であるべきである。国家およびその他の団体は、生涯教育・生涯学習の精神で個人および集団の教育への欲求を助長するように努めるべきである。
29 成人教育における学習者と教師の関係は、相互尊重と協力に基づいて確立されるべきである。
30 成人教育のプログラムへの参加は、用意された訓練過程についていける能力のみを条件とすべきであって、いかなる年齢制限(年齢の上限)、もしくは修了証書や資格の所有に関連するいかなる条件にも左右されてはならない。選抜が必要な場合、その根拠となる適性テストはいずれも、そのようなテストを受ける多様な範疇の志願者に合わせたものにすべきである。
31 断続的な参加を通しても学習や経験や資格を取得し蓄積することができるようにすべきである。この方法で得た権利や資格は、正式の教育制度、もしくはその制度内での継続的な教育を見込んでおくような性格を有する制度によって与えられたものと同等であるべきである。
32 成人教育で活用される方法は、競争心に訴えるのではなく、共有の目的意識、および参加、相互援助、協力そしてチームワークの習慣を成人学習者に発達させるべきである。
33 技術的もしくは専門的資格の向上のための成人教育のプログラムは、できる限り、労働時間中に、季節労働の場合には閑散期に組織されるべきである。このことは、一般原則として、その他の形態の教育、とくに識字のプログラムおよび労働組合教育にもまた適用されるべきである。
34 成人教育活動の発展に必要な建物が提供されるべきである。場合によって違うが、この建物は、居住設備の有無にかかわらず成人教育の目的に独占的に使用されうるか、あるいは多目的施設もしくは総合施設、あるいは他の目的 とくに、クラブ、作業場、学校、大学、研究所、社会センター、文化センター、社会文化センター、あるいは屋外施設 のために一般的に使用されているかもしくは使用される可能性のある建物であろう。
35 加盟国は、あらゆる側面の成人教育およびその目標についての共同研究を積極的に奨励すべきである。研究計画は、実践的な根拠をもつべきである。これらの計画は、学際的なアプローチを採用している大学、成人教育団体および研究団体によって実行されるべきである。国内および国際的な段階で成人教育の当事者に、研究計画の経験および成果を普及するための措置がとられるべきである。
36 成人教育活動についての系統的な評価は、その活動につぎこまれた資源から引き出される最上の成果を確保するために必要である。評価を効果的に行うために、系統的な評価があらゆる水準およびあらゆる段階の成人教育のプログラムに組み入れられるべきである。
成人教育の構造
37 加盟国は、成人教育のニーズに対応する団体のネットワークの確立および発展を確保しようと努力すべきである。このネットワークは、多様な個人的および社会的な状況とそれらの展開に対応するために十分に柔軟なものであるべきである。
38 以下のことをするために措置がとられるべきである。
(a) 成人教育のプログラムを通じて充足可能な教育上のニーズを認定しかつ予期すること
(b) 現存の教育施設を十分に活用し、定められた目標すべて達成するために、不足している教育施設を創設すること
(c) 成人教育の発展のために必要な長期の投資をすること。とくに、計画立案者、管理運営する者、教授者を訓練する者、組織活動および訓練活動を行う者の専門教育、成人に適した教育上の戦略および方法の準備、主要な施設の設置、視覚機器や器具や専門的メディアのような必要とされる基本的設備の生産と提供
(d) 経験の交流を奨励すること、および、成人教育の戦略、構造、内容、方法ならびに質的および量的な成果についての統計上その他の情報を収集し、普及すること
(e) 教育への参加を妨げる経済的および社会的障害を除去し、成人教育機関および任意の組織による積極的な勧誘のような手段を活用することによって、あらゆる潜在的な受益者、とくに最も恵まれない人々の注意を成人教育計画の性質や形態に系統的に向けさせ、成人教育の参加することが可能であるがためらいがちな人々に情報を提供し相談に応じ励ますこと
39 上記の目標を達成するために、成人教育に特別にかかわる組織および機関、ならびに公立と私立の両方を含む学校、大学、文化施設、研究施設、図書館および博物館、さらに加えて、以下のような成人教育を主たる目的としない他の機関を動員することが必要であろう。
(a) 大衆向け情報機関、すなわちプレス、ラジオ、テレビ
(b) 任意の団体およびその連合体
(c) 職業上の、労働組合の、家族の、および協同の組織
(d) 家族
(e) 従業員の訓練に貢献しうる商工業の会社
(f) 個人的な基礎をもって働いている教育者、技術者もしくは資格をもつ専門家
(g) 自己の教育、訓練、経験、専門的活動もしくは社会的活動を生かして貢献できる地位にあり、本勧告の前文に規定する原則および本勧告に定める目標と戦略を適用する意志と能力の両方をもつあらゆる個人もしくは集団
(h) 成人の学習者自身
40 加盟国は、学校、職業教育施設、大学および高等教育機関が成人教育のプログラムを固有の活動の不可欠な部分をなすものとみなし、そして、他の機関がとくに自己の教授陣を利用可能にし、研究を行い、必要な人員を訓練することによって提供する成人教育計画の発展の促進をめざした行動に参加するよう奨励すべきである。
成人教育の仕事に従事している者の訓練および地位
41 成人教育は、いかなる地位においても、いかなる目的のためであろうと、その実施にかかわる者に対し、特別の技能、知識、理解および態度を要求することが認識されるべきである。したがって、これらの者は、その特別の職務に応じて慎重に採用され、かつ当初の訓練および現職教育を自己および自己が従事している仕事のニーズに応じて受けることが望ましい。
42 成人教育の仕事に有益な貢献を行うさまざまな専門家が、いかなる性質または目的であろうとも成人教育活動に参加することを確保するための措置がとられるべきである。
43 常勤の専門的職員の雇用に加えて、あらゆる者の成人教育活動に定期的にまたは不定期に、有給または無給でいかなる種類の貢献をもすることができる者の支援を得るための措置がとられるべきである。組織化および指導のあらゆる側面に自発的に関与し、参加することは、決定的に重要であり、また、種類のいかんを問わず、技能を有する者は、成人教育活動に貢献することができる。
44 成人教育のための訓練は、成人教育が行われる一般的な背景を考慮に入れて、遂行されるさまざまな職務に関係する技能、知識、理解および個人的態度のすべての側面を実行しうる限り含むべきである。これらの側面を相互に統合することにより、訓練自体が適切な成人教育の実践の例示となるべきである。
45 成人教育に従事している常勤職員の労働条件および報酬は、他の場合で同様の地位にある労働者の労働条件および報酬に匹敵するものであるべきである。また、有給の非常勤職員の労働条件および報酬は、これらの者の主たる職業にさしつかえないように適切に調整されるべきである。
成人教育と青年教育の関係
46 青年の教育は、その社会的出身がいかなるものであろうとも、青年が成人教育に参加しあるいはその提供に貢献できるように、成人教育に関して得られた経験を考慮しながら、生涯教育・生涯学習の方向に漸進的に向けられるべきである。
この目的のために、以下のことをめざして、措置がとられるべきである。
(a) より広範に利用可能なあらゆる水準の教育および訓練にアクセスすること
(b) 学問分野間、さらに教育の型や水準の間の障壁を取り除くこと
(c) 知的好奇心を維持しかつ刺激する目的で学校および訓練の教授細目を修正すること、さらに、知識の習得と並んで、行動についての自己教授方式、批判的な視点、熟考する態度および創造的な能力の発達により大きな重点を置くこと
(d) 高等教育機関および訓練施設をそれらをとりまく経済的、社会的環境にますます開かれたものにし、教育と労働をより強固に結びつけること
(e) 就学中の青年および全日制の教育もしくは当初の訓練を修了する青年に、成人教育が提供する機会についての情報を与えること
(f) 望ましい場合には、成人と青年を同一の訓練のプログラムに組み入れること
(g) 青年運動を成人教育の冒険的な試み(ventures)と結びつけること
47 資格が学校もしくは大学での勉強を通して取得されるとき、それについての卒業証書もしくは修了証書が授与されるような資格の取得が、成人教育の一部分として組織された訓練過程を通じてなされる場合においては、そのような訓練は、学校や大学においてと同等の地位を有する卒業証書もしくは修了証書の授与によって承認されるべきである。それについての卒業証書もしくは修了証書が授与されるものと同類の資格の取得につながらない成人教育のプログラムも、適切な場合には、証書の授与によって承認されるべきである。
48 青年のための成人教育計画に最優先権が与えられる必要がある。なぜなら、世界の大部分の地域において、青年は社会の非常に大きな部分を占めており、彼らの教育は、彼らの住む社会における政治的、経済的、社会的、文化的発展にとって最も重要であるからである。青年のための成人教育計画は、彼らの学習のニーズを考慮するのみならず、彼らが自己を未来の社会に適応させることができるようにすべきである。
成人教育と労働の関係
49 教育への権利と労働権の保障の間の密接な関連を配慮しながら、さらに、賃金労働者か否かを問わずあらゆる者が、受けている制約を減らすことによってのみならず、成人教育のプログラムを通して利用可能になることがめざされている知識、資質もしくは適性を自己の仕事に活用する機会、および、個人の実現と発展の源泉ならびに労働生活と社会生活の両面での創造的な活動への刺激を労働の中に見出す機会を与えることによって、成人教育のプログラムへの参加を促進する必要性を配慮しながら、以下の措置がとられるべきである。
(a) 成人教育のプログラムおよび活動のカリキュラムを作成する際に、成人の労働経験が考慮に入れられることを確保すること
(b) 労働の組織および条件を改善すること、とくに労働に伴う苦痛を軽減し、労働時間を短縮し、調整すること
(c) 報酬を損なうことなしに、もしくは補償的な報酬の支払いおよび受ける教育にかかる費用を埋め合わせる目的での支払いを条件として、労働時間中に教育休暇を与えることを促進すること、および、労働生活中の教育もしくは最新化を助長するあらゆる他の適切な補助手段を活用すること
(d) このような援助を受けた人々の雇用を保障すること
(e) 主婦、その他の家事を行う者および賃金労働者でない者、とくに制限された手段しか持たない人々に上記に匹敵する便宜を提供すること
50 加盟国は、成人教育に関係する条項、とくに以下のことを規定している条項を労働協約の中に含めることを奨励もしくは助長すべきである。
(a) 成人教育のプログラムに参加するために、被雇用者、とくに急速な技術革新がおこっている部門に従事している人々もしくは一時解雇におびえている人々に与えられる物理的可能性および財政的援助の性質
(b) 成人教育を通して取得された技術上もしくは専門上の資格が、職種を決定する際および報酬の水準を確立する際に考慮される方法
51 加盟国は、また、雇用者に対して次のことを要請すべきである。
(a) 熟練労働力の要件およびそのニーズに見合うと思われる募集方法を資格のレベルおよび型に応じて予測し、公表すること
(b) 被雇用者が職業上の資格の向上のために努力することを奨励するような募集制度を組織しまたは発展させること
52 加盟国は、雇用者が職員のために組織した成人の訓練のプログラムに関連して、雇用者に以下のことを確保するよう奨励すべきである。
(a) 被雇用者がそのプログラムの準備に参加すること
(b) そのようなプログラムに参加する人々は労働者を代表する団体と協議して選ばれること
(c) 参加者が、そのプログラムの完了と同時に、所与の課程を終了したこと、もしくは所与の資格を取ったことを第三者に納得させることのできる訓練の修了証書もしくは資格証明書を受け取ること
53 労働者、農民もしくは職人の社会集団に所属している成人がそのような集団のために企画された成人教育のプログラムの実施に参加することを促進するための措置がとられるべきである。この目的のために、これらの成人は、主として自己にかかわる決定を行うことのできるように特別の便宜が与えられるべきである。
成人教育の運営、管理、調整、財政
54 国際的、地域的、国家的および地方的なすべての段階で、以下のことが設定されるべきである。
(a) 成人教育の分野で権限を有する公当局間の協議および調整のための機構もしくは手続
(b) 上記の公当局、成人学習者の代表、および成人教育計画もしくはその計画の発展を促進することをめざして活動を行っているあらゆる団体との間の協議、調整および調和のための機構もしくは手続
これらの機構は、目標を確認し、直面する障害を研究し、成人教育政策の実施に必要な措置を提案し、適切な場合にはそれらを実行し、なしとげられた進歩を評価することを主要な任務とすべきであり、そして、そのために資源が利用できるべきである。
55 一方で成人教育に責任を負う公当局および公的団体と、他方でラジオやテレビに責任を負う公的もしくは私的団体との間の共同行動および協力のための機構が、国家的段階で、適切な場合には、下位の段階で設立されるべきである。
これらの機構は、以下のことをめざした措置を研究し、提案し、適切な場合には、実行することを主要な任務とすべきである。
(a) マスメディアが余暇の活動および人々の教育に実質的な貢献をすることを確保すること
(b) マスメディアを通じて、成人教育の分野におけるあらゆる意見および傾向に関して表現の自由を保障すること
(c) 放送番組全体の文化的もしくは科学的な価値および教育的な質を向上させること
(d) ラジオもしくはテレビによる教育番組の放送に責任を負う人々もしくはそれに専門的に従事している人々と、その番組の対象となる人々との間の相互交流を確立すること
56 加盟国は、公当局が成人教育の発展のために固有の明確な責任を果たしながら、以下のことを行うことを確保すべきである。
(a) 適切な法的および財政的な枠組みを定立することによって、自発的でかつ行政上独立した基盤をもつ成人教育団体およびその連合体の創設と発展を奨励すること
(b) 成人教育計画もしくはその計画の促進をめざした行動に参加している権限ある非政府団体に、その職務を実行できるだけの技術的資源もしくは財源を与えること
(c) 上記の非政府団体が、本勧告第2項に掲げられた原則を実行するために必要な言論の自由、および技術上、教育上の自治を享受するということを理解すること
(d) 公的な基金からの寄附を受けている団体による成人教育計画もしくは活動の教育的および技術的な効率や質を確保するための適切な措置をとること
57 公的な基金とくに教育のためにあてられる公的な基金の成人教育へ割り当てられる割合は、本勧告の枠組内で各加盟国が承認する社会的、文化的、経済的発展のための成人教育の重要性に見合うものであるべきである。基金の成人教育への全体的割当ては、少なくとも以下のことを対象とすべきである。
(a) 成人教育にふさわしい施設を用意するかもしくは既存の施設をふさわしいものにすること
(b) あらゆる種類の学習教材の作成
(c) 教授者の報酬およびいっそう高度な訓練
(d) 調査研究費および情報収集費
(e) 所得の損失のための補償
(f) 授業料、および必要でかつ可能な場合には、訓練を受ける者の宿泊費および交通費
58 成人教育のプログラムおよびその発展の促進を意図する活動に必要な資金を恒常的に確保するための措置がとられるべきである。地方当局を含む公的機関、信用機関、互助会および存在する場合には国家的保険機関ならびに雇用者は、それぞれの責任と資源に応じてこの資金拠出を行うべきである。
59 成人教育用に利用しうる資源の最適な利用をするために必要な措置がとられるべきである。この目的のために利用しうるあらゆる物的および人的資源の両方が動員されるべきである。
60 個人については、資金の不足が成人教育のプログラムへの参加の障害になってはならない。加盟国は、研究目的達成のための財政援助が成人教育を始めるためにそれを必要とする人々にとって利用可能であるよう確保すべきである。恵まれない社会集団の構成員の成人教育への参加は、一般原則として無償であるべきである。
国際協力
61 加盟国は、成人教育の発展、その内容と方法の改善、および新しい教育上の戦略を探究するための努力を促進するために、2国間を基礎にするか、多国間で行うかは別として、加盟国の協力を強化すべきである。
この目的のために、加盟国は、成人教育にかかわる特別の条項を教育、科学および文化の分野における協力に関する国際協定の中に規定する努力をすべきであるし、ユネスコにおける成人教育の事業の発展と強化を促進する努力をすべきである。
62 加盟国は、技術援助および適切な場合には物的または財政的援助を他の加盟国に提供することによって、他の加盟国の自由になる成人教育に関する経験を推し進めるべきである。
加盟国は、援助を希望する国に対し、ユネスコおよび非政府組織を含むその他の国際組織を通じて、当該諸国の社会的、文化的および経済的発展のために、成人教育活動を系統的に援助すべきである。
国際協力が、他国の成人教育の構造、教育課程、方法および技術をたんに移転するという形態をとるのではなく、むしろ関係国の特別な事情に適応した適切な機関および十分に調整された構造の設立を通じて当該国における発展を助長し刺激することを確保する配慮をすべきである。
63 国家的、地域的および国際的段階で次のことを目的とした措置がとられるべきである。
(a) 成人教育の戦略、構造、内容、方法および成果ならびに関連する研究に関する情報および文献を定期的に交換すること
(b) 母国を離れて勤務することのできる教授者、とくに、2国間または多数国間の技術援助プログラムに基づいて勤務することができる教授者を養成すること
このような交流、とくに、同じ問題に直面しかつ同じ解決策を適用することが可能な国の間の交流は、組織的に行われるべきである。この目的のために、とくに地域または地区単位で、関連する実験を公表しかつそれがどの程度適用可能であるかどうかを検討するための会議を開催すべきである。同様に、実施される研究のよりよい成果を確保するために共同機構が設置されるべきである。
加盟国は、国際的に承認される単位制度の創設の援助を目的とし、外国語教育および基礎的な研究のような重要な分野における国際基準の作成および採択に関する合意を促進すべきである。
64 視聴覚の器材および教材ならびに教育プログラムおよびこれらを取り入れた教材の最適頒布および最適利用のため の措置がとられるべきである。とくに、次のことを行うことが適切である。
(a) 頒布および利用は、各国の文化的特性および発展の水準を考慮して、その社会的ニーズと条件に適応させること
(b) 商業または知的所有権を規制する規則に起因する頒布および利用の障害をできる限り除去すること
65 加盟国は、国際協力を促進するために、国際的段階で勧告される基準、とくに統計的資料の提供に関する基準を成人教育に適用すべきである。
66 加盟国は、この分野において権限のある国際連合の専門機関としてのユネスコが、成人教育の発展の努力において、とくに、訓練、研究および評価の分野で行う活動を支持すべきである。
67 加盟国は、成人教育が地球的かつ普遍的な関心事であると認識すべきであり、成人教育から生ずる実際的な成果と取組み、教育、科学および文化に関する事項の国際的組織としてのユネスコが推進している新しい国際的秩序の確立を助長すべきである。
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