● 地方教育行政の組織及び運営に関する法律等の施行について 昭和31年6月30日 文初地第326号
文初地第三二六号 昭和三一年六月三〇日
各都道府県知事・各都道府県教育委員会あて
文部事務次官通達
地方教育行政の組織及び運営に関する法律等の施行について
文部事務次官から各都道府県知事及び都道府県教育委員会に対し、次の通達が発せられた。
本日、地方教育行政の組織及び運営に関する法律、同法施行令、同法の施行に伴う関係法律の整理に関する法律および同法の施行に伴う関係政令の整理に関する政令が公布され、新法の施行にともない、教育委員会法は、廃止されることとなつた。
昭和二三年秋発足をみた教育委員会は、戦後における新たな教育制度の確立にその成果をあげてきたところであるが、新法は、行政委員会としての教育委員会の制度を受けつぎ、その実情に即さない点を改善するとともに、さらに所要の整備を加えて、新たに地方公共団体における教育行政の組織および運営の基本を確立し、もつて、わが国教育の進展に寄与せんとしたものである。
新法の主眼とするところは、教育の政治的中立と教育行政の安定を確保し、教育行政と一般行政との調和を進め、教育行政における国、都道府県および市町村の連係を密にすることの三点にある。
これがため、都道府県および市町村に教育委員会を存置して、教育事務の管理執行を行わせるとともに、教育委員の公選制を廃止して任命制とし、地方公共団体の長と教育委員会との権限の調整をはかり、さらに、都道府県が給与を負担する市町村立学校の教職員の人事を、市町村の教育委員会の内申をまつて、都道府県の教育委員会が行うこととするほか、地方教育行政における文部大臣ならびに都道府県の教育委員会の指導的地位を明らかにし、もつて、国、都道府県、市町村の関係諸機関が相携えて国民の教育の振興に当る体制を確立することとされたのである。
したがつて、本法の運用が適正を得ると否とは、今後におけるわが国の教育の進展の上に重要な関係を有するものであるから、その実施に当る関係者においては、特に左記事項に留意の上、慎重な配慮と真摯な熱意をもつて、法の所期する趣旨の達成に、格段の努力を払われたい。
なお、管下各市町村当局に対して、関係事項をすみやかに示達し、その徹底につき周到なご指導を煩わしたい。
記
1 教育委員の任命は、地方公共団体の長が議会の同意を得て行うのであるが、教育委員の人選よろしきをうるか否かは、新制度の成否にもかかるものであるから、公正な立場に立ち、教育について大局的判断をなしうる広い識見の人材を選任すること。
なお、市町村にあつては、これら委員のなかから常勤の教育長が任命されることとなるのであるから、委員の任命に当つては、教育行政にも練達の者を含めておくことが必要であること。
2 地方公共団体の長と教育委員会との権限の調整をはかるため、従来認められていた予算案、条例案についてのいわゆる二本建制度を廃止するとともに、教育事務にかかる経費の支出を命令する権限を地方公共団体の長に移すこととする等、教育事務に関する財務について、地方公共団体の長により多くの責任と権限を持たせることとなつたのであるが、これらはいずれも地方公共団体における執行機関が相互にその権限を尊重するとともに、調和と協力をはかることにより教育事務の円滑かつ合理的な処理を行おうとするものであるから、この趣旨をじゆうぶん理解して、運営にいかんなきを期せられたいこと。
3 都道府県が給与を負担する市町村立学校の教職員の人事に関しては、都道府県の教育委員会が、市町村の教育委員会の内申をまつて任命権を行使するとともに、市町村の教育委員会は、教職員の服務を監督する等の責務を負うこととされているが、この趣旨とするところは、これら教職員の人事の管理を、都道府県および市町村の教育委員会が相協力して相当することにより、教職員の組織および勤務の適正と人事交流の円滑をはかり、かつ、給与負担との調整をもはかつて、教育水準の維持向上を期せんとすることにあるものであること。
4 教育委員会とその所管する学校その他の教育機関との関係を明確にし、秩序ある行政の行われることを期して、教育委員会は、その所管する学校その他の教育機関の管理運営に関し、管理規則を定めなければならないこととなつたのであるが、学校の管理規則にあつては、教科書以外の教材の教育的価値またはその父兄に与える負担等の観点から軽々に取り扱うべきでないものの少なくないことにかんがみ、教材の使用に関し、事前に届出または承認にかかわらしめる旨の規定を加えるべきこととされている。しかし、このことは、教材の使用をすべて事前の届出または承認にかかわらしめようとする趣旨ではなく、前記の趣旨にかんがみ、教育委員会において関与すべきものと判断したものについて、適切な措置をとるべきものであるから、教材の効果的使用を抑制することにならないよう、教材の指定、手続、方法の決定その他法の運用に関して慎重な考慮を払うべきこと。
5 都道府県の教育委員会は、市町村の教育事務の適正な処理と教育水準の向上をはかるため、市町村に対し積極的な指導、助言、援助を行うべきものとされたほか、その指導的地位にかんがみ一定の権能が付与されることとなつたのであるが、都道府県の教育委員会にあつては、よくその立場を自覚し、制度の趣旨に沿つて課せられた責務を果されるよう努められたいこと。
6 新法は本年一〇月一日から全面的に施行されるが、教育委員会の設置および組織に関する部分は、公布の日から施行されるものであること。
7 以上のほか、新法および関係法令の施行に関し必要な留意事項は、別冊のとおりであるから、遺漏のないよう努められたいこと。なお、別冊記載事項は公布の日から施行されることとなる部分を主としたものであり、一〇月一日から施行されることとなる部分については別途通知する予定であること。
8 なお、新法の実施に当つては、新制度の趣旨を、教育関係者はもとより、一般住民に対しても周知徹底せしめ、その正しい理解と協力を得て、相ともに教育の振興に努められたいこと。
(別冊)
地方教育行政の組織及び運営に関する法律及び関係法令について
目次
一 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の内容について
(一) 総則に関する事項
(二) 教育委員会の設置及び組織に関する事項
(三) 教育委員会及び地方公共団体の長の職務権限に関する事項
(四) 教育機関に関する事項
(五) 文部大臣及び教育委員会相互間の関係等に関する事項
(六) その他
二 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の施行に伴う関係法律の整理に関する法律の内容について
(一) 関係法律の整理内容
(二) 施行期日
(三) 経過措置
三 地方教育行政の組織及び運営に関する法律施行令及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の施行に伴う関係政令の整理に関する政令の内容について
(一) 施行令に関する事項
(二) 整理政令に関する事項
四 新法の施行に伴う経過措置について
(一) 都道府県(五大市を含む。)及び市町村(特別区、全部事務組合、役場事務組合及び教育事務の全部を処理する一部事務組合を含む。)の場合
(二) 学校組合の場合
一 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の内容について
(一) 総則に関する事項
この法律は、教育委員会の設置、学校その他の教育機関の職員の身分取扱その他地方公共団体における教育行政の組織及び運営の基本を定めたものであること(法第一条)。なお、本法の制定施行に伴い、教育委員会法(昭和二三年法律第一七〇号)は、本年一〇月一日をもつて廃止されることとなること(法附則第二条)。
(二) 教育委員会の設置及び組織に関する事項
(1) 設置
(イ) 教育委員会は、都道府県、市町村及び第二三条に規定する教育事務の全部又は一部を共同処理する市町村の一部事務組合(以下「教育組合」という。)に置かれるものであること(法第二条)。
したがつて、教育事務の一部を処理するいわゆる学校組合についても本法公布即日教育委員会を設置するものであること(法附則第一条ただし書)。なお、この場合における委員、教育長等についての経過措置については、本法施行令の附則において規定されていること(令附則第一〇条から第一三条まで)。
(2) 委員
(イ) 教育委員会の委員は、五人の委員で組織するものであること。しかし、町村又は町村の構成する教育組合にあつては、人口のきわめて少ないもの等、特殊の事情もあることであるから、条例の定めるところにより、三人の委員で組織することができることとされていること(法第三条)。
なお、町村等にあつて委員の数を三人とし又は五人としようとする場合については、本法施行令にそのなし得る時期が定められていること(令第一条)。
(ロ) 委員の選任方法については、公選制を改め、地方公共団体の長が議会の同意を得て、当該地方公共団体の長の被選挙権を有する者(都道府県教育委員会の委員については日本国民で年令満三〇年以上の者、市町村教育委員会の委員については日本国民で年令満二五年以上の者)で、人格が高潔で、教育、学術及び文化に関し識見を有するもののうちから、任命するものとされたこと(法第四条第一項)。
したがつて、委員は、必ずしも当該地方公共団体内に住所を有するものに限らないものであること。
(ハ) 委員には、一定の欠格条項が設けられていること。
すなわち、準禁治産者、破産者で復権を得ない者、禁錮以上の刑に処せられた者(禁錮以上の刑に処せられ執行猶予中の者を含む。)は、委員となることができないこと(法第四条第二項)。
なお、禁治産者、又は選挙犯罪に因り罰金の刑に処せられ選挙権及び被選挙権を停止されているものは、長の被選挙権を有しない(公選法第一一条)から、委員となることができないことはいうまでもないこと。
(ニ) 委員の任命については、五人の委員で組織する委員会にあつては三人以上、三人の委員で組織する委員会にあつては二人以上、すなわち委員の過半数が同一政党に所属する者で構成されることのないようにしなければならないこと(法第四条第三項)。
(ホ) 委員の任期は、四年であること。ただし、補欠として任命される委員の任期は、前任者の残任期間であること。また、委員は再任されることを妨げないこと(法第五条)。委員は毎年一部づつ改任されるものであること(法附則第八条)。
(ヘ) 委員は、在任中、地方公共団体の議会の議員、地方公共団体の長その他地方公共団体の執行機関たる委員会の委員若しくは委員又は地方公共団体の常勤の職員と兼ねることはできないものであること(法第六条)。
なお、現に公職についている者が委員となるについては、当該公職について兼職制限の規定が設けられていることのあることに留意すること。さらに、地方自治法の一部を改正する法律(昭和三一年法律第一四七号)により、地方自治法に第一八〇条の五第七項が追加され、委員は請負業との兼業制限を受けることとなることに留意すること。
ちなみに、地方公共団体の執行機関たる委員会の委員若しくは委員とは、次のごときものであること。
教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会、公平委員会、公安委員会、地方労働委員会、収用委員会、海区漁業調整委員会、内水面漁場管理委員会、固定資産評価委員会、農業委員会の委員若しくは監査委員
(ト) 地方公共団体の長は、委員が心身の故障のため職務に堪えないと認める場合、職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合には、議会の同意を得て罷免できるものであること(法第七条第一項)。
(チ) 地方公共団体の長は、同一政党所属者が委員の過半数を占めることとなつたときは、法第七条第二項から第四項までの規定に従い委員を罷免するものであること。
(リ) 委員は、前記(ト)及び(チ)の場合を除き、その意に反して罷免されることなく、身分の保障が図られているものであること(法第七条第五項)。
(ヌ) 地方公共団体の長の選挙権を有する者は、当該地方公共団体の長に対し、委員の解職を請求することができること(法第八条第一項)。
なお、委員の解職の請求については、地方自治法中選挙管理委員等の解職の請求に関する規定、地方自治法施行令中条例の制定又は改廃の請求の手続が準用されること(法第八条第二項、令第三条)。
(ル) 委員は、法第四条第二項に規定する欠格条項に該当した場合及び当該地方公共団体の長の被選挙権を有しなくなつたときは、当然にその職を失うものであること(法第九条第一項)。
なお、この場合、長の被選挙権の有無の決定及び争訟については、地方自治法中普通地方公共団体の長の失職に関する規定が準用されること(法第九条第二項)。
(オ) 委員は、辞職するについては、当該地方公共団体の長及び教育委員会の同意を必要とするものであること(法第一〇条)。
(ワ) 委員は、政党その他の政治的団体の役員となること又は積極的に政治運動をすることが禁止されるとともに、秘密を守る義務があるものであること(法第一一条)。
(カ) 委員の報酬及び費用弁償については、地方自治法第二〇三条の規定の適用があること。
なお、前記地方自治法の一部改正により、同法第二〇三条第二項が追加されたことに留意すること。
(3) 委員長
(イ) 教育委員会は、委員のうちから委員長を選挙しなければならないこと(法第一二条第一項)。
(ロ) 委員長は、会議を主宰し、教育委員会を代表するものであること(法第一二条第三項)。
ここに、代表するとは、委員長名で委員会の権限に属する法律行為をなしうるということであるが、教育委員会の権限に属する事務を委員長独りで行いうるものではなく、又委員長が事務の執行者となるという意味ではないこと。
(ハ) 副委員長制は廃止されたので、法第一二条第四項の規定により、委員長の職務代理者をあらかじめ教育委員会が指定しておくものであること。
(4) 会議
(イ) 教育委員会の会議は、委員長が招集するものであること(法第一三条第一項)。
(ロ) 会議は、委員長(委員長に事故があるとき、又は委員長が欠けたときは、法第一二条第四項の規定によりあらかじめ指定する委員。以下同じ。)が出席し、同時に委員長を含めた在任委員の半数以上が出席しなければ会議を開くことができないこと(法第一三条第二項、第四項)。なお、会議の議事は、委員長を含めた出席委員の過半数で決するが、可否同数のときは委員長が決をとるものであること(法第一三条第三項)。
(ハ) 委員の会議の出席については、除斥規定があることに留意すること(法第一三条第五項)。
また、除斥される委員は定足数の計算には入らないこと。
(ニ) その他教育委員会の会議の招集方法、会議開催の場所及び日時、会議付議事件等の告知の方法等教育委員会の会議その他議事の運営について必要な事項は教育委員会規則で定めるものであること(法第一四条)。
なお、会議公開の原則は、本法に規定せられてはいないが、これを禁止するものではなく、その採否は教育委員会規則にゆだねたものであること。
(5) 教育委員会規則
教育委員会は、法令又は条例に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務について、教育委員会規則を制定できること(法第一四条第一項)。
(6) 教育長
(イ) 都道府県に置かれる教育委員会(以下「都道府県委員会」という。)の教育長は文部大臣の、市町村又は市町村の組合に置かれる教育委員会(以下「市町村委員会」という。)の教育長は都道府県委員会の承認を得て、教育委員会が任命するものであること(法第一六条第二項及び第三項)。
(ロ) 市町村委員会の教育長は、当該市町村委員会の委員のうちから任命されるものであること(法第一六条第三項)
したがつて市町村長又は教育組合の管理者は、委員の任命を行うに当つては、あらかじめ、教育長として適任であり、その職務の遂行が可能である者を少くとも一人以上は委員の中に加えておく必要があること。
(ハ) 市町村委員会の教育長は、委員としての職務と教育長としての職務と併せ行うものであり、委員としては非常勤であるが(法第一一条第四項)、教育長としては常勤の一般職の職員である。したがつて、教育長としての職務の遂行に当つては、地方公務員法の規定の適用があることに留意すること。なお、この教育長は委員としての任期を在任期間とするものであり、委員の職を辞職し、失職し、又は罷免されたときは当然に教育長の職を失うものであること(法第一六条第四項、第五項)。
(ニ) 市町村委員会の教育長の給与については、改正後の教育公務員特例法第一七条の規定の適用がありしたがつて、教育長としての給与と委員としての報酬の調整をとる必要がある場合においては、条例で調整措置を講ずること。
(ホ) 教育長は、教育委員会の指揮監督の下に、教育委員会のすべての事務をつかさどるものであり(法第一七条第一項)、また、事務局の事務を統括し、所属職員を指揮監督するものであること(法第二〇条第一項)。
(ヘ) 教育長は、教育委員会のすべての会議に出席し、議事について助言するが、法第一七条第三項の除斥規定があることに留意すること。なお、除斥の場合、市町村委員会の教育長の場合にあつては、委員として会議に出席し、発言することはできるものであること(法第一七条第三項ただし書)。
(ト) 教育長については従前の任用資格に該当する規定は別段設けられていないが(整理法第四条)、これは、教育長の地位にかんがみ、その人選に適切を期し、広く人材を求め得るみちをひらいたものであるから、法の趣旨にそうよう、その人選は慎重に行われたいこと。
(7) 事務局
(イ) 教育委員会の事務局の内部組織(次長、部、課、係等)は、教育委員会規則で定めるものであること(法第一八条第二項)。
なお、前記地方自治法の一部改正による同法第一八〇条の四及び第一八〇条の五第五項の規定に留意すること。
(ロ) 都道府県委員会の事務局には指導主事、事務職員、技術職員その他の所要の職員を、市町村委員会の事務局には都道府県委員会の事務局に準じて所要の職員を置き、事務処理に支障をきたさないよう留意すること(法第一九条第一項、第二項)。
(ハ) 指導主事の職務は、上司の命を受け、学校における教育課程、学習指導その他学校教育に関する専門的事項の指導に関する事務に従事することであること(法第一八条第三項)。
(ニ) 指導主事については、従前の任用資格を改められるとともに、この指導主事については、教員をもつて充てることができるものであること(法第一九条第四項、整理法第四条)。この場合本法施行令第四条及び第五条の規定があること。なお、教育委員会法第四七条の規定は、本法公布即日失効するから、従来同規定により現に教員で事務局に勤務する者の処理について留意すること。
(ホ) 前記(ロ)の事務局の職員の任命は、教育長の推薦によるものであること(法第一九条第七項)。
(ヘ) 従来、教育委員会法施行令に規定されていた「主事」「技師」等、職員の職の設置については、法令に特別の定あるものの外は、教育委員会規則で定めることとされたこと(令第六条)。
(ト) 事務局の事務は、教育長が統括し、所属職員の指揮監督を行うこと(法第二〇条第一項)。なお、教育委員会は、教育長に事故があるとき、又は教育長が欠けたときの職務代行者を、事務局の職員のうちから、あらかじめ指定しておくこと(法第二〇条第二項)。
(チ) 前記(ロ)の事務局の職員(臨時又は非常勤のものを除く。)の定数は、条例で定めること(法第二一条)。
なお、教育長及びこれらの事務局職員の身分取扱については、本法及び教育公務員特例法に特別の定があるものを除いて、地方公務員法の定めるところによるものであること(法第二二条)。
(三) 教育委員会及び地方公共団体の長の職務権限に関する事項
(1) 教育委員会と地方公共団体の長の職務権限
(イ) 教育委員会と地方公共団体の長の職務権限について調整を加え、両者の権限を明記したものであること。しかし大学及び私立学校に関する事務を除き、教育本来に関する事務は、なお教育委員会が管理執行するものであること(法第二三条、第二四条)。
(ロ) 地方公共団体の長の職務権限として明定せられたものは、いわゆる団体事務に関するものであること(法第二四条)。したがつて、このほか、地方公共団体の長に対する機関委任事務については、それぞれの法令の規定によるものであること。
(ハ) 本法においては、教育委員会法と同様「教育、学術、文化」の中に「宗教」も含まれるものであること。
(ニ) 法第二三条及び第二四条の規定による教育委員会と、地方公共団体の長の職務権限は、法令、条例等の定めに従つて行使されなければならないこと(法第二五条)。
(2) 地方公共団体の長に移行する事務
本年一〇月一日から、従前教育委員会が担任していた事務で地方公共団体の長が担任することとなる事務は次のとおりであること(法第二四条第三号から第四号まで)。
一 教育財産を取得し、及び処分すること。
二 教育委員会の所掌に係る事項に関する契約を締結すること。
三 教育委員会の所掌に係る事項に関する収入及び支出を命令すること。
教育財産の管理は、地方公共団体の長の総括の下に、従来どおり教育委員会が行うものであること(法第二三条第二号、法第二八条第一項)。なお、学校、図書館、博物館、公民館その他の教育機関を設置し、管理し及び廃止することは、これら教育機関の用に供する財産(教育財産)の取得及び処分とは異なることであつて、これらのことは教育委員会が担任するものであること(法第二三条第一号)。
次に、校舎その他の施設及び教具その他の設備をどのように整備するかの決定は教育委員会が行うものであつて、その決定により、教育財産の取得を必要とするときには、その旨を地方公共団体の長に申し出で、その申し出をまつて、地方公共団体の長が教育財産を取得し、教育委員会に引き継ぐこととなるものであること(法第二三条第七号、法第二四条第三号、法第二八条第二項、第三項)。
(3) 事務の委任と委任事務の指揮監督
教育委員会は教育長に対し、教育長は事務局職員又は学校その他の教育機関の職員に対し、都道府県委員会は市町村委員会に対し、都道府県委員会の教育長は市町村委員会の教育長に対し、それぞれ、その権限に属する事務の一部を委任し又は臨時に代理させ、あるいは都道府県委員会は市町村委員会の任命に係る職員をして補助執行させることができること(法第二六条)。なお、都道府県委員会又はその教育長は、市町村委員会又はその教育長に対し委任した事務(指定都市の教育委員会に法定委任された事務を含む。)の管理及び執行について、これらを指揮監督できるものであること(法第二七条)。
(4) 教育委員の意見聴取
従前の予算案、条例案のいわゆる二本建制度はこれを廃止されたが、教育委員会の所掌事務にかかる歳入歳出予算その他特に教育に関する事務について定める条例その他の事案については、地方公共団体の長は、その議案を作成する場合においては、教育委員会の意見をきかなければならないものであること(法第二九条)。
(四) 教育機関に関する事項
(1) 教育機関の設置
地方公共団体は、法律に定めるもののほか、条例で必要な教育機関を設置することができるものであること(法第三〇条)。なお、従前条例に基づかないで設置されている教育機関については、附則第一四条の規定に従い、本年一〇月一日以降六月以内に必要な措置をとらなければならないものであることに留意すること。
(2) 教育機関の職員
学校に置かれる職員は法律で定めるところにより、学校以外の教育機関に置かれる職員は法律又は条例の定めるところにより設置されること(法第三一条第一項、第二項)。なお、これらの職員(臨時又は非常勤のものを除く。)の定数は、本法第四一条の場合を除いて、当該地方公共団体の条例で定めるものであること(法第三一条第三項)。
(3) 教育機関の所管
公立の教育機関のうち、大学は地方公共団体の長が所管し、その他のものは教育委員会が所管するものであること(法第三二条)。
(4) 学校等の管理、教材の使用の届出又は承認
教育委員会は、学校その他の教育機関の施設、設備、組織編制、教育課程、教材の取扱その他学校等の管理運営の基本的事項について、必要な教育委員会規則を定めるものであること(法第三三条第一項前段)。なお、この場合その実施について新たに予算を必要とする場合には地方公共団体の長に協議しなければならないこと(法第三三条第一項後段)。
また、この教育委員会規則には学校で使用する教科書以外の教材たとえば副読本、学習帳等の使用については、あらかじめ教育委員会に届け出させ、又は承認を受けさせることとする定を設けなければならないこと(法第三三条第二項)。なお、この右の趣旨は、学校で使用される教材については、その教育的価値又は父兄の負担等の見地から軽々に取り扱うべきでないものの少なくないことにかんがみ、教育委員会が、必要と認める教材の使用について事前に届出又は承認にかかわらしめ、有益適切な教材の利用に努め、教育効果を高めるための積極的な活動を期待するとともに、教材の使用の適正を期そうとするところにあるものであること。したがつて、教材の使用については、そのすべてを届け出又は承認にかからしめることとすることは必要ではないこと。
(5) 教育機関の職員の任命と身分取扱
教育委員会の所管する教育機関の職員は、本法に特例がある場合を除いて、教育長の推薦により、教育委員会が任命するものであること(法第三四条)。なお、その職員の身分取扱については、本法及び教育公務員特例法に特別の規定がある場合を除いて、地方公務員法の定めるところによること(法第三五条)。
(6) 所属職員の進退に関する意見の申出
学校その他の教育機関の長は、その職務上所属の職員を指揮監督する地位にあるものであるから、職員の任免その他の身分上の異動については、任命権者に対して意見を申し出ることができるとされ、長の地位が明らかにせられたこと(法第三六条)。
(7) 県費負担教職員
(イ) 県費負担教職員の身分取扱については、現行制度とは異なつた人事制度が採られるものであること。このことは、これらの教職員の適正配置と人事交流の円滑を図り、かつ任命権者の属する団体と給与負担団体とを一致せしめるとともに、その職務の遂行の適正を期するものであること。
(ロ) 県費負担教職員の任命権は、都道府県委員会が、市町村委員会の内申をまつて行うものであること(法第三七条第一項)。なお、市町村間の異動について、地方公務員法の分限規定にかかわらず、特別の形式で取扱ができるものとされたこと(法第四〇条前段)。
(ハ) 県費負担教職員の従事する教育の事業は、市町村の事業であり、これらの教職員は当該市町村の公務員であるから、その服務の監督は市町村委員会が行うものであり、その研修は都道府県委員会のみならず市町村委員会も行うことができ、その勤務成績の評定は都道府県委員会の計画の下に市町村委員会が行うものであること(法第四三条第一項、法第四五条、第四六条)。
(ニ) 県費負担教職員の定数は都道府県の条例で定めるものとされ、その市町村別の学校種別ごとの定数は、従来と異なり、都道府県委員会が市町村委員会の意見をきいて定めるものであること(法第四一条)。
(ホ) 県費負担教職員の給与、勤務時間その他の勤務条件のほか、任免、分限、懲戒に関する条例は都道府県の条例で定めるものであり、これらの条例の実施又は市町村委員会の行う県費負担教職員の服務の監督について、都道府県委員会は、市町村委員会に対し、一般的指示権を有するものであること(法第四二条、第四三条第三項、第四項)。
(ヘ) 地方公務員法によれば、職階制は人事委員会を置く地方公共団体において実施せられることになつているが、県費負担教職員については、都道府県の条例で都道府県内を通じて実施せられるものであること(法第四四条)。
(ト) 県費負担教職員の人事制度の改正に伴い、地方公務員法の適用について、必要な読替規定が設けられていること(法第四七条、令第七条)。
(五) 文部大臣及び教育委員会相互間の関係等に関する事項
(1) 従来、文部大臣の都道府県又は市町村に対する関係及び都道府県の委員会の市町村に対する関係については、地方自治法及び教育委員会法に技術的な指導、助言又は勧告をなしうる旨の規定があり、また文部省設置法にも若干の規定が設けられていたが、地方公共団体における教育行政に対する国の指導的地位並びに市町村に対する都道府県委員会の指導的地位を明らかにし、国、都道府県及び市町村の教育行政が相連絡提携して運営せられる制度を樹立するため第五章が設けられたものであること。
(2) 文部大臣の都道府県又は市町村に対する指導機能と都道府県委員会の市町村に対する指導機能が明確かつ積極的にせられたこと(法第四八条)。
(3) 都道府県委員会は、市町村立学校等の管理運営に関する必要な基準を設定できるとともに(法第四九条)当該都道府県内の公立高等学校の通学区域を指定するものであること(法第五〇条第一項本文)。なおこの通学区域の指定にあたり、市町村立高等学校に関しては、都道府県委員会は、あらかじめ当該市町村委員会の意見をきかなければならないこと(法第五〇条第二項)。
(4) 文部大臣又は都道府県委員会の連絡調整機能が明定せられるとともに、教育委員会は、文部大臣又は他の教育委員会と協力し、教職員の適正配置と、人事交流の円滑等を図り、教育事務の適正な管理執行に努めなければならないこととせられたこと(法第五一条)。
(5) 文部大臣は、地方公共団体の長又は教育委員会の教育事務の管理執行が法令に違反していると認められる場合あるいは著しく適正を欠き、かつ教育の本旨を損うものがあると認める場合には、必要な是正措置の要求をなすことができること(法第五二条第一項)。また、この措置要求が市町村長又は市町村委員会に対するものにあつては、原則として都道府県委員会に法定委任せられているものであること。但し、必要があるときは、文部大臣は自ら市町村長又は市町村委員会に措置の要求をすることができること(法第五二条第二項)。なお、本条第二項の「措置」とは、同条第一項の「違反の是正又は改善のため必要な措置を講ずべきことを求めること」をいうもので、第二項の規定により代執行等を認めるものではないこと。
(6) 文部大臣は、前記(2)、(4)、(5)の権限を行うため、地方公共団体の長又は教育委員会の管理執行する教育事務について必要な調査を行うことができるものであること(法第五三条第一項)。なお、この調査が市町村長又は市町村委員会の管理執行する教育事務に係るものにあつては、文部大臣は、都道府県委員会をして代行させることができるものであること(法第五三条第二項)。
(7) 教育行政機関は、的確な調査、統計等の資料に基き、所掌事務の適切かつ合理的な処理に努めなければならず、また文部大臣は地方公共団体の長又は教育委員会に対し、都道府県委員会は、市町村長又は市町村委員会に対し、必要な資料又は報告の提出を求めることができるものであること(法第五四条)。
(六) その他
(1) 学校給食用物資の取得については、学校給食の普及を図るため、都道府県委員会が必要なあつせんを行うことができること(法第五六条)。
(2) 教育委員会は、学校身体検査その他学校の保健については、保健所の協力を求めるものとし、保健所はこれに助言と援助を与えるものであること(法第五七条)。なお、本法施行令第四章において細目的事項は規定されているから留意すること。
(3) 指定都市(五大市)については、都道府県が行使することとなる教職員の任免、給与の決定、休職及び懲戒に関する事務は、指定都市の教育委員会に法定委任されたこと(法第五八条第一項)。また、指定都市の教育委員会の教育長は、都道府県委員会の教育長と同様、委員のほかから、文部大臣の承認を得て任命するものとされたこと(法第五八条第三項)。なお、指定都市の県費負担教職員の研修は、指定都市の教育委員会が行うものであること(法第五八条第二項)。
(4) 学校の教育課程、教科書その他の教材の取扱の事務は、特別区には処理の権限がなく、法第三三条により教育委員会規則で定めるものとされている学校その他の教育機関の教育課程及び教材の取扱に係るものについては、都の教育委員会規則で定めるものとされたこと(法第五九条)。
(5) 教育組合の特例
教育組合が法第二三条に規定する事務の全部を処理する場合には、その構成市町村には教育委員会を置かないものであること及び教育組合の教育委員会の委員とその構成市町村の教育委員会の委員とは、法第六条の兼職禁止の規定にかかわらず兼ねることができること。なお、教育組合の設置等の場合において、関係市町村の議会は、事前に教育委員会の意見を聞かなければならず、又、都道府県知事は、許可の処分をする前に、都道府県教育委員会の意見を聞かなければならないこと(法第六〇条及び令第五章)。
(6) 政令への委任
市町村の廃置分合があつた場合におけるこの法律の特例その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定めうること(法第六一条)。
(7) 経過措置
経過措置については、「四、新法の施行に伴う経過措置について」を参照のこと。
(8) 施行期日
本法の全面的施行は、本年一〇月一日からであるが、教育委員会の設置及び組織に関する事項に関する規定は、公布即日施行されるものであること(法附則第一条)。
二 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の施行に伴う関係法律の整理に関する法律の内容について
(一) 関係法律の整理内容
この法律は地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「新法」という。)の施行に伴い関係法律の関係規定の整備を図るため、次に掲げる諸法律の一部改正を行うものであること。
(1) 地方自治法の一部改正(整理法第一条)
(イ) 同法第二〇条は、教育委員会の委員の選挙に関する規定であるので、公選制の廃止に伴い、同条を削除したこと。
(ロ) 教育委員会の委員長に代表権が附与されたことに関連して、議会における説明のための出席義務者を、他の委員会の場合と同様に委員長としたこと(地方自治法第一二一条の改正)。しかしこのことは委員長以外の者に出席義務がなく、又出席できないということにならないこと。
(ハ) 教科内容に関する用語を整備したことに伴い、特別区の権限に関する関係規定を整備したこと(地方自治法第二八一条の改正)。
(ニ) 助役は、新法施行後も、昭和三二年三月三一日までは教育長を兼ねることができることとされたこと。なお、この場合においては、委員のうちから教育長を任命しなくてもよいが、市町村の教育委員会は、任命に当つて、都道府県の教育委員会の承認を得なければならないこと(地方自治法附則第六条の改正)。しかし、この改正は、現に教育長を兼ねている助役が、そのまま、本年一〇月一日を超えて在任できる趣旨ではなく、それらの者については、本法附則第一〇条及び第一一条の適用があること(整理法附則第九項)。
(2) 恩給法の一部改正(整理法第二条)
新法による教育委員会の教育長又は事務局の職員についても、従前の教育長又は事務局の職員と同様の恩給法上の取扱をすることとしたこと。
(3) 市町村立学校職員給与負担法の一部改正(整理法第三条)
新法第四一条の規定により不用となつた第三条を削除したほか、関係規定の改正を行つたこと。
(4) 教育公務員特例法の一部改正(整理法第四条)
(イ) 県費負担教職員の任命権は都道府県の教育委員会が行使することとなつたことに伴い、採用志願者名簿の制度を廃止し、また校長の任用資格は削除整備することとして、関係規定の整理をしたこと(特例法第一三条の改正)。なお、校長の任用資格は、学校教育法施行規則に規定する予定であること。
(ロ) 教育長の選任方法の改正、指導主事の資格について新法に規定したことに伴い、教育長及び指導主事の任用資格を削除し、これらの職員の採用又は昇任については、採用志願者名簿の制度を廃止するとともに、選考によるものとしたこと(特例法第一六条の改正)。
(ハ) その他教育長の給与、教育公務員の研修等に関する規定を整備又は整理したこと。
(5) 文部省設置法の一部改正(整理法第五条)
新法の規定に対応して、教育委員会又は地方公共団体の長に対する是正又は改善のための必要な措置要求と都道府県及び五大市の教育長の任命に係る承認とを、文部大臣の権限として明定したこと。
(6) 社会教育法の一部改正(整理法第六条)
教育委員会法第六一条を準用していた規定を削除する等関係規定の整理を行つたこと。
(7) 公職選挙法の一部改正(整理法第七条)
教育委員会の委員の公選制を廃止したことに伴い、関係規定を整備したこと。
(8) 図書館法、文化財保護法、産業教育振興法、博物館法及び青年学級振興法の一部改正(整理法第八条から第一二条まで)
文部大臣及び都道府県教育委員会の行う指導、助言、援助に関する規定が新法により整備されたことに伴つて不用となつた規定を整理し、または教育委員会法第六一条を準用していた規定を削除する等、関連規定の整理を行つたこと。
(9) 公立学校施設費国庫負担法、危険校舎改築促進臨時措置法及び公立小学校不正常授業解消促進臨時措置法の一部改正(整理法第一三条、第一四条、第一九条)
新法の規定による教育委員会と地方公共団体の長との間の権限の調整に対応して、これらの法律の規定に基く国の負担金又は補助金の返還をさせる等の場合の釈明者を、地方公共団体の長と改めたこと。
(10) 町村合併促進法の一部改正(整理法第一五条)
教育委員会の委員の公選制を廃止したことに伴い、町村合併の際の委員の定数及び任期に関する特例に関する規定を削除したこと。
(11) 義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法の一部改正(整理法第一六条)
教育事務の全部又は一部を共同処理する地方公共団体の組合のすべてに教育委員会が設置されることとなつたことに伴い、関係規定の整理を行つたこと。
(12) 教育職員免許法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理に関する法律の一部改正(整理法第一七条)
教育公務員特例法中の教育長、指導主事及び校長の任用資格に関する規定を削除したことに伴い、これらの職員の暫定資格に関する規定を削除したこと。
(13) 女子教育職員の産前産後の休暇中における学校教育の正常な実施の確保に関する法律の一部改正(整理法第一八条)
県費負担教職員の任命権者の変更に伴い、不要となつた第四条第二項を削除したこと。
(14) 地方財政再建促進特別措置法の一部改正(整理法第二〇条)
新法第四一条第二項の規定がもうけられたことに伴い、不用となつた第九条を削除したこと。
(二) 施行期日
この法律は、新法と同様原則として昭和三一年一〇月一日から施行されるが、新法の教育委員会の設置関係規定に関する次に掲げる改正規定は、新法の教育委員会の設置関係規定施行の日から、すなわち新法公布の日から施行されること(整理法附則第一項)。
(1) 第一条(地方自治法の一部改正)中地方自治法第二〇条、第一二一条及び附則第六条の改正規定
(2) 第二条(恩給法の一部改正)
(3) 第四条(教育公務員特例法の一部改正)中教育公務員特例法第一六条の改正規定並びに教育長の給与に関する規定を整理した同法第一七条及び第二一条の四の改正規定
(4) 第五条(文部省設置法の一部改正)中都道府県及び指定都市の教育委員会の教育長の任命に承認を与える権限を文部省の権限に追加することとした文部省設置法第五条第一項第一九号の三の改正規定、及びこれに伴う同法第八条第一号の二の改正規定
(5) 第七条(公職選挙法の一部改正)、第一五条(町村合併促進法の一部改正)及び第一六条(義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法の一部改正)
(6) 第一七条(教育職員免許法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理に関する法律の一部改正)中教育長及び指導主事に係る教育職員免許法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理に関する法律附則第三項及び第四項の改正規定(附則第五項の改正規定中教育長又は指導主事に係る部分を含む。)
(三) 経過措置
(1) 県費負担教職員の定数条例、給与、勤務時間その他の勤務条件に関する条例、及び教育公務員の研修又は兼務に関する許可について、この法律施行の日(本年一〇月一日)における経過措置が規定されていること(整理法附則第二項から第四項まで)。
(2) 恩給法の準用を受けていた旧教育委員会の教育長又は事務局職員の恩給法上の取扱については、なお従前の例によること(整理法附則第五項)。
(3) 前記一(二)(2)(ヘ)の地方自治法の一部改正法が施行されるまでの「指定都市」の読み替並びに新法の教育委員会の設置関係規定の施行後行う委員の選挙、改正前の町村合併促進法の規定により在任する委員に対する新法附則第三条の適用及び改正前の地方自治法附則第六条により助役を兼ねている教育長に対する新法附則第一〇条の適用について、経過措置が規定されていること(整理法附則第六項から第九項まで)。
三 地方教育行政の組織及び運営に関する法律施行令及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の施行に伴う関係政令の整理に関する政令の内容について
(一) 施行令に関する事項
(1) 委員
(イ) 新法第三条により定数を五人から三人に変更する場合は、二人の委員の任期が同時に満了する時期でなければならないこと(令第一条第一項)。
三人を五人に変更するのは任期満了になる委員のない年で最近の委員の任期満了日から一年の間隔を置いて行うこと(令第一条第二項)。
(ロ) 特別区の教育委員会の委員については、新法第四条第一項中「当該地方公共団体の長」とあるのは「市長」と読み替えるものであること(令第二条)。したがつて、特別区の教育委員会の委員は、市の教育委員会の委員と同様、日本国民で年令満二五年以上の者であることを要すること。
(ハ) 解職請求の手続については、地方自治法施行令の第九一条から第九八条の三までの規定が準用されること(令第三条)。
(2) 指導主事
新法第一九条第四項後段の規定により指導主事に教員を充てる場合には、その教員の任命権者が、当該教育委員会である場合を除き、任命権者の同意を得なければならないこと(令第四条第一項)。また、都道府県委員会が県費負担教職員を指導主事に充てる場合には、自らが任命権者である場合においても、その教員の属する市町村委員会の同意を得なければならないこと(令第四条第二項)。
なお、指導主事に充てられた教員は、その期間中、教員の身分に変動はないが、教員の職務には従事しないものであること(令第五条)。
(3) 職員の職の設置
法令に別段の定があるものを除き、教育委員会の事務局の職員の職にいかなるものを設けるかは、教育委員会規則にゆだねられたこと(令第六条)。これにより主事、技師等職員の職の設置は教育委員会規則により定めうるものとなること。
(4) 地方公務員法の技術的読替
県費負担教職員は、市町村の公務員でありながら、その給与を都道府県が負担し、また、都道府県委員会が任命権者となつたので、新法第四七条第二項の規定に基き、県費負担教職員に対し、地方公務員法の規定を適用する場合における技術的読替の規定を設けたこと。これにより、県費負担教職員に対する人事委員会の関与の関係等を明らかにしたこと(令第七条)。
(5) 教育委員会と保健所との関係
学校身体検査、学校の環境衛生の維持、保健衛生に関する資料の提供等について教育委員会と保健所との助言、援助及び協力関係について、法第五七条第二項に基き規定がなされていること(令第四章)。
(6) 教育組合
(イ) 教育組合の構成市町村数の増減、共同処理する事務の変更、規約の変更について都道府県知事が許可をする場合には、都道府県委員会の意見をきかなければならないこと(第一一条)。
教育組合の規約等の変更、解散(全部事務組合たる教育組合を除く。)については、関係市町村の議会は議決を行う前に、その教育委員会の意見をきかなければならないこと(令第一二条)。また、教育組合の解散については、都道府県知事のみならず都道府県委員会に届け出ること(令第一三条)。
なお、教育組合の設置については、新法第六〇条第二項及び第三項の規定のあることに注意すること。
(ロ) 教育組合の教育委員会の委員については、新法第四条第一項中「当該地方公共団体の長」とあるのは、「当該教育組合を組織する市町村の長」と読み替えること(令第一四条。)したがつて、教育組合の教育委員会の委員は、組合を構成する市町村の長の被選挙権を有するものであること。
(ハ) 新法第六条の規定にかかわらず、教育組合の委員は、構成市町村の教育長を兼ねることができ、構成市町村の委員は、組合の教育長を兼ねることができること(令第一五条)。
(ニ) 教育組合のうち、地方自治法第二八四条第一項に規定する一部事務組合たる教育委員会の委員について、解職請求が行われる場合に、それに関する事務を処理する選挙管理委員会は、当該組合の規約において定められた選挙管理委員会とすること。なお、この場合に、関係地方公共団体の選挙管理委員会は、その事務処理に協力しなければならないこと(令第一六条)。
(ホ) 教育組合の設置後、最初に任命される教育委員会の委員の任期は、その定数が五人の場合は、二人は四年、一人は三年、一人は二年、一人は一年とし、その定数が三人の場合は、一人は四年、一人は三年、一人は二年とし、各委員の任期は、組合の管理機関が定めるものであること(令第一七条)。
(7) 市町村の廃置分合
(イ) 市町村の設置があつた場合には、新設市町村の市町村長職務執行者が、その設置により消滅した市町村の教育委員会の委員であつた者から、臨時に委員を選任すること。しかし同一廃置分合により、新設される市町村が二つ以上になる等、消滅した市町村の委員であつた者を任命するだけでは、その定数に満たない場合には、当該市町村の長の被選挙権を有する者から選任するものであること(令第一八条第一項)。
この委員会の最初の会議の招集者は市町村長職務執行者であり、これらの臨時委員は、当該市町村の設置後最初に招集される議会の会期の末日まで在任するものであること。したがつて新設市町村において新法第四条による委員の任命はその翌日において行われねばならないことに注意すること(令第一八条第二項)。
新設市町村においては、前記三、一、(1)、(イ)にかかわらず、臨時委員の任期が満了する時期でも、教育委員会の委員の定数を三人とし、又は五人とすることができること(令第一八条第四項)。
臨時委員で構成する教育委員会の教育長は、都道府県委員会の承認を要しないで、委員の互選により定めた者を教育長に任命するものであること。なお、その在任期間は、臨時委員の在任期間の終了までであること(令第一九条)。
(ロ) 市町村が設置された場合の所要の事務引継について規定がなされていること(令第二二条)。
(ハ) 新設市町村において、最初に新法第四条の規定により任命される委員の任期は、その定数が五人の場合は、二人は四年、一人は三年、一人は二年、一人は一年とし、その定数が三人の場合は、一人は四年、一人は三年、一人は二年とし、各委員の任期は、市町村長が定めるものであること(令第二〇条)。なお、これらの委員の任命後最初の会議は、市町村長が招集すること(令第二一条)。
(8) その他
(イ) 経過措置
奄美群島における教育委員会の委員に関する特例その他経過措置が規定されていること(令附則第一六条)。なお、それらの経過措置については、「四 新法の施行に伴う経過措置について」を参照のこと。
(ロ) 施行期日
この政令は、本年一〇月一日から施行されるものであるが、第一章(教育委員会の委員)、第二章(事務局職員)、第五章(教育組合)及び第六章(市町村の廃置分合の場合における特例)並びに附則(第九条を除く。)の規定は、公布即日施行せられるものであること(令附則第一条)。
(二) 整理政令に関する事項
(1) 地方自治法施行令、最高裁判所裁判官国民審査法施行令、公職選挙法施行令、公職選挙法に規定する選挙の選挙運動に関する支出金額の算出の基準額等を定める政令、町村合併促進法施行令の一部改正(整理令第一条、第二条、第四条、第五条、第一二条)
教育委員会の委員の公選制の廃止に伴い、関係規定の整理等をしたこと。
(2) 教育公務員特例法施行令の一部改正(整理令第三条)
教育公務員特例法の改正により、採用志願者名簿の制度がなくなつたので、それに関連する関係規定の整理を行つたものであること。
(3) 図書館法施行令、博物館法施行令、産業教育振興法施行令、義務教育費国庫負担法に基く教材費の国の負担額等を定める政令、青年学級振興法施行令、公立学校施設費国庫負担法施行令、危険校舎改築促進臨時措置法施行令、補助金等の臨時特例等に関する法律施行令、盲学校、ろう学校及び養護学校への就学奨励に関する法律施行令、へき地教育振興法施行令、学校給食法施行令、理科教育振興法施行令、高等学校の定時制教育及び通信教育振興法施行令、学校図書館法施行令、公立小学校不正常授業解消促進臨時措置法施行令の一部改正(整理令第六条、第七条、第九条から第一一条まで、第一三条から第二二条まで)
新法(教育委員会の設置関係規定に関する部分を除く。)の施行により一〇月一日以降、教育事務のうち、教育財産の取得及び処分権、教育委員会の所掌に係る事項に関する契約の締結権及び教育委員会の所掌に係る事項に関する支出命令権が地方公共団体の長に移行したので、補助金、負担金の申請者を教育委員会から地方公共団体の長に改めたこと。
(4) 文部省組織令の一部改正(整理令第八条)
新法の制定及び文部省設置法の一部改正に伴い、所要の改正を加えたものであること。
(5) 施行期日
この政令は本年一〇月一日から施行されるものであるが、教育委員会の委員の公選廃止に伴う関係各政令の一部改正(整理令第一条、第二条、第四条、第五条、第一二条)及び文部省組織令第七条の改正規定部分(整理令第八条)は、この政令公布即日施行せられること(整理令附則第一項)。
四 新法の施行に伴う経過措置について
(一) 都道府県(五大市を含む。)及び市町村(特別区、全部事務組合、役場事務組合及び旧教育委員会法第三条により教育委員会を置く一部事務組合を含む。)の場合
(1) 委員及び教育長の経過措置
(イ) 委員の経過措置
A 在任期間 旧教育委員会法(以下「旧法」という。)による委員(以下「旧委員」という。)は、昭和三一年九月三〇日までの間、引き続き新法による委員(以下「新委員」という。)として在任するものとすること。ただし、旧委員中の選挙による委員(以下「旧公選委員」という。)は、その旧公選委員としての任期が九月三〇日以前に満了するときは、その任期満了の日まで在任するものであること。また、旧委員のうち、議会の議員から選挙された者(以下「旧議会選出委員」という。)は、議員としての任期が九月三〇日以前に満了するときは、その満了の日まで(その日以前に旧公選委員の任期が満了し又はすべて欠けるに至つたときは、その任期が満了し又はすべて欠けるに至つた日まで)在任するものであること(法附則第三条前段、第四条第二項)。
なお、設置関係規定(公布即日施行となる部分の新法の規定、法附則第一条参照。以下同じ。)の施行の際現に在任する委員が旧議会選出委員のみである場合には、法附則第七条により選挙が行われる場合を除き、当該委員は設置関係規定施行の日に失職すること(法附則第四条第一項)。
また、整理法による改正前町村合併促進法第九条の二により委員として在任する者又はその在任期間は、それぞれ旧公選委員又はその任期とみなして、特例法附則第三条の規定が適用されること(整理法附則第八項)。
B 定数 引き続き在任する委員の数が、新法第三条に規定する定数をこえる場合は、その引き続き在任する委員の数をもつて定数とし、これらの委員が欠けた場合には、新法の定数まで漸次減少するものであること(法附則第三条第一項後段)。
C 欠員の補充、引き続き在任する委員の数が新法第三条に規定する定数に達しないとき、又は前記Aにより旧公選委員が新委員として在任する期間中に定数に達しなくなつたため補充する必要があるときは法附則第七条により選挙が行われる場合を除き、地方公共団体の長が新法第四条の規定によつて補充の委員を任命すること(法附則第五条第一項)。この場合補充委員の在任期間の終期は、他の委員が前記Aにより新委員として在任する期間の終期と同様であること(法附則第五条第二項)。
D その他の事項
旧議会選出委員については新委員として在任する期間、新法第六条の兼職禁止の規定にかかわらず、議員を兼ねていられること(法附則第六条)。
旧委員のうち、新法第四条第二項の欠格条項に該当するものは、新委員として引き続き在任できないこと(法附則第三条第一項)。
設置関係規定施行後は、委員のうち、三人または二人以上が同一政党に所属することとならないよう措置されなければならず、また、委員は政党の役員となつてはならないが、引き続き在任する委員で従来から同一政党に所属する者が過半数を占めている場合又は引き続き在任する委員が従来から政党に所属していた者、又は政党役員である場合については、なお、従来どおりの政党に所属し又は従来どおりの政党の役員であるまま、新委員として在任して差支えないこと。ただし、それらの者も積極的な政治運動をすることは禁止されること(法第四条第三項、第一一条第五項)。
(ロ) 教育長の経過措置
設置関係規定の施行の際現に教育長が在任する場合には、その教育長が、昭和三一年九月三〇日まで、新法の規定による委員会(以下「新委員会」という。)の教育長として在任すること。ただし、現教育長の任期が同日までに満了する場合、又は新委員として在任する旧公選委員の任期が満了し、又は旧公選委員がすべて欠けるに至つた場合には、その日まで在任するものであること。なお、この教育長は、市町村の場合にあつては、法第一六条第三項の規定にかかわらず、委員となるものでないこと(法附則第一〇条)。
また、設置関係規定の施行の際現に在任する教育長がない場合、又は設置関係規定の施行後教育長が欠け若しくは任期が満了した場合は、法第一六条第二項又は第三項の規定により、後任の教育長を任命することとなるが、市町村の場合にあつては、旧公選委員が在任する間に限り、旧公選委員の在任する期間を在任期間とする教育長を、委員の外から、都道府県委員会の承認を得て、市町村委員会が任命できるものであること(法附則第一一条)。その場合に委員の外から教育長に任命する者は、助役であつても差支えないが(整理法による改正後の地方自治法附則第六条)、その任期は、旧公選委員の在任期間中であるから、旧公選委員の失職と同時に一旦失職するものであること。なお、助役は明年三月三一日まで教育長を兼ねることができるが(整理法による改正後の地方自治法附則第六条)、旧公選委員の下で教育長を兼ねている助役は、旧公選委員の失職とともに教育長の職を失うものであるから(法附則第一〇条、第一一条第二項)新法附則第八条により任命された委員により構成される新委員会において、なお助役を教育長に兼ねさせようとするときは、新委員会が都道府県委員会の承認をえて改めて助役を教育長に任命しなければならないこと。
(ハ) 選挙が行われる場合
設置関係規定の施行前に委員が欠け、旧法の規定によつて、委員の定例選挙、補欠選挙、再選挙の選挙の期日の告示が行われ、設置関係規定施行の後に選挙を行うこととなつていたものについては、従前どおりその選挙を行い、選出された委員が昭和三一年九月三〇日まで新委員として在任するものであること(法附則第七条、整理法附則第七項)。
右の結果在任することとなる委員の数と新法附則第三条第一項前段の規定により在任する旧委員の数とを合しても定数に満たないとき、又は前記の選挙により選出されて在任することとなる委員が欠けたときは、地方公共団体の長が、補欠の委員を任命するものであること(令附則第三条)。
(ニ) 委員長の選挙
旧委員が引き続き新委員として在任することとなつた場合には、改めて委員長を選挙しなければならないこと(法附則第三条第二項)。
(2) 旧委員であつた者で組織する新委員会の事務運営
(イ) 最初の会議の招集
旧委員であつた者で組織する新委員会の最初の会議は旧法による委員会(以下「旧委員会」という。)の委員長であつた委員が招集すること(令附則第五条)。この会議は新法公布後、できる限りすみやかに招集し、委員長の選任をまず行うことが望ましいこと。
(ロ) 新委員会は、昭和三一年九月三〇日まで旧法に規定する権限を旧法の規定により行使するものであること(法附則第一条、第二条)。
(ハ) 事務局職員の経過措置
旧委員会の事務局職員は、設置関係規定施行の日以後、引き続き、新委員会の事務局の各相当職員となり、現にある職務の級及び給料を受けることとなるものであること(法附則第一二条)。
(ニ) 旧処分等の経過措置
設置関係規定の施行の前に、旧委員会が行つた処分は、新委員会が行つた処分とみなされ、旧委員会に対してされた認可の申請、届出等の行為は、新委員会に対してされた行為とみなされること。また、一〇月一日以前に、旧委員会又は新委員会が、旧法等によつて行つた処分は一〇月一日以降においては、新委員会が新法等の各相当規定によつて行つた処分とみなされ、旧委員会又は新委員会に対してされた旧法等による認可の申請、届出等の行為は、一〇月一日以降においては、新法等の各相当規定により新委員会に対してされた行為とみなされること(法附則第二一条、第二二条、令附則第七条から第九条まで)。ただし、県費負担教職員に対する休職若しくは懲戒の処分又は不利益処分については、新法附則第一七条又は第一八条によること。なお、整理法による改正前の教育公務員特例法の規定による長期研修の許可、兼職等の許可については、それぞれ整理法附則第三項の規定によること。
(ホ) 条例、規則等の経過措置
設置関係規定の施行により効力を失う旧法の規定による条例教育委員会規則等で設置関係規定施行の際現に効力を有するもの及び一〇月一日に現に効力を有する条例、教育委員会規則等で、旧法(設置関係規定に低触して効力を失うものを除く。)の規定によるものは、新法の規定に抵触しない限り新法の規定による条例、教育委員会規則等とみなされ、抵触する部分は失効するものであること(法附則第二〇条、令附則第六条)。
なお、とりあえず改正が望ましい点は、次のとおりであること。
1 会議規則中、委員の除斥と定足数および委員長の裁決権に関する部分並びに副委員長に関する部分
2 処務規則に新法第二〇条第二項の指定を加えること。
また、整理法による改正前の市町村立学校職員給与負担法第三条による定数条例、及び整理法による改正前の教育公務員特例法の規定による県費負担教職員の給与条例については、それぞれ整理法附則第二項及び第四項の規定によること。
(3) 最初の委員の任命について
(イ) 任命の時期
法附則第八条による任期を異にする委員(以下「新任委員」という。)の任命が行われる時期は、多くの場合、昭和三一年一〇月一日であるが、同日以前でも旧公選委員たる新委員の任期が満了し、又はすべて欠けるに至つた場合には、地方公共団体の長により一斉に任命されるものであること(法附則第三条第一項後段)。
(ロ) 任命の準備
新任委員を任命する場合には、定数全員を一斉に任命するよう留意すること。
旧委員が昭和三一年九月三〇日まで在任し又は同日前に、その任期が満了する場合は任命すべき時期が予め予定できることであるから事前に議会の同意を得る等の準備行為を完了して置くこと。
(ハ) 市町村の場合
市町村委員会の教育長は、委員のうちから任命されることとなるから前記どおり市町村長は、新任委員選任の際、あらかじめこのことを配慮して教育長に適材の得られるような人選をするよう留意すること。
(ニ) 町村の場合
町村で最初に新任委員が一斉に任命される際その定数を三人としようとする場合には、あらかじめ条例を制定しその施行を当該任命と同時に行うこと(法第三条但書、令第一条、令附則第四条)。
(ホ) 特別区の場合
委員は、前記のとおり、市長の被選挙権を有する者のうちから任命されるものであること(令第二条)。
(4) 新任委員の組織する委員会の事務運営
(イ) 最初の会議
新任委員により最初に行われる会議は、地方公共団体の長が招集するものであること(法附則第九条)。この会議は、委員の任命を行つた日に招集することが望ましいこと。
なお、最初の会議において、委員長の選挙、教育長の任命の外、必要な規則の改正、制定を行うことが望ましいこと。
(ロ) 教育長の任命
教育長の任命については、文部大臣又は都道府県委員会の承認が必要であるが、このことについては、別途通知する予定である。なお、教育長が任命されるまでの間、教育長の職務は、新法第二〇条第二項の規定によりあらかじめ教育委員会の指定する事務局の職員が行うものであること。
(ハ) 本年九月三〇日以前に新任委員が任命されても、当該委員会は九月三〇日までは、旧法に規定する教育委員会の権限を行使するものであること。
(ニ) 一〇月一日以降の事務運営については、別途通知する予定であること。
(二) 学校組合の場合
現に設けられている教育事務の一部を共同処理する組合(以下「学校組合」という。)には、従来、旧法による教育委員会は設置されていなかつたのであるが、新法では法第二条により、すべての組合に教育委員会を設置することとしているので、学校組合も、新法公布の日において新たに委員会を設置しなければならないこと。
(1) 委員及び教育長の経過措置
(イ) 委員
A 学校組合の執行機関は組合規約により種々の形態のものがあるので、その執行機関の態容別に施行令附則第一〇条以下に規定する委員の経過措置を示せば次のとおりである。
1 管理者が教育事務を担当している場合……管理者は、組合において地方公共団体の長の職務を行う管理者であると共に、教育委員会の委員を兼ねることとなり、管理者として新法の定数に満たない数の委員を任命し、それらの委員とともに、本年九月三〇日までの間(その任期(従来からの組合規約による任期)が同日前に満了する場合はその日まで)新委員会を組織するものであること。この場合においては、教育事務は、管理者たる委員をふくむ新委員会が処理し、地方公共団体の長が処理すべき事務は、管理者が処理するものであること。
2 合議制の管理機関(管理委員会)が教育事務を担当している場合……その機関の構成員は、すべて教育委員会の委員を兼ねることとなり、その数が新法の定数をこえるときは、その数をもつて定数とし、委員が欠けた場合には定数にいたるまで漸減するものであること。その数が新法の定数に満たないとき又は満たないこととなつたときは、その不足する数の委員を管理機関が任命するものであること。これらの委員の在任期間は本年九月三〇日まで(その任期(従来の規約による管理委員会委員としての任期)が同日前に満了する場合は、その日まで)であること。教育委員会と管理機関の事務配分は、前記の教育委員会と管理者との関係と同様であること。
3 専ら教育事務を担当する旧委員会相当機関が管理者の外に設けられている場合……旧委員会相当機関の構成員はすべて新委員となること。その定数、委員の補充、及び在任期間については、管理委員会の場合と全く同様であるから2参照のこと。
B 組合の管理者、管理委員会の委員等で、前記により教育委員会の委員として在任する者は、新法第六条の規定にかかわらず、設置関係規定施行の際兼ねている組合構成市町村の議会の議員、長等の職をそのまま兼ねていることができる。ただし、一度それらの職を離れた後は再び兼職できないこと(令附則第一二条)。
(ロ) 教育長
1 設置関係規定施行の際現に在任する学校組合の執行機関の補助職員で、旧法の教育長に相当する職にある者は、当該組合の新委員会の教育長となり、九月三〇日までの間(その者に組合規約で定めた任期があり、その任期が九月三〇日までに満了するときはその任期満了の日までの間、前記(イ)により委員として在任することとなる者が九月三〇日までにすべて欠けたときはその欠けるに至つた日までの間)在任すること(令附則第一三条、法附則第一〇条)。
2 設置関係規定施行の際に旧法の教育長に相当する職にある者が、いないときは組合の教育委員会は都道府県の教育委員会の承認を得て委員外から教育長を任命できること。前記1により新委員会の教育長となつた者が、法附則第八条により組合に新委員が任命される日までに、その任期が満了し又は欠けるに至つた場合も同様であること。委員外から任命された教育長は九月三〇日まで(一〇月一日以前に法附則第八条により組合に新委員が任命される場合は、その任命される日の前日まで)在任するものであること(令附則第一三条、法附則第一一条)。
(2) 新委員任命までの事務運営
(イ) 前記(1)の(イ)によつて新委員会の委員となつた者は、その中から委員長を選挙すること(令附則第一〇条第二項、法附則第三条第二項)。
(ロ) 設置関係規定施行の際現に、従来教育事務を処理していた執行機関の補助職員であつた者は、前掲(1)の(ロ)によつて教育長になる者を除き、すべて事務局の職員となる(令附則第一三条、法附則第一二条)。
したがつて所謂管理委員会と管理者の補助職員であつた者は、委員会の事務局職員との兼職になる訳であるから、設置関係規定施行後適宜発令換をして、この兼職を解いて行く必要があると考えられること。
(ハ) この教育委員会は、九月三〇日までの間は、旧法の教育委員会の職務権限とされているもののうちで、組合規約により組合の事務とされているものを、旧法の規定によつて処理するものであること。
(ニ) 学校組合の執行機関の定めた規則その他の規程で、設置関係規定及び法公布の際効力を失うこととなる部分を除き旧法等の規定により、教育委員会が定めることとされている事項に相当する事務について定めたものは、設置関係規定等に抵触しない限り、新委員会が設置関係規定及び法公布の際効力を失う部分を除き旧法等の規定により定めた教育委員会規則その他の規程とみなされ、さらに、一〇月一日以後は新法等の規定に抵触しない限り、新法等の規定により定めたものとみなされること。
また、組合の条例で、設置関係規定に基いて定めることとされている事項に相当する事項を定めているものは、設置関係規定に抵触しない限り、設置関係規定に基く条例とみなされ、法公布の際効力を失うこととなる部分を除き旧法等に基く条例は、一〇月一日以後、新法その他の規定に違反しない限り新法等の規定に基くものとみなされること(令附則第一四条、法附則第二〇条)。
(ホ) 新法が公布されるまでに学校組合の執行機関の行った処分、学校組合の執行機関に対する処分の申請等の行為等の効果については、一般市町村の教育委員会の処分や教育委員会に対する行為と同様であること(令附則第一五条)。
(3) 新委員の任命等
設置関係規定施行後の最初の委員の任命及びそれ以後の措置については、一般市町村の場合と同様であること。
Copyright© 執筆者,大阪教育法研究会