● 社会教育審議会報告「父母と先生の会のあり方について」の送付について 昭和42年7月15日 文社社239
文社社 第二三九号
昭和四二年七月一五日
各都道府県教育委員会教育長 殿
文部省社会教育局長 木田 宏
社会教育審議会報告「父母と先生の会のあり方について」の送付について(通知)
標記について、昭和四二年三月二三日に開かれた社会教育審議会総会において、別紙のとおり文部大臣あて報告書が提出されました。
本報告は、父母と先生の会(PTA)が、発足以来二〇年余を経、社会情勢もいちじるしく変化した今日において、従前の学校後援会的な活動に重点をおかれていたあり方を改めて、児童生徒の健全な成長を図るという本来の目的、性格をこの際明らかにする必要があるとの見地からなされたものでありま
す。
つきましては、貴教育委員会におかれても、貴管下各「父母と先生の会」が、本報告の趣旨に沿って、漸次その活動を純化し、いっそうの発展をとげるよう、指導助言されることを希望します。
なお、「付記」に示されているとおり、昭和二九年の「参考規約」は、当時における父母と先生の会(PTA)の規約制定上の参考の役割を果たしてきましたが、こんごは、この報告の趣旨にもとづいて、その運営に留意することが望ましいので念のため申し添えます。
昭和四二年六月二三日
社会教育審議会報告
父母と先生の会のあり方について
本審議会は、父母と先生の会(PTA)のあり方について審議を重ね、とくにその目的と性格について、一応、下記のようにまとめたので報告する。
なお、このほか組織、運営についても重要な諸問題が残されているが、今回は、その基本問題である目的、性格を中心に検討を加えた。
記
父母と先生の会(PTA)は、昭和二二年から二五年頃にかけて、ほとんど全国の小、中、高等学校において結成され、今日ではわが国でもっとも普及した成人の団体となっている。
従前の父母と先生の会(PTA)の多くは、学校後援的な事業に重点がおかれ、その面での役割を果たしてきたが、この会結成の趣旨である児童生徒の幸福な成長をはかるための会員相互の学習活動や社会活動等は必ずしも十分に行われてきたとはいえない。これは、結成当時の社会情勢や、父母と先生の会(PTA)のあり方に対する理解の不足等によってもたらされたものといえよう。しかし、この会発足後二〇年余を経、社会情勢も著しく変化した今日においても、なおこの傾向が多分にみられ、あらためてそのあり方、とくに基本的な問題である目的性格を明らかにする必要がある。
一、目的、性格について
「父母と先生の会(PTA)は、児童生徒の健全な成長をはかることを目的とし、親と教師とが協力して、学校および家庭における教育に関し、理解を深め、その教育の振興につとめ、さらに、児童生徒の校外における生活の指導、地域における教育環境の改善、充実をはかるための会員相互の学習その他必要な活動を行う団体である。」
父母と先生の会(PTA)の目的は、「児童生徒の健全な成長をはかる」ことにある。児童生徒の健全な成長をはかるためには、学校と家庭と社会とが、それぞれ教育の責任を分担し、協力しあうことが大切であるが、とくに、児童生徒の教育に直接責任をおう学校と家庭の協力体制が必要である。この協力体制は、さらに地域社会における児童生徒の教育についても重要な役割を果たすものである。
父母と先生の会(PTA)は、この目的のもとに、学校および家庭における教育の理解とその振興、児童生徒の校外における生活の指導、地域における教育環境の改善などを促進するために必要な諸活動を行うものである。
「学校および家庭における教育の理解とその振興」については、学校と家庭とが、それぞれ教育の責任を分担し、密接な関係を保ちながら児童生徒の指導が十分に行われるよう学校における指導の方針や、家庭における指導の方針や、家庭における教育のあり方等について相互の理解を深めることが必要である。この相互の理解にもとづいて、(ア)学校の教育計画の実施上必要な、家庭と学校の協力活動をすすめ学校教育の充実に寄与し、(イ)学校とならんで教育の基本的な場である家庭の意義、機能、およびその教育的役割等について理解を深め、家庭教育本来の機能を果たし得るよう家庭教育に関する学習活動等を行うことが望まれる。
「児童生徒の校外における生活の指導」については、学校の教育方針にもとづく校外の生活指導に協力するとともに、健全な遊びや規律ある集団生活などを通して、児童生徒の心身ともに健全な発達をうながすよう、適切な指導を行うことや、少年団体等の健全な育成をたすける役割が期待される。
「教育環境の改善」については、児童生徒が生活する地域環境を、教育的に改善し、また、児童生徒の校外における生活の安全な確保することが重要であり、たとえば、遊び場の整備、交通安全施設の設置、危険地域の改善などを促進することや出版物、マスコミ等に対処する活動などがある。
以上の諸活動を効果的にすすめるためには会員相互の話し合いや、組織的な学習や実践が必要であり、さらに、父母と先生の会(PTA)相互の連携をはかることが望ましい。
二、構成について
「父母と先生の会(PTA)は、学校に在籍する児童生徒の親および教師によって、学校ごとに組織される。」
父母と先生の会(PTA)は、各学校ごとに、その学校に在籍する児童生徒の親およびその学校に勤務する教師によって構成される。
なお、この会の目的達成のためには、会の趣旨に賛同する親と教師が自主的にできるだけ多く参加することが望ましい。
三、運営について
「父母と先生の会(PTA)は、会員の総意によって民主的に運営され、特定の政党、宗派にかたよる活動や、もっぱら営利を目的とする行為は行わない。」
父母と先生の会(PTA)は、会員の総意にもとづき、親と教師が会員として同等の立場で運営されなければならない。したがって会の運営や会務の処理等を一部の役員や学校の関係者のみにゆだねることは適切でない。
また、この会は、その目的、性格のうえから特定の政党や宗派を支援したり、もっぱら営利を目的とする行為を行ってはならない。
四、相互の連絡提携について
父母と先生の会(PTA)相互の連絡を緊密にし、その発展をはかるとともに、共通の目的を達成するためには、その協力組織として、市町村、都道府県および全国的等の各段階における連絡協議体の果たす役割が重要であると考えられる。
「付記」
小学校父母と先生の会(PTA)参考規約(昭和二九年二月社会教育審議会父母と先生の会分科審議会決定)は、当時における父母と先生の会の規約の参考として、その役割を果たしてきたが、こんごは、この報告の趣旨にもとづいて父母と先生の会の運営に留意することが望ましい。
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