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TITLE:  大阪府における指導力不足教員問題 −「教員の資質に関する諮問委員会」の機能とその限界 −
AUTHOR: 羽山 健一
SOURCE: 大阪高法研ニュース 第200号(2002年2月)
WORDS:  全40字×275行

 

大阪府における指導力不足教員問題

−「教員の資質に関する諮問委員会」の機能とその限界 −

羽 山 健 一

 

  近年、各種の教育問題の解決について学校や教員に寄せられる期待は、ますます高まっている。その一方で、犯罪や不祥事を引き起こす問題教師の事例がマスコミで扱われることが多くなっている。そこから、教育行政側が教育問題の責任を専ら教員に転嫁し、教員の資質向上という美名のもとに教員支配を強める傾向が全国的に顕著になってきている。そして現在、その資質向上策は検討・構想の段階から、既に実施の段階に入ったといえる。ここでは、大阪府が立ち上げた「指導力不足等教員への支援及び対応システム」に関わって、その重要な一端を担うと考えられる「教員の資質に関する諮問委員会」(以下、諮問委員会という)について、その機能、運用実態、限界などについて整理したい。したがって、小稿は対応システムの全体を考察するものではないことをおことわりしておく。

 

1.指導力不足教員対策の現状

 

  文部省(当時)は2000年度より3年間の予定で「新しい教員の人事管理の在り方に関する調査研究」を実施し、指導力不足教員に対する教育委員会の制度的対応を促進するとともに、その調査結果を公表することによって、それを全国に普及させようとしている [1] 。それと同時に、文部科学省は指導力不足教員に対応する人事管理システムづくりの促進のため2001年度予算に1億円を計上した [2] 。さらに、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」を改正し指導力不足教員を教員以外の職員へ移動させるための方途を創設した(同法47条の2)。全国の先頭をきって東京都は指導力不足教員の判定制度を発足させ、1997年度から実施にうつしている。

  大阪府教育委員会(以下、府教委という)は、2000年7月「教職員の資質向上に関する検討委員会」を設置した。同検討委員会は指導力不足教員の問題について先行して検討をすすめ、2001年3月、中間報告として「指導力不足等教員の資質向上方策について」(以下「中間報告」という)を公表した [3] 。同報告は指導力不足教員に対し速やかに方策を講じ得るような「対応システム」が必要であって、最重点課題として早急に取り組むべきことを提言している。これをうけて、府教委は指導力不足教員への対応マニュアルとして、2001年7月「教員の資質向上をめざして−指導力不足等教員への支援及び指導の手引き−」(以下、「手引き」という)を作成し、府立学校長に配布した。これにより事実上、指導力不足教員への対応システムが稼働し始めたといえよう。

 

2.指導力不足等教員とは

 

  先の「中間報告」では具体的な対応の必要な教員を「指導力不足等教員」と呼んで、その範囲は、「学習指導、生徒指導、学級経営等において、指導力を発揮できず、子どもたちの教育への責任が果たせていない者(保護者、地域、同僚との良好な関係が築けないことなどから、教育活動に支障をきたしている者を含む)」としている。さらに、その多様な態様に応じた対応策を実施するにおいて種類分けが必要であるとする認識から、指導力不足等教員を次の4種に分類している。

(1) 指導力に関し支援を要する教員
 @結果が明確に表れてはいないが、その取組む姿勢は評価できる者
 A環境の変化等による一時的な指導力不足とみられ、学校内の協力により回復可能と
  考えられる者

(2) 指導力不足教員
 専門性・社会性に欠けるなど教員としての指導力が不足している者

(3) 適格性を欠く教員
 勤務態度・服務上の著しい問題があるなど教員として資質に欠ける者

(4) 疾病等により指導力が発揮できない教員
 疾病等(特に精神的な疾患)が原因と考えられるが、受診・治療をしないまま、指導力
 が発揮できない状態の者や休職を繰り返し、復職後も指導力が発揮できない状態の者

  上記(1)の「指導力に関し支援を要する教員」に対しては、アドバイザー教員などによる支援体制を整備し、校内研修や府教育センターなど校外での研修を取り入れる。(2)の「指導力不足教員」に対しては、いったん教壇から離して校内、校外の研修を実施する。また、早期改善を促すために服務上の措置を実施し、改善の見込みが見られない場合は、教職以外の職種への転換、退職勧奨や分限免職処分が検討される。(3)の「適格性を欠く教員」に対しても、いったん教壇から離して校外研修を実施するとともに、服務上の措置、退職勧奨や分限免職処分が検討される。(4)の「疾病等により指導力が発揮できない教員」に対しては、校内外の相談・支援体制を充実し、本人の治療を優先した受診指導や受診命令が行われる。そして、休職を繰り返す教員に対しては、個々の休職年数だけでなく、通算した年数を勘案して分限免職処分を検討することとされている [4]

 

3.指導力不足等教員への対応と諮問委員会の役割

 

(1)府教委の対応

  度重なる指導にもかかわらず改善が見られない教員について、校長は府教委と連携してその対応方法について十分な協議を行い、さらに、これまで行ってきた指導・観察の状況の記録等を府教委に対して詳細に報告する。その際の提出書類は、「指導力に課題のある教員に関する報告書」、「支援・指導等の記録」、「校内研修指導計画書」、「校内研修実績簿(指導者用)」、「校内研修記録(本人用)」、「校内研修報告書」である。さらに状況に応じて、出勤状況関係の書類、健康状況関係の書類、文書による職務命令・受診命令の記録、の書類を整える。

  この報告を受けた府教委は、@当該教員の対応について校長と協議、A当該教員への対応方策の具体案の作成、B諮問委員会への諮問、C諮問委員会の意見を踏まえた上での具体的対応の決定、という手順で対応していくことになる。諮問委員会に諮る場合は、本人に事前に事実確認を行った上で、諮問委員会の概要について十分に説明しておくこととされる(以上「手引き」)。

(2)諮問委員会の概要

  今回の「対応システム」の目新しい点は、「教員の資質に関する諮問委員会」(諮問委員会)を設置したことである。その概要は「教員の資質に関する諮問委員会設置要綱」(以下設置要綱)から読みとることができる。その設置目的は、「指導力不足等教員に対する具体的な対応方策について、専門的・多角的見地から検討を行い、府民に信頼される学校教育や学校運営に資すること」とされる(第1条)。その職務は「大阪府教育委員会の求めに応じ、前条の教員に対する教育委員会の対応案について意見を述べる」こととされている(第2条)。その委員は10名以内で教育長によって委嘱され、任期は2年である(第3条・第4条)。つまり、諮問委員会の設置のねらいは、指導力不足等教員への対応策の決定過程に第三者としての専門家を関与させることにより、その客観性を確保することにあるといえよう。

  諮問委員会の会議は、互選された委員長が召集し、その委員長が議長となり、会議の定足数は委員の半数である(第6条)。諮問委員会の庶務は府教委事務局の教職員室教職員人事課が行う(第7条)。

(3)諮問委員会の性格

  諮問委員会は文字どおり諮問機関であるから、指導力不足等教員を判定し対応策を決定する機関ではない。具体的な対応策を決定する権限はあくまでも府教委にあり、府教委が諮問委員会の意見を踏まえて、「自らの権限と責任において、当該教員の具体対応を決定」(「手引き」)し、実施していくのである。

  一般に、諮問機関の答申や意見は、行政庁の意思決定に関し法的拘束力を持たず、それを採用するかどうかは行政庁の任意の判断に委ねられている。行政庁が答申と異なる行政処分等を行い得ることは法制度上当然のことである。行政庁は答申通りの行政処分等を行ったからといって、それに対する住民の批判を免れることはなく、諮問機関に責任転嫁することは許されない。行政責任の所在が行政庁にあって諮問機関にないことは法制度上明確である。ただし、行政庁は諮問機関の答申を慎重に検討し、これに十分な考慮を払い、特段の合理的な理由のない限り、これに反する処分をしないよう要求されていると解される。つまり答申への服従義務はないが、明文規定がない場合でも行政庁は答申の尊重義務があるといえよう。

 

4.諮問委員会の運営実態

 

  現在の諮問委員会は学識経験者、医療関係者、法律関係者、企業関係者、学校教育関係者、報道関係者の8名から構成されている。

  諮問委員会は2001年7月に設置されて以来、同年中に3回しか開かれておらず、1回の会議で2件程度の事例しか扱うことができないため、これまで6件程度の事例について審議したに過ぎない。指導力不足等教員が府教委の公表するように420人から430人いるとすれば [5] 、この委員会で審議される事例は極めて特別な事例に限定されているといえよう。

  先の府教委作成の「手引き」によると、「当面、資質諮問委員会に諮る対象は、適格性に欠ける教員及び著しく指導力に欠ける教員で、校内の対応では改善が見られない者とする」とされているため、前述の分類でいうと「(2) 指導力不足教員」の一部と「(3) 適格性を欠く教員」「(4) 疾病等により指導力が発揮できない教員」の事例が中心になっており、比較的軽度の狭義の指導力不足教員は審議の対象となっていない。

  校長から問題事例として報告のあったものの中から、どの事例を諮問委員会に諮るかという判断は府教委が行っている。委員会が発足して間もない現在においては、府教委が特に重大で緊急性を要すると考える事例を選び出し、それを優先して委員会に諮問していると考えられる。そのため、現在のところ、諮問委員のあいだで判断の分かれる微妙な事例については諮問されていない模様である。

  諮問委員会の職務は、府教委の求めに応じて教員に対する対応案について意見を述べることと規定されているから(設置要綱第2条)、諮問委員会は府教委の「求め」があってはじめてその活動を開始するのであって、諮問委員会が自主的に審議する事例を選択することはなく、あるいは、諮問を待たずに意見を述べ建議、報告、勧告するというような積極的活動を行うこともない。

  府教委は、諮問に先だって当該教員についての具体的な対応策の原案を作成しておく。したがって、諮問委員会はあらかじめ府教委の作成した「対応案について」意見を述べるのであって、白紙の状態から当該教員についての対応策を審議、判断して結論を出すものではない。また、諮問委員会は諮問された案件について「意見を述べる」のみであって、委員会としての意見をまとめて決議をあげたり、答申書を作成して答申することもない。もとより、設置要綱にはこうしたことをなしうる規定が存在しないからである。そして、諮問委員会に出席している府教委の管理主事が、委員の述べる意見をその場で聞くだけで、委員の職責は果たされる。

  たとえば、会議の様子は次のような具合になると予想される。府教委が「分限免職処分にするのがふさわしいかどうか意見を聞かせて下さい」「こういう研修を受けさせたいと考えているが、いかがでしょうか」「現場に復帰させようと考えているが...」というかたちで諮問する事例について、諮問委員会では「分限免職処分が相当である」「研修にこういう観点を取り入れた方が良い」「同じ学校には戻さない方がよい」などといった意見が述べられる。

 

5.諮問委員会の限界

 

  諮問委員会は、これまで、府教委と校長との間で個別に処理してきた問題教員への対応を、外部の第三者の意見も加えて決定するという点で評価できる。しかしその一方で、諮問委員会が府教委の原案を追認するための「御用機関」におわってしまう可能性も否定できない。というのは、現在の諮問委員会が、府教委の責任を軽減するための「カクレミノ」であるとか、府教委の決定を正当化し権威づける「お墨付き」を与えるだけのもの、という府民や教員からの批判を十分に払拭できるだけの制度的構造を有していないからである。

(1)機動性に欠ける

  諮問委員会には各方面から様々な期待が寄せられているといえるが、その代表的なものは次の三つであろう。@父母や住民からは、指導力不足教員による子どもの権利侵害に対して第三者機関によるチェックが入るという期待。A処分や人事措置を受ける教員からは、その客観性・公平性が確保されるという期待。B府教委にとっては、自らが行う決定に専門家による支持が得られ、速やかな対応ができるという期待である。しかし、先に運営実態でみたように、2カ月に1回、1回に2件程度の審議では、到底これらの期待に応えることはできない。

  さらに、@の期待については、諮問委員会は、父母が問題とする指導力不足教員のすべてを審議するほどの処理能力を持たないし、もともと、父母が問題とする事例を、直接、諮問委員会に請求する途は設けられていない。Aについては、処分や人事措置を受ける教員のうち、わずかな部分が諮問にかけられるにすぎないので、比較的軽微な措置については府教委のみの判断によって決定される。Bについても、審議の回数が少ないことから、諮問委員会の意見を得た後に対応をするとなると、かえって対応が遅れることが予想される。こうして、各方面からの期待は期待倒れに終わることとなろう。

(2)十分な主体性が認められていない

  諮問委員会が審議する事例は府教委が選択し諮問したものに限定されているが、一定の事例について、たとえば「○○については諮問しなければならない」「意見を聞かなければならない」というような諮問を義務づけるような規定は存在しない。さらに、諮問の経由は人事措置や処分を行うにあたっての有効要件とされていない。「手引き」には「当面、資質諮問委員会に諮る対象は、適格性に欠ける教員及び著しく指導力に欠ける教員で、校内の対応では改善が見られない者とする」とされているが、府教委がこれらのすべてを諮問委員会に諮問するわけではない。したがって、府教委には諮問する義務というものは課せられておらず、どの事例を諮問にまわして、どの事例を府教委のみで結論を出すかという判断は、専ら府教委の裁量に委ねられているのである。

  諮問委員会は、当該教員の出席を求めることを除いて、独自の調査権限や組織をもたない。このことは、諮問委員会の庶務を教職員室教職員人事課が行うとされていることと相俟って、諮問委員会の運営において主体性が確立されていないことを示している。さらに、諮問委員の選任が教育長の裁量に委ねられているため、教育長は府教委に対して批判的見解を持つ者を排除し得る。以上のような制度的枠組みからすると、諮問委員会の機能は、府教委の管理主事が必要に応じて知り合いの専門家から個人的に意見を聞いているのとほとんど変わりがないものといえよう。

  したがって、府教委は諮問する事例や委員の選任、提供する資料を通じて、諮問委員会の結論を容易に操作・誘導し得るといわざるを得ない。このように諮問委員会がまったく府教委の主導のもとに運営される制度のもとでは、府教委にとって都合の良いように諮問委員会が利用される余地があり、府教委の判断を正当化するためだけの機関であるとの批判を免れ得ない。

(3)客観性・公正性についての疑問

  諮問委員会が充分に審議し有意義な結論を出すには、多くの客観性のある資料、公正な情報を得ることが不可欠である。たしかに、府教委は諮問に先だって任意にヒアリングを実施し、また当該教員は任意に意見書を府教委に提出することができ、府教委は諮問に際しそれらの資料を提出することになっているが(「手引き」)、これはあくまでも任意の資料である。また、諮問委員会は当該教員に出席を求めることができるとされているが(設置要綱第6条第3項)、現状のような開催頻度では出席を求めるような時間的余裕はないというのが実態であろう。

  校長や府教委側の間接資料のみでは、委員の専門性を発揮することは困難である。当該教員の出席を可能な限り求めるようにするべきであるが、少なくともヒアリング調書、意見書は原則として諮問委員会に提出するものと位置づけられるべきである。そのほうが諮問委員会の存在理由にも叶っていると考えられる。

(4)当該教員の不信感を払拭できない

  校長によって指導力不足等教員として府教委に報告されたもののうち、諮問委員会に諮問されることとなった教員に対して、「今まで指導を行ってきた記録等の文書を教頭立会いのもとに示し本人に事実確認をする。その後、資質諮問委員会に当該教員の対応を諮問する旨を通知する」ことになっている。そしてその際、当該教員に対して@府教委が必要に応じてヒアリングを実施することができること、A当該教員は、任意に自らの意見書を府教委に提出することができること、B以上の資料は諮問委員会に提出されること、C諮問委員会は当該教員に諮問委員会への出席を求めることができる、などの説明が行われる。このなかで、教員が自らの判断で実行できるものはAの意見書の提出のみである(以上「手引き」)。つまり、教員は、諮問する旨の告知をされるが、聴聞の機会は保障されていない。

  当該教員は諮問委員会において自分の事例についての審議がいつ行われるか分からないまま、やがて、諮問委員会が開かれ、その意見を踏まえて処分や人事措置が決定される。諮問委員会での審議の内容は、答申などの形でまとめられることはないため、当該教員はその内容を吟味することもできず、府教委の決定に服従することが強制される。第三者機関が専門的立場から審議したといっても、その内容が当該教員には直接知らされず、それが府教委の決定の権威付けに用いられるのであれば、当該教員の諮問委員会への不信感が高まり、ひいては決定された処分や人事措置そのものへの不信感へと拡大するするのは必定である。

  現時点において、当該教員の諮問委員会への出席が困難であるとすれば、諮問委員会の議事録を作成し、それを本人に開示したり、あるいはそれに対する閲覧請求権を保障するべきであろう。

(5)指導力不足等教員を生み出す原因についての議論が抜け落ちる

  教員は比較的高いモティベーションをもって教職を志し、採用時にも、特に近年は、高い倍率の中で選び出されている。それにもかかわらず、多くの教員が指導力不足・適格性欠如・精神性疾患に陥るのはなぜか、その原因を究明することなく、指導力不足等教員を判定し措置するだけでは、教員の資質向上に結びつくはずもない。前述の「中間報告」にも「本人が指導力不足等の状態に至った原因について、本人の業務内容や勤務の状況はもとより、学校の運営体制等についても把握するべきである」 [6] と述べられている。ところが、諮問委員会においては、当該教員の働く職場環境、学校の運営体制等についての資料が著しく不足している。提出される資料には、任意に提出される本人の意見書を除いて、府教委と緊密に協議している校長側の意見のみが反映されている。これでは、指導力不足等教員を生み出す原因についての議論に発展しないのも無理のないことだといえる。

  諮問委員会では、現在の教員の問題状態に対して採るべき措置や処分についての議論が中心となっているため、その問題状況を生み出す背景や原因についての議論が二次的なものとなるのはやむを得ない面もある。しかし、教員の問題状況が、職場環境や学校運営体制、校長の対応のまずさによって引き起こされる場合があることを考えると、原因についての検討をぬきにして当該教員の処遇のみを議論するのはいかにも不合理である。

【 注 】

[1] 「『問題教師』判断基準作り・文部省委託」朝日新聞1999年9月3日

[2] 文部科学省「21世紀教育新生プラン」2001年1月25日

[3] http://www.pref.osaka.jp/kyoshokuin/shishitsu/hokoku/h_mokuji.html

[4] 「中間報告」資料「教職経験の段階と指導力不足等の状況に応じた当面取り組むべき対応策の例」

[5] この約420名という人数はかなり水増しされたものと考えられる。ある市民が大阪府情報公開条例に基づき、この人数の基礎となる資料を公開請求したのに対し、府教委はこれを非公開とする決定を下した。この決定は異議申し立てされ、大阪府情報公開審査会で審議され、府教委は同審査会に提出した弁明書の中で次のように述べている。「この集約にあたっては、まず、担当の管理主事5名が、実施機関の関係職員が府民や保護者等から受けた苦情や通報の内容を聴取し、あるいは、府立学校職員の人事異動等に関するヒアリングや各府立学校長からの個別相談で得られた情報を各自が持ち寄り、当該管理主事5名においていわゆる問題教員と考えられる教員数を府全体として取りまとめ、その概算数が上記420から430名となったものである」(http://cgi.psn.ne.jp/~jhc-cebc/s-data/jyoho/report/osaka1/shinnsa/o1010122-ben.htm)。そして、その基礎となった資料は既に破棄されており、もはや存在していないという理由で非公開決定を正当化している。したがって、この人数が確実な根拠に基づくものであるのか、また、問題とされた教員がどの程度の問題性を有していたかは、もはや検証できなくなっている。にもかかわらず、「問題教員420人」という数字はその後の報道でも繰り返し引用され完全に既成事実となっている。

[6] 「中間報告」3.指導力不足等教員への対応 (2)対応システムの概要 B対応方法についての意見聴取


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