● 社会科その他、初等および中等教育における宗教の取扱について 昭和24年10月25日 文初庶152



昭二四、一〇、二五 文初庶一五二号
都道府県教育委員会、都道府県知事、
附属小、中、高等学校を有する直轄学校長、
国立各種学校長、国立高等学校長あて
文部事務次官通達

    社会科その他、初等および中等教育における宗教の取扱について

 先に、発教第一〇一号(昭和二十三念七月九日発)によつて、児童、生徒の社会科の学習活動中で、「国家神道、神社神道に対する政府の保証、支援、保全、監督ならびに弘布の廃止に関する昭和二十年十二月十五日附連合国軍司令官総司令部指令第四四八号、同日附参謀副官発第三号(民間情報教育部)の日本政府に対する覚書」の原則にふれることがないように各学校において指導されたいとの注意を促しました。
 そののち、社会科の教育のみならず、ひろく初等および中等教育における宗教に関する事項について研究協議しました結果次のような結論を得ました。以下各項をよく研究されて、あやまちのないよう御配慮を願います。

一 国立または公立の学校が主催して、神社、寺院、教会その他の宗教的施設を訪問することについて
 学校が主催して、礼拝や宗教的儀式、祭典に参加する目的をもって、神社、寺院、教会その他の宗教的施設を訪問してはならない。学校で主催するという意味は、学校で計画して団体で訪問すること、または個々の児童生徒が学校から課せられて、神社、寺院、教会その他の宗教的施設を訪問することである。
 国宝や文化財を研究したり、あるいはその他の文化上の目的をもって、学校が主催して、神社、寺院、教会その他の宗教的施設を訪問することは、次の条件の下では許される。
(イ)児童、生徒に強要してはならない。
(ロ)学校が主催する旅行中に、神社、寺院、教会その他の宗教施設を訪問する児童・生徒の団体は、その宗教的施設の儀式や祭典に参加してはならない。
(ハ)学校が主催して神社、寺院、教会その他の宗教的施設を訪問したとき、教師や指導者が命令して、敬礼その他の儀式を行わせてはならない。
(ニ)学校が主催して、靖国神社、護国神社(以前に護国神社あるいは招魂社であったものを含む)および主として戦没者を祭った神社を訪問してはならない。
二 国立または公立の学校における宗教に関する教材の選択および取扱いについて
(イ)各教科の教育目標に照らして、必要な場合には、各種の宗教の教祖、慣行、制度、宗教団体の物的施設、厚生および教育活動、種々の宗教史上の事件などに関する事実を含んでもよい。
 これらの教育資料においては、特定の宗教的教理、慣行、制度、経験などを、価値がないものとして否認したり、あるいは特定のものを特に高く評価したりするような表現を用いてはならない。また科学と宗教とは両立しないものと仮定してはならない。このことは、自然現象を自然的原因に帰することを防げるものではない。
(ロ) 社会科においては、宗教が社会生活の中で、どんな役割を果たして来たかを明らかにする点に重点がおかれなければならない。また適当な学年において、憲法の内容やその他の法律にもとづいて、信教の自由の意義を教えなければならない。
(ハ)文学および語学の教科書においては文学的あるいは語学的価値があると認めて選択したものである限り、宗教的教材が含まれてもよい。しかし、その取扱いに当っては、その教材選択の主旨に反しないように注意しなければならない。
(ニ)音楽、美術、建築の指導においては、教材として宗教的感化を受けた作品を利用してもよい。芸術的表現に対する宗教の影響を研究することは、望ましいことである。
(ホ)学校図書館には、参考および研究のために、宗教に関する書類や定期刊行物を備えつけてもよい。
(ヘ)各種の宗教の教理、歴史、哲学心理も客観的研究(比較研究あるいは特殊研究)を、新制高等学校における選択科目として設けてもよい。しかし特定の宗教のための宗教教育にならないように注意することが必要である。
三 国立または公立の学校の児童、生徒の自発的宗教活動について
(イ)児童、生徒が授業時間以外に、一国民として、宗教的儀式祭典、その他、宗教団体の行う行事に参加することは自由であるし、教師も同様である。
(ロ)中等学校生徒は、正規の授業時間以外の活動として、自発的な宗教的団体を組織することができる。
(ハ)学校はこの種の団体の活動に対しては、校内の他の生徒団体に与えられていると同様に、学校施設利用の便宜を与えなければならない。また学校は、生徒のどの宗教的団体にも、無差別公平にこの種の便宜を与えなければならない。そしてこの旨、予め周知させておくことが必要である。
 各学校当局は、講堂、教室その他の設備を、授業時間以外に生徒団体の活動のために使用させるか否かを決定する権能を持つべきである。
(ニ)生徒の宗教的団体は、教師を個人の資格において、顧問または会員として、その活動に参加することを請うてもよい。
四 宗教家と学校教育との関係について
(イ)国立または公立の学校では、宗教団体の教職者および信者を招いて、宗教の分野以外の題目について講演をしてもらってもよい。このようなことを行うに際しては、教師や宗教的儀式の解説、あるいはそれらの宣伝を行ってはならないということをかれらに前以てよく了解しておいてもらうことが必要である。
(ロ)宗教団体の教職者および信者で、国立または公立の学校の教職にあるものは、法衣をまとって教室にあらわれてはならない。また、いうまでもなく、かれらは、教師の行動と職責とを律するすべての規則に従わなければならない。
五 国立または公立の学校では、各学校当局者が各学校の建物を管理する直接の責任を負っている。したがって授業時間以外において、生徒の団体以外の宗教団体に、学校の建物を使用させることに関しては、学校当局者が、学校教育法第八五条の規定にもとづいて判定すべきものである。
六 以上の諸事項は、私立学校には適用されない。私立学校は軍国主義的、超国家主義的教説を教えてはならないということ以外には、すべての宗教教育および自発的活動に関して、自分の教育方針や実践を決定する自由を持っている。




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