● 病気療養児の教育について 平成6年12月21日 文初特294
平六、一二、二一 文初特二九四
各都道府県教育委員会教育長あて
文部省初等中等教育局長通知
病気療養児の教育について
病気のため病院等に入院しているいわゆる病気療養児の教育については、かねてから関係者の努力により、病院等に併設し又は隣接する病弱養護学校及び小・中学校の病弱・身体虚弱特殊学級(以下「病弱養護学校等」という。)において実施されてきたところですが、近年における児童生徒の病気の種類の変化、医学や医療技術の進歩に伴う治療法の変化等によりその必要性がますます高まっており、また、入院期間の短期化や入退院を繰り返す等の傾向に対応した教育の改善も求められているところです。
文部省としても、こうした状況にかんがみ、平成五年六月、「病気療養児の教育に関する調査研究協力者会議」を発足させ、病気療養児の教育の改善充実方策についての検討をお願いし、このたび「病気療養児の教育について(審議のまとめ)」を取りまとめていただいたところです。
文部省としては、この審議のまとめの趣旨を踏まえ、今後さらに施策の充実に取り組むこととしておりますが、貴職におかれても、この審議のまとめの内容を参考にし、特に左記の点に留意して、病気療養児の教育の改善充実に一層努められるようお願いします。
おって、管下の各市町村教育委員会に対して、この趣旨の徹底を図るようお願いします。
記
一 入院中の病気療養児の実態の把握
(一) 入院中の病気療養児の中には、病弱養護学校等の教育を受けることが本来適当であるにもかかわらず、入院前の小・中学校に在籍したまま長期にわたり欠席している場合があることから、各小・中学校においては、在籍する児童生徒のうち病院への入院等により欠席する者について、保護者の協力を得ながら、入院先や医療・生活親則を必要とする期間、欠席日数、病状などを的確に把握し、市町村教育委員会と協議しつつ、病弱養護学校等への転学の必要性について適切に判断すること。
(二) 各市町村教育委員会は、このような判断の結果を踏まえ、病弱養護学校等への転学措置が適当な児童生徒については、必要に応じ、都道府県の教育委員会とも連携を取りながら、入院先の病院等の所在地を所管する教育委員会に連絡すること。
二 適切な教育措置の確保
(一) 関係教育委員会においては、前記の病弱養護学校等への転学措置が適当な児童生徒に対しては、速やかに適切な対応をすること。その際、関係法令の規定等も、このような児童生徒に教育の機会を可能な限り提供しようとする趣旨のものであることを十分に理解し、運用に当たること。
(二) 都道府県及び市町村の教育委員会においては、病弱養護学校等への転学措置が速やかに講じられるよう、病気療養児の教育の必要性、制度、手続、留意事項を教職員、保護者その他の関係者に周知・徹底し、転学事務処理の迅速化を図ること。
この場合において、病気療養児本人及びその保護者の気持ちを考慮し、当該病気療養児の教育に関し、入院前に通学していた学校と転学先の病弱養護学校等との間の密接な関係が保たれるよう努めること。
(三) 転学手続が完了していない児童生徒についても、病弱養護学校等において、実際上教育を受けられるような配慮が望まれること。
三 病気療養児の教育機関等の設置
(一) 病気療養児に対する教育の機会を確保する観点から、病弱養護学校等の教育の対象とすることが本来適当な児童生徒が入院している病院等の所在地を所管する都道府県及び市町村の教育委員会は、当該病院等の理解と協力を得て、その人数、病状等に応じ、隣接・併設等の形態により、養護学校の本校、分校、分教室等の設置や訪問教育の実施又は特殊学級の設置など病弱教育の特殊性を踏まえた適切な形態により教育を提供すること。この場合において、可能な限り、病院等の協力を得て必要な面積の専有空間を確保するよう努めること。
(二) 近年、入院期間の短期化や入退院を繰り返す等の傾向が見られることから、これに対応して、医療機関との緊密な連携の下に、計画的かつ迅速に病気療養児の教育に必要な体制の整備を図ることに努めること。
四 教職員等の専門性の向上
(一) 病気療養児に対して病気の種類や病状に応じた適切な指導を行っていくため、担当する教職員等の専門性の向上を図るよう、特殊教育センター等における研修事業を拡充し、また、校内研修や併設・隣接医療機関の専門家の協力を得た研修の機会の確保を図ること。
(二) また、病気療養児の教育における指導的立場の教職員等の資質の向上を図るため、国立特殊教育総合研究所等における研修に積極的に担当の教職員等を派遣すること。
五 その他
(一) 病気療養児の教育の必要性、意義等を関係者に十分に周知し、理解を求めること。
(二) 病気療養児の教育の特質を踏まえ、医療機関や入院前に通学していた学校、福祉機関や保護者等との連携が十分に確保されるよう配慮をすること。
Copyright© 執筆者,大阪教育法研究会