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◆199311KHK136A3L0085J TITLE: 学校のコンピュータにはどんな情報が入っているの? AUTHOR: 羽山 健一 SOURCE: 投稿(1993年11月) WORDS: 全40字×85行
大阪高法研 羽 山 健 一
情報化社会の進展にともない、ほとんどの学校において、何らかの形態でコンピュータとりわけパソコンが利用されていることは間違いない。ここでは中等教育諸学校でのパソコンの利用分野を便宜上次の四点に整理しておく。@学校事務のOA化(学校事務処理にコンピュータを利用)、ACAI(コンピュータを利用した授業)BCMI(コンピュータの支援する教育活動)、C情報処理教育(コンピュータ活用能力を育成する授業)。このうちABCが教育活動に密接に関わる利用形態であるが、児童生徒の個人情報を扱うのは、主に@Aである。そこで、この二つの分野において、どのような個人情報をパソコン処理しているか、あるいは処理する可能性があるかを概観してみることにする。
各学校において最も早期にパソコンが活用されるようになったのは、この学校事務処理の分野であろう。具体的には、経理処理システム、各種証明書発行システム、授業料等管理システム、スケジュール管理システム、財務・備品管理システム、人事管理システム、給与処理システムなどの例があげられる。各種証明書発行システムでは、児童生徒の身分・在学・成績等の情報を扱う。授業料等管理システムでは、児童生徒の授業料・学校徴収金の減免が認められているかどうか、ならびにその納入状況を管理し、未納の場合には督促状の発送等の事務処理を行う。人事管理システムでは、教職員の出身大学・免許の種類・経歴・有給休暇の取得ならびに休職などの勤務状況その他の情報を扱う。
CMIは教員が教育活動を行うに当たり、主にその背後でコンピュータを利用し、その処理結果を教育活動に役立てようとするものである。したがって、この分野においては児童生徒の個人情報を扱うことが多い。以下、全国の私立学校に対する調査報告書をもとに、どのような個人情報の処理が行われているか紹介することにする(日本私学教育研究所『学校事務OA化の動向』1992年、回答数680校)。ただし、どのような個人情報が扱われ、どのような処理が為されているかは、処理後の出力帳票から見当がつくので、その出力帳票の一部を列挙する。
(1) 入試処理システム
特に目だった出力帳票は次の通り。事前相談一覧表、得点分布表、受験者偏差値換算表、相関表(内申と偏差値)、各種受験資料、合否判定資料、出身校別成績表、クラブ経験者表、合否通知書等。
入試事務は539校でコンピュータを使用しており、これは回答校数の8割弱にあたる。
(2) 成績処理システム
クラス別成績一覧表、学年成績順一覧表、偏差値一覧表、成績不振者一覧表、優良者一覧表、進学調査書、個人別全成績(1年〜3年)一覧表、評定平均値履歴一覧表、出身校別成績表、教科担任別評定表、成績会議資料書、学級偏差値表等。
これらは435校で使用されている。児童生徒の成績を電算化することにより、入学時から卒業時までの成績の推移を総括的に把握できる。また、学級担任別や授業を担当した教員別の成績が算出されることにより、担任や教科担当の指導の成果が問われ、教員も評価される立場になる。
(3) 進路管理システム
求人票一覧表、出身校別就職者一覧表、一般職業適性検査結果、評定平均値一覧表、センター試験成績との相関表、進路指導資料、偏差値による学校別合否度数分布、大学別合格可能判断、調査書発行簿、希望学科推薦判定資料。
これらは226校で使用されている。求人票は求人企業の所在地・資本金・職種・給与別に整理され、就職希望者の企業選択の資料として利用されることになろう。また、進学希望者が受験大学を選択するために諸資料を作成しようとしている。先の成績資料は、就職や推薦入学を希望する生徒の校内選考に利用されると考えられる。
(4) 生徒指導情報処理システム
クラブ加入者一覧、毎日の出欠・早退・遅刻一覧および個人票、遅刻多数者連絡資料、生徒の運転免許登録一覧、個人別問題行動歴、各種生活実態調査等アンケート集計。
これらのシステムの使用校数は明かではない。また、上記の情報の他にも、服装・頭髪違反、自転車登録、性格テスト等に関する個人情報が電算処理されている例があると考えられる。
(5) その他のシステム
上の項目に含まれないものとして、次のようなものがある。@図書館の蔵書管理、貸出・返却管理、個人図書利用管理システム、A保健部における、児童生徒の保健室利用回数管理、疾病・傷病・身体検査・健康診断等の保健データ管理システム、Bスポーツテスト結果集計管理システム、C時間割・学級編成システム。
これまで述べたシステムの開発ないし利用は、組織的に行われているとはいえない。現実には、@教員が個人的に行う場合、A学校内の生徒指導部などの分掌内で行う場合、B学校として組織的に行う場合、C教育委員会が所轄の学校に共通して行わせる場合等があり、各段階において無秩序にコンピュータを活用しており、その活用の実態は把握しようもない。とりわけ@Aの場合は問題のある活用をしていても他の教員には分からない。そのためその活用を規制することも困難である。またCの場合であっても、教育委員会が不当なOA化を指導した例もある(練馬教組情宣部『こぶし』1992年9月22日、大宮市教育委員会『学校OA化基本計画について』1988年、栃木県の例として林雅行『管理された教師たち』)。そのため、本来電算処理されるべきではない、児童生徒のセンシティブデータが入力されたり、個人情報が目的外利用されることも起きている。しかし、いずれの場合にも児童生徒のプライバシーを害するようなコンピュータの活用は認められるものではない(拙稿『パソコン導入の留意点』月刊生徒指導1992年1月号)。そのためには教育委員会がコンピュータの適正な管理運用を図るための指導助言を行うべきであろう。これに関連して大阪府では、『大阪府教育委員会電子計算組織管理運用規程』(1983年)が定められているが、これは十分遵守されているとはいえない。たとえば同規程第五条には、毎年度「電算処理に関する計画書を作成し、教育長に提出」することとしているが、同規定もまったく省みられていないのである。
<レジメ> 教育情報連続講座(3) 1993.11.27 学校のコンピュータにはどんな情報が入っているの? 大阪高法研 羽山健一 1.学校におけるコンピュータ活用 @学校事務のOA化・・・・学校事務処理にコンピュータを利用 ACAI(Computer Assisted Lerning)・・・・コンピュータを利用した授業 BCMI(Computer Managed Instruction)・・・・コンピュータの支援する教育活動 C情報処理教育・・・・コンピュータ活用能力を育成する授業 2.学校事務関連システム 経理処理システム 各種証明書発行システム 授業料等管理システム スケジュール管理システム 財務・備品管理システム 人事管理システム 給与処理システム 3.CMI関連システム 入試処理システム 保健データ管理システム 成績処理システム 時間割編成システム 進路管理システム 生徒指導情報処理システム 図書館管理システム 4.CMI関連システムの開発主体 @行政・教育委員会 A各学校内の組織 OA推進部、情報処理委員会、教務部、情報システムセンター コンピュータ係 大阪府教育委員会電子計算組織管理運用規程(1983.5.30) 5.CMI関連システムの問題点 センシティブデータの入力 データ・セキュリティー データ・ベースの構築 業務委託契約
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