● 校則見直し状況等の調査結果について 平成3年4月10日 3初中37
平3年4月10日 3初中37
各都道府県教育委員会指導事務主管部課長・
各都道府県私立学校主管部課長・附属学校を
置く各国立大学事務局長あて
文部省初等中等教育局高等学校課長・中学校課長通知
校則見直し状況等の調査結果について(通知)
校則の見直しについては,これまでにも諸会議等を通じ,その積極的な取組を要請してきたところですが,文部省では先般,各学校における校則見直し状況を把握するため,全日本中学校長会及び全国高等学校長協会に委託して,生徒指導体制の状況を含む「日常の生徒指導の在り方に関する調査研究」を実施しました。このたび別添のとおり調査研究報告がとりまとめられましたので,お送りします。
貴職におかれては,別添報告の内容を参考に,管下の学校に対して,今後とも児童生徒の実態,保護者の考え方,地域の実情,時代の進展等を踏まえ,指導の在り方を含め校則の積極的な見直しを図り,校則及び校則指導が適切なものとなるよう御指導願います。
また,都道府県教育委員会にあっては,管下の教育委員会に対し,周知方よろしくお願いします。
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< 別 添 >
日常の生徒指導の在り方に関する調査研究報告(抄)
平成3年3月20日
全日本中学校長会・全国高等学校長協会
第4 日常の生徒指導の在り方について(総合的な考察)
1 校則見直しの推進
(1)校則内容の見直しは,継続して取り組むことが大切である。
調査結果から明らかなように校長は,現状の校則を概ね「平均的である」と受け止めているが,このことは,各学校においてかなり見直しが行われた結果も反映していると思われる。しかし,「平均的」と考えられている校則の内容が果たして本当に「平均的」かどうか,単に近隣の学校と同じであるという認識をもって「平均的」としているに過ぎないのかどうかをよく吟味して,引き続き見直しを図る必要があろう。校則内容の見直しに当たっては,生徒が絶対守るべきものか,努力目標というべきものか,あるいは生徒の自主性に任せるべきものかという視点に立って点検をすすめる必要があることが指摘されている。ところが本調査によれば,見直しの結果改訂された校則内容の例の中には,制服の襟カラーのサイズの改訂など,瑣末的と考えられるきまりを修正した程度にとどまっている例もみられる。修正した結果なお瑣末的と考えられるきまりにとどまっているような学校においても,自校の校則を一般的・標準的なことと意識し,それでよしとしていることはないか。
そもそも,校則は一度見直したからそれでよいというものではない。学校を取り巻く状況や生徒の状況も変化する。その意味でも校則の内容はたえず積極的に見直されなければならないものである。
(2)思い切った見直しが必要である。
今回の調査で見直し検討された校則の内容は,服装,校外生活,校内生活,頭髪など実に様々な事柄に及んでいるが,見直しの結果,校内の状況変化に関しては数多くの学校でブラスの評価が与えられている。このことからみて,学校は校則見直しを思い切って進めてよいのではないか。
学校からは,規則緩和が生徒の非行につながったりしないか,あるいは,校内生活が乱れ授業が成り立たなくなりはしないかという危惧が数多く述べられている。しかし,例えば頭髪,服装,校外での生活のような,個人の身体にかかわることや好みや趣味の範疇に入ること,あるいは当然家庭で責任をもって行われるべきしつけの内容まで一律にこまごまと校則で定めすべて学校で指導しなければならないのかという疑問も感じる。
学校は,教育の専門機関として責任をもって生徒の教育に当たることはもとより当然のことであるが,学校のみですべてが解決できるというのではなく家庭や地域の理解と協力が不可欠であるということを強調してよいのではなかろうか。
(3)生徒が主体的に考えるよう指導することが大切である。
校則の見直しに当たっては,単に,校則内容を改めるだけでなく,一人一人の生徒の特質に照らした指導が行われるよう指導の在り方を見直すことが大切なことはいうまでもない。その際生徒が自主的に校則を守っていくように指導することが重要である。
このことに関して,今回の調査で校則の見直しに当たって,「生徒会等の場」を通じ「生徒に主体的に考えさせた場合」には,「生徒が自主的に校則を守るようになった」とする割合が高く表れていることは注目してよいのではないか。
学校の教職員だけで見直しても,生徒が主体的にきまりを考えていく過程がなければ生徒に内面的な自覚を促し自主的に校則を守らせるようにしていくことは困難である。
新しい生徒が入学してくると校則を見直した意味が忘れられるという学校の悩みもわからないではない。しかし,校則指導は不断に行われる教育指導の一環である。その意味で継続した校則の見直しは,生徒に主体性を培う絶好の機会となると考えるべきではなかろうか。
(4)学校は家庭や地域との信頼関係を作るとともに,開かれた学校づくりをめざすことが大切である。
調査に見られるところでは,学校は,校則見直しに当たって,PTAにアンケートをしたり,話し合いの場をもったりしているほか,生徒指導方針についても様々な場を通じ保護者への周知を図り,理解を得る努力を一生懸命に行っている。その努力は評価したいが,しかし,果たして学校の働きかけは十分なものかどうか,また,その働きかけは学校に都合のよい一方的な働きかけになっていないかどうか改めて見直す必要があるのではないか。
このように述べると,今回の調査の中の校長の意見にあるように,「家庭や地域の教育力の低下が見られる」状況の中で対応に苦慮する学校とすれば,保護者の理解や協力を得ることは容易なことではないという反論が出よう。
教育力の低下をいうことはたやすい。しかし,保護者にとって様々な教育上の問題について相談し,悩みを受け止めてくれる身近な場はやはり学校ではないか。そのためにも学校は,家庭や地域との信頼関係の確立に努め,開かれた学校づくりをめざすことが大切である。
(5)人間味のある温かい生徒指導を基本に教職員の共通理解,共同実践が必要である。
調査では,校則の指導はかなりの程度柔軟にかつ同じような指導方法の下に行われているという結果になっている。このような校長の意識どおり校則指導が行われているとすれば,大変望ましいことである。しかし教育実践がばらばらではなく共通・共同に行われているかどうか十分検討されなければならない。なぜなら,教職員にも様々な個性があり,ある程度共通理解をもったとしても共通共同の実践となることは簡単ではないからである。
したがって,学校では,改めて生徒指導の基本的な在り方,指導方法について教職員間の十分な共通理解を図るとともに,個別の指導に当たっては個々の教職員の特性を生かした方法により,相互補完をし合い,共通共同の実践となるよう取り組むことが大切である。この際,人間としての在り方生き方,社会や集団へのかかわり方,規範意識の大切さ等の根本的な事項について生徒が共感をもって理解できるよう配慮する必要がある。そのためには,生徒一人一人の個性を生かし人間味のある温かい指導を行い,生徒との好ましい人間関係を作ることの大切さを改めて銘記する必要があろう。
2 生徒指導のための体制
(1)生徒指導の方針について共通理解を得るための校内研修の充実を図る必要がある。
校内研修はかなり実施されているが,教職員間の共通理解を図り,生徒指導の実をあげるためには研修内容(今回は調査していない)がより重要となろう。研修が単なる伝達の場となっていないか,資料が配布のみにとどまっていないか,などを改めて見直すとともに,生徒指導の在り方についての基本的な研修や具体的な問題行動への対応の指針を得るための事例研究等,幅を広げた研修の充実が望まれる。
(2)学校における組織的な教育相談の充実を図る必要がある。
今回の調査では学校は何らかの形で教育相談が行われているが,しかし,学級担任や生徒指導担当者中心に行われているように思われる。近年の登校拒否や高校中退など様々な生徒指導上の課題に適切に対応していくためにも教育相談機能の充実は急務である。そのためには,教育相談を一人一人の教師のみに終わらせることなく,教職員が全体として機能的に取り組む体制を作ることが求められる。その際,例えば専任カウンセラーのような専門的力量をもち,相談指導員の中核となるような教職員の養成・配置も今後の検討課題であろう。
(3)関係機関・関係団体と相互の役割について理解をふまえた連携を図る必要がある。
調査結果から,各学校ともそれぞれの関係機関・関係団体との連携を深めながら生徒指導を充実させようとしていることがうかがえるが,連携・協力が単に情報交換とか生徒指導の事務連絡にとどまることなく,それぞれの機能役割を生かした活動が実践されることにより,真に教育的効果の上がる生徒指導が推進されることを期待する。そのためには,学校も関係機関等もいたずらに責任を他に転嫁することなく,相互にその機能役割について理解を図り,信頼関係を確立することが大切である。
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