● 義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律等の施行にともなう事務処理について(抄) 昭和39年2月14日 文初教第96号
文初教第九六号 昭和三九年二月一四日
各都道府県知事・各都道府県教育委員会・義務教育諸学校を付置する各国立大学長あて
文部省初等中等教育局長通達
義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律等の施行に
ともなう事務処理について(抄)
I 教科用図書の無償給付および給与に関する事項
1 教科用図書の納入の指示および受領
(1) 実施機関は、教科用図書の納入の指示または返付の指示をするときは、そのつど、別紙様式1による教科用図書納入(返付)指示書を発行者(取次供給所)に交付すること。
(2) この教科用図書納入(返付)指示書は、発行者(取次供給所)に交付するもののほかに、実施機関控および学校控を各一通作成すること。
(3) この教科用図書納入(返付)指示書は、受領書を兼ねるので、教科用図書が指示のとおり納入されたときは、実施機関(校長が受領したときは校長)が、発行者に交付した納入指示書の受領欄に受領年月日を記入し、記名押印して、これを返付することとし、また指示のとおり返付したときは、返付者は、返付指示書の実施機関控(校長が返付したときは学校控)の受領欄に発行者(取次供給所)に受領年月日を記入させ、記名押印させること。
(4) この教科用図書納入(返付)指示書の控は、前期用、後期用、前期転学用および後期転学用の別に納入場所別に、とじて保存すること。
2 教科用図書の給付
実施機関(国立の義務教育諸学校を付置する大学の学長を除く。)は、教科用図書を受領したときはただちに設置者に給付すること。(令第一条第二項)
この実務上の取扱いは、教育委員会および学校法人の理事長は、教科用図書を受領すると同時に当該地方公共団体または学校法人を代表して自ら給付を受けたこととすれば足りること。
3 教科用図書の給与
(1) 義務教育諸学校の校長は、発行者から教科用図書の引き渡しを受けたときは、(2)の場合を除き、前期用の教科用図書については入学式または第一学期の始業式の当日、後期用の教科用図書については原則として第二学期の始業式の当日に児童生徒に直接支給すること。
(2) 転学または1(2)の期間以外の期間における編入学等のための児童生徒に給与する必要があるときは、そのつどすみやかに支給すること。
4 給与の対象となる児童生徒
(1) 義務教育諸学校に在籍する児童生徒であれば外国人の子弟であつても給与の対象として差し支えないこと。
(2) 給与の対象となるのは児童生徒であるから、教師の使用する教科用図書は除外される。したがつて、1の教科用図書納入指示書の作成にあたつては、これを納入すべき冊数に含めて記載することのないようじゆうぶん注意すること。
5 給与の対象となる教科用図書
(1) 盲学校において弱視者が使用する国語科の教科用図書については、点字版の文部省著作教科用図書および墨字版の文部省検定済教科用図書のほかに、文部省著作の盲学校国語補充教材を採択している場合は、そのいずれをも、給与することができること。
(2) 聾学校の国語科の教科用図書については、言語指導のほかに、国語の教科用図書を採択している場合は、それも給与することができること。
(3) 聾学校の児童生徒のうち、言語の発達が相当年齢の小、中学校の児童生徒とほぼ同程度のものについて特別の教育課程を編成した場合、それらの児童生徒に対しては、言語指導および律唱以外の教科用図書の種目について、文部省著作教科用図書に代えて文部省検定済教科用図書を採択している場合は、それを給与することができること。
(4) 養護学校(精薄)の児童生徒に対しては、当該学年用の文部省著作教科用図書のない場合において、文部省検定済教科用図書を採択している場合は、それを給与することになる。ただし、文部省検定済教科用図書を使用することが著しく不適切であり、他により適切な教科用図書があつて、それを採択している場合は、それを給与することができること。
(5) 特殊学級(精薄)の児童生徒について特別の教育課程を編成した場合において、文部省著作教科用図書の養護学校精薄用または文部省検定済教科用図書の下学年用を採択している場合は、そのいずれかを給与することになるが、上記(4)のただし書きは、この場合も同様とすること。
(6) 複式学級等において、教科により特別の教育課程を編成し、児童生徒の所属学年以外の学年の教科用図書のみを使用する場合には、児童生徒の所属学年用の教科用図書に代えて、その他学年用の教科用図書を給与してもよいこと。
6 転学児童生徒に対する教科用図書の給与
(1) 児童生徒が転学しようとするときは、転学前の学校の校長は別紙様式2による転学児童生徒教科用図書給与証明書を当該児童生徒の保護者を通じて転学後の学校の校長に交付すること。
(2) 転学前の学校の校長は、この証明書を交付するにあたつて、当該児童生徒がその学年において従前に転学の事実がある場合には、従前の転学前の学校の校長が交付した転学児童生徒教科用図書給与証明書(写)をすべて添付すること。
(3) 転学後の学校の校長は、転学児童生徒教科用図書給与証明書に「給与未済」とある場合には、当該学校において使用する全教科用図書を給与するための手続をとること。
7 都道府県教育委員会の照合
都道府県の教育委員会は、令第四条第二項の規定による照合の結果、発行者から提出された納入冊数集計表に添付された受領証明書に誤りがあると認めたときは、すみやかに、その事由を明示してその旨を発行者に通知するとともに当該受領証明書を交付した実施機関にこれを送付し、当該実施機関に、誤りがあるかどうかを調査し、誤りがないときはその旨を付記し、誤りがあつたときはその誤りを訂正したうえこれを返送させること。
II 採択に関する事項
1 都道府県教育委員会の行なう指導、助言、援助
(1) 市町村(市町村の組合を含む。以下同じ。)の教育委員会等採択を行なう者は法第一三条の規定により都道府県の教育委員会の行なう指導、助言または援助により種目ごとに特定の教科用図書を採択することになるのであるが、この指導助言等は教科用図書を採択するにあたつての参考資料となる内容をもつこと、およびその方法は文書等により採択を行なうものにじゆうぶん周知するように配慮しなければならないものであること。
(2) 都道府県の教育委員会が、市町村の教育委員会等の採択を行なう者に対し行なう指導、助言または援助の内容はおおむね次のようなものであること。
(イ) 市町村の教育委員会等の行なう採択の基準を作成し、提示すること。
(ロ) 教科用図書の研究成果等にもとづき市町村の教育委員会等が採択するにあたつて参考となる適切な資料を作成し提供すること。
(ハ) 市町村の教育委員会が協議して採択する場合の方法について指導、助言を与えること。
(ニ) 市町村の教育委員会の協議が調わない場合適切な指導を行なうこと。
(ホ) 採択の公正確保のための指導を行なうこと。
2 選定審議会
(1) 令第一〇条第二項に規定する「教科用図書の採択に直接の利害関係を有する者」とは、特定の教科用図書が採択されることにより直接に利益または損害を受ける者であり、たとえば次に掲げる者をいうこと。
(イ) 発行者の役員および従業員ならびにこれらの配偶者および三親等内の親族
(ロ) 顧問、参与、嘱託等いかなる名称によるを問わず、事実上発行者の事業の運営に重要な影響力を有している者
(ハ) 教科用図書および教師用指導書の著作者(事実上、著作に参加し、または協力した者を含む。)
(ニ) (ハ)の著作者が団体である場合は、その団体の役員およびこれに準ずる者
(ホ) 教科用図書の供給の事業を行なう者およびその従業員
(2) 選定審議会に教科用図書の調査等専門的事項の調査にあたる調査員を置く場合は、採択の対象となる教科用図書の全般にわたつて適切な調査をなしうるに必要な人数を確保するようにすること。
3 採択地区
(1) 採択地区は、郡もしくは市またはこれらの地域をあわせた地域がその単位であるから、郡または市の区域の一部を分断して採択地区を設定することはできないこと。
(2) 採択地区の設定または変更を行なつた場合の告示すべき事項は、採択地区の名称および構成郡市の名称とし、郡については構成町村の名称を括孤書で示すことが適当であること。
4 教科用図書の採択
(1) 採択地区内に市町村が二以上ある場合の市町村の教育委員会の協議は、採択地区内において種目ごとに一種を採択するという要請を満たすために行なわれるものであるから、必要に応じ関係教育委員会の共同の諮問機関を設ける等の地方自治法上の協議の方法その他適切な方法により、所期の目的が達成されるよう配慮すべきこと。
また採択は教育委員会の責任を明らかにする方法によつて行なうべきであつて、教職員等の投票により採択教科用図書を決定する等のことは適当でないこと。
(2) 教科用図書の採択の時期は、毎年度八月一五日までとすること。
八月一六日以降において採択した教科用図書の発行中止等があつた場合は、すみやかに新たな教科用図書を採択すること。なおその需要数は教科書の発行に関する臨時措置法第七条の規定に準じ文部大臣に報告しなければならないこと。
5 同一教科用図書を採択する期間
(1) 同一の教科用図書を採択する期間に関する規定は、一たん採択した教科用図書は三か年継続して採択することを要請したものであり、その後引き続き当該教科用図書を採択した場合はその年度からさらに三年間同一教科用図書を採択することとなるものであること。
(2) 同一教科用図書を採択する期間の特例は、三年ごとの採択の周期を一律に確保するための規定であること。
採択地区の変更等により三か年の中途において新たに教科用図書の採択をする必要が生じたときは、教育上の便宜を考慮し当該採択地区内において使用する教科用図書の変更を最小限にするよう配慮すべきこと。
別紙 様式1
別紙 様式2
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