● 教科用図書検定規則及び教科用図書検定基準の改正について 平成元年4月20日 文初教128



文初教一二八号 平成元年四月二〇日
各教科書発行者あて
文部省初等中等教育局長通知


    教科用図書検定規則及び教科用図書検定基準の改正について


 教科書検定制度については、臨時教育審議会第三次答申(昭和六二年四月一日)において、適切な教育内容を確保し、個性豊かで多様な教科書が発行されることなどをねらいとして制度の改正について提言が行われました。
 これを受けて、文部省では教科用図書検定調査審議会(以下「審議会」という。)において検定制度の具体的な改善方策の検討を行ってきましたが、このたび、教科用図書検定規則及び同検定基準を全面的に改正しましたのでお知らせします。
 教科用図書検定規則については、平成元年四月四日文部省令第二〇号をもって、別添のとおり「教科用図書検定規則の全部を改正する省令」が制定され、改正後の教科用図書検定規則は平成二年四月一日から施行されることになりました。また、検定基準については、平成元年四月四日文部省告示第四三号をもって「義務教育諸学校教科用図書検定基準」が、平成元年四月四日文部省告示第四四号をもって「高等学校教科用図書検定基準」が、それぞれ別添のとおり制定され、平成二年度以降、新しい学習指導要領の実施に伴う教科書の著作、編集に合わせて小・中・高等学校の学校段階ごとに逐次、施行適用されることになりました。
 今回の検定規則及び検定基準の改正は、臨教審答申の趣旨に基づいて、検定の手続と基準を大幅に簡素化・重点化し、教科書としての適格性の判定を一層公正かつ適切に行うことができるようにするとともに、検定結果の公開をすすめるなど個性豊かで多様な教科書が発行されることをめざしたものです。また、これと併せて検定周期を現行の三年から四年に延長して教科書を実際に学校で使用した経験を教科書の改訂に生かすことができるようにするなど著作、編集に十分時間がかけられるようにすることとしています。
 今回の検定制度の改正とあいまって、教科書発行者においても、教科書の著作・編集機能の向上と責任体制の確立を図り、一層の創意工夫を発揮し、より良い教科書の作成に努められることが期待されます。
 新しい検定規則及び検定基準の主な改正内容等は左記のとおりです。

          記

一 検定規則の主な改正内容等

(一) 主な改正内容

 検定規則については、これまでの教科書検定の基本的な仕組みを維持しつつ、従来の原稿本審査、内閲本審査及び見本本審査の区分を廃止するなど審査手続を簡略化し、申請者の負担の軽減を図るとともに、従来の「条件付合格」を廃止して修正の結果を審議会で再度審査することにより、審議会の役割と責任を一層重視したより公正で適切な審査が行われるようにするものであること。
 主な改正内容は次のとおりであること。

@ 新規検定と改訂検定の種類を廃止すること。これにより従来の改訂検定は廃止すること。

A 文部大臣は、申請図書について、教科用図書として適切であるかどうかを審議会に諮問しその答申に基づいて合否の決定を行うものとすること。ただし、必要な修正を行った後に再度審査を行うことが適当であると審議会が認める場合には、合否の決定を留保して検定意見を通知するものとすること。
 なお、従来の修正意見及び改善意見の区分を廃止して検定意見とすること。(第七条関係)

B 検定意見の通知を受けた申請者は、検定意見に従って修正した内容を「修正表」によって提出するものとし、文部大臣は、修正が行われた申請図書について、審議会の答申に基づいて合否の決定を行うものとすること。(第一〇条関係)

C 発行者は、検定済図書について、誤記、誤植又は客観的事情の変更に伴い明白に誤りとなった事実等の記載があることを発見したときは、文部大臣の承認を受け、修正を行わなければならないものとし、また、学習を進める上に支障となる記載又は更新を行うことが適切な統計資料の記載があることを発見したときは、文部大臣の承認を受けて訂正を行うことができるものとすること。また、文部大臣は、これらの記載があると認めるときは、発行者に対して訂正の申請を勧告することができるものとするとともに、訂正の承認を行おうとする場合には、必要に応じ審議会の意見を聞くものとすること。(第一三条関係)

D 検定合格決定の通知を受けた者は、申請図書について図書として完成した見本を作成し文部大臣に提出するものとすること。(第一六条関係)

E 文部大臣は、検定審査終了後申請図書を公開できるものとすること。(第一七条関係)

F 検定済図書の体裁の変更に係る文部大臣の承認は廃止すること。

(二) 施行及び適用の時期等

@ 改正後の教科用図書検定規則(以下「新規則」という。)は、平成二年四月一日から施行され、新学習指導要領に基づいて編集される教科用図書の検定から適用されるが、新規則施行の際、現に改正前の教科用図書検定規則(以下「旧規則」という。)により検定の申請が受理されている教科用図書の検定及び平成二年四月一日から三年六月三〇日までの間において検定の申請が受理される旧学習指導要領に基づいて編集される高等学校用の教科用図書の検定については、なお旧規則の規定によること。

A 前記@にかかわらず、新規則中「検定済図書の訂正」に関する規定は、旧規則により検定を経た教科用図書を含めて、全ての教科用図書について平成二年四月一日から適用すること。

B なお、新規則中、文部大臣が別に定めることとされている事項(申請図書の作成要領及び提出部数(第五条)、誤記、誤植又は脱字に関する審査の基準(第六条)、修正表の提出期間(第一〇条)、不合格図書の再申請の期間(第一一条)、検定審査料に係るページ数の算定方法(第一二条)、見本の提出期間及び提出部数(第一六条)、申請図書の公開に係る事項(第一七条))については、追って通知する予定であること。

二 検定基準の主な改正内容等

(一) 主な改正内容

 検定基準については、教科書の適格性の判定を一層公正かつ適切に行うとともに著作・編集者の創意工夫がより生かされるよう、学習指導要領への準拠、中立性・公正、正確性などの観点に重点を置いて基本的な項目にまとめて示すとともに細かな項目は整理するものとし、「体裁」や「創意工夫」に関する項目、奨励的な項目や編集技術的な項目等は廃止してその重点化・簡素化を図るものであること。
 主な改正内容は次のとおりであること。

@ 基本条件については、その内容を総則及び各教科共通の条件に取り込むものとし、基本条件と必要条件の一本化を図るものとすること。

A 必要条件については、各教科共通の条件と各教科固有の条件に区別して示すとともに、各教科共通の条件は基本的な項目にまとめて示すものとし、細かな項目は整理するものとすること。また、「体裁」や「創意工夫」に関する項目、奨励的な項目や編集技術的な項目は廃止すること。

B 学習指導要領への準拠、中立性・公正、正確性などの観点に重点を置いて教科書としての適格性を審査するため、審査の基準を「範囲及び程度」、「選択・扱い及び組織・分量」、「正確性及び表記・表現」の三つの観点に整理して示すものとすること。

(二) 施行及び適用の時期等

@ 「義務教育諸学校教科用図書検定基準」は、平成二年四月一日から施行し、小学校の教科用図書については平成四年度以降の使用に係る教科用図書の検定(平成二年度)から、中学校の教科用図書については平成五年度以降の使用に係る教科用図書の検定(平成三年度)から適用するものとし、また、「高等学校教科用図書検定基準」(以下「新高校基準」という。)は平成三年七月一日から施行し、平成六年四月一日以降高等学校の第一学年に入学する生徒の使用に係る高等学校の教科用図書の検定(平成三年度)から適用すること。

A 「義務教育諸学校教科用図書検定基準」(昭和五二年文部省告示第一八三号)及び「義務教育諸学校教科用図書検定基準実施細則」(昭和五二年九月二二日文部大臣裁定)は、平成元年四月四日をもって廃止したこと。

B 「高等学校教科用図書検定基準」(昭和五四年文部省告示一三四号)及び「高等学校教科用図書検定基準実施細則」(昭和五四年七月一二日文部大臣裁定)は、新高校基準の施行、適用に伴って廃止するものであること。




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