● 学校週五日制の実施について 平成4年3月23日 文初小296



平四、三、二三 文初小二九六 
各都道府県、教育委員会教育長あて 
文部省初等中等教育局長、生涯学習局長通知

    学校週五日制の実施について

 このたび、平成四年三月二三日付け文初小一一九号で通達したとおり、学校教育法施行規則の一部を改正し、幼稚園、小学校、中学校、高等学校並びに盲学校、聾学校及び養護学校において、平成四年九月一日から毎月の第二土曜日を休業日とする学校週五日制を実施することとしました。
 ついては、下記の事項に留意するとともに、別添の「社会の変化に対応した新しい学校運営等の在り方について (審議のまとめ)」(平成四年二月二二日、社会の変化に対応した新しい学校運営等に関する調査研究協力者会議)を参考にし、学校週五日制が円滑に実施されるようお願いします。
 なお、所管の学校及び管下の市町村教育委員会に対して、この趣旨を徹底されるようお願いします。

          記

一 教育課程上及び学校運営上の対応
 各学校及び教育委員会においては、学校週五日制の実施に当たって、教育課程上及び学校運営上の対応について次の事項に留意すること。
(1) 教育課程上の対応
ア 各学校においては、社会の変化に対応してこれからの時代に生きる幼児児童生徒の望ましい人間形成を図るという学校週五日制を導入する趣旨を踏まえ、教育課程の基準に従い、次の諸点に配慮して教育課程を編成、実施すること。
 @教育課程の編成、実施に当たっては、自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力の育成を重視し、基礎的・基本的な内容を幼児児童生徒一人一人の自己実現に役立つよう身に付けさせるようにすること。その際、幼児児童生徒がみずからの生き方をもって自分の生活を展開できる能力の育成を重視すること。
 A幼児児童生徒が自ら考え主体的に判断し行動するために必要な資質や能力を身につけることを重視して、学習負担に配慮しつつ指導内容の改善や指導方法の工夫を行い、教育水準を維持するよう努めること。
 B特に高等学校においては、学校週五日制の導入を契機に、より一層生徒の主体的な学習を促進するため、学校や生徒の実態等に応じて、多様な選択科目を設けたり、単位制の活用を図ったりするなどして教育課程の多様化、弾力化に努めること。
イ 各学校においては、授業時数の運用について、次の例を参考にしながら、休業日となる土曜日における幼児児童生徒の生活との関連に留意し、指導内容の改善との関連、幼児児童生徒の学習負担などに配慮して適切な工夫をすること。なお、その際、いわゆる短縮授業については、その取扱いを見直すことにも留意すること。
 @幼稚園(盲学校、聾学校及び養護学校の幼稚部を含む。)については、教育内容を精選し教育環境の構成を一層工夫することにより土曜日の教育時間を削減することなどにより対応すること。
 A小学校および中学校については、児童生徒の学習負担などを考慮し、各教科等外において学校が独自に行う教育活動(以下「各教科等外の活動」という。)や学校行事を精選することなどにより対応すること。
 B高等学校については、各学校における教育課程の編成の実態に応じ、各教科等外の活動や学校行事を精選すること、教材等の精選や指導方法の工夫等により標準を上回って定められている授業時数を削減すること、土曜日の授業時数を他の曜日に上乗せすること。
 C盲学校、聾学校及び養護学校(それぞれの幼稚部を除く。)については、児童生徒の心身の障害の状態等に応じ、各教科等外の活動や学校行事を精選することなどにより対応すること。
ウ 各学校においては、指導内容について、次の例を参考にしながら、各教科等の授業時数との関連を考慮して改善を行うこと。
 @自ら学習意欲や思考力、判断力、表現力などの能力を育成するために、各教科の教材等の精選を図るとともに、体験的な問題解決的な学習を重視すること。
 A学校行事については、学校や地域及び幼児児童生徒の実態に応じて、各種顆ごとに、行事及びその内容を精選すること。
 B従来、各教科等外の活動として行っていたもののうち、各教科等の授業の中でも実施することが可能な活動については、これを精選すること。
エ 各学校においては、指導方法について、次の例を参考にしながら、一層の工夫改善を行うこと。
 @基礎的・基本的な内容を幼児児童生徒一人一人の自己実現に役立つものとして身に付けるようにするため、個に応じた工夫をすること。
 A学習の遅れがちな幼児児童生徒に対しては、必要に応じて補充指導などを行うこと。
(二) 学校運営上の対応
ア 各学校及び教育委員会においては、教育課程上の対応にとどまらず、地域に開かれた学校づくり、学級経営、休業日となる土曜日の対応など学校運営全般にわたり適切に対応すること。
イ 各学校及び教育委員会においては、次の例を参考にしながら、地域や学校の実態に応じて地域に開かれた学校づくりを推進すること。
 @幼児児童生徒を含め地域住民が遊び、スポーツ、文化活動などを行う場として、校庭、体育館、図書館、特別教室などの学校施設を積極的に開放すること。
 A教育活動について地域の人々の理解と協力を求めたり、家庭や地域社会の学校に対する要望なども考慮したりすること。
 B地域に開かれた学校づくりを進めるために、教員意識や発想の転換を図ること。
ウ 各学校においては、学級経営及び生徒指導の充実については、例えば、課題意識をもって自分の生活を組み立てることができるよう指導したり、幼児児童生徒一人一人のやる気を育てる活動の場を設けたりするなど、幼児児童生徒が自主的、主体的に学習や生活を行うことができるよう、学校や幼児児童生徒の実態に配慮して一層の充実に努めること。その際、幼児児童生徒の発達段階や実態に応じ、休業日となる土曜日を含めた自由時間の過ごし方について日頃から考えさせるようにすることが大切であること。
エ 各学校及び教育委員会においては、教員の研修や教材研究について、例えば、学習指導の改善を図るための校内授業研究会や情報交換会、教員の視野を広げるための研修を行うなどその充実を図ること。
オ 各学校及び教育委員会においては、保護者や地域社会に対する働きかけについて、次の例を参考にしながら、家庭や地域の実態などに配慮して積極的に取り組むこと。
 @学校週五日制の趣旨と家庭の役割などについて保護者の意識の啓発を行うこと。
 A保護者や地域の人々と協力して、青少年団体活動、異年齢集団による種々の地域活動、奉仕活動、地域の人々との交流活動などへの幼児児童生徒の参加を促すなどして、有意義な学校外における活動が促進されるようにすること。
 B社会教育関係の団体や施設、地域住民などとの連携や協力を積極的に図るとともに、社会教育関係団体などの協力を得ながら、地域におけるボランティアなどの人材の発掘に努めること。
 C盲学校、聾学校及び養護学校については、学校が平素から積極的にボランティアの組織化や社会教育施設等との連携を図るとともに、地域における交流等の活動の促進に努めること。
カ 各学校及び教育委員会においては、休業日となる土曜日には、幼児児童生徒が家庭や地域社会で主体的に生活することを基本とするが、次の例を参考にしながら、地域や学校及び幼児児童生徒の実態に配慮して適切に対応すること。
 なお、盲学校、聾学校及び養護学校の幼児児童生徒については、地域社会においても遊び、スポーツ、文化活動、地域の人々との交流などを行うことが望ましいので、このことにも配慮すること。
 @幼児児童生徒が主体的に活動できる場の一つとして学校の施設を開放すること。
 A特に幼稚園、小学校低学年で土曜日に保護者が家庭にいない幼児児童や、盲学校、聾学校及び養護学校等の幼児児童生徒で保護者が希望するものなどに対しては、学校などにおいて、必要に応じて、遊び、スポーツ、文化活動などを実施すること。その際、指導員の確保等について、ボランティアなどの協力を求めることにも配慮すること。
 また、上記Aの活動を実施するための経費として、地方交付税の改正案において、指導員に対する消耗品・材料費、円滑な活動のための推進委員会の設置に要する経費等について措置されているので、そのことに留意すること。
キ 休業日となる土曜日には教員は休みとするのを原則とするが、上記カのAと対応して、当面、遊び、スポーツ、文化活動などを行う場合には、教員も、必要に応じて、適切に対応すること。

二 家庭や地域社会における幼児児童生徒の体験等の充実 学校週五日制を実施するに当たっては、家庭や地域社会におけるゆとりのある生活や豊かな体験を適して、幼児児童生徒の望ましい人間形成を図ることが一層重要となることにかんがみ、次の事項に留意するとともに、別添の「休日の拡大等に対応した青少年の学校外活動の充実について(審議のまとめ)」(平成四年二月二六日、青少年の学校外活動に関する調査研究協力者会議)(略)を参考にし、幼児児童生徒の多様な活動のための場や機会の充実を図ること。その際、心身に障害のある幼児児童生徒については、その社会参加を進め自立を図る観点に留意するとともに、休日に保護者が家庭にいない幼児児童生徒に対しても適切に配慮すること。
(一)教育委員会は、次の事項に配慮して、幼児児童生徒の生活体験、自然体験、社会体験などの豊かな体験に資するよう、遊び、スポーツや文化活動、自然と触れ合う活動、社会参加活動などの多様な活動を促進するための関係事業を推進すること。
ア 関係行政機関、学校及び青少年団体、スポーツ・文化団体、PTA等の関係団体との幅広い連携・協力の下に、幼児児童生徒が多様な活動に参加できる機会の充実を図ることとし、その際、地域少年少女サークル活動促進事業等の各種補助事業等も活用すること。特に心身に障害を有する幼児児童生徒については、社会福祉関係の行政機関等の理解と協力を得て適切に対応する必要があること。
イ 学校施設の開放のほか、公民館、図書館、博物館、青少年教育施設等の社会教育施設や社会体育施設、文化施設など幼児児童生徒の利用できる場所の確保に努めるとともに、これらの施設において、幼児児童生徒の活動等に配慮した事業を展開するなどその活用の促進に努めること。
ウ 青少年教育に係る専門的な指導者はもとより、幅広い人材の支援・協力を得ることが求められることを考慮し、広く地域社会の人々の支援・協力を得ること。その際教員は、地域住民の一人として地域社会の幼児児童生徒との接触を深めたりすることが期待されていることに留意すること。また特に心身に障害を有する幼児児童生徒の学校外活動を支援する観点から、社会福祉や教育などに関連する大学、学部等の学生などを含めた幅広い人材にボランティア活動への協力を求めることが望ましいこと。
エ 家庭や幼児児童生徒に対し、遊びや多様な活動に参加できる機会や場に関する情報提供を積極的に進めること。
(二)教育委員会は、上記(1)の充実策と呼応して、学校と家庭や地域社会との連携を一層強化し、幼児児童生徒の学校外における活動が活発になるよう奨励すること。
(三)教育委員会は、幼児児童生徒が家庭や地域社会でゆとりのある生活や様々な体験を通して、全人的に成長していくことができるよう、保護者に十分な理解と協力を求めること。その際、PTAと十分連携を図るよう留意すること。

三 関係者に対する要請等
 学校週五日制の実施に当たって、次の事項について積極的な取組みが行われるよう、関係者に対して要請すること。
(一)教育委員会及び学校は、学習塾関係者や保護者に対して、過度の塾通いの弊害の周知を図り、学校週五日制の導入が過度の塾通いにつながらないよう理解と自粛を求めること。
(二)家庭及び地域社会をはじめ、学校や教育委員会の関係者は、特に非行などの問題行動を誘発しないよう留意して、幼児児童生徒の健全育成のために一層努力すること。

四 その他
 文部省においては、社会の変化に対応した新しい学校運営等に関する調査研究協力校の実践事例等を編集した事例集を近く刊行する予定であるので、参考にすること。






Copyright© 執筆者,大阪教育法研究会