● 課程の修了又は卒業の認定等について 昭和28年3月12日 委初28
昭二八、三、一二 委初二八
兵庫県教育委員会教育長あて
文部省初等中等教育局長回答
課程の修了又は卒業の認定等について
照 会
一 学校教育法施行規則第五五条の規定により、同規則第二七条の規定を準用し、中学校において各学年の課程の修了又は卒業の認定を行う場合並びに同規則第二八条の規定を準用して卒業証書を授与する場合に、第三学年における一年間の総授業時数一二〇〇時間のうち五三六時間のみ授業を受けた生徒(この時間不足の生徒は、在学生徒の約半数にあたり、正規の組合立中学校に在籍しているも、事情によりその学校を所管する管理機関(規約による教育委員会は設置していない。)の設置に係らない建物を使用して当該管理機関の任命に係らない教師によって昨年九、一〇月ころより授業を受けていて、現在正規の組合立中学校へは通学していない。)については、当該中学校長はいかに取り扱うべきか。
二 前記の時間不足の生徒の第二、三学期の成績の評価及びその記載はいかにすべきか。
三 校長が当該生徒について認定の結果不可と認めた場合には原級留置は法的に可能か、もし原級留置となれば学校教育法第三九条に定める保護者の就学義務は延長されることとなるか。
四 学校教育法施行規則第六三条第三号の規定による「高等学校において中学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められた者」とは、具体的にどのような者が想定されるか。仮に、三によって就学義務年限の満了によって卒業証書を授与されない者が高等学校入学を志望した場合、高等学校長において認定すれば入学が許可できるか。
五 「市町村の教育委員会が所管する学校の設備授業等については都道府県の教育委員会は必要な規程を制定して一定水準の維持をはかりうる」との通知(昭和二七年一一月一八日文初地第九〇七号 文部次官より各都道府県教育委員会あて)を受けているが、県教育委員会が一年間の総授業時数を別に定めてその三分の二以上授業を受けた者について課程の修了が認められる旨の規則を定めることができるか。
回 答
一 学校教育法施行規則(以下「規則」という。)第二八条の規定により、卒業の認定は校長が行う。校長が学校の規定した総授業時数に満たない生徒についても適当な方法でその成績を評価することにより卒業を認定することは、あり得ることである。しかし、一般的にいって、第三学年の総授業時数の半分以上も欠席した生徒については、特別の事情のない限り、卒業の認定は与えられないのが普通であろう。照会文の当該中学校の場合は、照会文だけでは事情が明瞭でないが、その事情に即して処置されたい。
二 第一項の御質問の内容に不明な点があるので、的確な回答をしかねるが、事情に即した判断により措置されたい。
三 校長が当該生徒につき、認定の結果不可と認めた場合には、規則第二七条、第二八条により原級留置は可能である。
学校教育法第三九条は、満一五歳までの就学義務を規定したものであるから、満一五歳をこえて原級に留まった場合には、保護者の就学義務は延長されることにはならない。
四 規則第六三条三号の「高等学校において中学校を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者」とは、義務教育年限が満一二歳までであった当時に義務教育を終え、その後相当年齢に達して高等学校入学を希望する者、義務教育年限をすぎてなお中学校に在学している者等で、高等学校において中学校卒業者と同等以上の学力があると認めたものをいう。
五 県教育委員会が、県内の市町村教育委員会の所管する学校の授業について一定水準の維持をはかるため、例えば年間総授業時数の基準を設けるなどのことは考えられる。しかし、年間総授業時数の三分の二以上授業をうけた者について課程の修了を認めるということは、課程修了の認定が本来校長の権限に属することであるから、当該学校を所管する市町村教育委員会が管理事務の一部として定めるならばともかくとして、県教育委員会が市町村教育委員会の所管する学校の授業について、一定水準の維持をはかるために定める規程の内容としては適当でない。
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