● 出席停止制度の運用の在り方について 平成13年11月6日 13文科初第725号
平成13年11月6日
13文科初第725号
文部科学省初等中等教育局長
出席停止制度の運用の在り方について(通知)
先の第一五一回国会において成立した「学校教育法の一部を改正する法律」の改正の趣旨及び概要については、既に本年七月一一日付け文部科学事務次官通知(文科初第四六六号)により通知したところであり、公立の小学校及び中学校の出席停止制度に関しては、その一層適切な運用を期するため、要件の明確化、手続に関する規定の整備、出席停止期間中の学習支援等の措置を講ずることを内容とする改善が図られました(第二六条関係)。この出席停止に関する改正規定の施行日は、平成一四年一月一一日となっております。
一方、先般公表した「平成一二年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」の速報値によれば、暴力行為の発生件数が過去最高となるなど、生徒指導上の諸問題は憂慮すべき状況にあります。
このような状況を踏まえ、文部科学省では、今後の出席停止制度の運用の在り方について、従来の昭和五八年一二月五日付け文初中第三二二号「公立の小学校及び中学校における出席停止等の措置について」の内容に関して、法改正を踏まえた所要の見直しを図り、下記のとおり留意点をとりまとめました。ついては、各都道府県におかれては、これに関して十分に御理解いただき、域内の市町村教育委員会等に対して、改正の趣旨について周知を図るとともに、必要に応じて指導、助言又は援助をお願いします。
なお、本通知に関しては、その内容について、内閣府、警察庁、法務省及び厚生労働省と協議済みであり、また、これらの府省庁に対し、それぞれの関係機関等に本通知の内容の周知方を依頼してあることを申し添えます。
記
1 制度の運用の基本的な在り方について
(1) 制度の趣旨・意義
出席停止の制度は、本人に対する懲戒という観点からではなく、学校の秩序を維持し、他の児童生徒の義務教育を受ける権利を保障するという観点から設けられた制度である。
もとより、学校は児童生徒が安心して学ぶことができる場でなければならず、その生命及び心身の安全を確保することが学校及び教育委員会に課せられた基本的な責務である。こうした責務を果たしていくため、教育委員会においては、今回の法改正の趣旨を踏まえ、定められた要件に基づき、適正な手続を踏みつつ、出席停止制度を一層適切に運用することが必要である。また、出席停止制度の運用に当たっては、他の児童生徒の安全や教育を受ける権利を保障すると同時に、出席停止の期間において当該児童生徒に対する学習の支援など教育上必要な措置を講ずることが必要である。
(2) 市町村教育委員会の権限と責任
出席停止の措置は、国民の就学義務とも関わる重要な措置であることにかんがみ、市町村教育委員会の権限と責任において行われるものとされている。具体的には、出席停止に関し、事前の指導、措置の適用の決定、期間中及び期間後の指導、関係機関との連携等にわたって市町村教育委員会が責任を持って対処する必要がある。特に、今回の法改正では、事前の手続及び出席停止期間中の学習支援等について規定されるなど、制度の運用上、市町村教育委員会が一層適切な役割を果たすことが求められている。
こうしたことを踏まえ、市町村教育委員会において、出席停止を命ずる権限を校長に委任することや、校長の専決によって出席停止を命ずることについては、慎重である必要がある。もとより、校長は、学校の実態を把捉し、その安全管理や教育活動について責任を負う立場にあることから、市町村教育委員会が出席停止制度を運用する際には、校長の意見を十分尊重することが望ましい。
(3) 事前の指導の在り方
児童生徒の問題行動に対応するためには、日ごろからの生徒指導を充実することが、まずもって必要であり、学校が最大限の努力を行っても解決せず、他の児童生徒の教育が妨げられている場合に、出席停止の措置が講じられることになる。このため、特に次のような点に留意して指導に当たることが大切である。なお、公立の小学校及び中学校については、自宅謹慎、自宅学習等を命ずることは法令上許されておらず、こうした措置は、出席停止の在り方について十分な理解がなされ、適切な運用が行われることによって解消が図られるべきものである。
@各教科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間など学校の教育活動全体を通じ、教職員が一致協力して社会性や規範意識など豊かな人間性を育成する指導を徹底すること。その際、ボランティア活動など社会奉仕体験活動、自然体験活動その他の体験活動を効果的に取り入れること。
A教職員が児童生徒の悩みや不安を受け止め、カウンセリングマインドを持って接するよう努めること。併せてスクールカウンセラーを有効に活用するなど校内の教育相談の充実を図ること。
B問題行動の兆候を見逃さず、適切な対応を行うとともに、問題行動の発生に際しては、教職員が共通理解の下に毅然とした態度で指導に当たること。暴力行為に及ぶ児童生徒に対し、教職員は、正当防衛としての行為をするなどの対応もあり得ること。体罰については、学校教育法第一一条により厳に禁止されているものであること。
C問題を抱え込むことなく、家庭や地域社会、さらには児童相談所や警察などの関係機関との連携を密にすること。生徒指導の方針や実情について説明責任を果たし、外部の意見を教育活動に適切に反映させること。実情に応じて、サポートチーム(個々の児童生徒の状況に応じ、問題行動の解決に向けて学校、教育委員会及び関係機関等が組織するチーム)など、地域ぐるみの支援体制を整備して指導に当たること。
D深刻な問題行動を起こす児童生徒については、前述の対応や個別の指導・説諭を行うほか、必要と認められる場合には、学校や児童生徒の実態に応じて十分に配慮しつつ、一定期間、校内において他の児童生徒と異なる場所で特別の指導計画を立てて指導すること。さらに、児童生徒に対する指導の過程において、家庭との連携を図り、保護者への適切な指導・助言・援助を行うこと。
2 要件について
問題行動を起こす児童生徒がある場合、出席停止の適用の判断については、前述の1(1)に示した出席停止制度の趣旨や意義にかんがみ、多くの児童生徒の安全や教育を受ける権利を保障する観点を重視しつつ、個々の事例に即して具体的かつ客観的に行われなければならない。
出席停止の適用に当たっては、「性行不良」であること、「他の児童生徒の教育に妨げがある」と認められることの二つが基本的な要件となっており、今回の法改正では、法律上の要件を明確化する観点から、「性行不良」に関して、四つの行為類型をそれぞれ各号に掲げ、それらを「一又は二以上を繰り返し行う」ことを例示として規定したものである(第一項)。
第一号は、他の児童生徒に傷害、心身の苦痛又は財産上の損失を与える行為であり、その例としては、他の児童生徒に対する威嚇、金品の強奪、暴行等が挙げられる。なお、いじめについては、その態様は様々であるが、傷害には至らなくとも一定の限度を超えて心身の苦痛を与える行為に関しては、出席停止の対象とすることがあり得るところであり、いじめられている児童生徒を守るため、適切な対応をとる必要がある。
第二号は、職員に傷害又は心身の苦痛を与える行為であり、その例としては、職員に対する威嚇、暴言、暴行等が挙げられる。なお、財産上の損失を与える行為については、職員の場合、成人であることを考慮し、児童生徒と異なり本号では規定していない。
第三号は、施設又は設備を損壊する行為であり、その例としては、窓ガラスや机、教育機器などを破壊する行為が挙げられる。
第四号は、授業その他の教育活動の実施を妨げる行為であり、その例としては、授業妨害のほか、騒音の発生、教室への勝手な出入り等が挙げられる。
3 事前の手続について
今回の法改正では、市町村教育委員会が出席停止を命ずる場合の事前の手続として、あらかじめ保護者の意見を聴取するとともに、理由及び期間を記載した文書を交付しなければならないこととしたところである(第二項)。これらの点を含め、教育委員会規則に基づく慎重な手続の下、出席停止について関係者の理解と協力が得られ、その適切な運用がなされるよう、以下の点に留意する必要がある(教育委員会規則の整備(第三項)に関しては後記6を参照すること)。
(1) 事前の説明等
学校においては、保護者等の全体に対して、生徒指導に関する基本方針等について説明を行う時など適切な機会をとらえて、出席停止制度の趣旨に関する説明を行い、適切な理解を促すことが望ましい。
なお、深刻な問題行動を起こす児童生徒については、個別の指導記録を作成し、問題行動の事実関係や児童生徒及び保護者に対する指導内容等を事実に即して記載しておくことが適当である。
(2) 意見の聴取
当該児童生徒による問題行動が繰り返され、市町村教育委員会等において出席停止を講じようとする場合、これを命ずるに先立って、正当な理由なく意見聴取に応じない場合を除き、当該保護者の意見を聴取しなければならない。意見聴取は、緊急の場合等を除き、保護者と直接対面して行い、今後の指導の方針などの説明を併せて行うことが望ましい。なお、意見聴取は主として保護者からの弁明を聴くものであって、保護者の同意を得ることまでは必要ないが、保護者の監護の下で指導を行うという制度の性質を踏まえると、保護者の理解と協力が得られるよう努めることが望ましい。
当該児童生徒については、平成六年五月二〇日付け文初高第一四九号「「児童の権利に関する条約」について」に引き続き留意しつつ、出席停止を円滑に措置し、指導を効果的なものとする観点等から、当該児童生徒の意見を聴取する機会を設けることに配慮するものとする。
問題行動の被害者である児童生徒や保護者については、事実関係等を的確に把握するために事情を聴くとともに、事後の対応に関して説明するなど適切に対処することが必要である。また、出席停止の適用について適切な判断を下すとともに、事後の指導を円滑に行う観点から、かねてから当該児童生徒に対する指導に関わってきた関係機関の専門的な職員等の意見を参考とすることも考えられる。
(3) 適用の決定
出席停止の適用の決定は、市町村教育委員会において、教育委員会規則の規定にのっとり、問題行動の態様及び学校の実情を踏まえ、校長の判断を尊重しつつ、保護者等からの意見聴取を行った上で行わなければならない。また、出席停止が、他の児童生徒の安全や教育を受ける権利を保障するための制度であることを十分に踏まえ、適時に適用を決定することが必要である。
問題行動を起こす児童生徒に対する措置としては、出席停止のほか、児童福祉法や少年法に基づく措置等があり、かねてからの関係機関との連携の下、当該児童生徒の立ち直りのため、望ましい処遇の在り方を検討する必要がある。出席停止を講ずる際には、必要に応じて関係機関への連絡を行うことが適当である。特に問題行動が生命や身体に対する危険をもたらすものである場合、警察の協力を得る等の措置を併せとることが必要である。また、家庭の監護能力に著しく問題があると認められる場合には、児童福祉法に基づいて児童相談所に対して通告等を行い、その協力を求めることが適当である。
出席停止の期間は、出席停止の制度の意義にかんがみ、学校の秩序の回復を第一に考慮し、併せて当該児童生徒の状況、他の児童生徒の心身の安定、保護者の監護等を考慮して、総合的な判断の下に決定する必要がある。期間は、個々の事例により異なるものであるが、出席停止が教育を受ける権利に関わる措置であることから、措置の目的を達成するための必要性を踏まえて、可能な限り短い期間となるよう配慮する必要がある。なお、出席停止期間中の当該児童生徒の状況によっては、決定の手続に準じて、出席停止を解除することができる。
(4) 文書の交付
出席停止を保護者に命ずる際には、理由及び期間を記載した文書を交付しなければならない。命令の伝達は文書の手交又は郵送によることとし、口頭のみにより命ずることは認められない。
出席停止を命ずる文書には、理由及び期間のほか、当該児童生徒の氏名、学校名、保護者の氏名、命令者である市町村教育委員会名、命令年月日等について記載することが適当である。また、理由の記載に当たっては、根拠となる法律の条項や要件に該当する事実を明示することが必要である。
出席停止を命ずるに当たっては、市町村教育委員会の教育長等の関係者又は校長や教頭が立ち会い、保護者及び児童生徒を同席させて、出席停止を命じた趣旨や、個別指導計画の内容など今後の方針について説明する等の配慮をすることが望ましい。
(5) 教育委員会の役割と連携
市町村教育委員会は、平素から管下の学校や児童生徒の実態を十分に把握しておき、問題行動を起こす児童生徒への対応に関して学校への指導・助言・援助を行うとともに、出席停止の事前手続に適正を期する必要がある。一方、学校は、問題行動を起こす児童生徒があるときには、市町村教育委員会に対し学校や児童生徒の状況を随時報告する等連絡体制を十分とり、必要な指示や指導を受けながら、対処する必要がある。出席停止の適用を決定する際には、市町村教育委員会において、学校及び関係機関等との連携を図りつつ、出席停止期間中の当該児童生徒に対する個別指導計画を策定することが必要である。
また、市町村教育委員会は、出席停止の要件に該当する深刻な問題行動を起こす児童生徒があるときには、適時に都道府県教育委員会との連携をとりつつ対応することが望ましい。その際、都道府県教育委員会は、市町村教育委員会あるいは学校の自主性・自律性に配慮しつつ、指導主事やスクールカウンセラー等の派遣、教職員配置の工夫などの措置を通じて支援を行うことが望ましい。
4 期間中の対応について
今回の法改正では、市町村教育委員会が、当該児童生徒の出席停止の期間における学習に対する支援その他の教育上必要な措置を講ずるものとすることと定められたところであり(第四項)、出席停止期間中の対応が適切になされるよう、以下の点に留意する必要がある。
(1) 市町村教育委員会及び保護者の責務
市町村教育委員会は、出席停止を措置する場合、自らの責任の下、学校の協力を得つつ当該児童生徒に関する個別指導計画を策定し、出席停止の期間における学校あるいは学校外における指導体制を整備して、学習への支援など教育上必要な措置を講じ、当該児童生徒の立ち直りに努めることが必要である。その際、当該児童生徒の在籍する学校における取組の充実を図るとともに、関係機関との連携を十分視野に入れて、適切に対処することが大切である。
出席停止期間中においては、当該児童生徒に対して保護者が責任を持って指導に当たることが基本であり、出席停止の措置に当たって、市町村教育委員会及び学校が保護者に対し自覚を促し、監護の義務を果たすよう積極的に働きかけることが極めて重要である。このため、市町村教育委員会及び学校は、保護者に対して、事前の手続等において、個別指導計画の内容等について十分に説明し、理解と協力を得るよう努めるとともに、必要に応じ、家庭環境の改善を図るため、関係機関の協力を得て指導や援助(子育て相談を含む)を行うことが適当である。また、家庭の監護に問題がある場合、出席停止期間中、家庭以外の場において当該児童生徒に対する指導を行うことも考えられる。
もとより、出席停止は学校の秩序の回復を図るものであり、市町村教育委員会としては、当該児童生徒への対応のみならず、他の児童生徒に対する正常な教育活動が円滑になされるよう、適切な措置をとることが必要である。
(2) 当該児童生徒に対する指導
出席停止の期間においては、当該児童生徒が学校や学級へ円滑に復帰することができるよう、規範意識や社会性、目的意識等を培うこと、学校や学級の一員としての自覚を持たせること、学習面において基礎・基本を補充すること、悩みや葛藤を受け止めて情緒の安定を図ることなどを旨として指導や援助に努めることが必要である。
学校としては、学級担任、生徒指導主事等の教員が計画的かつ臨機に家庭への訪問を行い、反省文、日記、読書その他の課題学習をさせる等適切な方法を採ることとなるが、このほか、家庭の監護に問題がある場合などでは、市町村教育委員会が主導性を発揮し、状況に応じて次のような対応をとることが有効である。
@教育委員会及び学校の職員やスクールカウンセラー等のほか、児童相談所、警察、保護司、民生・児童委員等の関係機関からなるサポートチームを組織し、適切な役割分担の下に児童生徒及び保護者への指導や援助を行うこと
A教育センターや少年自然の家等の社会教育施設などの場を活用して、教科の補充指導、自然体験や生活体験などの体験活動、スポーツ活動、教育相談などのプログラムを提供すること(宿泊を伴う活動を含む)
B地域の関係機関や施設、ボランティア等の協力を得て、社会奉仕体験や勤労体験・職業体験などの体験活動の機会を提供すること
なお、出席停止期間における当該児童生徒に対する指導については、学校外において行うことが基本であるが、校内での指導を取り入れることが当該児童生徒の立ち直りを図る上で有効であると認める場合には、他の児童生徒の妨げとならない限りにおいて、これを行うこともあり得る。
こうした指導が適切に行われるようにするため、市町村教育委員会は、指導主事を学校等へ派遣して実態の把握と指導・助言に当たるほか、実情に応じて、学校外での指導の場や機会の確保、地域や関係機関等への積極的な働きかけ(協議会の設置など)、サポートチームの運営や当該児童生徒への直接の指導に当たる人材の確保などを行うことが適当である。また、都道府県教育委員会は、市町村教育委員会において適切な措置が十分に講じられるよう、指導主事やスクールカウンセラー等の派遣、教職員定数の加配等の人的措置、教育センターの機能の活用、関係機関への働きかけなどの支援を行うことが望ましい。
家庭の監護能力に著しく問題があると認められるなど児童福祉法に関わる事案については、児童相談所において当該児童生徒に関する調査を行った上で処遇の在り方を検討し、総合的な判断を行うこととなるので、教育委員会及び学校は、平素から児童相談所との連携を密にし、出席停止期間中の指導への協力を求めることが適当である。さらに、出席停止期間において当該児童生徒が深刻な問題行動を起こす場合、教育委員会として、保護者の意向にも配慮しつつ、児童相談所に対して児童福祉法上の対応(例:在宅指導、一時保護、児童福祉施設入所措置等)について検討を要請することも考えられる。
出席停止期間中、当該児童生徒の非行が予想される場合には、警察等との連携を図り、その未然防止に努めることが必要である。
(3) 他の児童生徒に対する指導
学校においては、他の児童生徒の動揺を鎮め、校内の秩序を回復するとともに、当該児童生徒が再び登校してきた場合に円滑な受入れができるよう、他の児童生徒に対して友情の尊さを理解させ、協力し合って学校や学級の生活を向上させることが必要であることを認識させる等適切な指導を行う必要がある。また、当該児童生徒の問題行動の被害者である児童生徒の心のケアについて配慮することが大切である。
5 期間後の対応について
(1) 学校復帰後の指導
出席停止の期間終了後においても、学校においては、保護者や関係機関との連携を強めながら、当該児童生徒に対し将来に対する目的意識を持たせるなど、適切な指導を継続していくことが必要である。その際、当該児童生徒や地域の実情に応じて社会奉仕体験や自然体験、勤労体験・職業体験などの体験活動を効果的に取り入れていくことが望ましい。
(2) 指導要録等の取扱い
出席停止の措置を行った場合における当該児童生徒の指導要録の取扱いについては、次の点に留意して、適切に行うことが必要である(平成一三年四月二七日付け文科初第一九三号「小学校児童指導要録、中学校生徒指導要録、高等学校生徒指導要録、中等教育学校生徒指導要録並びに盲学校、聾学校及び養護学校の小学部児童指導要録、中学部生徒指導要録及び高等部生徒指導要録の改善等について」参照)。
@「出欠の記録」の「出席停止・忌引等の日数」欄に出席停止の期間の日数が含まれ、その他所定の欄(例えば「備考」など)に「出席停止・忌引等の日数」に関する特記事項が記入されることとなること
A「総合所見及び指導上参考となる諸事項」については、その後の指導において特に配慮を要する点があれば記入することとなること
B対外的に証明書を作成するに当たっては、単に指導要録の記載事項をそのまま転記することは必ずしも適当でないので、証明の目的に応じて、必要な事項を記載するように注意することが必要であること
6 教育委員会規則の整備等
出席停止の措置は、学校教育法の規定に直接基づいて行うことができるが、今回の法改正では、出席停止の命令の手続に関し必要な事項は教育委員会規則で定めるものとされたところであり(第三項)、出席停止の適正な運用を図る観点から、その施行日(平成一四年一月一一日)までに、以下の点に留意して所要の教育委員会規則を整備するなど適切な対応をとる必要がある。規則の整備の在り方としては、市町村立学校管理規則の一部を改正する方法、又は、出席停止の手続に関する規則を新たに制定する方法などが考えられる。
(1) 規定する事項
手続に関する規則の整備に当たっては、出席停止を命ずる主体等に関する基本的な定めのほか、出席停止を命ずる場合、あらかじめ保護者の意見を聴取するとともに、理由及び期間を記載した文書を交付しなければならない旨の規定を設けることが必要である。なお、前記1(2)のとおり、市町村教育委員会の権限と責任において措置を決定し、命令を行うことが望ましいことから、出席停止を命ずる権限を校長に委任することや、校長の専決によって出席停止を命ずることができるように規定することは、慎重である必要がある。
このほか、出席停止の手続に関しては、市町村教育委員会の判断により、例えば以下のような規定を設けることも考えられる。
@保護者からの意見聴取の具体的な方法に関する規定
A当該児童生徒からの意見聴取に関する規定
B被害者である児童生徒や保護者への対応に関する規定
C出席停止の期間の設定の在り方に関する規定
D交付文書の記載内容や様式を定める規定
E校長からの意見具申に関する規定
Fその他出席停止の手続に関する必要な規定
また、これらの手続きに関する事項のほか、市町村教育委員会の判断により、出席停止の要件、期間中の支援の在り方などに関する事項について教育委員会規則において規定することもできる。
(2) その他
市町村教育委員会又は学校が、学校教育法及び教育委員会規則の範囲内で、地域や学校の実情に応じ、出席停止制度の運用全般について、より具体的な運用指針や内規を整備することも考えられる。
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