● 大学入学資格検定について 昭和26年6月20日 文初中524


昭二六、六、二〇 文初中五二四 
各都道府県教育委員会教育長あて 
文部省初等中等教育局長通達

    大学入学資格検定について

 旧学校制度の下に行われた専門学校入学者検定規程による試験検定は、専門学校入学についての受験資格を与え、実業学校卒業程度検定規程による検定は、実業学校卒業程度の資格を与える検定であって、ともに向学心に燃えつつも境遇その他の事情で中等学校へ通学できなかった独学の青少年とくに勤労青少年の向学心にこたえ、これを助長育成する制度として極めて大きな役割を果たしてきたのであります。
 新学校制度は教育の機会均等の原則に則り従来の学制を根本的に整備改革して、勤労青少年を対象とする教育機関としては、高等学校に定時制の課程を設置できるようにし、通信教育を制度化して、その教育の振興をはかったのであります。これらはわが国では全く新しい制度でありまして、極めて短い期間に相当の成果を挙げているのでありますが、諸般の事情により、義務教育を修了した者で定時制の課程にも通えない者が多数ある現情であります。また、通信教育の受講者も通信教育の本質的制約上高等学校卒業に要する全科目を履修することはできがたいことであります。よってこれら残された者の向学心を育成し、努力いかんによっては大学に入学できるという希望と確信を持たせ、それぞれ能力に応じて教育を受け得るという教育の機会均等を実質的に保障する必要があります。
 ここに新学校制度に即応して、定時制の課程と通信教育の制度とともに境遇上恵まれない青少年教育の一環として、一方これら両制度の振興を助成促進させるとともに、他方全国多数の独学者の要望にこたえて、大学入学に関し、高等学校卒業と同等の資格を与える検定制度を別添大学入学資格検定規程(昭和二六年六月二二日文部省令第一三号)のとおり設けた次第であります。
 この大学入学資格検定規程は、下記により制定いたしたものでありますから、このむね貴管下関係者に周知方をお願いいたします。
 また、資格検定の施行の方法は、従来の専門学校入学者検定規程による試験検定および実業学校卒業程度検定規程による検定の施行の方法に準じて行う所存であります。これまでこれらの試験の施行については、多大の御配慮をお願い申しあげたのでありますが、全国多数の独学者、勤労青少年の向学心にこたえるために、今後とも一層の御協力方をお願い申しあげます。
 なお、本年度の施行の細部については決定次第ただちに御依頼申しあげますが、現在の計画は(一)資格検定施行の期日一〇月上旬、(二)願書受付期間は八月一日から二〇日までの予定であります。

          記

一 根拠法規
 学校教育法第五六条第一項中「大学に入学することのできる者は、高等学校を卒業した者若しくは通常の課程による一二年の学校教育を修了した者(通常の課程以外の課程によりこれに相当する学校教育を修了した者を含む。)又は監督庁の定めるところにより、これと同等以上の学力があると認められた者とする。」の「監督庁の定めるところにより、これと同等以上の学力があると認められた者とする。」をこの省令の根拠とした。
二 受検資格
1 中学校(新制)を卒業した者で満一六才以上に達している者(国民学校初等科を修了した者、学校教育法施行以前の法令の規定でこれに相当すると認められた者を含む。)も受検資格を認めるようにした。すなわち、義務教育を修了した者はほとんど全部が受検資格を有するようにした。
 受検資格を満一六才以上に限定したのは、中学校卒業後一年間、勉学その他の経験を経た後受検するのが効果的であると思われるからである。
2 高等学校に在籍している者は受検することができないようにした。
 義務教育を終えても進学できず、真に止むを得ず独学せざるを得ない者に受検を限定して、高等学校の定時制課程などの教育の振興を阻害しないようにした。
3 高等学校の行う通信による教育のみを受けている者は、特別に、高等学校在籍のまま受検することができるようにした。高等学校の行う通信教育は、定時制の課程へも進学できない者を対象としているのであり、通信教育だけでは高等学校を卒業できないから、この資格検定では通信教育生に限って受検できるようにしたのである。
三 実施
 普通は年一回(毎年八月の予定)実施する。受検者が増加した場合は年二回実施することもできるようにした。
四 程度
 高等学校卒業程度の学力検定である。
五 受検科目
 高等学校卒業に要する単位数八五単位程度を目途とし、受検科目総数二八科目であるが、このうち一四科目必須受検科目四科目(規程の別表第一第一類)、選択必須受験科目七科目(同第二類)、選択受検科目三科目(同三類)を受検すればよいことにした。
六 受検方法
 何回にもわたって受検できるようにした。すなわち、一部科目の合格を認める方針をとった。
七 合格者の資格の附与
1 受検科目一四科目に合格した者が満一八才に達しておれば合格者となり、合格証書が授与される。満一八才に達していない者は、大学入学の相当年令の満一八才に達した日の翌日からその合格証書の効力が発生するようにした。またこのことは独学者の陥り易い偏ぱな受験勉強を防止し、将来有為な社会人としての円満な発達を期したのである。
2 合格者の資格は終身有効とする。
3 科目合格を認める。
八 免除科目
 受検科目について高等学校で所要の単位を履修した科目は、受検を要しないようにした。
九 経過措置
1 旧制の中等学校第五学年を卒業した者(スクーリング一一年で高等学校第二学年修了と同等と認められるもの)と同じく第四学年を卒業又は修了した者(スクーリング一〇年で高等学校第一学年修了と同等に認められるもの)とに大別して一学年につき二八単位程度の受検を免除するようにした。すなわち、これらの資格を有する者は、規程の別表第一の受検科目のとりかたにかかわらず、五科目ないし、八科目を受検すればよいようにした。
 旧制中等学校第五学年卒業の者 五科目を受検すればよい。
 旧制中等学校第四学年卒業又は修了の者 八科目を受検すればよい。(規程の附則第四項参照)
2 従来の専検、実検の一部科目の合格者については、その合格科目に相当する受検科目をできるだけ免除して、受検者の既得の資格をなるべく認めるようにした。(規程の附則第五項参照)。




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