● 国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法の施行について(いわゆる給特法) 昭和46年7月9日 文初財第377号
文初財第三七七号 昭和四六年七月九日
文部事務次官通達
国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する
特別措置法の施行について
このたび、別添のとおり、「国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に対する特別措置法」(以下「法」という。)が昭和四六年五月二八日法律第七七号をもつて公布され、昭和四七年一月一日から施行されることになりました。また、昭和四六年七月五日付け文部省訓令第二八号をもつて「教育職員に対し時間外勤務を命ずる場合に関する規程」(以下「訓令」という。)が定められ、法の施行と同時に実施されることになりました。これらの法律および訓令の内容の概要および留意すべき事項は、下記のとおりでありますから、事務処理上遺憾のないように願います。
なお、各都道府県教育委員会にあつては、このことを管下の各市町村関係機関に通知し、法律および訓令の趣旨を徹底されるよう願います。
記
第一 法の内容の概要および留意すべき事項について
一 この法律の趣旨
この法律は、本年二月八日に行なわれた人事院の意見の申出を受けて、これを完全に実施するために制定されたものであり、国立および公立の小学校、中学校、高等学校または盲学校、聾学校もしくは養護学校の小学部、中学部もしくは高等部(以下「義務教育諸学校等」という。)の教育職員(校長、教諭、養護教諭、助教諭、養護助教諭、講師(常時勤務の者に限る。)、実習助手および寮母をいう。以下同じ。)の職務と勤務態様の特殊性に基づき、新たに教職調整額を支給する制度を設け、超過勤務手当制度は適用しないこととする等その給与その他の勤務条件について特例を定めることを趣旨とするものであること。(法第一条)
二 国立および公立の義務教育諸学校等の教育職員に対する教職調整額の支給
(1) 国立の義務教育諸学校等の教育職員(一般職の職員の給与に関する法律(昭和二五年法律第九五号。(2)および(3)ならびに3の(1)および(3)において「給与法」という。)別表第五の教育職俸給表(二)または教育職俸給表(三)の適用を受ける者に限る。(2)、(4)および3の(1)ならびに第2の1、2および3において同じ。)のうちその属する職務の等級が2等級または3等級である者には、その者の俸給月額の一〇〇分の四に相当する額の教職調整額を支給することとし、この教職調整額の支給に関し必要な事項は、人事院規則で定めることとしたこと。(法第三条第一項および第二項)
なお、この人事院規則は、法の施行までの間に制定される予定であり、現在においては未制定であること。
(2) 国立の義務教育諸学校等の教育職員(俸給の特別調整額を受ける者を除く。三の(1)ならびに第二の一、二および三において同じ。)には、給与法の規定中超過勤務手当および休日給の支給に関する規定は適用しないこととしたこと。(法第三条第三項)
(3) 教職調整額は、次に掲げる給与等の算定の基礎とすることとしたこと。(法第四条)
(一) 寒冷地手当
(二) 給与法に定める次の給与
ア 調整手当(第一一条の三および第一一条の五)
イ 特地勤務手当(第一三条の二)
ウ 特地勤務手当に準ずる手当(第一三条の三)
エ 期末手当(第一九条の三)
オ 勤勉手当(第一九条の四)
カ 休職者の給与(第二三条)
(三) 災害補償
(四) 退職手当
(五) 定時制通信教育手当
(六) 産業教育手当
(七) 共済組合の給付および掛金等
(八) 国際機関等に派遣された者の給与
なお、給与法に定める給与等のうち、俸給を基礎として算定される給与等であつて教職調整額が算定の基礎とされないものは、俸給の調整額(第一〇条)、俸給の特別調整額(第一〇条の二)、給与の減額(第一五条)および夜勤手当(第一八条)であること。
(4) 国立の義務教育諸学校等の教育職員のうちその属する職務の等級が一等級である者に対する俸給表の適用については、俸給表に掲げる俸給月額は、いずれも、その額に人事院規則で定める額をそれぞれ加えた額としたこと。この場合において、人事院規則で定める額は、職務の等級二等級の者が一等級の者となつた場合に受ける俸給月額がそのなつた前に受けていた俸給月額(教職調整額を含む。)を下ることがないようにするため、俸給表の一等級の俸給月額とこれに対応する二等級の俸給月額に一〇〇分の一〇四を乗じて得た額との差額を基準として定められるものであること。(法第五条)
なお、この額は、現行の教育職俸給表を基礎として算定すれば、教育職俸給表(二)にあつては二、八〇〇円、教育職俸給表(三)にあつては二、六〇〇円とされるものであること。
(5) (1)から(4)までに定める事項は、人事院の勧告に係る事項に含まれるものとしたこと。(法第六条)
(6) 公立の義務教育諸学校等の教育職員については、(1)から(4)までに定める国立の義務教育諸学校等の教育職員の給与に関する事項を基準として教職調整額の支給その他の措置を講じなければならないこととしたこと。(法第八条)
(7) 公立の義務教育諸学校等の教育職員に支給される教職調整額は、市町村立学校職員給与負担法(昭和二三年法律第一三五号)その他の法令の規定の適用については給料とみなすこととしたこと。これらは、条例に措置することができず、法律上措置しておくことを要するものについて次のように規定の整備を行なつたものであること。(法第九条)
(一) 各地方公共団体が支給し得る給与として決定すること。
(二) 県費負担の対象とすること。
(三) 定時制通信教育手当についての国の補助限度額算定の基礎とすること。
(四) へき地手当およびこれに準ずる手当の額の算定基礎とすること。
(五) 共済組合の給付・掛金の算定の基礎とすること。
(六) 災害補償の額の算定等の基礎とすること。
なお、条例を制定または改正する場合においては、上記の給与等のほか、条例で定められている給与等について、法第八条の規定に基づき国立の義務教育諸学校等の教育職員について法第四条の規定により教職調整額がそれぞれの給与等の算定の基礎とされたことと同内容の措置を講ずるべきものであること。
(8) 公立の義務教育諸学校等の教育職員については、新たに教職調整額が支給されることに伴い、労働基準法(昭和二二年法律第四九号)の規定ならびに船員法(昭和二二年法律第一〇〇号)および同法の規定に基づく命令の規定のうち時間外勤務等にかかる割増賃金の支給に関するものは適用しないこととしたこと。(法第一〇条)
三 国立および公立の義務教育諸学校等の教育職員の正規の勤務時間をこえる勤務等
(1) 国立の義務教育諸学校等の教育職員について正規の勤務時間をこえて勤務させる場合は、文部大臣が人事院と協議して定める場合に限るものとしたこと。文部大臣が定める場合においては、教育職員の健康と福祉を害することとならないよう勤務の実情についてじゆうぶんな配慮がされなければならないこととされたこと。また、休日等(給与法第一七条第二項の規定により休日給が一般の職員に対して支給される日をいう。第二の一および二において同じ。)において正規の勤務時間中に勤務させる場合についても同様としたこと。(法第七条)
なお、文部大臣が定める場合については、第二を参照のこと。
(2) 公立の義務教育諸学校等の教育職員については、公務のため臨時の必要がある場合においては健康および福祉を害しないように考慮しつつ労働基準法第三二条の勤務時間を延長し、または同法第三五条の休日に労働させることができることとしたこと。(法第一〇条)
(3) 公立の義務教育諸学校等の教育職員(管理職手当を受ける者を除く。第二の五において同じ。)については、正規の勤務時間をこえて勤務を命ずる場合または休日等(給与法第一七条第二項の規定に相当する条例の規定により休日勤務手当が一般の職員に対して支給される日をいう。)において正規の勤務時間中に勤務を命ずる場合は、国立の義務教育諸学校等の教育職員について定められた例(訓令)を基準として条例(県費負担教職員にあつては、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和三一年法律第一六二号、第四二条の規定により、都道府県の条例)で定める場合に限るものとしたこと。(法第一一条)
第二 訓令の内容の概要および留意すべき事項等について
一 この訓令の趣旨
この訓令は、法第七条の規定に基づき、国立の義務教育諸学校等の教育職員について時間外勤務(正規の勤務時間をこえる勤務をいい、休日等における正規の勤務時間中の勤務を含む。二および三において同じ。)を命ずる場合に関し必要な事項を定めることを趣旨とするものであること。(訓令第一条)
二 時間外勤務に関する基本的態度
教育職員については、正規の勤務時間の割振りを適正に行ない、原則として時間外勤務は命じないものとすることとしたこと。(訓令第三条)
なお、実施にあたつては、次の諸点に留意すること。
(1) 教育職員については長時間の時間外勤務をさせないようにすること。やむを得ず長時間の時間外勤務をさせた場合は、適切な配慮をするようにすること。
(2) 教育職員について、日曜日または休日等に勤務させる必要がある場合は代休措置を講じて週一日の休日の確保に努めるようにすること。
(3) 教育職員に対し時間外勤務を命ずる場合は、学校の運営が円滑に行なわれるよう関係教育職員の繁忙の度合い、健康状況等を勘案し、その意向を十分尊重して行なうようにすること。
また、教育職員の勤務時間の管理については、教育が特に教育職員の自発性、創造性に基づく勤務に期待する面が大きいことおよび夏休みのように長期の学校休業期間があること等を考慮し、正規の勤務時間内であつても、業務の種類・性質によつては、承認の下に、学校外における勤務により処理しうるよう運用上配慮を加えるよう、また、いわゆる夏休み等の学校休業期間については教育公務員特例法(昭和二四年法律第一号)第一九条(研修)および第二〇条(研修の機会)の規定の趣旨に沿つた活用を図るように留意すること。
三 時間外勤務を命ずる場合
教育職員に対し時間外勤務を命ずる場合は、次に掲げる業務に従事する場合で臨時または緊急にやむを得ない必要があるときに限るものとすることとしたこと。(訓令第四条)
(1) 生徒の実習に関する業務
(2) 学校行事に関する業務
(3) 学生の教育実習の指導に関する業務
(4) 教職員会議に関する業務
(5) 非常災害等やむを得ない場合に必要な業務
なお、これらの業務の具体的内容は次のとおりであること。
(1) 実習とは、校外の工場、施設(養殖場を含む。)船舶を利用した実習および農林、畜産に関する臨時の実習を指すものであること。
(2) 学校行事とは、学芸的行事、体育的行事および修学旅行的行事を指すものであること。この場合における学校種別ごとの学校行事とは、それぞれの学習指導要領に定める上記学校行事に相当するものであることに留意すること。
(3) 学生の教育実習の指導とは、附属学校における学生の教育実習の指導を指すものであること。
(4) 非常災害等やむを得ない場合に必要な業務とは、非常災害の場合に必要な業務のほか、児童・生徒の負傷疾病等人命にかかわる場合における必要な業務および非行防止に関する児童・生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする業務を指すものであること。
四 宿日直勤務
宿日直勤務については従前の例によることとしたこと。(訓令第五条)
五 公立の義務教育諸学校等の教育職員についての留意事項
公立の義務教育諸学校等の教育職員にかかる法第一一条の規定に基づく条例の定めについても二から四までの趣旨により運用するように留意すること。
なお、勤務時間の割振りを適正に行なうためには、労働基準法第三二条第二項の規定の活用について考慮すること。
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