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TITLE:  平塚養護学校・日の丸引き降ろし事件(横浜地裁1998年4月14日判決)
AUTHOR: 編集部
SOURCE: 大阪高法研ニュース 第190号(2000年6月)
WORDS:  全40字×33行

このページの内容は「日の丸」「君が代」処分事例集のページにまとめました。(2001/02)

 

平塚養護学校・日の丸引き降ろし事件

横浜地裁1998年4月14日判決
平六(行ウ)一六号 訓告処分取消等請求事件 一部棄却一部却下[確定]

 

  本件は県立学校教諭であった原告らが、入学式において、ポールに掲揚されていた日の丸を引き下ろし、県教委から文書訓告処分を受けたため、県教委に対してその取り消しを、また、県に対し国家賠償法による慰謝料の支払いを求めたものである。

  本判決は、まず原告らの「訴えの利益の存否」について判断を示している。すなわち、判決は、本件訓告処分は懲戒処分と異なり、何らの法的効果も伴わないものであるから、行訴法三条二項にいう「行政丁の処分その他公権力の行使にあたる行為」とはいえないとして、原告らの訴えを却下した。これに対し、賠償請求の訴えは独立の訴えとして、それ自体は適法として内容の判断に入っている。

(1) 入学式及び卒業式における国旗の掲揚は、校務をつかさどり、所属職員を監督する権限を有する校長が、学習指導要領の定める大綱的な基準に準拠して、その権限と責任に基づいて行う校務というべきであるから、校長が行う国旗の掲揚又はその指示に関わる行為をしたときは、右行為は適法な職務遂行行為に当たるということができる。

(2) 職員会議は法令上の根拠があるものではなく、決議機関ともいえず、校長の校務遂行上の補助機関と解すべきであるから、校長が校務を行うに当たって職員会議の意見を尊重することが望ましいとはいえても、その意見は校長を拘束するものではなく、校長の校務として国旗を掲揚する権限に影響を与えるものではない。

(3) 日の丸は日本を象徴する国旗であるとの慣習法が成立しているということができる。

(4) 憲法二六条の規定する子どもの教育は、教育を施す者の支配的権能ではなく、何よりもまず、子どもの学習をする権利に対応し、その充足を図りうる立場にある者の責務に属するものとしてとらえられるべきものであって、原告らの権利としてとらえることはできない。・・・教師に完全な教育の自由を認めることはできないというべきであるから、日の丸の掲揚が憲法二六条に違反するということはできない。

(5) 日の丸掲揚自体は原告らが日の丸の掲揚に反対の意思表示をする自由を侵害するものとはいえないから、原告らの憲法二一条違反の主張は採用することができない。さらに、日の丸掲揚は、これによって原告らの内心に強制を加えるものではないから、原告らの憲法一九条違反の主張も採用することができない。

                        (労判744-44、判地自182-55)

 


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