● 中学校、高等学校における運動部の指導について 昭和32年5月16日 文初中275
昭三二、五、一六 文初中二七五
各都道府県教育委員会、各都道府県知事、各附属学校をもつ国立大学長、各国立高等学校長あて
文部省初等中等教育局長通達
中学校、高等学校における運動部の指導について
運動部の指導は、学校教育の一部として、生徒の正常な身体的発達を図るとともに責任、協力、寛容、明朗などの望ましい態度、習慣の育成を目ざして行われるべきものであるが、最近運動部に属する生徒の暴力的な行動や不良行為が一部に起っていることは、まことに遺憾であります。
これについては、学校における生徒指導や特別教育活動一般の問題として検討し、指導の強化を図る必要があるが、この際学校における運動部の指導について左記事項に留意され、運動部の運営が、単に生徒の自主的活動に放任されることなく、学校教育の一部としてじゅうぶんな指導の行われるよう、御配慮願います。
なお、貴管下の教育委員会および学校に対し、この通達の周知徹底方についてよろしくお取り計らい願います。
記
一 運動部の活動は、学校教育活動の重要な場であるから、校長は、生徒の自主的活動が健全に行われるよう、運動部長や種目別の各部の担当教員などを監督して、その指導の万全を計ること。
二 校長の特に留意すべき点
(一) 運動部の技術的なコーチを教職員以外に求める場合には、その人の人格が生徒に与える影響の大きいことを考え、教育に対して理解と識見をそなえた人を校長の責任において委嘱すること。
(二) 経済的な協力を先輩や後援会などの外部から受けた場合でも、そのことのために運動部の正常な運営がゆがめられたり、対外運動競技への参加が強制されることのないよう配慮すること。
(三) 運動部の先輩や後援会などが、対外運動競技の場合に、行きすぎた激励や応援を行って、生徒に悪い影響を与えないように配慮すること。
(四) 生徒を対外運動競技に参加させる場合は、「学徒対外運動競技の基準」(昭和三二年五月一五日文初中第二四九号文部事務次官通達)によること。
(五) 運動選手に対し、試験を免除したり、採点を加減するなど、一般の生徒と差別のある取扱をしないこと。
三 運動部長の特に留意すべき点
(一) 運動部長は、種目別の各部の活動全体について掌握し、学校全体の行動や活動との調整を図ること。
(二) 運動部長は、施設用具などが選手のみに独占されることのないように指導すること。
四 種目別の各部の担当教員の特に留意すべき点
(一) 種目別の各部の担当教員は、単に名目だけでなく、たえず部の活動全体を掌握して指導監督に当ること。
(二) 生徒が運動部に入部あるいは退部する場合は、種目別の各部の担当教員は、本人の意志、健康などをじゅうぶん考慮し、ホームルーム教師や父兄とも連絡して、適切な措置と指導をすること。
(三) 運動部の運営が対外運動競技における勝利のみを目標とし、あるいは部の団結を重視するのあまり、上級生が同僚や下級生に能力をこえた練習を強いたり、さらに、暴力的な行動にまで及ぶことのないようじゅうぶん指導すること。
(四) 運動部の練習については、生徒の健康や学業をじゅうぶん考慮するとともに、できるだけ短時間に練習効果のあがるように指導すること。
五 合宿練習の指導において特に留意すべき点
(一) 合宿の生活においては、教師は必ず寝食をともにして監督し、その生活がとくに運動練習のみに偏りがちであるので、運動練習以外の生活においても、学習その他について自主的に計画を立てるよう指導し、日々の生活が規則正しく行われるよう配慮すること。
(二) 合宿生活は、ややもすると、飲酒、喫煙、その他好ましくない遊びや集団的な非行の機会になりがちであるから、教師は常に生徒の行動を確実には握しその生活全般にわたる指導に留意すること。
(三) 合宿練習は、通常の場合の練習と異って、練習時間や練習量が多く、生徒は心身ともに疲労を増してくるので、教師は個々の生徒の健康や衛生に留意し、病気になったり、傷害を起したりするもののないよう注意すること。
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