● 宗教家が公立学校において宗教教育に当ることの可否について 昭和24年8月2日 雑総3



昭二四、八、二雑総三 増珠寺住職あて 
文部大臣官房総務課長回答「宗教家が公立学校において宗教教育に当ることの可否について」

    国・公立学校において、特定宗派に偏した宗教教育を行つてはならない。

 照 会
謹啓 今般宗教家教育の件にて御伺い申上げます。文部省当局に於て宗教家僧侶は小学校か又中学校又専門高等学校等の内どの学校で宗教教育が出来るかを至急御伺い申上げます。府の小学校や中学校等では如何哉。至急御返信賜り度く御願い申上げます。

 回 答
 御照会による宗教教育とは、どの程度の意味に解せられているのか分りかねますが、宗教教育に関しては、既に御承知の通り教育基本法第九条に次のごとく規定されています。
 第一項 宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は教育上これを尊重しなければならない。
 第二項 国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。
 第一項は、すべての教育を通じて、宗教教育が重んぜられるべきことを前提として、その可能なる最小限を示しているのでありまして、後照会による宗教教育が第一項にいうように、広い意味であつて、宗教に関する知識を与え、宗教的情操を養う意味であれば、小、中学校を問わず、どの学校においても行うことができます。
 しかし第二項に規定しているように、特定の宗教たとえば、仏教やキリスト教などの宗派の教義を教えたり、儀式を行つたり、又は特定の宗教的信仰にまで導く教育を行うことは、私立学校を除き、国、公立の学校においてはすべて禁じられております。
 以上は教育としての態度の場合でありますが、宗教家が宗教家として学校において宗教教育を行う場合においては、昭和二三年七月都道府県知事及び教員養成諸学校長あてに発せられた「学習指導要領社会科編取扱いについて」の通達中、(3)において禁じられておりますから、参考のため、同通達を御送付いたします。

 参 考
 発教一〇一号
  昭和二三年七月九日
            文部省教科書局長 稲 田 清 助
 都道府県知事
 教育養成諸学校長 殿

    学習指導要領社会科編取扱いについて

 文部省発行の「学習指導要領」社会科編に記載されている生徒、児童の学習活動の中には、不注意な取り扱いによつて、「国家神道、神社神道に対する政府の保証、支援、保全、監督ならびに弘布の廃止に関する、昭和二〇年一二月一五日附、連合国軍最高司令部指令第四四八号、同日附参謀副官発第三号(民間情報教育部)の日本政府に対する覚書」の原則にふれるおそれのある個所があるために、文部省においても、その改訂を計画中であるが、そういう観点からのみではなく教育的に広い角度から改訂を行わなければならないので、それには一年以上の時日を要すると思われる。
 そこで、改訂版の出版されるまでの臨時の処置として、各学校は、当該指令に、ていしよくするような指導を避けるために、当該指令を学校における生徒の学習活動に関して正しく解釈し、とくに、社会科の正しい指導に当らなければならない。
 以下の各項をよく研究され、指導にあやまりのないよう配慮せられたい。
1 国立又は公立学校が主催して神社、仏閣、教会を訪問することは、右の指令に違犯するから禁止される。
 学校が主催して訪問するということの意味は、教師あるいは、校長が引率あるいは、参加すると否とを問わず、学校で計画して団体で訪問することまたは個々の生徒、児童が学校あるいは、教師から課せられて神社、仏閣または教会等を訪問することである。
 教師はそのような宗教上の問題あるいは神職、僧侶、牧師等を訪問しなければ、学習目的を十分に達し得ないような学習問題を指示してはならない。
2 国立又は公立学校から課せられたのでない限り、生徒、児童が個人的に神社、仏閣、教会を訪問することは右の指令に違犯することにはならない。
 児童、生徒が学習の際の討議で、神社、仏閣、教会を訪問したことについて語ることは右の指令に違犯しない。しかし教師はそのような訪問について語るように要求してはならない。
3 国立又は公立学校の校舎内で、学校の正規の時間内に神職、僧侶、牧師を招いて宗教上の問題に関して講話をきいたり講話の指示をさせることは右の指令に違犯する。
4 国立又は公立学校においては宗教上の祭典を見に行つたり、宗教上の事柄についてたずねるために神職、僧侶、牧師等を訪問することを学生、生徒、児童に要求すること、あるいは祭典を見に行つたり右のような人々を訪問したりしなくては学習が十分にできないような学習題目を指示することは右の指令に違犯する。
5 個々の生徒、児童に学習の時間に自己あるいは家族の宗教上の信仰や行事について話すことを要求することは宗教の自由及び良心の自由を侵害することになる。





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